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目次この記事でわかること18項目+
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読む前に押さえたいこと
CGMの画面には現在値、矢印、波形、TIRなど多くの情報が並びます。「TIRが低ければ高血糖対策を考えればよい」「矢印が下向きならすぐ低血糖になる」と読んでしまうと、すでに起きている低血糖や測定値のずれを見逃すおそれがあります。この記事では、CGMが測っているものから、TIR・TBR・TARとAGPの意味、食事・インスリン・運動・体調との結び付け方までを順に整理します。患者の安全を最初に確認し、観察を報告と再評価へつなげる看護アセスメントの手順を身につけましょう。
最初に押さえる結論:TIRより先に安全とデータの質を確認する
この章の要点CGMは、次の順に読むと安全性と再現性を保ちやすくなります。最初に見るのはTIRの達成率ではなく、患者の安全と、集計データが解釈に足るかどうかです。
- 意識、症状、バイタルサインから、今すぐ対応が必要か確認する。
- CGM値と矢印、波形、アラート時刻を見て、必要時は自己血糖測定(SMBG)や院内で行う即時検査(POCT)で血糖値を確認する。
- AGP(複数日のCGMデータを24時間に重ねた標準レポート)の期間、センサー有効時間、欠測の偏り、特殊な日を確認する。
- 低血糖域の時間(TBR)を先に確認し、次に高血糖域の時間(TAR)と目標範囲内時間(TIR)のバランスを見る。
- AGPと日別波形から、夜間、食後、運動後などの繰り返すパターンを探す。
- 食事、薬・インスリン、運動、感染・体調不良、睡眠、腎肝機能、機器の状態と照合し、報告後に同じ指標で再評価する。
この順序が必要なのは、TIRが「範囲内だった時間の割合」を要約する指標であり、意識障害を伴う低血糖、急速な変化、測定誤差、低値と高値の内訳までは単独で示さないからです。TIRは便利な入口ですが、単独で治療変更を決める値ではありません。
CGM値は血液中の血糖値そのものではなく、間質液からの推定値である
この章の要点CGMは皮下に留置したセンサーで間質液中のグルコースを測り、アルゴリズムで推定した値を表示します。指先の毛細血管血や採血した静脈血漿の血糖値を直接連続測定しているわけではありません。
CGMには、値を継続的に自動表示するリアルタイムCGM(rtCGM)と、読み取り操作をしたときに現在値と過去の変化を確認する間歇スキャン式CGM(isCGM)があります。同じセンサーでも組み合わせる端末により表示方法が変わる場合があり、更新間隔、アラート、欠測が生じる条件も機種やアプリで異なります。したがって、同じ「CGM」という名称でも操作方法や安全上の指示を一律に扱わず、採用機器の現行資料を確認します。
血液中のグルコースが変化した後、間質液のグルコースが追随するため、CGM表示は血糖値より5~10分程度遅れることがあります。変化が速い食後、運動中、低血糖への対応後などは、両者の差が大きく見えやすい場面です。日本糖尿病学会の2024年コンセンサスも、この時間差と低・高血糖時の血糖測定併用を説明しています([日本糖尿病学会コンセンサス](https://www.jds.or.jp/uploads/files/article/tonyobyo/67_369.pdf))。
画面は、現在値だけでなく3つを組み合わせて読みます。現在値は「いまどの範囲にいるか」、トレンド矢印は「直近にどの向き・速さで動いているか」、波形は「その変化がいつから続き、直前に何が起きたか」を示します。矢印の段階や変化率、予測アラートの仕様は機種で異なるため、患者が使う機器の取扱説明書で確認します。矢印は未来の値を確定するものではありません。
CGM値と症状が一致しない、低値が示された、測定精度に疑問がある、通信やセンサー状態に異常がある場合は、患者別の事前指示と機器の電子添文に従ってSMBGまたは院内POCTで確認します。確認のための穿刺が、意識障害などへの緊急対応を遅らせてはいけません。なお、日本の糖尿病診断ではCGM値を診断用血糖値として用いず、静脈血漿血糖などで判断します([糖尿病診療ガイドライン2024・第1章](https://www.jds.or.jp/uploads/files/publications/gl2024/01.pdf))。
TIR・TBR・TARは診断基準ではなく、一定期間の治療目標を示す
この章の要点TIRは、センサーグルコースが目標範囲内にあった時間の割合です。TBRは目標範囲より低い時間、TARは高い時間を示します。一般的な1型・2型糖尿病では70~180 mg/dLをTIRとしますが、これは治療目標であり、健康な人の基準範囲や糖尿病の診断基準、病棟の一律な報告基準ではありません。
安全面では、TIRを増やすことより先にTBRを減らします。TIRが同じ70%でも、残り30%の多くが高血糖なのか、低血糖を含むのかで意味は大きく違います。日本糖尿病学会は、HbA1cの値にかかわらずTBRを可能な限り小さくすることを大原則としています([日本糖尿病学会コンセンサス](https://www.jds.or.jp/modules/important/index.php?content_id=446))。
