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読む前に押さえたいこと
糖尿病薬は「血糖を下げる薬」とひとまとめにされがちですが、インスリン分泌を助ける薬、尿へ糖を出す薬、食欲や胃の動きにも作用する薬では、観察すべき変化が異なります。特にDPP-4阻害薬、SGLT2阻害薬、GLP-1受容体作動薬は使用機会が多く、単独では低血糖が起こりにくい一方、併用薬や脱水、食事摂取量、腎機能によって安全性が変わります。この記事では、成人2型糖尿病を中心に、薬の仕組みから違いを整理し、開始前、投与中、シックデイ、報告時に看護師が何を確認し、なぜ確認するのかを順に解説します。
糖尿病薬は「どこに働くか」で整理する
この章の要点結論からいうと、糖尿病薬は作用点を理解すると、副作用と観察項目まで結び付けやすくなります。
血糖は、食事から入る糖、肝臓から放出される糖、筋肉などで利用される糖、腎臓から排泄される糖、そしてインスリンの量と効き方によって変動します。糖尿病薬は、このうち異なる部分に働きかけます。
看護師が薬剤名だけでなく作用点を確認する意味は、患者の症状を予測するためです。例えば、尿糖排泄を増やす薬なら脱水や尿路・性器感染症、インスリン分泌を強く促す薬なら低血糖、胃の動きや食欲にも作用する薬なら悪心や摂取量低下を重点的に観察します。
主な作用部位
- DPP-4阻害薬
- DPP-4酵素
- SGLT2阻害薬
- 腎臓の近位尿細管
- GLP-1受容体作動薬
- GLP-1受容体
血糖を下げる仕組み
- DPP-4阻害薬
- 内因性インクレチンの分解を抑え、血糖依存的なインスリン分泌を促す
- SGLT2阻害薬
- 尿細管での糖再吸収を抑え、尿糖排泄を増やす
- GLP-1受容体作動薬
- 血糖依存的なインスリン分泌促進、グルカゴン分泌抑制など
剤形
- DPP-4阻害薬
- 経口薬
- SGLT2阻害薬
- 経口薬
- GLP-1受容体作動薬
- 皮下注射、経口薬
体重への一般的な影響
- DPP-4阻害薬
- 増加させにくい
- SGLT2阻害薬
- 減少する傾向
- GLP-1受容体作動薬
- 減少する傾向
単独使用時の低血糖
- DPP-4阻害薬
- 起こしにくい
- SGLT2阻害薬
- 起こしにくい
- GLP-1受容体作動薬
- 起こしにくい
特に確認したいこと
- DPP-4阻害薬
- 併用薬、一般名、腎機能、水疱を伴う皮膚症状
- SGLT2阻害薬
- 体液量、感染症状、ケトアシドーシスの誘因と症状
- GLP-1受容体作動薬
- 消化器症状、食事・水分摂取量、投与手技、周術期情報
| 比較項目 | DPP-4阻害薬 | SGLT2阻害薬 | GLP-1受容体作動薬 |
|---|---|---|---|
| 主な作用部位 | DPP-4酵素 | 腎臓の近位尿細管 | GLP-1受容体 |
| 血糖を下げる仕組み | 内因性インクレチンの分解を抑え、血糖依存的なインスリン分泌を促す | 尿細管での糖再吸収を抑え、尿糖排泄を増やす | 血糖依存的なインスリン分泌促進、グルカゴン分泌抑制など |
| 剤形 | 経口薬 | 経口薬 | 皮下注射、経口薬 |
| 体重への一般的な影響 | 増加させにくい | 減少する傾向 | 減少する傾向 |
| 単独使用時の低血糖 | 起こしにくい | 起こしにくい | 起こしにくい |
| 特に確認したいこと | 併用薬、一般名、腎機能、水疱を伴う皮膚症状 | 体液量、感染症状、ケトアシドーシスの誘因と症状 | 消化器症状、食事・水分摂取量、投与手技、周術期情報 |
非インスリン薬は10系統、インスリンは別枠で考える
この章の要点日本糖尿病学会のガイドラインでは、非インスリン薬は10系統に整理されています。これに、体外からインスリンそのものを補うインスリン製剤が加わります。
薬歴を確認するときは、配合剤に含まれる成分も分解して捉えることが重要です。薬が複数でも作用点が重なる場合があり、反対に、一つの錠剤に低血糖や脱水への注意が異なる成分が含まれていることもあります。
α-グルコシダーゼ阻害薬
- 主な働き
- 糖質の消化・吸収を遅らせる
- 看護で注目する点
- 腹部膨満、下痢、服用時刻
SGLT2阻害薬
- 主な働き
- 腎臓から尿中への糖排泄を増やす
- 看護で注目する点
- 脱水、血圧、感染症、ケトアシドーシス
チアゾリジン薬
- 主な働き
- インスリン抵抗性を改善する
- 看護で注目する点
- 浮腫、体重増加、心不全、骨折
ビグアナイド薬
- 主な働き
- 肝臓の糖産生を抑え、インスリンの効きを改善する
- 看護で注目する点
- 腎機能、脱水、消化器症状、乳酸アシドーシス
イメグリミン
- 主な働き
- インスリン分泌と抵抗性の双方に働く
- 看護で注目する点
- 腎機能、消化器症状
DPP-4阻害薬
- 主な働き
- 内因性インクレチンの作用を保つ
- 看護で注目する点
- 併用時低血糖、腎機能、皮膚症状
GLP-1受容体作動薬
- 主な働き
- 血糖依存性のインスリン分泌、食欲、胃運動などに働く
- 看護で注目する点
- 悪心、嘔吐、摂取量、体重、脱水
GIP/GLP-1受容体作動薬
- 主な働き
- 二つのインクレチン受容体に作用する
- 看護で注目する点
- 消化器症状、体重減少、併用時低血糖
スルホニル尿素薬(SU薬)
- 主な働き
- インスリン分泌を促進する
- 看護で注目する点
- 低血糖、体重増加
速効型インスリン分泌促進薬
- 主な働き
