時間に合わせて読む
目次この記事でわかること13項目+
点線の用語を長押しすると、短い解説が開きます。タップ・クリックでも確認できます。
読む前に押さえたいこと
救急カートを前にして、「どの薬を準備するのか」「同じアドレナリンでも筋注と静注はどう違うのか」と迷った経験はありませんか。救急カート薬剤は、名前と用途を一対一で暗記するだけでは安全に使い分けられません。まず脈の有無と心電図波形を確認し、対象となる病態、投与経路、濃度、指示量を結び付ける必要があります。この記事では、代表的な薬剤の位置づけ、よくある誤解、投与前後に看護師が確認するポイントを整理します。実際の投与は、最新の施設プロトコル、医師の指示、採用製品の添付文書に従ってください。
救急カート薬剤は「病名」より先に脈と心電図波形で整理する
この章の要点結論からいうと、救急カート薬剤を選ぶ最初の分岐は「脈があるか」です。心停止なら胸骨圧迫と除細動を中心とする心停止アルゴリズムへ進みます。脈があるなら、徐脈、頻拍、アナフィラキシー、ショック、けいれんなど、循環や呼吸を悪化させている病態を評価します。
薬剤は胸骨圧迫、除細動、換気、同期下カルディオバージョンなどの代わりにはなりません。とくにVF(心室細動)と無脈性VT(無脈性心室頻拍)では、除細動と質の高いCPRが優先されます。
「徐脈だからアトロピン」「ショックだからノルアドレナリン」と薬剤名から考え始めると、心停止や出血性ショックなど、別の対応が必要な状況を見落とします。薬を取り出す前に、少なくとも「脈」「波形」「血圧・灌流」「疑う原因」をチームで共有します。
PEA・心静止
- 主な薬剤の位置づけ
- アドレナリンをできるだけ早く投与
- 薬剤より優先・並行する対応
- CPR、換気、可逆的原因の検索
VF・無脈性VT
- 主な薬剤の位置づけ
- アドレナリン。除細動抵抗性ならアミオダロンまたはリドカインを考慮
- 薬剤より優先・並行する対応
- 除細動、CPR
脈のある症候性徐脈
- 主な薬剤の位置づけ
- アトロピンを考慮
- 薬剤より優先・並行する対応
- 酸素化、原因検索、必要時ペーシングや循環作動薬
不安定な頻拍
- 主な薬剤の位置づけ
- 薬剤は波形と病態に応じて選択
- 薬剤より優先・並行する対応
- 同期下カルディオバージョンを優先して検討
アナフィラキシー
- 主な薬剤の位置づけ
- アドレナリンの大腿前外側への筋肉内投与が第一選択
- 薬剤より優先・並行する対応
- 気道・呼吸・循環の評価、応援要請、酸素、補液
敗血症性ショック
- 主な薬剤の位置づけ
- ノルアドレナリンが第一選択の昇圧薬
- 薬剤より優先・並行する対応
- 感染治療、輸液蘇生、継続的な循環評価
QT延長を伴う多形性VT/TdP
- 主な薬剤の位置づけ
- 硫酸マグネシウムを考慮
- 薬剤より優先・並行する対応
- 不安定・無脈なら電気的治療とCPR
高カリウム血症など特定原因
- 主な薬剤の位置づけ
- カルシウム、炭酸水素ナトリウムなどを原因別に検討
- 薬剤より優先・並行する対応
- 原因治療。心停止への一律投与はしない
| 状況 | 主な薬剤の位置づけ | 薬剤より優先・並行する対応 |
|---|---|---|
| PEA・心静止 | アドレナリンをできるだけ早く投与 | CPR、換気、可逆的原因の検索 |
| VF・無脈性VT | アドレナリン。除細動抵抗性ならアミオダロンまたはリドカインを考慮 | 除細動、CPR |
| 脈のある症候性徐脈 | アトロピンを考慮 | 酸素化、原因検索、必要時ペーシングや循環作動薬 |
| 不安定な頻拍 | 薬剤は波形と病態に応じて選択 | 同期下カルディオバージョンを優先して検討 |
| アナフィラキシー | アドレナリンの大腿前外側への筋肉内投与が第一選択 | 気道・呼吸・循環の評価、応援要請、酸素、補液 |
| 敗血症性ショック | ノルアドレナリンが第一選択の昇圧薬 | 感染治療、輸液蘇生、継続的な循環評価 |
