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読む前に押さえたいこと
「経管投与の指示だから、錠剤は全部つぶせばよい?」「簡易懸濁法なら粉砕禁止薬も投与できる?」と迷う場面は少なくありません。しかし、粉砕やカプセル開封は、薬の放出速度や吸収、安定性を変え、過量投与や効果不足、チューブ閉塞、医療者の曝露につながることがあります。この記事では、粉砕禁止薬の考え方、簡易懸濁法の限界、経管投与前の確認事項、投与とフラッシュの基本を、看護師・看護学生向けに整理します。
結論:経管投与の指示があっても、薬を自己判断で粉砕しない
この章の要点経管投与は「薬をつぶしてチューブへ入れること」と同義ではありません。投与前に、①その製品を加工してよいか、②そのチューブと先端位置から投与できるか、③栄養剤との間隔や観察が必要か、の3点を確認します。
処方や指示に「粉砕」と書かれていても、製剤情報と矛盾していれば立ち止まります。日本医療機能評価機構には、ニフェジピンCR錠やオキシコドン徐放錠を粉砕して経管投与し、急激な血圧低下、意識・呼吸状態の悪化を来した事例が報告されています。指示どおりに実施するだけでは防げないため、製剤名まで照合することが重要です(出典3)。
迷った場合は投与を保留し、薬剤師と処方医へ確認します。看護師が独自に粉砕、脱カプセル、剤形変更、投与間隔の変更を行うものではありません。
粉砕禁止薬には、薬の効き方を守る製剤と、曝露・閉塞を避ける製剤がある
この章の要点粉砕禁止となる理由は一つではありません。徐放錠のように薬をゆっくり放出する製剤もあれば、胃酸から薬を守る腸溶錠、口腔粘膜から吸収させる舌下錠、粉末への接触を避けるべきハザーダスドラッグもあります。
名称の末尾は手掛かりになりますが、略号だけで判断するのは危険です。同じ成分でも、普通錠、OD錠、徐放錠、カプセルで可否が異なります。反対に、フィルムコーティング錠だから必ず粉砕禁止とも限りません。コーティングの目的と製品情報を確認します。
OD錠は「口の中で崩れやすい錠剤」であり、「経管投与に適した錠剤」という意味ではありません。ランソプラゾールOD錠のように、内部に腸溶性粒子を含む製品もあります。錠剤の外側が崩れても、残った粒子をつぶしてはいけない場合があります(出典7)。
徐放性・放出調節製剤
- 粉砕・加工で起こり得ること
- 放出制御が壊れ、短時間に吸収される「用量放出」が起こる。作用増強後に効果が切れることもある
- 判断時の要点
- CR、SR、ER、TR、LAなどは手掛かりにすぎない。製品ごとの電子添文を確認する
腸溶性・遅延放出製剤
- 粉砕・加工で起こり得ること
- 胃酸で分解される、胃への刺激が増える、目的の部位まで届かない
- 判断時の要点
- 腸溶性顆粒を含むOD錠やカプセルもある。顆粒をつぶさない
舌下錠・バッカル錠
- 粉砕・加工で起こり得ること
- 口腔粘膜から吸収させる設計が失われ、効果発現が変わる
- 判断時の要点
- 消化管への投与へ置き換えない。別製剤・別経路を相談する
ハザーダスドラッグ
- 粉砕・加工で起こり得ること
- 粉じんや飛散液による吸入・皮膚接触が増える
- 判断時の要点
- 抗がん薬、催奇形性・生殖毒性等が問題となる薬は施設の曝露対策に従う
ソフトカプセル・油性内容物
- 粉砕・加工で起こり得ること
- 内容物を正確に回収しにくく、チューブへ付着・閉塞する
- 判断時の要点
- カプセルという剤形だけで開封可否を判断しない
難溶性薬・吸着性薬・樹脂製剤
- 粉砕・加工で起こり得ること
- チューブへの付着、沈殿、閉塞、投与量不足が起こる
- 判断時の要点
- 液剤でも粘度、浸透圧、ソルビトール、希釈条件を確認する
薬物動態が変わりやすい薬
- 粉砕・加工で起こり得ること
- 粉砕・脱カプセル・投与部位の変更で吸収量が大きく変わる
- 判断時の要点
- 普通錠や硬カプセルでも安全とは限らない。薬剤別情報を確認する
| 分類 | 粉砕・加工で起こり得ること | 判断時の要点 |
|---|---|---|