- 食後早期のインスリン分泌を促す
- 看護で注目する点
- 食事とのタイミング、低血糖
インスリン製剤
- 主な働き
- 不足するインスリンを補う
- 看護で注目する点
- 低血糖、注射手技、投与時刻、食事、血糖推移
| 系統 | 主な働き | 看護で注目する点 |
|---|---|---|
| α-グルコシダーゼ阻害薬 | 糖質の消化・吸収を遅らせる | 腹部膨満、下痢、服用時刻 |
| SGLT2阻害薬 | 腎臓から尿中への糖排泄を増やす | 脱水、血圧、感染症、ケトアシドーシス |
| チアゾリジン薬 | インスリン抵抗性を改善する | 浮腫、体重増加、心不全、骨折 |
| ビグアナイド薬 | 肝臓の糖産生を抑え、インスリンの効きを改善する | 腎機能、脱水、消化器症状、乳酸アシドーシス |
| イメグリミン | インスリン分泌と抵抗性の双方に働く | 腎機能、消化器症状 |
| DPP-4阻害薬 | 内因性インクレチンの作用を保つ | 併用時低血糖、腎機能、皮膚症状 |
| GLP-1受容体作動薬 | 血糖依存性のインスリン分泌、食欲、胃運動などに働く | 悪心、嘔吐、摂取量、体重、脱水 |
| GIP/GLP-1受容体作動薬 | 二つのインクレチン受容体に作用する | 消化器症状、体重減少、併用時低血糖 |
| スルホニル尿素薬(SU薬) | インスリン分泌を促進する | 低血糖、体重増加 |
| 速効型インスリン分泌促進薬 | 食後早期のインスリン分泌を促す | 食事とのタイミング、低血糖 |
| インスリン製剤 | 不足するインスリンを補う | 低血糖、注射手技、投与時刻、食事、血糖推移 |
DPP-4・SGLT2・GLP-1の違いを比較する
この章の要点3系統はいずれも単独使用では低血糖を起こしにくい一方、作用する場所と特徴的な有害事象が異なります。単純な「強い・弱い」では比較できません。
血糖降下作用は、開始前の血糖、残存するインスリン分泌、腎機能、用量、併用薬などに左右されます。看護では、どの薬が最も強いかではなく、患者にとってどのリスクを観察すべきかを考えます。
主な作用
- DPP-4阻害薬
- 内因性インクレチンを分解しにくくする
- SGLT2阻害薬
- 腎臓での糖の再吸収を抑える
- GLP-1受容体作動薬
- GLP-1受容体を薬理学的に刺激する
投与経路
- DPP-4阻害薬
- 経口
- SGLT2阻害薬
- 経口
- GLP-1受容体作動薬
- 注射が中心。経口セマグルチドもある
体重への影響
- DPP-4阻害薬
- おおむね中立
- SGLT2阻害薬
- 減少傾向
- GLP-1受容体作動薬
- 減少傾向
単独時の低血糖
- DPP-4阻害薬
- 少ない
- SGLT2阻害薬
- 少ない
- GLP-1受容体作動薬
- 少ない
併用時の注意
- DPP-4阻害薬
- SU薬・インスリンで増加
- SGLT2阻害薬
- SU薬・インスリンで増加
- GLP-1受容体作動薬
- SU薬・インスリンで増加
特徴的な観察
- DPP-4阻害薬
- 皮膚症状、腎機能
- SGLT2阻害薬
- 脱水、感染症、ケトン
- GLP-1受容体作動薬
- 消化器症状、摂取量、体重
心臓・腎臓への効果
- DPP-4阻害薬
- 製品・対象により評価が異なる
- SGLT2阻害薬
- 一部製品で心不全・腎疾患への利益が確認されている
- GLP-1受容体作動薬
- 一部製品で心血管・腎イベントへの利益が確認されている
| 項目 | DPP-4阻害薬 | SGLT2阻害薬 | GLP-1受容体作動薬 |
|---|---|---|---|
| 主な作用 | 内因性インクレチンを分解しにくくする | 腎臓での糖の再吸収を抑える | GLP-1受容体を薬理学的に刺激する |
| 投与経路 | 経口 | 経口 | 注射が中心。経口セマグルチドもある |
| 体重への影響 | おおむね中立 | 減少傾向 | 減少傾向 |
| 単独時の低血糖 | 少ない | 少ない | 少ない |
| 併用時の注意 | SU薬・インスリンで増加 | SU薬・インスリンで増加 | SU薬・インスリンで増加 |
| 特徴的な観察 | 皮膚症状、腎機能 | 脱水、感染症、ケトン | 消化器症状、摂取量、体重 |
| 心臓・腎臓への効果 | 製品・対象により評価が異なる | 一部製品で心不全・腎疾患への利益が確認されている | 一部製品で心血管・腎イベントへの利益が確認されている |
DPP-4阻害薬では「低血糖が少ない」だけで終わらせない
この章の要点DPP-4阻害薬は、血糖が高いときに働くインクレチン作用を保ち、インスリン分泌を助けるとともにグルカゴン分泌を抑えます。そのため、単独では低血糖が比較的少なく、体重への影響も小さい薬です。
ただし、SU薬、速効型インスリン分泌促進薬、インスリンと併用すると低血糖リスクが高くなります。特に高齢者や腎機能低下患者では、併用薬を含めた確認が欠かせません。
多くの製品では腎機能に応じた投与設計が必要ですが、扱いは製品ごとに異なります。さらに、まれでも見逃したくない所見が水疱性類天疱瘡です。かゆみを伴う浮腫性紅斑、張りのある水疱、びらんが現れた場合は、単なる湿疹と決めつけず、薬剤名と開始時期を添えて処方医へ速やかに報告します。
循環・体液量
- 観察項目
- 血圧、脈拍、起立時症状、口渇、体重の推移
- 注意する患者
- 高齢者、利尿薬使用者。体重減少に低血圧・口渇・摂取不足が重なる場合は脱水を考える
出納
- 観察項目