| QT延長を伴う多形性VT/TdP | 硫酸マグネシウムを考慮 | 不安定・無脈なら電気的治療とCPR |
| 高カリウム血症など特定原因 | カルシウム、炭酸水素ナトリウムなどを原因別に検討 | 原因治療。心停止への一律投与はしない |
心停止では薬剤投与のために胸骨圧迫や除細動を遅らせない
この章の要点成人心停止では、質の高い胸骨圧迫を続け、波形を判定し、適応があれば速やかに除細動します。静脈路は第一選択ですが、速やかに確保できない場合は骨髄路が選択肢になります。
PEAと心静止は除細動の適応がないため、アドレナリンをできるだけ早く投与します。VF・無脈性VTでは、まず除細動を行い、初回の除細動に反応しない場合にアドレナリンを組み込みます。除細動抵抗性のVF・無脈性VTでは、アミオダロンまたはリドカインを考慮します。
公開全文を確認できるJRC 2020とAHA 2025では、成人心停止のアドレナリンは1mgを静脈内または骨髄内へ3~5分ごとに投与する構成です。ただし、国内添付文書との記載差があるため、実務ではJRC 2025を反映した施設プロトコルを確認します。JRC蘇生ガイドライン2020 ALS AHA 2025 Adult Advanced Life Support
アドレナリンとノルアドレナリンは名前が似ていても交代できない
この章の要点アドレナリンは成人心停止アルゴリズムで使われ、アナフィラキシーでは筋肉内投与が第一選択になります。ノルアドレナリンは、主に血管を収縮させて血圧を維持する持続静注薬です。敗血症性ショックでは第一選択の昇圧薬ですが、心停止時のアドレナリンの代わりにはなりません。
日本医療機能評価機構には、蘇生時に「ボスミン」という口頭指示を受け、ノルアドレナリンを準備・投与した事例が報告されています。ブランド名だけの指示や「ノルアド」「アドレナ」といった省略形は、緊迫した場面で誤認を招きます。
復唱するときは、聞こえた言葉だけを繰り返すのでは不十分です。「アドレナリン、1mg/1mL製剤、総量1mg、静脈内投与」のように、一般名、製剤濃度、指示量、液量、経路を組み合わせます。準備した人と投与する人が、実物のラベルを見ながら確認することも重要です。
代表的な場面
- アドレナリン
- 心停止、アナフィラキシー
- ノルアドレナリン
- 敗血症性ショックなどの急性低血圧
主な投与方法
- アドレナリン
- 心停止では静脈内・骨髄内、アナフィラキシーでは筋肉内
- ノルアドレナリン
- 原則として希釈し、持続静注で調節
投与後の主な評価
- アドレナリン
- 心電図、自己心拍再開、血圧、不整脈
- ノルアドレナリン
- 血圧、心拍・心電図、末梢灌流、尿量、投与部位
重要な誤解
- アドレナリン
- すべての病態で同じ経路・量ではない
- ノルアドレナリン
- 心停止用アドレナリンの代替ではない
取り違え対策
- アドレナリン
- 一般名、濃度、総量、経路をラベルで確認
- ノルアドレナリン
- 同左。持続投与なら希釈後濃度と投与速度も確認
| 確認項目 | アドレナリン | ノルアドレナリン |
|---|---|---|
| 代表的な場面 | 心停止、アナフィラキシー | 敗血症性ショックなどの急性低血圧 |
| 主な投与方法 | 心停止では静脈内・骨髄内、アナフィラキシーでは筋肉内 | 原則として希釈し、持続静注で調節 |
| 投与後の主な評価 | 心電図、自己心拍再開、血圧、不整脈 | 血圧、心拍・心電図、末梢灌流、尿量、投与部位 |
| 重要な誤解 | すべての病態で同じ経路・量ではない | 心停止用アドレナリンの代替ではない |
| 取り違え対策 | 一般名、濃度、総量、経路をラベルで確認 | 同左。持続投与なら希釈後濃度と投与速度も確認 |
同じアドレナリンでも心停止とアナフィラキシーでは経路と量が異なる