| 徐放性・放出調節製剤 | 放出制御が壊れ、短時間に吸収される「用量放出」が起こる。作用増強後に効果が切れることもある | CR、SR、ER、TR、LAなどは手掛かりにすぎない。製品ごとの電子添文を確認する |
| 腸溶性・遅延放出製剤 | 胃酸で分解される、胃への刺激が増える、目的の部位まで届かない | 腸溶性顆粒を含むOD錠やカプセルもある。顆粒をつぶさない |
| 舌下錠・バッカル錠 | 口腔粘膜から吸収させる設計が失われ、効果発現が変わる | 消化管への投与へ置き換えない。別製剤・別経路を相談する |
| ハザーダスドラッグ | 粉じんや飛散液による吸入・皮膚接触が増える | 抗がん薬、催奇形性・生殖毒性等が問題となる薬は施設の曝露対策に従う |
| ソフトカプセル・油性内容物 | 内容物を正確に回収しにくく、チューブへ付着・閉塞する | カプセルという剤形だけで開封可否を判断しない |
| 難溶性薬・吸着性薬・樹脂製剤 | チューブへの付着、沈殿、閉塞、投与量不足が起こる | 液剤でも粘度、浸透圧、ソルビトール、希釈条件を確認する |
| 薬物動態が変わりやすい薬 | 粉砕・脱カプセル・投与部位の変更で吸収量が大きく変わる | 普通錠や硬カプセルでも安全とは限らない。薬剤別情報を確認する |
「粉砕できるか」ではなく、製品・チューブ・投与部位・栄養剤を組み合わせて判断する
この章の要点経管投与の可否は、薬の名前だけでは決まりません。同じ製品でも、太い胃瘻チューブでは通過しても、細い経鼻チューブや長い腸瘻チューブでは閉塞する可能性があります。胃内投与を前提とした薬を空腸へ投与すると、溶解や吸収が変わることもあります。
2026年のシステマティックレビューでは、経管投与した薬剤の安定性・バイオアベイラビリティは、薬剤、調製法、チューブ材質などで変わりました。対象24研究のうち、約3割で吸収またはバイオアベイラビリティの増減が報告されています。ただし、研究数は少なく、評価された薬剤も限られ、19件の臨床研究には少なくとも一つの高いバイアスリスクがありました(出典10)。
「一覧で○だから大丈夫」ではなく、患者に使用中の販売名・規格まで特定し、現在の電子添文、院内資料、薬剤師の評価を合わせて判断します。
製品
- 確認内容
- 販売名、規格、剤形、徐放性・腸溶性・特殊コーティングの有無
処方
- 確認内容
- 投与量、時刻、経路、粉砕・簡易懸濁の指示、休薬や再開の経緯
チューブ
- 確認内容
- 種類、内径・Fr、長さ、材質、薬剤投与に使用する接続口
先端位置
- 確認内容
- 胃、十二指腸、空腸のどこへ投与されるか
栄養
- 確認内容
- 持続・間欠投与、栄養剤の成分、薬との分離が必要か
患者
- 確認内容
- 水分制限、年齢、腎・肝機能、消化管機能、薬効を評価できる観察項目
実施方法
- 確認内容
- 粉砕、簡易懸濁、液剤、別製剤・別経路のうち、承認された方法はどれか
| 確認する軸 | 確認内容 |
|---|---|
| 製品 | 販売名、規格、剤形、徐放性・腸溶性・特殊コーティングの有無 |
| 処方 | 投与量、時刻、経路、粉砕・簡易懸濁の指示、休薬や再開の経緯 |
| チューブ | 種類、内径・Fr、長さ、材質、薬剤投与に使用する接続口 |
| 先端位置 | 胃、十二指腸、空腸のどこへ投与されるか |
| 栄養 | 持続・間欠投与、栄養剤の成分、薬との分離が必要か |
| 患者 | 水分制限、年齢、腎・肝機能、消化管機能、薬効を評価できる観察項目 |
| 実施方法 | 粉砕、簡易懸濁、液剤、別製剤・別経路のうち、承認された方法はどれか |
簡易懸濁法は「溶かす方法」ではなく、崩壊・懸濁させて投与する方法
この章の要点簡易懸濁法は、錠剤を粉砕したりカプセルを開けたりせず、投与時にそのまま約55℃の温湯へ入れ、最長10分間で崩壊・懸濁させる方法です。国内では、温湯約20mLを用いる手順が広く紹介されています(出典1、2)。
ここでいう「懸濁」は、細かな粒子が液中に分散した状態です。完全に透明になることを目指す方法ではありません。腸溶性顆粒などが残る製品では、粒が見えるからと追加でつぶすと、製剤設計を壊す可能性があります。