一般的な70~180 mg/dLの範囲では、TBRを54~69 mg/dLのレベル1と54 mg/dL未満のレベル2、TARを181~250 mg/dLのレベル1と250 mg/dL超のレベル2に分けます。深い低値や著しい高値を、範囲外時間の合計に埋もれさせないためです。ただし、これらの区分だけで緊急性や原因は決まりません。症状、変化速度、持続、確認血糖、ケトン、患者背景を組み合わせます。
一般的な1型・2型糖尿病
- TIR
- 70~180 mg/dLを70%超(平均16時間48分/日超)
- TBR
- 70 mg/dL未満を4%未満(約1時間/日未満)、54 mg/dL未満を1%未満(約15分/日未満)
- TAR
- 180 mg/dL超を25%未満(6時間/日未満)、250 mg/dL超を5%未満(1時間12分/日未満)
- 読むときの条件
- 多くの成人に用いる一般目標。低血糖リスク、治療法、本人の状況で個別化する
高齢者・低血糖高リスク
- TIR
- 70~180 mg/dLを50%超(12時間/日超)
- TBR
- 70 mg/dL未満を1%未満(約15分/日未満)、54 mg/dL未満は生じないことを目指す
- TAR
- 180 mg/dL超を50%未満、250 mg/dL超を10%未満
- 読むときの条件
- フレイル、認知・身体機能、合併症、無自覚性低血糖、腎機能、治療負担を踏まえて個別化する
1型糖尿病合併妊娠
- TIR
- 63~140 mg/dLを70%超
- TBR
- 63 mg/dL未満を4%未満、54 mg/dL未満を1%未満
- TAR
- 140 mg/dL超を25%未満
- 読むときの条件
- 妊娠糖尿病・2型糖尿病合併妊娠では同じ範囲が参考になるが、具体的割合を支持する根拠は十分でない
| 対象 | TIR | TBR | TAR | 読むときの条件 |
|---|---|---|---|---|
| 一般的な1型・2型糖尿病 | 70~180 mg/dLを70%超(平均16時間48分/日超) | 70 mg/dL未満を4%未満(約1時間/日未満)、54 mg/dL未満を1%未満(約15分/日未満) | 180 mg/dL超を25%未満(6時間/日未満)、250 mg/dL超を5%未満(1時間12分/日未満) | 多くの成人に用いる一般目標。低血糖リスク、治療法、本人の状況で個別化する |
| 高齢者・低血糖高リスク | 70~180 mg/dLを50%超(12時間/日超) | 70 mg/dL未満を1%未満(約15分/日未満)、54 mg/dL未満は生じないことを目指す | 180 mg/dL超を50%未満、250 mg/dL超を10%未満 | フレイル、認知・身体機能、合併症、無自覚性低血糖、腎機能、治療負担を踏まえて個別化する |
| 1型糖尿病合併妊娠 | 63~140 mg/dLを70%超 | 63 mg/dL未満を4%未満、54 mg/dL未満を1%未満 | 140 mg/dL超を25%未満 | 妊娠糖尿病・2型糖尿病合併妊娠では同じ範囲が参考になるが、具体的割合を支持する根拠は十分でない |
TIRだけでは隠れる情報を、TBR・TAR・GMI・CVで補う
この章の要点TIRは「目標範囲にいた時間」を示しますが、平均の高さ、低血糖の深さ、変動の大きさを一つで表せません。そこで、CGM平均値から推定するグルコース管理指標(GMI)や、平均値に対する変動の大きさを示す変動係数(CV)も含め、複数指標の組合せで同じデータを別の角度から見ます。
TIR
- 答えられる問い
- 目標範囲内にどれだけいたか
- 単独では分からないこと
- 範囲外が低値か高値か、いつ起きたか
TBR
- 答えられる問い
- 低血糖域にどれだけいたか、深い低値があるか
- 単独では分からないこと
- 症状、真の血糖値、原因
TAR
- 答えられる問い
- 高血糖域にどれだけいたか、著明高値があるか
- 単独では分からないこと
- ケトーシス、脱水、原因
平均センサーグルコース・GMI
- 答えられる問い
- 直近の平均的なグルコース状態はどうか
- 単独では分からないこと
- 低値と高値の振れ幅、実測HbA1cとの一致
CV(変動係数)
- 答えられる問い
- 平均値に対して変動がどの程度大きいか
- 単独では分からないこと
- 変動する時刻と原因。36%以下が望ましい目安とされる
AGP・日別波形
- 答えられる問い
- どの時間帯に繰り返すか、日による差があるか
- 単独では分からないこと
- 食事・薬・運動などの背景。問診と記録が必要
| 指標 | 答えられる問い | 単独では分からないこと |
|---|---|---|
| TIR | 目標範囲内にどれだけいたか | 範囲外が低値か高値か、いつ起きたか |
| TBR | 低血糖域にどれだけいたか、深い低値があるか | 症状、真の血糖値、原因 |
| TAR | 高血糖域にどれだけいたか、著明高値があるか | ケトーシス、脱水、原因 |
| 平均センサーグルコース・GMI | 直近の平均的なグルコース状態はどうか | 低値と高値の振れ幅、実測HbA1cとの一致 |
| CV(変動係数) | 平均値に対して変動がどの程度大きいか | 変動する時刻と原因。36%以下が望ましい目安とされる |
| AGP・日別波形 | どの時間帯に繰り返すか、日による差があるか | 食事・薬・運動などの背景。問診と記録が必要 |
手順1:AGPを読む前に、14日間・有効時間70%以上と代表性を点検する