- 尿量、飲水量、下痢・嘔吐、食事量
- 注意する患者
- 摂取不足、発熱、感染症がある患者。尿量減少と血圧低下があれば腎血流低下も考える
腎機能
- 観察項目
- クレアチニン、eGFR、電解質とその推移
- 注意する患者
- CKD、NSAIDs・ACE阻害薬・ARB・利尿薬併用。過度または進行性の低下を症状・出納と合わせて報告する
尿路・性器
- 観察項目
- 排尿時痛、頻尿、残尿感、かゆみ、痛み、分泌物、発熱
- 注意する患者
- 感染症の既往がある患者。発熱や側腹部痛、全身状態悪化が加わる場合は速やかに報告する
会陰部
- 観察項目
- 強い痛み、腫脹、発赤、発熱、全身状態
- 注意する患者
- フルニエ壊疽が疑われる場合は緊急報告し、診察につなげる
| 観察領域 | 観察項目 | 注意する患者 |
|---|---|---|
| 循環・体液量 | 血圧、脈拍、起立時症状、口渇、体重の推移 | 高齢者、利尿薬使用者。体重減少に低血圧・口渇・摂取不足が重なる場合は脱水を考える |
| 出納 | 尿量、飲水量、下痢・嘔吐、食事量 | 摂取不足、発熱、感染症がある患者。尿量減少と血圧低下があれば腎血流低下も考える |
| 腎機能 | クレアチニン、eGFR、電解質とその推移 | CKD、NSAIDs・ACE阻害薬・ARB・利尿薬併用。過度または進行性の低下を症状・出納と合わせて報告する |
| 尿路・性器 | 排尿時痛、頻尿、残尿感、かゆみ、痛み、分泌物、発熱 | 感染症の既往がある患者。発熱や側腹部痛、全身状態悪化が加わる場合は速やかに報告する |
| 会陰部 | 強い痛み、腫脹、発赤、発熱、全身状態 | フルニエ壊疽が疑われる場合は緊急報告し、診察につなげる |
SGLT2阻害薬では血糖値と同時に水分・感染・ケトンを見る
この章の要点SGLT2阻害薬は、腎臓で再吸収される糖を尿中へ排泄させます。血糖だけでなく、体重や体液量にも影響するため、看護では脱水とケトアシドーシスが重要な観察点です。
尿量、口渇、血圧、起立時のふらつき、体重、食事・飲水量、嘔吐や下痢、腎機能を確認します。利尿薬、ACE阻害薬・ARB、NSAIDsなどの併用も、体液量や腎機能を評価する手掛かりになります。
尿路・性器感染症では、排尿時痛、頻尿、発熱、側腹部痛、外陰部のかゆみ・発赤などを確認します。会陰部の強い痛み、腫脹、発赤、発熱は、重篤な感染症の可能性があるため緊急性をもって報告します。
また、SGLT2阻害薬の使用中は、血糖が著しく高くなくても糖尿病ケトアシドーシスを起こすことがあります。悪心、嘔吐、腹痛、強い倦怠感、呼吸の変化があるときは、血糖値だけで否定せず、血中ケトンを優先して確認します。血中測定ができない場合は尿ケトンが参考になります。
発熱・下痢・嘔吐・摂取不良
- SGLT2阻害薬に関する確認
- シックデイの休薬指示、症状の開始時刻、摂取・飲水量
- 看護師の行動
- 予定投与前に休薬条件を確認し、連絡先と再開条件を患者へ説明する
悪心・腹痛・強い倦怠感
- SGLT2阻害薬に関する確認
- 血糖が著しく高くなくてもDKAを疑う
- 看護師の行動
- 速やかに報告し、血中ケトン体、血液ガス、電解質などを指示に従って確認する
予定手術
- SGLT2阻害薬に関する確認
- 術前3日前からの休薬計画
- 看護師の行動
- 最終内服日、術後の食事状況、再開指示を確認する
緊急手術
- SGLT2阻害薬に関する確認
- 最終服用時刻、摂取状況、ケトン体、酸塩基平衡
- 看護師の行動
- 手術を遅らせず周術期チームへ共有し、以後の投与と代謝評価を指示に従う
インスリン併用
- SGLT2阻害薬に関する確認
- 中止・過度の減量、打ち忘れ、ポンプトラブルがないか
- 看護師の行動
- インスリンの自己中断を防ぎ、食事が取れないときの個別指示を再確認する
極端な糖質制限・多量飲酒
- SGLT2阻害薬に関する確認
- 糖質摂取量、飲酒量・時期、嘔吐や絶食の有無
- 看護師の行動
- ケトーシスの誘因として具体的に聴取し、症状と合わせて報告する
| 状況 | SGLT2阻害薬に関する確認 | 看護師の行動 |
|---|---|---|
| 発熱・下痢・嘔吐・摂取不良 | シックデイの休薬指示、症状の開始時刻、摂取・飲水量 | 予定投与前に休薬条件を確認し、連絡先と再開条件を患者へ説明する |
| 悪心・腹痛・強い倦怠感 | 血糖が著しく高くなくてもDKAを疑う | 速やかに報告し、血中ケトン体、血液ガス、電解質などを指示に従って確認する |
| 予定手術 | 術前3日前からの休薬計画 | 最終内服日、術後の食事状況、再開指示を確認する |
| 緊急手術 | 最終服用時刻、摂取状況、ケトン体、酸塩基平衡 | 手術を遅らせず周術期チームへ共有し、以後の投与と代謝評価を指示に従う |
| インスリン併用 | 中止・過度の減量、打ち忘れ、ポンプトラブルがないか | インスリンの自己中断を防ぎ、食事が取れないときの個別指示を再確認する |
| 極端な糖質制限・多量飲酒 | 糖質摂取量、飲酒量・時期、嘔吐や絶食の有無 | ケトーシスの誘因として具体的に聴取し、症状と合わせて報告する |
GLP-1受容体作動薬では摂取量と消化器症状を追う
この章の要点GLP-1受容体作動薬は、血糖依存性にインスリン分泌を促し、グルカゴン分泌、食欲、胃内容排出などにも作用します。体重減少が期待できる一方、悪心、嘔吐、下痢、便秘、食欲低下が看護上の中心になります。