一方、簡易懸濁法は粉砕禁止薬を投与可能に変える万能な方法ではありません。温湯で放出制御が失われる製品、崩壊しない製品、粒子がチューブを通らない製品、胃以外からの投与で吸収が変わる製品もあります。簡易懸濁の可否も製品ごとに確認します。
簡易懸濁を始める前に、薬剤とチューブの両方を確認する
この章の要点実施前には、通常の与薬確認に加え、経管投与固有の情報を確認します。患者、薬剤、用量、時刻、経路、目的を照合し、販売名・剤形まで確認します。「前回も同じ患者に投与した」「一包化されている」という理由だけでは省略できません。
チューブの位置と使用可能な状態を施設の承認手順で確認します。特に経鼻チューブでは、抜けかけや位置変化を見逃さないことが重要です。フラッシュ時に抵抗、漏れ、患者の苦痛がある場合は、薬剤を押し込まず原因を確認します。
さらに、持続栄養中か、水分制限があるか、薬剤投与に伴う栄養中断が必要かを確認します。調製に使う水とフラッシュ水は、1日の水分出納へ含めます。
簡易懸濁・経管投与は、1剤ずつ調製し、1剤ごとにフラッシュする
この章の要点薬剤は原則として1剤ずつ扱います。複数薬を一つの容器で混ぜると、薬同士の配合変化、沈殿、閉塞が起きたときに原因を特定しにくくなります。ESPENは、薬剤を個別に投与し、各薬剤の前・間・後に水でフラッシュすることを、Grade 0、強いコンセンサス100%で示しています(出典5)。
簡易懸濁に使用できると確認した製品は、承認された器具へ入れ、指定量の約55℃の温湯を加えます。最長10分間で崩壊させ、投与直前に穏やかに撹拌・転倒混和して均一にします。製品によっては、亀裂を入れる、カプセルを開ける、常温水を使うなど別の条件が指定されるため、基本手順を機械的に当てはめません。
懸濁後は長時間保存せず、調製した薬剤と患者を再照合して速やかに投与します。容器やシリンジに残った薬剤は、承認された量の水ですすぎ、全量を投与します。
1
- 基本動作
- 処方、患者、製品、経路、チューブ先端位置、簡易懸濁可否を確認する
- 避ける行為
- 「経管投与だから」という理由だけで粉砕する
2
- 基本動作
- 必要時に栄養投与を止め、規定量の水で事前フラッシュする
- 避ける行為
- 薬剤を栄養剤バッグやボトルへ直接入れる
3
- 基本動作
- 確認済みの方法で1剤を調製し、均一に懸濁する
- 避ける行為
- 複数薬を一つの容器でまとめて懸濁する
4
- 基本動作
- 薬剤投与用の経腸シリンジで、過度な圧をかけず投与する
- 避ける行為
- 静脈用接続器具を流用する、抵抗があるのに強く押す
5
- 基本動作
- 規定量の水でフラッシュする
- 避ける行為
- 残った顆粒を追加で粉砕する
6
- 基本動作
- 次の薬剤も別に調製し、投与とフラッシュを繰り返す
- 避ける行為
- フラッシュせず連続して薬剤を流す
7
- 基本動作
- 最終フラッシュ後、必要な間隔を確認して栄養を再開する
- 避ける行為
- 根拠なく長時間、栄養を中断する
8
- 基本動作
- 投与量、フラッシュ量、中断時間、異常を記録する
- 避ける行為
- 閉塞や不完全投与を記録せず、追加投与する
| 順序 | 基本動作 | 避ける行為 |
|---|---|---|
| 1 | 処方、患者、製品、経路、チューブ先端位置、簡易懸濁可否を確認する | 「経管投与だから」という理由だけで粉砕する |
| 2 | 必要時に栄養投与を止め、規定量の水で事前フラッシュする | 薬剤を栄養剤バッグやボトルへ直接入れる |
| 3 | 確認済みの方法で1剤を調製し、均一に懸濁する | 複数薬を一つの容器でまとめて懸濁する |
| 4 | 薬剤投与用の経腸シリンジで、過度な圧をかけず投与する | 静脈用接続器具を流用する、抵抗があるのに強く押す |
| 5 | 規定量の水でフラッシュする | 残った顆粒を追加で粉砕する |
| 6 | 次の薬剤も別に調製し、投与とフラッシュを繰り返す | フラッシュせず連続して薬剤を流す |
| 7 | 最終フラッシュ後、必要な間隔を確認して栄養を再開する | 根拠なく長時間、栄養を中断する |
