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目次この記事でわかること16項目+
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読む前に押さえたいこと
「モニターで1拍抜けた」「予定の位置にP波もQRS波もない」「P波はあるのにQRS波が続かない」。どれも同じ“ポーズ”に見えますが、止まった場所は同じとは限りません。洞結節が興奮を作らなかったのか、作った興奮が心房へ出られなかったのか、心房から心室へ伝わらなかったのか、予定より早い心房興奮が伝導されなかったのかを順に考えます。本稿では、波形の見方だけでなく、患者の症状・循環状態、追加検査、看護観察と報告の意味までつなげて解説します。
最初の結論:欠けた波より「P波の時刻」と「P波の後」を見る
この章の要点ポーズを見たら、最初に「P波が予定時刻にあるか」を確かめます。次に、そのP波の後へQRS波が続くかを見ます。この2段階で、障害を洞結節側と房室伝導側に大きく分けられます。
予定時刻のP波もQRS波も欠けるなら、洞停止または洞房ブロックが候補です。予定どおりのP波はあるのにQRS波が欠けるなら、房室ブロックを考えます。予定より早い、形の異なるP波があり、その後にQRS波がなければ、非伝導性心房期外収縮、いわゆるblocked PACが候補です。
ただし、これは入口の整理です。体表心電図は洞結節そのものの電気活動を直接記録していません。T波に重なった小さなP波、基線動揺、電極不良、補充収縮があると見え方が変わります。患者の循環状態を先に確認しつつ、波形は前後を含めて読みます。
予定時刻のP波もQRS波もない
- 主な候補
- 洞停止、洞房ブロック
- 次に確かめること
- 休止前後のPP間隔、休止が基本PPの整数倍か、補充収縮の有無
P波は予定どおりだがQRS波がない
- 主な候補
- 第2度以上の房室ブロック
- 次に確かめること
- P波が規則的に進むか、PR間隔の変化、伝導比、QRS幅
予定より早いP波がありQRS波がない
- 主な候補
- 非伝導性心房期外収縮
- 次に確かめること
- 先行T波の変形、異所性P波の形、回復周期
波形が突然平坦・乱れるが脈拍は保たれる
- 主な候補
- アーチファクト、電極・誘導の問題
- 次に確かめること
- 電極、リード線、別誘導、触診脈・プレチスモグラム
| 最初に見えること | 主な候補 | 次に確かめること |
|---|---|---|
| 予定時刻のP波もQRS波もない | 洞停止、洞房ブロック | 休止前後のPP間隔、休止が基本PPの整数倍か、補充収縮の有無 |
| P波は予定どおりだがQRS波がない | 第2度以上の房室ブロック | P波が規則的に進むか、PR間隔の変化、伝導比、QRS幅 |
| 予定より早いP波がありQRS波がない | 非伝導性心房期外収縮 | 先行T波の変形、異所性P波の形、回復周期 |
| 波形が突然平坦・乱れるが脈拍は保たれる | アーチファクト、電極・誘導の問題 | 電極、リード線、別誘導、触診脈・プレチスモグラム |
正常では洞結節の興奮がP波になり、その後にQRS波が続く
この章の要点正常洞調律では、洞結節が作った興奮が心房へ広がってP波となり、房室結節、ヒス束、脚、プルキンエ線維を通って心室へ届くとQRS波になります。したがって、P波は心房興奮、QRS波は心室興奮を表します。
洞結節の興奮自体は体表心電図に直接現れません。見えるのは、その興奮が心房へ広がった結果であるP波です。このため「P波がない」という所見だけでは、洞結節が発火しなかった洞停止と、発火したが心房へ出られなかった洞房ブロックを常に確定できるわけではありません。
一方、P波が見えているのにQRS波が続かない場合は、少なくとも心房までは興奮しています。そこで問題の場所を房室伝導系へ移して考えます。ただし、そのP波が洞性で予定どおりなのか、予定より早い異所性P波なのかを先に見分ける必要があります。
波形は1拍だけでなく、欠落の前後を同じ物差しで測る
この章の要点鑑別には、欠けた1拍だけでなく、その前後のPP・PR・RR間隔を連続して測ることが必要です。正常に見える数拍から基本のPP間隔を取り、P波が次に来る予定位置を同じ間隔で延長します。