開始後や増量後には、症状の強さだけでなく、食事・飲水量、体重変化、尿量、腎機能、日常生活への影響を確認します。高齢者やフレイル患者では、過度の食欲低下や体重減少が筋力低下につながる可能性があります。
持続する強い上腹部痛や嘔吐では急性膵炎、右上腹部痛・発熱・黄疸では胆道系疾患を考えます。一部のGLP-1関連薬ではイレウスへの警告もあり、強い便秘、腹部膨満、持続する腹痛、嘔吐は速やかな評価が必要です。警告内容は製品ごとに確認します。
GIP/GLP-1受容体作動薬は別の系統ですが、消化器症状、摂取量低下、体重減少、SU薬・インスリン併用時の低血糖という観察点は共通します。いずれもインスリンの代替ではなく、インスリンが必要な患者で自己判断により中止すると重篤な高血糖やケトアシドーシスにつながります。
毎日注射
- 主な確認
- 投与時刻、用量、最終投与、デバイスと手技
- 間違いやすい点
- インスリンや別の注射薬と取り違える
週1回注射
- 主な確認
- 投与曜日、最終投与日、製品別の忘れ時対応
- 間違いやすい点
- 毎日投与する、別製品の規則を使う
経口セマグルチド
- 主な確認
- 空腹、約120mL以下の水、服用後少なくとも30分の飲食・他薬回避
- 間違いやすい点
- 朝食や他薬と同時に飲む、分割・粉砕・かみ砕きをする
GIP/GLP-1受容体作動薬
- 主な確認
- 一般名、適応、開始・増量時期、用量
- 間違いやすい点
- GLP-1受容体作動薬と完全に同一視する
配合注射剤
- 主な確認
- 含有成分、単位・用量、単剤処方の有無
- 間違いやすい点
- インスリンやGLP-1受容体作動薬の重複、mgと単位の混同
| 製剤 | 主な確認 | 間違いやすい点 |
|---|---|---|
| 毎日注射 | 投与時刻、用量、最終投与、デバイスと手技 | インスリンや別の注射薬と取り違える |
| 週1回注射 | 投与曜日、最終投与日、製品別の忘れ時対応 | 毎日投与する、別製品の規則を使う |
| 経口セマグルチド | 空腹、約120mL以下の水、服用後少なくとも30分の飲食・他薬回避 | 朝食や他薬と同時に飲む、分割・粉砕・かみ砕きをする |
| GIP/GLP-1受容体作動薬 | 一般名、適応、開始・増量時期、用量 | GLP-1受容体作動薬と完全に同一視する |
| 配合注射剤 | 含有成分、単位・用量、単剤処方の有無 | インスリンやGLP-1受容体作動薬の重複、mgと単位の混同 |
薬の選択に全員共通の「一番」はない
この章の要点日本の2型糖尿病治療では、全員に同じ第一選択薬を当てはめるのではなく、病態、安全性、併存疾患、生活背景を組み合わせて選択します。
確認するのは、インスリン分泌低下と抵抗性の程度、肥満、年齢、腎・肝機能、低血糖リスク、動脈硬化性心血管疾患、心不全、慢性腎臓病、服薬継続のしやすさ、費用、患者の希望です。一部のSGLT2阻害薬やGLP-1受容体作動薬には心臓・腎臓への利益が示されていますが、製品・対象・承認適応を確認する必要があります。
効果が不十分なときは、おおむね3か月を一つの目安として、服薬状況や生活背景を含めて再評価します。作用機序の異なる薬を組み合わせることがありますが、DPP-4阻害薬とGLP-1受容体作動薬、またはGIP/GLP-1受容体作動薬は併用しません。
軽度の悪心、食欲低下
- 考えること
- 比較的よくみられる胃腸障害
- 確認・共有
- 開始・増量日、症状の推移、摂取量、体重を確認する
嘔吐、下痢
- 考えること
- 脱水、急性腎障害
- 確認・共有
- 飲水量、尿量、血圧、起立時症状、体重、腎機能を組み合わせて報告する
持続する強い腹痛+嘔吐
- 考えること
- 急性膵炎
- 確認・共有
- 痛みの部位・開始時刻・持続、バイタル、最終投与日を添えて速やかに報告する
右上腹部痛、発熱、黄疸
- 考えること
- 胆石症、胆嚢炎、胆管炎など
- 確認・共有
- 痛みの部位、発熱、皮膚・眼球結膜の黄染、症状の経過を報告する
高度の便秘、膨満、嘔吐
- 考えること
- イレウス
- 確認・共有
- 排便・排ガス、腹部膨満の進行、嘔吐物、バイタルを確認し至急報告する
手術・鎮静を伴う検査
- 考えること
- 胃内容物残留、誤嚥リスク
- 確認・共有
- 薬剤名、投与間隔、最終投与日、消化器症状を周術期チームへ共有する
高齢者の急な体重減少
- 考えること
- 低栄養、サルコペニア、フレイル
- 確認・共有
- 食事量、筋力、歩行、ADLも評価し、多職種で栄養・治療計画を再確認する
| 症状・状況 | 考えること | 確認・共有 |
|---|---|---|
| 軽度の悪心、食欲低下 | 比較的よくみられる胃腸障害 | 開始・増量日、症状の推移、摂取量、体重を確認する |
| 嘔吐、下痢 | 脱水、急性腎障害 | 飲水量、尿量、血圧、起立時症状、体重、腎機能を組み合わせて報告する |
| 持続する強い腹痛+嘔吐 | 急性膵炎 | 痛みの部位・開始時刻・持続、バイタル、最終投与日を添えて速やかに報告する |
| 右上腹部痛、発熱、黄疸 | 胆石症、胆嚢炎、胆管炎など | 痛みの部位、発熱、皮膚・眼球結膜の黄染、症状の経過を報告する |
| 高度の便秘、膨満、嘔吐 | イレウス | 排便・排ガス、腹部膨満の進行、嘔吐物、バイタルを確認し至急報告する |
| 手術・鎮静を伴う検査 | 胃内容物残留、誤嚥リスク | 薬剤名、投与間隔、最終投与日、消化器症状を周術期チームへ共有する |