| 8 | 投与量、フラッシュ量、中断時間、異常を記録する | 閉塞や不完全投与を記録せず、追加投与する |
調製用の約20mLとフラッシュ量は別に考える
この章の要点簡易懸濁法で示される温湯約20mLは、薬剤を崩壊・懸濁させるための量です。チューブを洗い流すためのフラッシュ量とは別です。
ASPENの安全実践では、成人の薬剤投与前に少なくとも15mL、各薬剤投与後にも少なくとも15mLをフラッシュし、次の薬剤で繰り返す方法が示されています。ESPENの在宅経腸栄養ガイドラインは、薬剤の前・間・後に30mLを用いるとしています(出典4、5)。
この差は、対象集団、チューブ、実務環境、推奨作成法の違いによるものです。「正しい量は常に15mL」「必ず30mL」と一律には決められません。成人か小児か、チューブ径、水分制限、必要水分量を考慮し、処方・院内手順・薬剤師や栄養サポートチームの指示に従います。
国内の簡易懸濁法資料
- 対象・位置づけ
- 簡易懸濁液の調製
- 薬剤投与時の水量
- 約55℃の温湯約20mLが基本例。フラッシュ量ではない
ASPEN Safe Practices 2017
- 対象・位置づけ
- 成人・小児を含む経腸栄養の安全実践
- 薬剤投与時の水量
- 投与前、各薬剤後、最終時に少なくとも15mL。患者の水分状態を考慮
ESPEN Practical Guideline 2022
- 対象・位置づけ
- 成人の在宅経腸栄養
- 薬剤投与時の水量
- 薬剤を個別投与し、前・間・後に30mL。Grade 0、強いコンセンサス100%
小児・水分制限患者
- 対象・位置づけ
- 個別調整が必要
- 薬剤投与時の水量
- チューブを確実に洗浄できる最小量を、処方・施設手順で決める
| 資料 | 対象・位置づけ | 薬剤投与時の水量 |
|---|---|---|
| 国内の簡易懸濁法資料 | 簡易懸濁液の調製 | 約55℃の温湯約20mLが基本例。フラッシュ量ではない |
| ASPEN Safe Practices 2017 | 成人・小児を含む経腸栄養の安全実践 | 投与前、各薬剤後、最終時に少なくとも15mL。患者の水分状態を考慮 |
| ESPEN Practical Guideline 2022 | 成人の在宅経腸栄養 | 薬剤を個別投与し、前・間・後に30mL。Grade 0、強いコンセンサス100% |
| 小児・水分制限患者 | 個別調整が必要 | チューブを確実に洗浄できる最小量を、処方・施設手順で決める |
胃管と腸瘻では、同じ薬でも吸収と閉塞リスクが変わる
この章の要点チューブの先端が胃にあるか、十二指腸・空腸にあるかは重要です。薬には、胃酸で溶解した後に小腸で吸収されるものや、特定の消化管部位で吸収されやすいものがあります。胃を通らない投与では、効果が弱くなったり、逆に吸収が速くなったりする可能性があります。
「腸溶錠だから腸瘻なら投与できる」という判断はできません。腸溶コーティングを保てても、顆粒がチューブを通過するか、先端が吸収部位より遠位ではないか、投与液のpHや量が適切かという別の問題が残ります。
液剤も常に最良とは限りません。粘度が高い液剤は閉塞しやすく、高浸透圧製剤やソルビトールを含む製剤は、腹痛や下痢に関係することがあります。液剤への変更時も、希釈の要否と経管投与データを薬剤師に確認します。
経腸栄養を止める時間は、薬剤ごとに決める
この章の要点薬剤を栄養剤へ直接混ぜることは避けます。薬と栄養剤の相互作用だけでなく、栄養剤の蛋白質が凝集してチューブ閉塞を起こす可能性があるためです。
一方、すべての薬で栄養を1~2時間止める必要はありません。ASPENは、薬剤投与時に栄養を止めてフラッシュした後、速やかに再開し、薬物動態上の分離が必要な場合だけ30分以上中断するよう示しています(出典4)。
フェニトイン、レボドパ、レボチロキシン、ワルファリン、一部の抗菌薬などは、栄養成分、蛋白質、ミネラル、チューブへの吸着の影響が問題になることがあります。しかし、必要な間隔は薬剤、製品、栄養剤、投与部位によって異なります。栄養中断時間、投与時刻、血中濃度や臨床症状の観察計画を、薬剤師・管理栄養士・処方医と個別に設計します。