まずP波を追います。P波が予定位置にあるか、早いか、遅いか、形がほかの洞性P波と同じかを見ます。次にPR間隔を比べ、徐々に延長しているか、伝導した拍では一定かを確認します。最後にRR間隔、QRS幅、補充収縮の形を見ます。
モニターが示す心拍数や「pause」「SVPC」「AV block」といった自動判定は出発点であり、確定診断ではありません。記録速度、誘導、フィルター、電極状態を確認し、可能ならイベントの開始前・最中・回復後を保存します。
洞停止では予定時刻のP波が出ず、休止は基本PPの整数倍にならないことが多い
この章の要点洞停止は、洞結節が一時的に興奮を作れず、予定位置に洞性P波が現れない状態です。P波がないため、それに続くはずのQRS波も通常は現れません。休止が長ければ、心房、房室接合部、心室から補充収縮が出て心室拍を再開させることがあります。
日本の[不整脈診断ガイドライン](https://www.j-circ.or.jp/cms/wp-content/uploads/2022/03/JCS2022_Takase.pdf)では、洞不全症候群の心電図分類で、洞停止のPP間隔を基本調律のPP間隔の150%以上と説明しています。一方、[ACC/AHA/HRSの徐脈ガイドライン](https://www.ahajournals.org/doi/10.1161/CIR.0000000000000628)では3秒を超える洞性ポーズを洞機能不全の構成要素として扱いますが、3秒超という所見だけで洞機能不全と診断してはならないとしています。つまり、150%や3秒は同じ目的の数値ではなく、単独で重症度、報告要否、ペースメーカ適応を決める線でもありません。
実際の鑑別では、休止が基本PPのぴったり2倍、3倍にならず、洞性P波の再開時刻にずれがあると洞停止を支持します。しかし洞性不整脈、隠れた異所性P波、補充収縮があると計算は崩れます。症状との時間的一致、反復性、薬剤・電解質・自律神経などの背景を合わせて判断します。
洞房ブロックでは洞結節が作った興奮が心房へ出られず、P波とQRS波がともに抜ける
この章の要点洞房ブロック、より正確には洞房出口ブロックは、洞結節で興奮が作られても周囲の心房へ伝わらない状態です。体表心電図ではその洞結節興奮が見えないため、予定位置のP波と、それに続くQRS波がともに欠けます。
典型的な第2度II型洞房ブロックでは、洞結節の時計は進み続けるため、休止を含むPP間隔が基本PP間隔の整数倍になります。たとえば基本PPが0.8秒で1回だけ出口がブロックされれば、見かけの休止は約1.6秒になります。
ただし「整数倍でなければ洞房ブロックではない」とは言えません。洞房ブロックには異なる伝導様式があり、呼吸性洞性不整脈や測定誤差も影響します。高度な洞房ブロックや洞停止は体表心電図だけでは区別できないことがあります。したがって、整数倍は典型例を支持する手掛かりとして使い、患者評価と長時間記録で補います。
房室ブロックではP波が進み続けても、一部または全部のP波にQRS波が続かない
この章の要点房室ブロックは、心房から心室へ向かう伝導が房室結節、ヒス束、ヒス・プルキンエ系のどこかで遅延または途絶する状態です。第2度以上では、予定どおりのP波があるのにQRS波が続かない拍が現れます。
Wenckebach型、すなわちMobitz I型では、一般にPR間隔が徐々に延長した後、P波の次のQRS波が1拍脱落し、その後は短いPR間隔から再開します。Mobitz II型では、洞性P波の周期が安定し、伝導した拍のPR間隔が一定のまま、突然P波が伝導されません。
2:1房室ブロックは、P波2個につきQRS波1個となる状態です。伝導したPR間隔を連続して2つ比較できないため、2:1という比率だけでMobitz I型かII型かを決められません。[JCS/JHRSの診断ガイドライン](https://www.j-circ.or.jp/cms/wp-content/uploads/2022/03/JCS2022_Takase.pdf)に沿って、症状、QRS幅、運動による変化、別の時間帯の波形、必要に応じて電気生理学的検査などでブロック部位を評価します。
高度房室ブロックでは複数のP波が連続して伝導されず、第3度、つまり完全房室ブロックでは心房から心室への伝導がなく、P波とQRS波が互いに独立します。P波が規則的に“行進”しているのにQRS波とのPR関係が一定しない場合は、房室解離を疑います。