この章の要点アナフィラキシーでは、アドレナリンを大腿前外側へ筋肉内投与します。日本アレルギー学会のガイドラインでは、0.1%製剤、すなわち1mg/mLを0.01mg/kg、成人は最大0.5mgとし、成人の簡便な目安を0.3~0.5mgとしています。反応が不十分なら、状態を評価しながら5~15分間隔で反復を検討します。
静脈内投与は、不整脈や急激な血圧上昇を起こす危険があるため、通常のアナフィラキシーには推奨されません。心停止または心停止に近い状態で、十分な監視と蘇生対応ができる場合に限られます。抗ヒスタミン薬やステロイドは補助薬であり、アドレナリンの代わりにはなりません。アナフィラキシーガイドライン2022
もう一つ注意したいのが、ガイドラインと国内添付文書の用量記載の違いです。公開全文のJRC 2020とAHA 2025では、成人心停止に1mgを3~5分ごとに静脈内・骨髄内投与します。一方、国内のアドレナリン0.1%シリンジの添付文書には、蘇生などの緊急時、通常は1回0.25mgを超えない量を希釈し、ゆっくり静注する記載があります。
これは単純な計算間違いではなく、ガイドラインと承認添付文書という資料の性格の違いから生じる不一致です。看護師がその場で一方を選ぶのではなく、施設が採用する最新の蘇生プロトコル、医師の明確な指示、使用製品の添付文書を照合します。「1本」「1シリンジ」ではなく、mgとmLの両方で確認してください。PMDA アドレナリン注0.1%シリンジ添付文書
アミオダロンとリドカインは除細動抵抗性VF・無脈性VTで考える
この章の要点アミオダロンとリドカインは、どちらも「不整脈なら使う薬」ではありません。成人心停止では、除細動に反応しないVF・無脈性VTに対して考慮する薬です。AHA 2025では、いずれも「考慮してよい」に相当する位置づけで、除細動や胸骨圧迫より優先されません。
公開全文のJRC 2020では、アミオダロン300mgを静脈内投与し、使用できない場合にニフェカラント0.3mg/kgまたはリドカイン1~1.5mg/kgを考慮します。AHA 2025アルゴリズムでは、アミオダロンは初回300mg、追加150mg、リドカインは初回1~1.5mg/kg、追加0.5~0.75mg/kgです。
ただし、自己心拍がある心室頻拍と、無脈性VTでは調製法や投与速度が同じとは限りません。国内アミオダロン製剤は、心停止時の急速投与と、脈のある不整脈に対する投与で希釈量や速度が異なります。指示を受けたら、波形、脈の有無、総投与量、希釈液、投与速度を確認します。
リドカインの国内添付文書には上室性不整脈も適応として記載されますが、心停止アルゴリズムにおける位置づけはVF・無脈性VTです。「上室性頻拍だからリドカイン」と短絡せず、不安定な頻拍では同期下カルディオバージョンの適応を先に評価します。
アトロピンは脈のある症候性徐脈で検討する
この章の要点アトロピンは、徐脈により低血圧、意識変容、ショック徴候、虚血性胸部不快感、急性心不全などが生じているときに検討します。心拍数が遅いという数値だけで自動的に投与する薬ではありません。
反応が不十分なら、経皮ペーシングやアドレナリン・ドパミンの持続投与などを検討します。低酸素、薬剤、電解質異常、急性冠症候群など、原因の検索と治療も並行します。無脈であれば徐脈アルゴリズムではなく、心停止アルゴリズムへ移行します。
国内添付文書では、閉塞隅角緑内障、前立腺肥大による排尿障害、麻痺性イレウスなどが禁忌に挙げられています。しかし、緊急時に既往歴の確認だけで酸素化、心電図評価、応援要請、ペーシング準備を遅らせないよう、チームで役割を分担します。具体的な初回量は、JRC 2025を反映した施設プロトコルと採用製品の含量を確認してください。
マグネシウム、カルシウム、炭酸水素ナトリウムは原因を限定して使う
この章の要点AHA 2025では、成人心停止にカルシウムや炭酸水素ナトリウムを一律に投与することは推奨されていません。マグネシウムも、すべての心停止や多形性VTへ routine に使う薬ではありません。