| 高齢者の急な体重減少 | 低栄養、サルコペニア、フレイル | 食事量、筋力、歩行、ADLも評価し、多職種で栄養・治療計画を再確認する |
開始前・入院時は薬剤名と患者背景を一緒に確認する
この章の要点安全な投与の出発点は、正確な薬歴と、薬の作用を変える患者背景の確認です。お薬手帳だけでなく、配合剤、注射薬、最終投与日、自己中断まで確かめます。
一般名・商品名・系統・配合成分
- 確認する理由
- 作用と重複、特徴的な有害事象を把握する
用法、最終投与日、飲み忘れ・自己中断
- 確認する理由
- 現在の薬効と周術期・シックデイ対応を判断する
糖尿病の病型、インスリン使用状況
- 確認する理由
- インスリン欠乏や中断によるケトアシドーシスを防ぐ
SU薬、速効型分泌促進薬、インスリンの併用
- 確認する理由
- 低血糖リスクを見積もる
血糖推移、HbA1c、低血糖歴
- 確認する理由
- 一時点と中長期の状態を分けて評価する
クレアチニン、eGFR、肝機能
- 確認する理由
- 使用可否、投与設計、有害事象のリスクを確認する
血圧、体重、尿量、食事・飲水量
- 確認する理由
- 脱水、浮腫、過度の体重減少を捉える
心不全、慢性腎臓病、心血管疾患
- 確認する理由
- 薬剤選択の目的を理解する
膵炎、胆石、イレウス、皮膚疾患、尿路感染症の既往
- 確認する理由
- 症状出現時の判断材料にする
妊娠・妊娠希望、予定手術・検査
- 確認する理由
- 薬剤の変更や休薬計画が必要になる
服薬・注射手技、認知機能、支援者
- 確認する理由
- 自宅で安全に継続できるか確認する
| 確認項目 | 確認する理由 |
|---|---|
| 一般名・商品名・系統・配合成分 | 作用と重複、特徴的な有害事象を把握する |
| 用法、最終投与日、飲み忘れ・自己中断 | 現在の薬効と周術期・シックデイ対応を判断する |
| 糖尿病の病型、インスリン使用状況 | インスリン欠乏や中断によるケトアシドーシスを防ぐ |
| SU薬、速効型分泌促進薬、インスリンの併用 | 低血糖リスクを見積もる |
| 血糖推移、HbA1c、低血糖歴 | 一時点と中長期の状態を分けて評価する |
| クレアチニン、eGFR、肝機能 | 使用可否、投与設計、有害事象のリスクを確認する |
| 血圧、体重、尿量、食事・飲水量 | 脱水、浮腫、過度の体重減少を捉える |
| 心不全、慢性腎臓病、心血管疾患 | 薬剤選択の目的を理解する |
| 膵炎、胆石、イレウス、皮膚疾患、尿路感染症の既往 | 症状出現時の判断材料にする |
| 妊娠・妊娠希望、予定手術・検査 | 薬剤の変更や休薬計画が必要になる |
| 服薬・注射手技、認知機能、支援者 | 自宅で安全に継続できるか確認する |
効果判定はHbA1cだけでなく経過を見る
この章の要点HbA1cは直近1~2か月の平均的な血糖状態を反映しますが、当日の低血糖、食後の急上昇、日内変動を単独で示すものではありません。
成人の一般的な合併症予防目標としてHbA1c 7%未満が示されていますが、年齢、罹病期間、臓器障害、低血糖リスク、認知機能、生活状況によって個別化されます。目標値だけを見て投薬の良否を判断してはいけません。
看護では、測定時刻を伴う血糖値、食事・運動との関係、低血糖の頻度、体重、血圧、尿量、腎機能、服薬状況を時系列で確認します。SGLT2阻害薬では尿糖が薬の作用によって増えるため、尿糖だけを「糖尿病の悪化」と判断しないことも重要です。
DPP-4阻害薬
- 心血管・腎領域の位置づけ
- 心血管安全性は概ね確認されている
- 解釈時の注意
- 心腎イベント減少を薬効群全体の効果としない。サキサグリプチン使用中は心不全症状にも注意する
SGLT2阻害薬
- 心血管・腎領域の位置づけ
- 心不全、CKD、大血管症二次予防で強い根拠がある
- 解釈時の注意
- 製品ごとの適応、eGFR、体液量、感染、DKAリスクを確認する
GLP-1受容体作動薬
- 心血管・腎領域の位置づけ
- 大血管症進行抑制と、特定の薬剤・対象における腎転帰改善の根拠がある
- 解釈時の注意
- 効果の強さは薬剤と対象集団で異なり、FLOW試験を薬効群全体へ一般化しない
経口・注射の違い
- 心血管・腎領域の位置づけ
- 投与経路だけでは心腎効果を判断できない
- 解釈時の注意
- 一般名、承認適応、根拠となった試験対象を照合する
血糖値が目標内
- 心血管・腎領域の位置づけ
- 心不全・腎保護・心血管リスク低減を目的に継続される場合がある
- 解釈時の注意
- 血糖値だけで不要と判断せず、処方目的と副作用を確認する
| 薬効群 | 心血管・腎領域の位置づけ | 解釈時の注意 |
|---|---|---|
| DPP-4阻害薬 | 心血管安全性は概ね確認されている | 心腎イベント減少を薬効群全体の効果としない。サキサグリプチン使用中は心不全症状にも注意する |
| SGLT2阻害薬 | 心不全、CKD、大血管症二次予防で強い根拠がある | 製品ごとの適応、eGFR、体液量、感染、DKAリスクを確認する |
| GLP-1受容体作動薬 | 大血管症進行抑制と、特定の薬剤・対象における腎転帰改善の根拠がある | 効果の強さは薬剤と対象集団で異なり、FLOW試験を薬効群全体へ一般化しない |
| 経口・注射の違い | 投与経路だけでは心腎効果を判断できない | 一般名、承認適応、根拠となった試験対象を照合する |
| 血糖値が目標内 | 心不全・腎保護・心血管リスク低減を目的に継続される場合がある | 血糖値だけで不要と判断せず、処方目的と副作用を確認する |