長時間の中断を多数回繰り返すと、必要な栄養量を投与できなくなります。薬の安全性だけでなく、1日全体の栄養投与時間も確認します。
懸濁しない、通らない、閉塞したときは、追加粉砕や強い注入をしない
この章の要点10分待っても崩壊しない場合は、さらに砕いて解決しようとせず、製品の可否と手順を再確認します。崩壊しないこと自体が、簡易懸濁不適または特別な処理が必要という情報になります。
注入時に抵抗がある場合は中止します。強く押すと、チューブ破損、接続部の外れ、急激な注入につながります。閉塞解除は施設手順に従い、まず温水を用いる方法が基本です。2026年のシステマティックレビューも、根拠の確実性は低いものの、温水を第一選択とし、解除できない場合に専門的な機械的方法やアルカリ化した非腸溶性膵酵素液を検討する段階的対応を支持しています(出典11)。
コーラ、ジュース、酢などを独自に使用しません。閉塞原因によっては、酸で栄養剤の蛋白質が凝集する可能性があります。
薬剤がどこまで入ったか不明な場合も、全量を追加投与してはいけません。二重投与を避けるため、薬剤名、推定投与量、閉塞位置、患者状態を報告し、対応指示を受けます。
10分後も錠剤が崩れない
- まず行うこと
- 製品と簡易懸濁条件を再確認し、薬剤師へ相談
- 避けること
- 独自に粉砕、加熱、長時間放置する
顆粒が残る
- まず行うこと
- 腸溶性・放出調節粒子か確認する
- 避けること
- 見た目だけで「溶け残り」と判断してつぶす
注入時に抵抗がある
- まず行うこと
- 注入を止め、接続部、屈曲、クランプ、チューブ状態を確認
- 避けること
- 強い力で押し込む
閉塞した
- まず行うこと
- 施設手順に基づき温水から対応し、解除不能なら専門チームへ相談
- 避けること
- コーラ、ジュース、酢、針金などを独自に使う
投与量が不明
- まず行うこと
- 投与状況と患者状態を報告し、再投与の指示を確認
- 避けること
- 推測で残量や全量を再投与する
薬効が不安定
- まず行うこと
- 投与時刻、栄養中断、チューブ先端位置、臨床症状を再評価
- 避けること
- 経管投与とは無関係と決めつける
| 状況 | まず行うこと | 避けること |
|---|---|---|
| 10分後も錠剤が崩れない | 製品と簡易懸濁条件を再確認し、薬剤師へ相談 | 独自に粉砕、加熱、長時間放置する |
| 顆粒が残る | 腸溶性・放出調節粒子か確認する | 見た目だけで「溶け残り」と判断してつぶす |
| 注入時に抵抗がある | 注入を止め、接続部、屈曲、クランプ、チューブ状態を確認 | 強い力で押し込む |
| 閉塞した | 施設手順に基づき温水から対応し、解除不能なら専門チームへ相談 | コーラ、ジュース、酢、針金などを独自に使う |
| 投与量が不明 | 投与状況と患者状態を報告し、再投与の指示を確認 | 推測で残量や全量を再投与する |
| 薬効が不安定 | 投与時刻、栄養中断、チューブ先端位置、臨床症状を再評価 | 経管投与とは無関係と決めつける |
抗がん薬などのハザーダスドラッグは、簡易懸濁でも曝露をゼロにできない
この章の要点抗がん薬などのハザーダスドラッグでは、粉砕やカプセル開封によって粉じんが生じると、調製者や介助者が吸入・皮膚接触する可能性があります。国内の職業性曝露対策ガイドラインは、調製から投与、廃棄、環境汚染までを含む対策を対象としています(出典8)。
簡易懸濁法は、開放状態での粉砕を避けられる点では曝露低減に役立つ可能性があります。ただし、2022年の模擬薬を用いた比較研究では、検討されたすべての簡易懸濁法で相当の飛散リスクが残り、器具や経験による違いも認められました。患者を対象とした臨床試験ではなく、特定施設の薬剤師による調製試験である点にも注意が必要です(出典9)。
ハザーダスドラッグは、閉鎖性の高い器具、PPE、調製場所、廃棄方法、こぼれ対応を含め、施設の曝露対策に従います。「粉砕しなければ素手で扱える」「簡易懸濁なら飛散しない」とは判断しません。