この章の要点期間集計を治療評価に使う前に、通常は14日間のデータとセンサー有効時間70%以上があるかを確認します。データが少ないと、TIRやGMIが普段の状態ではなく、たまたま記録できた時間帯を強く反映するからです。日本糖尿病学会は、70%未満または低血糖が問題となる場合、より長い期間の検討を挙げています([日本糖尿病学会コンセンサス](https://www.jds.or.jp/uploads/files/article/tonyobyo/67_369.pdf))。
70%を超えていても、欠測が夜間だけ、勤務中だけなど特定時間に偏れば、その時間帯は評価しにくくなります。センサー交換日、通信断、スキャン不足、時刻設定、アラート設定、機器のウォームアップ、装着初期、センサー脱落も確認します。睡眠中に圧迫されやすい部位、発赤・腫脹・疼痛、出血、かゆみ、固定状態も、精度と継続使用の両面で重要です。機種ごとに装着部位、使用期間、測定干渉、画像検査時の扱いが違うため、現行の電子添文を確認します。
さらに、その14日間が普段を表すかを患者と確かめます。旅行、夜勤、絶食、感染、手術、ステロイド開始、集中的な運動、治療変更などを含む期間は、目的によっては重要ですが、普段の評価と混ぜると解釈が変わります。なお、14日・70%はAGPやGMIでパターンを評価するための目安です。いま目の前の低血糖症状への安全確認を14日分のデータがそろうまで待つ、という意味ではありません。
手順2:低値・高値は、数値より先に症状と緊急性を評価する
この章の要点アラートが鳴ったら、まず患者を見ます。低血糖症状として、意識状態、会話、嚥下の可否、発汗、振戦、動悸、脱力、眠気、めまい、集中困難、行動変化、けいれんを確認し、同時にCGM値、矢印、波形、アラート時刻を見ます。高齢者や無自覚性低血糖では、動悸や発汗が乏しく、急な傾眠、混乱、不機嫌、転倒として現れることがあります。
CGMが70 mg/dL未満を示す、低血糖症状がある、または値と症状が合わない場合は、可能ならSMBG・POCTで確認し、患者別指示または施設の低血糖対応手順に従います。意識障害、けいれん、嚥下困難、他者の介助を要する状態では、緊急応援を要請し、誤嚥の危険がある経口摂取を避け、確認作業のために救命対応を遅らせません。いったん回復しても、薬剤の作用が続く場合などは低血糖が再発・遷延し得るため、症状と測定値を再評価します([糖尿病診療ガイドライン2024・第20章](https://www.jds.or.jp/uploads/files/publications/gl2024/20.pdf))。
高値では、口渇、多尿、倦怠感、体重変化、口腔粘膜の乾燥、頻脈、低血圧に加え、悪心・嘔吐、腹痛、深く大きい呼吸、呼気のアセトン臭、意識変化を見ます。著明高値だけでなく、インスリン中断・注入不良、感染、脱水、妊娠、SGLT2阻害薬使用、ケトン陽性があれば、性ケトアシドーシス(DKA)を考える情報になります。著しいや神経症状、意識変化を伴う場合は、高浸透圧状態(HHS)も考えます。使用中や妊娠では、著明ながなくてもDKAが起こり得るため、値だけで否定できません。
手順3:AGPでは低血糖の時間帯、帯の幅、中央値の順にパターンを探す
この章の要点安全を確認した後は、AGPから「いつ、どの程度、どれほど繰り返すか」を読みます。最初にTBRと日別波形で低血糖パターンの頻度、持続、深さ、時間帯を確認し、次にTAR、TIR、変動を見ます。
AGPは複数日のデータを1日の24時間に重ねた図です。中央の50パーセンタイル線は中央値で、その時刻の半数の値が線より上、半数が下にあります。25~75パーセンタイルの濃い帯は日常的なばらつき、5~95パーセンタイルの外側の帯は、より広い日差を示します。帯が広い時刻ほど、日による違いが大きいと考えます。
見る順序は、①外側の帯または日別波形が低血糖域に入る時刻、②中央値が上昇・下降する時刻と傾き、③濃い帯・外側の帯が広がる時刻、④日別波形で実際に何日、どの程度続いたか、です。中央値が平らでも、食事や就寝の時刻が日ごとにずれると上下動が相殺されていることがあります。したがって、中央値が平ら=安定とは限りません。
治療変更や教育支援の前後を比べるときは、同じ長さで、勤務・食事・体調がなるべく比較可能な期間を選びます。TIRだけでなく、TBRが増えていないか、CVと帯の幅が狭くなったか、問題の時間帯が移動していないかまで確認します。
手順4:波形の前に起きた食事・薬・運動・体調を時間軸で照合する
この章の要点CGMの波形は原因を表示しません。看護アセスメントでは、変化した時刻からさかのぼって直前の出来事を並べ、原因候補を作ります。数値と出来事が同時にあっただけで因果関係を決めず、複数日に再現するか、別の所見と整合するかを確認します。
夜間から早朝に下降・低値
- 考える候補
- 基礎インスリン等の作用、夕食量低下、飲酒、遅い時間の運動、腎機能変化、真の夜間低血糖、装着部圧迫などの測定異常
- 組み合わせて確認する情報
- 就寝前値、薬剤名・時刻、夕食・補食、運動・飲酒、起床時頭痛や悪夢、SMBG/POCT、寝姿勢、装着部
食後に急上昇
- 考える候補
- 糖質量・吸収、食事と追加インスリンの時刻、投与忘れ、ストレス・体調
- 組み合わせて確認する情報
- 食事内容と時刻、投与記録、矢印、食前値、複数日の再現、症状
食後上昇後に急降下
- 考える候補