低血糖は薬単独ではなく併用薬と食事から評価する
この章の要点DPP-4阻害薬、SGLT2阻害薬、GLP-1受容体作動薬は単独では低血糖が少ない薬ですが、「起こらない薬」ではありません。特にインスリン、SU薬、速効型インスリン分泌促進薬との併用時は注意します。
一般に血糖値が70mg/dLを下回る場合は、症状がなくても低血糖として対応対象になります。一方、血糖が急速に低下した場合は70mg/dL以上でも症状が出ることがあり、高齢者などでは低値でも症状が乏しい場合があります。
冷汗、振戦、動悸、空腹感に加え、反応低下、見当識障害、言動の変化、眠気、けいれんを観察します。発生時は、食事摂取、運動、嘔吐・下痢、腎機能、投与時刻、併用薬を確認します。意識障害や嚥下困難がある患者に無理に経口摂取させず、緊急対応につなげます。
α-グルコシダーゼ阻害薬の使用中に低血糖が起きた場合は、ショ糖ではなくブドウ糖を用いる必要があります。具体的な処置量や再検時刻は施設手順と指示に従います。
入院時
- 必ず確認すること
- 一般名、配合剤、用量、最終服用・注射日時、持参薬と処方歴
- 記録・共有する内容
- 薬効群、処方目的、重複・中断の有無
投与前
- 必ず確認すること
- 血糖、食事量、水分、嘔吐・下痢、バイタル、腎機能
- 記録・共有する内容
- 休薬条件や副作用を疑う変化に該当しないか
手術・検査前
- 必ず確認すること
- SGLT2阻害薬・GLP-1受容体作動薬の使用、最終投与日、消化器症状
- 記録・共有する内容
- ケトアシドーシスと誤嚥に関わる情報を麻酔・検査チームへ共有する
症状出現時
- 必ず確認すること
- 血糖、バイタル、腹部症状、摂取量、尿量、尿路・会陰部症状
- 記録・共有する内容
- 薬剤開始・増量との時間関係、最終投与、併用薬、対応後の変化
退院時
- 必ず確認すること
- シックデイ、低血糖、投与忘れ、手術前の対応
- 記録・共有する内容
- 個別の中断・再開条件、連絡先、受診が必要な症状
自己注射指導
- 必ず確認すること
- 実際の操作、用量設定、投与日、保管、針の交換・廃棄
- 記録・共有する内容
- 本人・支援者が正しく再現できるか、支援が必要な操作
| 場面 | 必ず確認すること | 記録・共有する内容 |
|---|---|---|
| 入院時 | 一般名、配合剤、用量、最終服用・注射日時、持参薬と処方歴 | 薬効群、処方目的、重複・中断の有無 |
| 投与前 | 血糖、食事量、水分、嘔吐・下痢、バイタル、腎機能 | 休薬条件や副作用を疑う変化に該当しないか |
| 手術・検査前 | SGLT2阻害薬・GLP-1受容体作動薬の使用、最終投与日、消化器症状 | ケトアシドーシスと誤嚥に関わる情報を麻酔・検査チームへ共有する |
| 症状出現時 | 血糖、バイタル、腹部症状、摂取量、尿量、尿路・会陰部症状 | 薬剤開始・増量との時間関係、最終投与、併用薬、対応後の変化 |
| 退院時 | シックデイ、低血糖、投与忘れ、手術前の対応 | 個別の中断・再開条件、連絡先、受診が必要な症状 |
| 自己注射指導 | 実際の操作、用量設定、投与日、保管、針の交換・廃棄 | 本人・支援者が正しく再現できるか、支援が必要な操作 |
シックデイと周術期ではSGLT2阻害薬を最優先で確認する
この章の要点発熱、下痢、嘔吐、食欲不振などで食事が十分に取れないときは、SGLT2阻害薬の継続がケトアシドーシスや脱水につながるため、中止状況を確認し、処方医へ連絡します。
予定手術では、日本糖尿病学会のRecommendationはSGLT2阻害薬を術前3日前から中止し、十分な食事摂取が可能になってから再開するよう示しています。入院時には最終服用日、中止指示、再開条件を確認します。中止後も尿糖排泄やケトアシドーシスへの影響が続く場合があるため、「休薬済みだから除外できる」とは考えません。
GLP-1関連薬では胃内容排出遅延に伴う麻酔・深い鎮静時の誤嚥リスクが注意されていますが、一律の中止期間を自己判断しません。薬剤名、投与頻度、最終投与日、消化器症状を医療チームへ共有し、施設の周術期計画に従います。
シックデイでもインスリンを一律に中止してはいけません。特に1型糖尿病やインスリン分泌が著しく低下した患者では、中断がケトアシドーシスの原因になります。
DPP-4阻害薬は絶対に低血糖を起こさない
- 根拠に沿った理解
- 単独では低リスクだが、SU薬、グリニド薬、インスリンとの併用時は注意する
DPP-4阻害薬は腎機能に関係なく同じ量でよい
- 根拠に沿った理解
- リナグリプチン、テネリグリプチンを除く多くの薬剤で腎機能に応じた調整が必要。必ず一般名と電子添文を確認する
SGLT2阻害薬は血糖が正常ならDKAではない
- 根拠に沿った理解
- 正常に近い血糖でもケトアシドーシスを起こし得る。症状、ケトン体、酸塩基平衡を組み合わせて判断する
尿糖が出ているのは薬が効いていない証拠
- 根拠に沿った理解
- SGLT2阻害薬では、作用機序によって尿糖排泄が増える
GLP-1はすべて注射薬
- 根拠に沿った理解
- 毎日・週1回の注射薬に加え、経口セマグルチドがある
GLP-1は誰でも使える美容目的のやせ薬
- 根拠に沿った理解
- 製品ごとの承認された効能・用法に沿って使用する。美容・痩身のみを目的とする適応外使用の安全性・有効性は確認されていない
体重が減るほどよい
- 根拠に沿った理解
- 急な体重減少に摂取不足、筋力・ADL低下が伴う場合は、脱水、低栄養、サルコペニア、フレイルを考える