硫酸マグネシウムは、QT延長を伴うTdP(トルサード・ド・ポワント)などで検討します。カルシウムは重症高カリウム血症、低カルシウム血症、一部の薬物中毒など、原因が限定された場面で考慮します。炭酸水素ナトリウムも、高カリウム血症や一部の中毒など、適応となる原因がある場合に検討します。
炭酸水素ナトリウムは二酸化炭素を生じるため、換気が不十分な状態では細胞内アシドーシスを悪化させる可能性があります。「血液ガスが酸性」「心停止が長い」という理由だけで、自動的に投与する薬ではありません。
カルシウムイオンを含む製剤と炭酸水素ナトリウムを混合すると沈殿を生じます。同一シリンジで混ぜず、同じルートを使う場合も、配合変化、投与順、ルート内残液への対処を添付文書と施設手順で確認します。
硫酸マグネシウム
- 検討する代表的な状況
- QT延長を伴うTdP
- routineに使わない理由・確認点
- 正常QTの多形性VTやすべての心停止に一律投与しない
カルシウム製剤
- 検討する代表的な状況
- 重症高カリウム血症、低カルシウム血症、一部の中毒
- routineに使わない理由・確認点
- routineの心停止投与に利益が示されていない。製剤ごとのカルシウム量を確認
炭酸水素ナトリウム
- 検討する代表的な状況
- 高カリウム血症、一部の中毒など
- routineに使わない理由・確認点
- routineの心停止投与は推奨されない。換気と原因治療が必要
カルシウム+炭酸水素ナトリウム
- 検討する代表的な状況
- 両方に適応がある場合のみ
- routineに使わない理由・確認点
- 直接混合で沈殿するため、同一シリンジで混ぜない
| 薬剤 | 検討する代表的な状況 | routineに使わない理由・確認点 |
|---|---|---|
| 硫酸マグネシウム | QT延長を伴うTdP | 正常QTの多形性VTやすべての心停止に一律投与しない |
| カルシウム製剤 | 重症高カリウム血症、低カルシウム血症、一部の中毒 | routineの心停止投与に利益が示されていない。製剤ごとのカルシウム量を確認 |
| 炭酸水素ナトリウム | 高カリウム血症、一部の中毒など | routineの心停止投与は推奨されない。換気と原因治療が必要 |
| カルシウム+炭酸水素ナトリウム | 両方に適応がある場合のみ | 直接混合で沈殿するため、同一シリンジで混ぜない |
けいれん薬や拮抗薬を使うときは気道と呼吸の準備を先に整える
この章の要点ミダゾラムやジアゼパムなどのベンゾジアゼピン系薬は、けいれんの停止や鎮静に使用されます。一方で、呼吸抑制、無呼吸、舌根沈下、血圧低下を起こす可能性があります。投与前から、酸素、吸引、バッグバルブマスク、気道確保器具を準備し、呼吸数、SpO₂、換気、意識、血圧を継続して評価します。
オピオイドによる呼吸抑制が疑われ、脈がある場合は、換気を行いながらナロキソンを検討します。ナロキソン投与のために換気や蘇生チームの要請を遅らせてはいけません。心停止では標準的なCPRを優先し、ナロキソンが胸骨圧迫の代わりになることはありません。
フルマゼニルは、純粋なベンゾジアゼピンによる呼吸抑制が強く疑われ、けいれんや不整脈の危険が低い、選択された患者でのみ検討します。慢性的なベンゾジアゼピン使用、混合中毒、けいれんリスクがある患者では有害となり得ます。心停止における役割はありません。AHA 2025 Special Circumstances of Resuscitation
投与時は一般名・濃度・mg・mL・経路を一続きで確認する
この章の要点救急時は短い口頭指示が増えます。しかし、「ボスミン1本」「アドレナリン1A」だけでは、薬剤、製剤規格、投与量、経路を確定できません。復唱では、一般名、製剤濃度、指示量、液量、経路、投与時点を一続きで伝えます。