- 食事とインスリン作用の時間差、追加補正の重なり、食後運動、摂取不足
- 組み合わせて確認する情報
- インスリンの種類・投与時刻、補正の回数、活動、嘔吐・食べ残し、その後の低値
日中の帯が広い
- 考える候補
- 食事・活動・投薬時刻の不規則性、勤務日と休日の差、欠測
- 組み合わせて確認する情報
- 曜日・勤務、食事・服薬記録、スキャン・通信状況、日別波形
持続する高値
- 考える候補
- インスリン不足・投与漏れ、ポンプ・注入部トラブル、感染、ステロイド、脱水、摂取増加
- 組み合わせて確認する情報
- バイタル、感染所見、水分出納、薬剤変更、注入部・残量・接続、血糖・ケトン、消化器・呼吸症状
突然の孤立した低値
- 考える候補
- 真の急速低下、センサー圧迫・脱落・装着初期などの測定異常
- 組み合わせて確認する情報
- 症状、SMBG/POCT、直前の波形、寝姿勢、装着部、センサー開始日、別の時間帯での再現
| 見えるパターン | 考える候補 | 組み合わせて確認する情報 |
|---|---|---|
| 夜間から早朝に下降・低値 | 基礎インスリン等の作用、夕食量低下、飲酒、遅い時間の運動、腎機能変化、真の夜間低血糖、装着部圧迫などの測定異常 | 就寝前値、薬剤名・時刻、夕食・補食、運動・飲酒、起床時頭痛や悪夢、SMBG/POCT、寝姿勢、装着部 |
| 食後に急上昇 | 糖質量・吸収、食事と追加インスリンの時刻、投与忘れ、ストレス・体調 | 食事内容と時刻、投与記録、矢印、食前値、複数日の再現、症状 |
| 食後上昇後に急降下 | 食事とインスリン作用の時間差、追加補正の重なり、食後運動、摂取不足 | インスリンの種類・投与時刻、補正の回数、活動、嘔吐・食べ残し、その後の低値 |
| 日中の帯が広い | 食事・活動・投薬時刻の不規則性、勤務日と休日の差、欠測 | 曜日・勤務、食事・服薬記録、スキャン・通信状況、日別波形 |
| 持続する高値 | インスリン不足・投与漏れ、ポンプ・注入部トラブル、感染、ステロイド、脱水、摂取増加 | バイタル、感染所見、水分出納、薬剤変更、注入部・残量・接続、血糖・ケトン、消化器・呼吸症状 |
| 突然の孤立した低値 | 真の急速低下、センサー圧迫・脱落・装着初期などの測定異常 | 症状、SMBG/POCT、直前の波形、寝姿勢、装着部、センサー開始日、別の時間帯での再現 |
看護観察は、数値・症状・生活・治療・機器を一組で記録する
この章の要点看護師が集める情報は、医師が治療を変えるためだけではありません。真の低血糖・高血糖と測定異常を見分け、再発する時間帯を特定し、患者が安全に自己管理できる条件を整えるために使います。重要なのは、各項目を単独でなく組み合わせて読むことです。
意識、会話、発汗、振戦、動悸、空腹、眠気、めまい、行動変化、けいれん
- なぜ見るか・変化の意味
- 低血糖の緊急性と嚥下・自己対応の可否を判断する。高齢者では非典型症状に注意する
- ほかに組み合わせる所見
- CGM値・矢印、SMBG/POCT、最終投薬、摂取、転倒
口渇、多尿、倦怠感、悪心・嘔吐、腹痛、呼吸、口腔乾燥、血圧、脈拍
- なぜ見るか・変化の意味
- 脱水、DKA、HHSなど急性代謝失調を疑う手掛かりになる
- ほかに組み合わせる所見
- 血糖、ケトン、感染所見、水分出納、SGLT2阻害薬、妊娠、ポンプ状態
CGM現在値、矢印、波形、TBR/TAR/TIR、アラート時刻
- なぜ見るか・変化の意味
- 値の範囲、速度、持続、反復を区別する
- ほかに組み合わせる所見
- 症状、POCTとの差、イベント記録、日別波形
食事量・糖質、食事時刻、食べ残し、嘔吐、補食
- なぜ見るか・変化の意味
- 食後上昇や投薬後低血糖との時間関係を確認する
- ほかに組み合わせる所見
- 食前値、投薬時刻、消化器症状、活動
インスリン・薬剤名、量、時刻、投与部位、追加補正、ステロイド等の変更
- なぜ見るか・変化の意味
- 作用する時間帯、投与漏れ、重複、治療変更後の変化を考える
- ほかに組み合わせる所見
- 食事、腎肝機能、ポンプ履歴、低値・高値の時刻
運動・仕事・入浴・飲酒・睡眠
- なぜ見るか・変化の意味
- 運動後の遅発性低血糖、生活リズムによる日差を考える
- ほかに組み合わせる所見
- 投薬、食事、曜日、夜間波形、症状
発熱、感染、疼痛、手術、絶食、経腸・静脈栄養
- なぜ見るか・変化の意味
- インスリン必要量や摂取条件が普段と変わる背景を把握する
- ほかに組み合わせる所見
- バイタル、炎症所見、投薬、TAR、ケトン、水分出納
センサー開始日、通信、装着部、固定、皮膚、圧迫、アラート設定
- なぜ見るか・変化の意味
- 欠測・偽値の可能性、安全な装着、継続困難を評価する
- ほかに組み合わせる所見
- POCTとの差、寝姿勢、取扱説明書、発赤・腫脹・疼痛
視力、手指機能、認知、アラートに気づけるか、費用・供給、家族支援
- なぜ見るか・変化の意味
- データがあっても安全に対応できるかを判断する
- ほかに組み合わせる所見
- 低血糖歴、独居、スマートフォン操作、バックアップの血糖測定手段
| 観察すること | なぜ見るか・変化の意味 | ほかに組み合わせる所見 |
|---|---|---|
| 意識、会話、発汗、振戦、動悸、空腹、眠気、めまい、行動変化、けいれん | 低血糖の緊急性と嚥下・自己対応の可否を判断する。高齢者では非典型症状に注意する | CGM値・矢印、SMBG/POCT、最終投薬、摂取、転倒 |