DPP-4とGLP-1は別の薬なので併用できる
- 根拠に沿った理解
- 作用経路が重なり、併用の有効性・安全性が十分確認されていない。配合剤を含めて成分を確認する
心腎保護は3群すべて同じ
- 根拠に沿った理解
- 根拠の強さ、対象患者、一般名、製品ごとの承認適応が異なる
| よくある誤解 | 根拠に沿った理解 |
|---|---|
| DPP-4阻害薬は絶対に低血糖を起こさない | 単独では低リスクだが、SU薬、グリニド薬、インスリンとの併用時は注意する |
| DPP-4阻害薬は腎機能に関係なく同じ量でよい | リナグリプチン、テネリグリプチンを除く多くの薬剤で腎機能に応じた調整が必要。必ず一般名と電子添文を確認する |
| SGLT2阻害薬は血糖が正常ならDKAではない | 正常に近い血糖でもケトアシドーシスを起こし得る。症状、ケトン体、酸塩基平衡を組み合わせて判断する |
| 尿糖が出ているのは薬が効いていない証拠 | SGLT2阻害薬では、作用機序によって尿糖排泄が増える |
| GLP-1はすべて注射薬 | 毎日・週1回の注射薬に加え、経口セマグルチドがある |
| GLP-1は誰でも使える美容目的のやせ薬 | 製品ごとの承認された効能・用法に沿って使用する。美容・痩身のみを目的とする適応外使用の安全性・有効性は確認されていない |
| 体重が減るほどよい | 急な体重減少に摂取不足、筋力・ADL低下が伴う場合は、脱水、低栄養、サルコペニア、フレイルを考える |
| DPP-4とGLP-1は別の薬なので併用できる | 作用経路が重なり、併用の有効性・安全性が十分確認されていない。配合剤を含めて成分を確認する |
| 心腎保護は3群すべて同じ | 根拠の強さ、対象患者、一般名、製品ごとの承認適応が異なる |
緊急報告が必要な症状を薬の系統から考える
この章の要点報告の優先度は、症状だけでなく、使用薬、最終投与、血糖・ケトン、バイタルサイン、摂取量を組み合わせて判断します。
意識変容、けいれん、嚥下困難
- 考える状態
- 重症低血糖など
- 確認・報告する内容
- 血糖、最終投与、食事、意識・気道の状態。緊急対応につなぐ
SGLT2使用中の悪心、嘔吐、腹痛、強い倦怠感、呼吸変化
- 考える状態
- 正常血糖に近いケトアシドーシスを含むDKA
- 確認・報告する内容
- 血糖だけで否定せず、血中ケトン、バイタル、摂取量、インスリン中断の有無を報告
口渇、低血圧、起立時ふらつき、乏尿、体重減少
- 考える状態
- 脱水、循環血液量低下、腎機能悪化
- 確認・報告する内容
- 入出量、体重、血圧、腎機能、利尿薬などの併用
排尿時痛、発熱、側腹部痛、外陰部症状
- 考える状態
- 尿路・性器感染症
- 確認・報告する内容
- 発症時期、尿所見、体温、局所所見
会陰部の強い痛み、発赤、腫脹、発熱
- 考える状態
- 重篤な会陰部感染症
- 確認・報告する内容
- 緊急性をもって医師へ報告
かゆみを伴う紅斑、張りのある水疱、びらん
- 考える状態
- DPP-4阻害薬関連の水疱性類天疱瘡
- 確認・報告する内容
- 薬剤名、開始時期、皮疹の部位と拡大、粘膜病変
持続する強い上腹部痛、背部への放散、嘔吐
- 考える状態
- 急性膵炎
- 確認・報告する内容
- GLP-1関連薬などの使用、発症時刻、腹痛・嘔吐の経過
右上腹部痛、発熱、黄疸
- 考える状態
- 胆道系疾患
- 確認・報告する内容
- 薬剤名、体温、疼痛部位、皮膚・眼球所見
強い便秘、腹部膨満、持続痛、嘔吐
- 考える状態
- イレウス
- 確認・報告する内容
- 対象薬、腹部所見、排便・排ガス、摂取状況
| 症状・所見 | 考える状態 | 確認・報告する内容 |
|---|---|---|
| 意識変容、けいれん、嚥下困難 | 重症低血糖など | 血糖、最終投与、食事、意識・気道の状態。緊急対応につなぐ |
| SGLT2使用中の悪心、嘔吐、腹痛、強い倦怠感、呼吸変化 | 正常血糖に近いケトアシドーシスを含むDKA | 血糖だけで否定せず、血中ケトン、バイタル、摂取量、インスリン中断の有無を報告 |
| 口渇、低血圧、起立時ふらつき、乏尿、体重減少 | 脱水、循環血液量低下、腎機能悪化 | 入出量、体重、血圧、腎機能、利尿薬などの併用 |
| 排尿時痛、発熱、側腹部痛、外陰部症状 | 尿路・性器感染症 | 発症時期、尿所見、体温、局所所見 |
| 会陰部の強い痛み、発赤、腫脹、発熱 | 重篤な会陰部感染症 | 緊急性をもって医師へ報告 |
| かゆみを伴う紅斑、張りのある水疱、びらん | DPP-4阻害薬関連の水疱性類天疱瘡 | 薬剤名、開始時期、皮疹の部位と拡大、粘膜病変 |
| 持続する強い上腹部痛、背部への放散、嘔吐 | 急性膵炎 | GLP-1関連薬などの使用、発症時刻、腹痛・嘔吐の経過 |
| 右上腹部痛、発熱、黄疸 | 胆道系疾患 | 薬剤名、体温、疼痛部位、皮膚・眼球所見 |
| 強い便秘、腹部膨満、持続痛、嘔吐 | イレウス | 対象薬、腹部所見、排便・排ガス、摂取状況 |
1型糖尿病・腎機能低下・高齢・妊娠では判断が変わる
この章の要点薬剤の一般的な特徴だけでは安全性を判断できない患者群があります。
- 1型糖尿病・高度インスリン欠乏:インスリンが治療の基本です。SGLT2阻害薬は一部製品に限られ、専門医による慎重な管理が必要です。GLP-1関連薬を始めても、必要なインスリンを自己判断で中止できません。