たとえば、「アドレナリン、1mg/mL製剤、総量1mg、1mL、静脈内、今投与します」と読み上げます。準備者と投与者が異なる場合は、準備者が実物のラベルを提示し、投与者も表示を確認します。チームに余裕があれば相互確認を行いますが、胸骨圧迫や除細動などの救命処置を遅らせない役割分担が必要です。
投与後は「投与しました」で終わらせず、薬剤名、総量、経路、投与時刻を声に出し、記録者へ伝えます。追加投与の時刻を管理し、同じ薬の重複投与を防ぎます。
指示を受けたとき
- 確認する内容
- 患者・状況、脈と波形、一般名、指示量、単位、経路、投与時点、反復条件
薬を取り出すとき
- 確認する内容
- 一般名と販売名、濃度・含量、有効期限、容器の破損・液の異常
計算・調製するとき
- 確認する内容
- 指示量mg、製剤濃度mg/mL、必要量mL、希釈液、調製後濃度、配合変化
投与直前
- 確認する内容
- 患者、実物ラベル、総量、液量、経路、使用するルート、投与速度
投与直後
- 確認する内容
- 薬剤名、量、経路、時刻を宣言し記録。次回投与時刻を共有
その後
- 確認する内容
- 心電図、血圧、呼吸、意識、灌流、投与部位、有害事象、治療反応
| 時点 | 確認する内容 |
|---|---|
| 指示を受けたとき | 患者・状況、脈と波形、一般名、指示量、単位、経路、投与時点、反復条件 |
| 薬を取り出すとき | 一般名と販売名、濃度・含量、有効期限、容器の破損・液の異常 |
| 計算・調製するとき | 指示量mg、製剤濃度mg/mL、必要量mL、希釈液、調製後濃度、配合変化 |
| 投与直前 | 患者、実物ラベル、総量、液量、経路、使用するルート、投与速度 |
| 投与直後 | 薬剤名、量、経路、時刻を宣言し記録。次回投与時刻を共有 |
| その後 | 心電図、血圧、呼吸、意識、灌流、投与部位、有害事象、治療反応 |
投与後の観察は「効いたか」と「害が出ていないか」を同時にみる
この章の要点救急薬は、投与した事実よりも、その後の変化が重要です。心停止では自己心拍再開、心電図波形、呼気終末二酸化炭素などを評価します。脈がある患者では、血圧、心拍数、意識、呼吸、皮膚色、冷感、尿量などから循環を追います。
アドレナリンやノルアドレナリンでは、不整脈、過度な血圧上昇、末梢虚血に注意します。ノルアドレナリンの血管外漏出は局所虚血や壊死につながるため、投与部位も観察します。
アミオダロンでは低血圧や徐脈、リドカインでは意識変化、構音障害、振戦、けいれんなどの中枢神経症状にも注意します。ベンゾジアゼピン系薬では、SpO₂だけでなく呼吸数、胸郭運動、換気状態をみます。酸素投与中は、換気が低下していてもSpO₂低下が遅れることがあります。
アドレナリン
- 主な効果判定
- 自己心拍再開、血圧、アナフィラキシー症状
- 主な有害反応・投与部位の観察
- 頻拍、不整脈、過度な血圧上昇、肺水腫
ノルアドレナリン
- 主な効果判定
- 血圧、平均動脈圧、末梢灌流、尿量
- 主な有害反応・投与部位の観察
- 不整脈、過度な血管収縮、血管外漏出
アミオダロン・リドカイン
- 主な効果判定
- 心電図波形、再発の有無
- 主な有害反応・投与部位の観察
- 低血圧、徐脈、神経症状
アトロピン
- 主な効果判定
- 心拍数、血圧、意識・灌流
- 主な有害反応・投与部位の観察
- 頻拍、不整脈、虚血症状
マグネシウム・カルシウム
- 主な効果判定
- 心電図、原因となった電解質異常
- 主な有害反応・投与部位の観察
- 血圧、呼吸、反射、徐脈、投与部位
炭酸水素ナトリウム
- 主な効果判定
- 原因病態、血液ガス、カリウム
- 主な有害反応・投与部位の観察
- 換気、ナトリウム、アルカローシス、血管外漏出
ベンゾジアゼピン系薬
- 主な効果判定
- けいれん停止、鎮静状態
- 主な有害反応・投与部位の観察
- 呼吸数、換気、SpO₂、気道、血圧、意識
ナロキソン・フルマゼニル
- 主な効果判定
- 呼吸と意識の改善
- 主な有害反応・投与部位の観察
- 再鎮静、離脱症状、けいれん、不整脈
| 薬剤群 | 主な効果判定 | 主な有害反応・投与部位の観察 |