| 口渇、多尿、倦怠感、悪心・嘔吐、腹痛、呼吸、口腔乾燥、血圧、脈拍 | 脱水、DKA、HHSなど急性代謝失調を疑う手掛かりになる | 血糖、ケトン、感染所見、水分出納、SGLT2阻害薬、妊娠、ポンプ状態 |
| CGM現在値、矢印、波形、TBR/TAR/TIR、アラート時刻 | 値の範囲、速度、持続、反復を区別する | 症状、POCTとの差、イベント記録、日別波形 |
| 食事量・糖質、食事時刻、食べ残し、嘔吐、補食 | 食後上昇や投薬後低血糖との時間関係を確認する | 食前値、投薬時刻、消化器症状、活動 |
| インスリン・薬剤名、量、時刻、投与部位、追加補正、ステロイド等の変更 | 作用する時間帯、投与漏れ、重複、治療変更後の変化を考える | 食事、腎肝機能、ポンプ履歴、低値・高値の時刻 |
| 運動・仕事・入浴・飲酒・睡眠 | 運動後の遅発性低血糖、生活リズムによる日差を考える | 投薬、食事、曜日、夜間波形、症状 |
| 発熱、感染、疼痛、手術、絶食、経腸・静脈栄養 | インスリン必要量や摂取条件が普段と変わる背景を把握する | バイタル、炎症所見、投薬、TAR、ケトン、水分出納 |
| センサー開始日、通信、装着部、固定、皮膚、圧迫、アラート設定 | 欠測・偽値の可能性、安全な装着、継続困難を評価する | POCTとの差、寝姿勢、取扱説明書、発赤・腫脹・疼痛 |
| 視力、手指機能、認知、アラートに気づけるか、費用・供給、家族支援 | データがあっても安全に対応できるかを判断する | 低血糖歴、独居、スマートフォン操作、バックアップの血糖測定手段 |
報告は「現在の危険・確認値・前後の出来事・反応」を具体的に伝える
この章の要点報告では「血糖が不安定です」だけで終えず、何がいつ起きたかを伝えます。緊急時は、意識・嚥下・けいれん・呼吸・循環など現在の危険、CGM値と矢印、SMBG/POCT値、行った対応と反応を先に伝えます。その後に、糖尿病の型、妊娠、使用薬・最終投与、直近の食事・嘔吐、運動、感染、腎肝機能、ケトン、ポンプ・センサー状態を加えます。
急を要さないパターン報告では、対象期間とセンサー有効時間、TBR/TAR/TIR、問題の時刻、頻度・持続・深さ、日別の再現、症状、確認血糖、関連しそうな生活・治療イベントをまとめます。「夜間低値がある」ではなく、「14日間の有効時間92%、TBR 3%。3~5時の低値が4夜にあり、最小値、持続時間、症状、同時刻の確認血糖はこうだった」という形なら、受け手が緊急性と次の評価を判断できます。
誰に伝えるかは状況で変わります。意識障害、けいれん、循環・呼吸異常、重症低血糖、DKA/HHSを疑う所見では院内の緊急連絡先または救急医療につなぎます。反復する低値・高値、治療変更後の悪化、機器と血糖値の持続的乖離、自己管理困難は、担当医と糖尿病チームへ共有します。アラート設定値やTIR目標は報告基準そのものではないため、患者別指示と施設手順を確認します。
報告後は、指示された介入の後に、症状、CGMの方向、SMBG/POCT、再発、摂取・水分、機器状態を再確認します。期間評価では、次の比較可能な期間にTBRが減ったかを最初に見て、TIR、TAR、CV、問題時間帯の順に効果と新たなリスクを確認します。
妊娠・小児・高齢者・腎機能低下・入院では、同じTIRでも解釈を変える
この章の要点CGM目標は全員一律ではありません。対象集団と診療場面を確認してから数値を評価します。
妊娠では目標範囲が狭く、1型糖尿病合併妊娠では63~140 mg/dLのTIRが用いられます。妊娠糖尿病と2型糖尿病合併妊娠でもこの範囲が参考になりますが、具体的な割合の根拠は十分ではありません。妊娠では比較的低い血糖でもDKAが起こり得るため、悪心・嘔吐、腹痛、呼吸異常、ケトン、インスリン中断をCGM値と併せて見ます。
小児では一般に70~180 mg/dL、TIR 70%超が推奨されますが、年齢、成長、食事・運動の不規則性、家族の対応力、治療法、学校生活を踏まえます。目標達成を急いでTBRを増やさないことが重要です。
高齢者、無自覚性低血糖、進行した合併症、慢性腎臓病(CKD)、認知・身体機能低下がある人では、TIRを高くすることより低血糖回避を優先します。腎機能低下、肝機能低下、多剤併用、食事量低下は低血糖リスクを変えます。本人がアラートに気づき、測定し、補食や連絡を行えるか、家族・介護者が支援できるかも目標設定の条件です。
入院中は、食事、絶食、検査、手術、感染、ステロイド、経腸・静脈栄養、循環状態が短期間に変わります。ADA 2026は、個人用CGMを臨床的に適切な場合に継続し得る一方、インスリン投与判断との評価・治療ではPOCで確認し、訓練・資源・施設を条件としています([ADA Standards of Care in Diabetes—2026, Section 16](https://diabetesjournals.org/care/article/49/Supplement_1/S339/163925/16-Diabetes-Care-in-the-Hospital-Standards-of-Care))。病棟ではをPOCTの自動的な代替にせず、採用機器と施設手順に従います。
架空の学習例:TIR 64%でも、先に見るべきは夜間TBRである
この章の要点次は読み方を練習するための架空事例です。実在患者の記録ではありません。