- 腎機能低下:DPP-4阻害薬などでは製品別の投与設計が必要です。SGLT2阻害薬は腎機能低下により血糖降下作用が弱まる一方、心臓・腎臓への適応は別に評価されることがあります。
- 高齢・フレイル:低血糖、脱水、転倒、食欲低下、筋肉量減少、服薬・注射手技の困難を一体として評価します。
- 妊娠・妊娠希望:妊娠中はインスリンを基本として治療を再評価します。セマグルチドでは、妊娠を希望する場合に予定妊娠の少なくとも2か月前から投与しないことが電子添文に記載されています。
- 肝機能障害:使用できない薬や慎重な評価が必要な薬があるため、系統だけでなく製品別の電子添文を確認します。
患者説明は「薬の目的」と「困ったときの行動」をセットにする
この章の要点患者が薬の名前を覚えるだけでは、安全な自己管理にはつながりません。何のための薬か、どの症状で相談するか、食べられない日にどうするかを説明します。
SGLT2阻害薬では、脱水と感染症の症状、シックデイ時の連絡方法を確認します。飲水の助言は、心不全や腎機能による制限を踏まえて個別化します。
GLP-1関連薬では、投与間隔、注射手技、保管方法、食事・飲水量、消化器症状、体重変化を確認します。経口セマグルチドの場合は、起床時など一日の最初の飲食前に、空腹の状態で約120mL以下の水とともに服用し、その後少なくとも30分は飲食や他の内服を避けるという製品固有の方法があります。錠剤は割ったり、砕いたり、かみ砕いたりしません。
説明後は、「発熱して食べられないときはどうしますか」「吐き気と腹痛があり、血糖がそれほど高くない場合はどうしますか」と患者自身の言葉で答えてもらいます。手術や内視鏡検査を受ける際には、糖尿病薬の名前と最終投与日を伝えるよう説明します。
架空事例:血糖162mg/dLでもDKAを除外しない
この章の要点架空の学習例です。78歳の2型糖尿病患者が基礎インスリンとSGLT2阻害薬を使用しています。嘔吐と食事摂取不良が続き、「食べていないから」とインスリンを自己中断しました。来院時血糖は162mg/dLでしたが、腹痛、強い倦怠感、深い呼吸がみられました。
この場合、「血糖が200mg/dL未満だからDKAではない」とは判断できません。看護師は、SGLT2阻害薬とインスリンの最終投与、食事・飲水量、嘔吐回数、尿量、バイタルサイン、意識状態を確認し、可能なら血中ケトンを測定して速やかに報告します。
報告では、「SGLT2阻害薬使用中」「インスリン中断あり」「嘔吐と摂取不良あり」「血糖162mg/dL」「腹痛・深い呼吸あり」という情報をまとめます。この事例の看護上の要点は、血糖値だけでなく、薬剤と症状の組み合わせから緊急性を判断することです。
糖尿病薬の看護は薬剤名を観察行動へ変換する
この章の要点糖尿病薬を理解する最終的な目的は、薬の暗記ではなく、患者の変化を予測して安全につなげることです。
DPP-4阻害薬では併用時低血糖、腎機能、皮膚症状、SGLT2阻害薬では体液量、感染症、ケトアシドーシス、GLP-1受容体作動薬では食事・飲水量、体重、消化器症状を重点的に確認します。
同じ系統でも適応、用法、腎機能への対応、警告は製品ごとに異なります。「薬剤名・最終投与・併用薬・症状・測定値・生活状況」を一つの情報として捉え、最新の電子添文、処方指示、施設手順につなげることが看護師の役割です。
学習メモ・復習の予定気づきを自分の言葉で残す+
わかったこと、まだ曖昧なこと、次に調べたいことを残せます。
学びを、もう一度
復習日になると、ホームと復習リストで確認できます。
次に見返す日を決める
この記事の編集方針
主要な定義・数値・推奨は、公開時点で確認できるガイドライン、公的資料、学会資料、査読論文を優先して確認しています。未確認の編集メモは公開せず、根拠の範囲や限界を区別して、読者が原資料を確認できるよう参考資料を掲載します。
詳しい編集方針を見る →参考にした資料
- 糖尿病診療ガイドライン2024 第5章「2型糖尿病の薬物療法」日本糖尿病学会・2024年pp.84–100。非インスリン薬10系統、各系統の作用・副作用、薬剤選択、併用、約3か月ごとの再評価。原資料を開く
- コンセンサスステートメント「2型糖尿病の薬物療法のアルゴリズム(第2版)」日本糖尿病学会・2023年pp.717–724。病態、安全性、併存疾患、服薬継続性・費用を踏まえた薬剤選択と心・腎疾患への配慮。原資料を開く
- インクレチン関連薬の安全な使用に関するRecommendation 第2版日本糖尿病学会・2024年pp.1–3。併用時低血糖、インスリン中断の危険性、高齢・やせ・フレイル、類天疱瘡、膵炎、胆道系疾患。原資料を開く
残り11件の参考資料を見る原資料・発行元・発行年を確認できます+
- 糖尿病治療におけるSGLT2阻害薬の適正使用に関するRecommendation日本糖尿病学会・2022年改訂pp.2–5。脱水、感染症、ケトアシドーシス、シックデイ、術前3日前からの中止、再開条件。原資料を開く
- 糖尿病診療ガイドライン2024 第6章「インスリンによる治療」日本糖尿病学会・2024年pp.114–118。インスリン製剤の位置付け、絶対的・相対的適応、低血糖などの注意点。原資料を開く
- 糖尿病診療ガイドライン2024 第17章「妊婦の糖代謝異常」日本糖尿病学会・2024年pp.364–365。妊娠前からの管理、妊娠中の薬物療法とインスリンの位置付け。原資料を開く
- PMDAからの医薬品適正使用のお願い No.15「DPP-4阻害薬による類天疱瘡への適切な処置について」