迷ったときは、投与を止めて「製品名・チューブ・先端位置・栄養」をそろえて相談する
この章の要点薬剤師へ相談するときは、「この薬は粉砕できますか」だけでなく、販売名、規格、剤形、投与量、チューブの種類と径、先端位置、栄養投与方法、水分制限を伝えます。情報がそろうほど、安全な代替案を検討しやすくなります。
代替案には、粉砕可能な普通錠、散剤、適切な液剤、経管投与データのある別製品、貼付・注射などの別経路、投与時刻や処方回数の調整があります。薬効が同じでも用量換算が必要な場合があるため、看護師だけで置き換えません。
投与後は、薬効と有害事象に加え、チューブの流れ、残薬、栄養再開、入出量を確認します。特に徐放性製剤の誤粉砕が疑われるときは、急激な血圧低下、過鎮静、呼吸抑制、頻脈、不整脈など、薬剤に応じた症状を速やかに報告します。
経管投与を安全にする要点は、薬剤名を暗記することではありません。「製剤の働きを壊さない」「1剤ずつ投与する」「十分にフラッシュする」「不明なまま進めない」という判断手順を、チームで共有することです。
学習メモ・復習の予定気づきを自分の言葉で残す+
わかったこと、まだ曖昧なこと、次に調べたいことを残せます。
学びを、もう一度
復習日になると、ホームと復習リストで確認できます。
次に見返す日を決める
この記事の編集方針
主要な定義・数値・推奨は、公開時点で確認できるガイドライン、公的資料、学会資料、査読論文を優先して確認しています。未確認の編集メモは公開せず、根拠の範囲や限界を区別して、読者が原資料を確認できるよう参考資料を掲載します。
詳しい編集方針を見る →参考にした資料
- 薬剤投与からみたPEG日本静脈経腸栄養学会(現・日本臨床栄養代謝学会)・2014年簡易懸濁法を、錠剤・カプセルをそのまま約55℃の温湯に入れ、最長10分間で崩壊・懸濁させる方法と定義。粉砕による品質低下、投与量ロス、配合変化、閉塞などを解説したナラティブレビュー。主にPEGからの薬剤投与が適用範囲で、正式な推奨グレードはない。原資料を開く
- 簡易懸濁法/倉田式経管投与法Ver.2日本服薬支援研究会・公開年・最終改定年の記載なし(2026年8月16日閲覧)粉砕法と簡易懸濁法の比較、簡易懸濁に用いる器具、調製上の問題点を確認。医療従事者向けの実務資料であり、臨床試験に基づく診療ガイドラインではなく、推奨グレードはない。原資料を開く
- 医療安全情報 No.158「徐放性製剤の粉砕投与」公益財団法人 日本医療機能評価機構 医療事故情報収集等事業・2020年ニフェジピンCR錠、オキシコドン徐放錠などを粉砕して経管投与した医療事故を取り上げ、徐放性製剤を粉砕しないこと、粉砕指示時に薬剤師が確認できる仕組みの必要性を提示。症例報告に基づく医療安全情報で、比較研究や推奨グレードはない。原資料を開く
残り8件の参考資料を見る原資料・発行元・発行年を確認できます+
- ASPEN Safe Practices for Enteral Nutrition TherapyAmerican Society for Parenteral and Enteral Nutrition・2017年薬剤を栄養剤へ直接混ぜないこと、薬剤を個別に調製すること、投与前・各薬剤後・最終時に少なくとも15mLの水でフラッシュすること、栄養を30分以上止めるのは薬物動態上必要な場合に限ることを確認。成人・小児を含む経腸栄養の安全実践文書。エビデンスが乏しい項目は専門家コンセンサスを含む。原資料を開く
- ESPEN practical guideline: Home enteral nutritionEuropean Society for Clinical Nutrition and Metabolism・2022年成人の在宅経腸栄養が主な対象。Recommendation 38で、薬剤を個別に投与し、各薬剤の前・間・後に30mLの水でフラッシュすることを提示。推奨はGrade 0、強いコンセンサス100%。小児や厳格な水分制限患者へ一律に適用するものではない。原資料を開く
- テオフィリン徐放錠100mg/200mg「サワイ」電子添文