72歳、2型糖尿病でインスリンを使用中。14日間のセンサー有効時間は92%、TIR 64%、TBR 3%(うち54 mg/dL未満0.4%)、TAR 33%、CV 38%でした。AGPでは3~5時に外側の帯が低血糖域へ入り、日別波形では4夜に低値がありました。
「TIRが70%未満だから高血糖対策を強める」と考える前に、TBRを評価します。この人は高齢・インスリン使用中であり、一般成人のTBR 4%未満だけを見て安心できません。低血糖高リスク者の目標、低値の深さ、持続、症状、確認血糖を見ます。
問診では、歯科治療後に夕食量が減り、朝に頭痛がある日がありました。直近の腎機能も以前より低下していました。一方、ある夜の急な低下時はセンサー側を下にして寝ており、CGM 58 mg/dLに対してSMBG 92 mg/dLでした。別の日はCGM低値時のSMBGも63 mg/dLでした。
この情報からは、「すべて真の低血糖」でも「すべて圧迫による偽低値」でもありません。真の夜間低血糖が疑われる日と測定異常が疑われる日が混在する可能性があります。看護師は、低値の時刻と持続、症状、食事量、最終インスリン、腎機能、寝姿勢、装着部、確認血糖を担当医・糖尿病チームへ報告します。治療変更は指示に基づき、変更後は夜間TBRと確認血糖を先に再評価し、TIR上昇と引き換えに低血糖が増えていないかを確認します。
深夜から早朝の低値
- 確認する背景と所見
- 就寝前・夕食時のインスリン、夕食量、遅い時間の運動、飲酒、腎機能、症状、装着部への圧迫
- 報告・共有する内容
- 発生時刻、回数、持続、最低値、症状、SMBG・POC値、本人の対応と処置後の経過
食後に繰り返す高値
- 確認する背景と所見
- 食事量・時刻、炭水化物、注射・服薬時刻、食後活動、ステロイド
- 報告・共有する内容
- どの食事後か、上昇開始とピーク、持続、何日再現したか
食前に繰り返す低値
- 確認する背景と所見
- 前回の食事・インスリン、食事の遅れ、食欲低下、活動量
- 報告・共有する内容
- 症状、摂取量、直前の治療、確認血糖値、処置内容と再評価値
一日を通した高値
- 確認する背景と所見
- インスリン投与忘れ、ポンプ・注入部の問題、感染、発熱、脱水、ステロイド、シックデイ、SGLT2阻害薬
- 報告・共有する内容
- 症状、バイタル、摂取・尿量、血糖確認値、ケトン体測定の指示と結果、投与・機器状況
AGPの帯が広い
- 確認する背景と所見
- シフト勤務、食事や睡眠の時刻、活動量、治療行動のばらつき
- 報告・共有する内容
- 安定する日と変動する日の違い、再現性、本人が調整しにくい要因
データが頻繁に途切れる
- 確認する背景と所見
- 通信、端末との距離、スキャン、装着継続、センサー脱落、皮膚症状
- 報告・共有する内容
- 欠測時間、端末・センサー・装着部の状態、本人が困っている操作や負担
| 見つかったパターン | 確認する背景と所見 | 報告・共有する内容 |
|---|---|---|
| 深夜から早朝の低値 | 就寝前・夕食時のインスリン、夕食量、遅い時間の運動、飲酒、腎機能、症状、装着部への圧迫 | 発生時刻、回数、持続、最低値、症状、SMBG・POC値、本人の対応と処置後の経過 |
| 食後に繰り返す高値 | 食事量・時刻、炭水化物、注射・服薬時刻、食後活動、ステロイド | どの食事後か、上昇開始とピーク、持続、何日再現したか |
| 食前に繰り返す低値 | 前回の食事・インスリン、食事の遅れ、食欲低下、活動量 | 症状、摂取量、直前の治療、確認血糖値、処置内容と再評価値 |
| 一日を通した高値 | インスリン投与忘れ、ポンプ・注入部の問題、感染、発熱、脱水、ステロイド、シックデイ、SGLT2阻害薬 | 症状、バイタル、摂取・尿量、血糖確認値、ケトン体測定の指示と結果、投与・機器状況 |
| AGPの帯が広い | シフト勤務、食事や睡眠の時刻、活動量、治療行動のばらつき | 安定する日と変動する日の違い、再現性、本人が調整しにくい要因 |
| データが頻繁に途切れる | 通信、端末との距離、スキャン、装着継続、センサー脱落、皮膚症状 | 欠測時間、端末・センサー・装着部の状態、本人が困っている操作や負担 |
患者には「良い・悪い点数」ではなく、次の安全行動を一緒に探すデータと説明する
この章の要点患者への説明では、TIRを成績表にしないことが大切です。「この数字が悪い」ではなく、「安全に過ごせる時間を増やすため、低くなる時刻と高くなる時刻を一緒に探す」と伝えます。CGMは生活を常に採点する装置ではなく、再現する条件を見つける手掛かりです。
まず、患者が気づいたことを聞きます。「夜中のアラートの前に何がありましたか」「勤務日と休日で違いますか」「この低値は体の感じと合いましたか」「アラートが鳴ったとき、どうしましたか」と具体的な時刻に沿って尋ねます。食事、注射、運動、体調を正確に記録できなかったことを責めず、必要最小限のイベント記録を相談します。
説明する安全行動は、症状と値が合わないときの確認方法、低・高アラート時の事前指示、連絡先、SMBG用品の保管、センサー脱落・通信断時の代替手段です。家族共有は本人の同意と希望を確認し、通知が監視感やアラーム疲れにつながっていないかも聞きます。目標は、数値を完璧にすることではなく、患者が理解でき、続けられ、危険時に行動できることです。
「TIRが高ければ安全」など、CGMで起こりやすい8つの誤解