|---|---|---|
| アドレナリン | 自己心拍再開、血圧、アナフィラキシー症状 | 頻拍、不整脈、過度な血圧上昇、肺水腫 |
| ノルアドレナリン | 血圧、平均動脈圧、末梢灌流、尿量 | 不整脈、過度な血管収縮、血管外漏出 |
| アミオダロン・リドカイン | 心電図波形、再発の有無 | 低血圧、徐脈、神経症状 |
| アトロピン | 心拍数、血圧、意識・灌流 | 頻拍、不整脈、虚血症状 |
| マグネシウム・カルシウム | 心電図、原因となった電解質異常 | 血圧、呼吸、反射、徐脈、投与部位 |
| 炭酸水素ナトリウム | 原因病態、血液ガス、カリウム | 換気、ナトリウム、アルカローシス、血管外漏出 |
| ベンゾジアゼピン系薬 | けいれん停止、鎮静状態 | 呼吸数、換気、SpO₂、気道、血圧、意識 |
| ナロキソン・フルマゼニル | 呼吸と意識の改善 | 再鎮静、離脱症状、けいれん、不整脈 |
救急カートの中身と配置は勤務する施設の実物で覚える
この章の要点救急カートの薬剤数、配置、採用製品、濃度は全国共通ではありません。SNSの一覧や学生時代の暗記だけで判断せず、勤務先の実物と最新リストを確認します。
点検では、施設で定めた頻度と方法に従い、封印、定数、有効期限、破損、保管条件、機器の作動などを確認します。薬剤の場所だけでなく、同じ名称で規格が異なる製品、名称や外観が似た製品、希釈が必要な製品を把握しておきます。
日本医療機能評価機構の事例分析では、実際のカートを用いた研修、薬剤名の読み上げと相互確認、役割分担、記録者の配置、第一選択薬とそれ以外の分離などが改善策として挙げられています。ただし、これは事故報告から得られた実務上の安全策であり、比較試験による効果の確定や全国統一レイアウトを示すものではありません。医療事故情報収集等事業 第48回報告書
「1本」「徐脈の薬」「アシドーシスの薬」という覚え方を卒業する
この章の要点救急カート薬剤で起こりやすい誤解は、薬剤名と状況を一対一で結び付けることです。
「アドレナリンは心停止の薬」だけでは、アナフィラキシーにおける筋肉内投与を説明できません。「ノルアドレナリンは強いアドレナリン」ではなく、敗血症性ショックなどで持続投与する別の薬です。
「アトロピンは徐脈の薬」だけでは、無症候性徐脈と、循環不全を伴う症候性徐脈を区別できません。「メイロンはアシドーシスの薬」だけでは、換気不全や原因治療の重要性、心停止への一律投与が推奨されないことを見落とします。
「1アンプル」「1シリンジ」も投与量ではありません。同じ薬でも製品ごとに濃度や容量が異なる可能性があります。薬剤名の次に、必ず濃度、mg、mL、経路を言える状態を目指しましょう。
救急カート薬剤は5つの順番で確認する
この章の要点救急カート薬剤を安全に使い分けるための順番は、「脈」「波形・病態」「薬剤」「経路と量」「投与後評価」です。
まず脈の有無を判断し、心停止なら除細動可能な波形かを確認します。次に、薬剤の適応となる病態を共有します。準備するときは一般名、製剤濃度、指示量mg、液量mL、経路をラベルで確認します。投与後は時刻を記録し、治療反応と有害反応を評価します。
救急薬を正しく使う力は、薬剤一覧を暗記する力だけではありません。優先する処置を止めず、曖昧な指示を具体化し、チームで同じ情報を共有する力まで含まれます。
学習メモ・復習の予定気づきを自分の言葉で残す+
わかったこと、まだ曖昧なこと、次に調べたいことを残せます。
学びを、もう一度
復習日になると、ホームと復習リストで確認できます。
次に見返す日を決める
この記事の編集方針
主要な定義・数値・推奨は、公開時点で確認できるガイドライン、公的資料、学会資料、査読論文を優先して確認しています。未確認の編集メモは公開せず、根拠の範囲や限界を区別して、読者が原資料を確認できるよう参考資料を掲載します。
詳しい編集方針を見る →参考にした資料