この章の要点CGMの誤読は、要約指標を単独で使ったときに起こりやすくなります。次の点を押さえると、数値の過信を避けられます。
- 「TIR 70%は全員の絶対目標」ではありません。妊娠、高齢・低血糖高リスク、小児、治療法、本人の機能で範囲と目標を個別化します。
- 「TIRが高ければ低血糖はない」とは限りません。必ずTBR、とくに54 mg/dL未満と日別波形を確認します。
- 「CGM 70 mg/dLは血糖値70 mg/dLと常に同じ」ではありません。間質液からの推定値で、速い変化時には時間差が目立ちます。
- 「下向き矢印なら何分後に必ずこの値になる」わけではありません。矢印の定義は機種で異なり、食事・運動・対応によって傾向は変わります。
- 「症状がなければ低値は偽値」とは限りません。無自覚性低血糖や高齢者の非典型症状があるため、SMBG/POCTと経過で確認します。
- 「アラート値、TIR境界、緊急報告基準は同じ」ではありません。アラートは通知設定、TIRは期間の治療目標、緊急性は症状・確認値・背景を含む臨床判断です。
- 「GMIは検査室のHbA1cそのもの」ではありません。対象期間と計算方法が違い、貧血、腎疾患、輸血などで乖離を検討します。
- 「CGMで糖尿病を診断できる」わけではありません。診断は日本糖尿病学会の基準に従い、静脈血漿血糖やHbA1cなどで総合判断します。
まとめ:CGMを看護アセスメントにつなげる7項目
この章の要点CGMは、現在値を眺める機器ではなく、低血糖・高血糖と生活・治療・病態の関係を時間軸で捉える道具です。最後に、読む順序を7項目で確認します。
- 患者を見て、意識、嚥下、けいれん、呼吸、循環など現在の危険を判断する。
- CGM値・矢印・波形と症状を照合し、必要時はSMBG/POCTで確認する。
- 期間、センサー有効時間、欠測の偏り、特殊な日、装着・通信を確認する。
- TBRを先に見てから、TAR、TIR、GMI、CVを組み合わせる。
- AGPの中央値、帯の幅、日別波形から、時刻・持続・反復を特定する。
- 食事、薬・インスリン、運動、感染・体調、腎肝機能、妊娠、機器状態と照合する。
- 現在の危険、確認値、前後の出来事、対応と反応を報告し、同じ指標で再評価する。
数値から原因へ飛びつかず、「この変化は本当に起きているか」「いつ繰り返すか」「何と一緒に起きるか」「介入後に低血糖は増えていないか」と順に問うことが、CGMを看護アセスメントへ変える要点です。
CGM・TIRで起こりやすい誤解を整理する
この章の要点CGMは情報量が多い分、単純な数字や印象で判断すると誤解が生じます。特に、TIRだけ、HbA1cだけ、1回の波形だけで結論を出さないことが重要です。次の表を、説明や確認の入口として使います。
TIRが高ければ安全
- 適切な理解
- TBR、とくに54mg/dL未満の時間が増えていないかを先に確認する
HbA1cが低ければ低血糖はない
- 適切な理解
- 低血糖が多いため平均値が低い場合もあり、HbA1cだけでは変動を把握できない
GMIはHbA1cと同じ
- 適切な理解
- GMIはCGM平均値から求めた推定指標で、検査室で測定するHbA1cとは異なる
CGMと指先値が違えば故障
- 適切な理解
- 測定対象と時間差が異なる。症状不一致や精度への疑問があれば、使用機器の指示に沿って確認する
夜間低値はすべて圧迫による偽低値
- 適切な理解
- 真の夜間低血糖もある。症状、再現性、治療・生活背景、SMBGなどを組み合わせて評価する
低値アラームは必ず正しい
- 適切な理解
- 表示値、矢印、症状、直前の波形、機器状態を合わせ、個別指示に従う
一度上がった食品は食べてはいけない
- 適切な理解
- 摂取量、食事全体、薬効、活動、体調を含め、同じ条件での再現性を評価する
TIRは全員100%を目指す
- 適切な理解
- 目標は低血糖リスク、妊娠、健康状態、治療負担などに応じて個別化する
TIR目標は緊急報告基準である
- 適切な理解
- 集団の治療目標であり、報告の緊急性は現在値、症状、持続、確認値、個別指示で判断する
CGMで糖尿病を診断できる
- 適切な理解
- 糖尿病の診断には静脈血漿グルコース値やHbA1cなどを用い、CGM値は用いない
| よくある誤解 | 適切な理解 |
|---|---|
| TIRが高ければ安全 | TBR、とくに54mg/dL未満の時間が増えていないかを先に確認する |
| HbA1cが低ければ低血糖はない | 低血糖が多いため平均値が低い場合もあり、HbA1cだけでは変動を把握できない |
| GMIはHbA1cと同じ | GMIはCGM平均値から求めた推定指標で、検査室で測定するHbA1cとは異なる |
| CGMと指先値が違えば故障 | 測定対象と時間差が異なる。症状不一致や精度への疑問があれば、使用機器の指示に沿って確認する |
| 夜間低値はすべて圧迫による偽低値 | 真の夜間低血糖もある。症状、再現性、治療・生活背景、SMBGなどを組み合わせて評価する |
| 低値アラームは必ず正しい | 表示値、矢印、症状、直前の波形、機器状態を合わせ、個別指示に従う |
| 一度上がった食品は食べてはいけない | 摂取量、食事全体、薬効、活動、体調を含め、同じ条件での再現性を評価する |
| TIRは全員100%を目指す | 目標は低血糖リスク、妊娠、健康状態、治療負担などに応じて個別化する |
| TIR目標は緊急報告基準である | 集団の治療目標であり、報告の緊急性は現在値、症状、持続、確認値、個別指示で判断する |