- JRC蘇生ガイドライン2025一般社団法人 日本蘇生協議会・20262026年7月発行の日本の最新蘇生ガイドラインであること、ILCOR CoSTR 2025とGRADEに基づくことを確認した。対象は成人・小児の蘇生を含む。詳細本文は公開検索で確認できなかったため、個別用量の根拠には使用していない。
- JRC蘇生ガイドライン2020 第2章 成人の二次救命処置一般社団法人 日本蘇生協議会・2021成人心停止を対象とする診療ガイドライン。系統的レビューとILCOR CoSTRを基に、アドレナリン1mgを3~5分ごとに投与すること、非ショック適応リズムでは早期投与すること、除細動抵抗性VF・無脈性VTでアミオダロン、ニフェカラントまたはリドカインを考慮することを確認した。最新版ではないため、施設運用はJRC 2025の確認が必要。
- 2025 American Heart Association Guidelines for Cardiopulmonary Resuscitation and Emergency Cardiovascular Care: Part 9, Adult Advanced Life SupportAmerican Heart Association・2025成人心停止・周心停止を対象とするエビデンスベースのガイドライン。アドレナリンはClass 1、1mgを3~5分ごとはClass 2a。静脈路を第一選択とし、確保困難時の骨髄路はClass 2a。除細動抵抗性VF・無脈性VTのアミオダロンまたはリドカインはClass 2b。カルシウム、炭酸水素ナトリウム、マグネシウムのroutine投与はClass 3:No Benefit。QT延長を伴う再発性多形性VTへのマグネシウムはClass 2b。
残り11件の参考資料を見る原資料・発行元・発行年を確認できます+
- アナフィラキシーガイドライン2022一般社団法人 日本アレルギー学会・2022(2023年修正版)成人・小児のアナフィラキシーを対象とする診療ガイドライン。アドレナリン筋肉内投与を第一選択とし、0.01mg/kg、成人最大0.5mg、成人の簡便な目安0.3~0.5mg、反復間隔5~15分であることを確認した。通常のアナフィラキシーで静脈内投与を推奨しないことも確認した。すべての記述に一律のGRADE表記が付された資料ではない。
- 日本版敗血症診療ガイドライン2024日本集中治療医学会・日本救急医学会・2024成人敗血症・敗血症性ショックを対象とするGRADE方式の診療ガイドライン。輸液蘇生と並行した早期昇圧薬をGRADE 2C、敗血症性ショックの第一選択としてノルアドレナリンをGRADE 2Dで提案している。ノルアドレナリンとドパミンの比較にはRCTの系統的レビューが用いられている。
- アドレナリン注0.1%シリンジ「テルモ」電子添文テルモ株式会社/独立行政法人 医薬品医療機器総合機構・20261mL中にアドレナリン1mgを含むこと、蘇生時の国内承認用法、過量による肺水腫・不整脈、炭酸水素ナトリウムとの混合回避を確認した。規制上の承認情報であり、推奨強度を評価する診療ガイドラインではない。
- ノルアドレナリン注1mg 電子添文アルフレッサ ファーマ株式会社/独立行政法人 医薬品医療機器総合機構・2026急性低血圧・ショック時の補助薬であり、輸液や輸血の代用ではないこと、希釈して持続投与し血圧を継続観察すること、過度な昇圧、不整脈、血管外漏出による局所虚血・壊死の危険を確認した。承認添付文書のため推奨強度はない。
- アンカロン注150 電子添文サノフィ株式会社/独立行政法人 医薬品医療機器総合機構・2025除細動抵抗性VF・無脈性VTを含む緊急性の高い心室性不整脈を対象とすること、心停止時の初回300mg・追加150mg、希釈法、低血圧や徐脈の観察を確認した。承認添付文書であり、推奨強度はない。
- リドカイン静注用2%シリンジ 電子添文ニプロ株式会社/独立行政法人 医薬品医療機器総合機構・2023