| CGMで糖尿病を診断できる | 糖尿病の診断には静脈血漿グルコース値やHbA1cなどを用い、CGM値は用いない |
報告は「データの質・低血糖・時間帯・背景・確認値」をそろえる
この章の要点医師や糖尿病療養指導チームへ報告するときは、単に「CGMが低いです」では情報が不足します。対象期間、センサー有効時間、TIR・TBR・TAR、発生時刻、最低・最高値、持続、再現性、症状、SMBGまたはPOC値、本人の対応、処置後の再評価、直前の治療と生活・体調をまとめます。緊急時はこの順に全部そろうのを待たず、症状と直近値を先に報告し、追加情報を続けます。
以下は、情報のまとめ方を示す架空の学習例です。
「直近14日間でセンサー有効時間は91%です。TIR 66%、70mg/dL未満のTBRは5%、54mg/dL未満は1.2%でした。低値は主に2~4時に3日繰り返しています。1回は発汗があり、CGM低値時の指先値は64mg/dLでした。別の1回は症状がなく、CGM 61mg/dLに対して指先値96mg/dLでした。就寝前のインスリン時刻と夜の運動時刻にばらつきがあります。現在の症状はありません。夜間低値への対応計画と治療内容の確認をお願いします」
CGM値と確認血糖値が一致した場面、一致しなかった場面を分けると、真の低血糖、時間差、圧迫やその他の測定異常を検討しやすくなります。患者が実際に取った行動と、その後どう変化したかまで伝えると、再発予防の計画につながります。
CGMは患者を採点する道具ではなく、安全な生活を一緒に考える道具
この章の要点CGM・TIRを看護に生かす基本は、低血糖を先に確認し、1点の値より繰り返すパターンを読み、その背景を本人と一緒に探すことです。
TIRは分かりやすい指標ですが、TBR、TAR、変動係数、GMI、AGP、日別波形、症状、SMBG・POC値を組み合わせて評価します。TIR目標は個別化し、値と症状が合わないときは使用機器と個別指示に沿って確認します。入院中は施設の手順と医師指示を優先します。
グラフは、努力不足を示す成績表ではありません。夜勤、食事、運動、治療、病気、機器の使いにくさを可視化し、支援を考えるための情報です。看護師の役割は、データを安全で実行可能な支援へ翻訳することです。本人の負担や希望を聞き、必要な観察、確認、報告、教育、他職種との連携へつなげます。
学習メモ・復習の予定気づきを自分の言葉で残す+
わかったこと、まだ曖昧なこと、次に調べたいことを残せます。
学びを、もう一度
復習日になると、ホームと復習リストで確認できます。
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この記事の編集方針
主要な定義・数値・推奨は、公開時点で確認できるガイドライン、公的資料、学会資料、査読論文を優先して確認しています。未確認の編集メモは公開せず、根拠の範囲や限界を区別して、読者が原資料を確認できるよう参考資料を掲載します。
詳しい編集方針を見る →参考にした資料
- 持続グルコースモニタリングデバイス適正使用指針一般社団法人日本糖尿病学会・2026年4月1日改訂背景、CGMの種類、適用、SMBGとの併用、安全性、評価指標、アラート設定と対応。とくにp.2の2-3・2-5、p.3~4の4・5を確認。見出し1、2、5、6、9、10、13に対応。原資料を開く
- 先進医療機器により得られる新たな血糖関連指標に関するコンセンサスステートメント一般社団法人日本糖尿病学会「糖尿病」67巻9号・2024年CGM・TIR・TBR・TARの定義、5~10分の時間差、目標値と対象、TIRとHbA1cの関係、妊娠・小児・高齢者・非インスリン使用者の条件、AGP解析手順、GMI。p.369~382、Table 1・3を確認。見出し1~11、15に対応。原資料を開く
- 糖尿病診療ガイドライン2024 第1章 糖尿病診断の指針一般社団法人日本糖尿病学会・2024年診断用血糖値は静脈血漿で測定し、CGMを含む簡易測定値を診断には用いないこと。Q1-1、p.5を確認。見出し2、14に対応。原資料を開く
残り5件の参考資料を見る原資料・発行元・発行年を確認できます+
- 糖尿病診療ガイドライン2024 第20章 糖尿病における急性代謝失調・シックデイ(感染症を含む)一般社団法人日本糖尿病学会・2024年DKA・HHS・低血糖の定義、症状、確認検査、緊急性、低血糖の再発・遷延、SGLT2阻害薬・妊娠での正常血糖DKA、シックデイの受診条件。Q20-1、20-2、20-4、20-8、p.447~454・459を確認。見出し6、9~11に対応。原資料を開く
- 糖尿病診療ガイドライン2024 第19章 高齢者の糖尿病(認知症を含む)一般社団法人日本糖尿病学会・2024年高齢者の非典型的低血糖症状、腎機能低下・多剤併用、認知・身体機能、社会的支援を含む個別評価。Q19-1・19-2、p.419~420を確認。見出し3、6、9、11に対応。原資料を開く
- Dexcom G7 CGMシステム 医療機器電子添文(第3版)デクスコムジャパン合同会社/独立行政法人医薬品医療機器総合機構掲載・2025年12月改訂間質液測定の原理、5分ごとの送信、症状不一致時のSMBG、低値確認、イベント入力、装着・圧迫・皮膚・通信、アラートの限界。これは一機種の条件であり、他機種には各電子添文を適用する。p.1~3を確認。見出し2、5、6、8、9に対応。