第1度
- P波とQRS波の関係
- 全P波にQRS波が続くがPRが延長
- 読むときの注意
- 「脱落」はないため、本稿の中心となるポーズとは別
Mobitz I型
- P波とQRS波の関係
- PRが段階的に延長してQRSが脱落し、短いPRで再開
- 読むときの注意
- 夜間・迷走神経優位で生理的にみられる場合もあり、症状と背景を確認
Mobitz II型
- P波とQRS波の関係
- 伝導拍のPRは一定で、突然QRSが脱落
- 読むときの注意
- 2:1伝導をこの名称で即断しない
2:1
- P波とQRS波の関係
- P波2個にQRS波1個
- 読むときの注意
- 短い記録だけではI型・II型を分類できない
高度
- P波とQRS波の関係
- 2個以上のP波が連続して伝導されない
- 読むときの注意
- 心室拍数、補充調律、循環状態を迅速に確認
第3度
- P波とQRS波の関係
- P波とQRS波が独立
- 読むときの注意
- QRSは補充調律であり、幅・拍数と循環状態も重要
| 房室ブロック | P波とQRS波の関係 | 読むときの注意 |
|---|---|---|
| 第1度 | 全P波にQRS波が続くがPRが延長 | 「脱落」はないため、本稿の中心となるポーズとは別 |
| Mobitz I型 | PRが段階的に延長してQRSが脱落し、短いPRで再開 | 夜間・迷走神経優位で生理的にみられる場合もあり、症状と背景を確認 |
| Mobitz II型 | 伝導拍のPRは一定で、突然QRSが脱落 | 2:1伝導をこの名称で即断しない |
| 2:1 | P波2個にQRS波1個 | 短い記録だけではI型・II型を分類できない |
| 高度 | 2個以上のP波が連続して伝導されない | 心室拍数、補充調律、循環状態を迅速に確認 |
| 第3度 | P波とQRS波が独立 | QRSは補充調律であり、幅・拍数と循環状態も重要 |
ブロックSVPCでは「予定より早いP波」がT波に隠れ、QRS波だけが抜けたように見える
この章の要点本稿でいう「ブロックSVPC」は、非伝導性心房期外収縮、すなわちblocked PACを指します。ただし、SVPCというモニター表示の定義は機種により異なり得るため、表示名だけで診断しません。
心房期外収縮は、本来の洞性P波より早い時刻に心房から興奮が起こります。その興奮が早すぎると、房室結節やその下流が直前の拍の不応期にあり、心室へ伝わりません。その結果、異所性P波はあるのにQRS波が続かず、見かけ上は1拍抜けます。
最大の手掛かりは、欠落直前のT波です。[日本不整脈心電学会の提示例](https://new.jhrs.or.jp/contents_jse/actibook/book01_3/pageindices/index31.html)のように、早い異所性P波がT波やST部分に重なると、T波の先端が尖る、切れ込みが入る、二峰性になるなど、ほかのT波と形が違って見えます。複数誘導でT波を並べて比べ、早期のP′波を探します。
期外収縮が洞結節のタイミングをリセットするため、回復後の洞性P波までの休止は、基本PP間隔の正確な2倍にならないことが多くあります。ただし、この関係だけで決めず、早期性とP波形を優先します。blocked PACを洞停止やMobitz II型房室ブロックと誤ると、病態の評価が大きく変わるため、短い単一誘導で断定しないことが重要です。
4つの鑑別は「P波の有無」ではなく「P波がいつ出たか」で整理する
この章の要点4つの波形を分ける中心は、予定時刻に洞性P波が来るか、予定より早い異所性P波があるかです。P波のタイミングを確認した後に、QRS波との関係と休止時間を重ねます。
休止が基本PPの整数倍なら典型的な第2度II型洞房ブロックを支持します。整数倍でないP波欠落は洞停止を支持します。規則的な予定時刻のP波だけがQRSへ伝わらなければ房室ブロック、T波に重なる早いP′波がQRSへ伝わらなければblocked PACを考えます。ただし、どれも単一所見だけで確定しません。
洞停止
- 予定時刻のP波
- ない
- 欠落部のQRS
- 通常ない
- 間隔・形の手掛かり
- 休止が基本PPの整数倍にならないことが多い
- 主な限界
- 洞結節活動は体表心電図で直接見えない
洞房ブロック
- 予定時刻のP波
- ない
- 欠落部のQRS
- 通常ない
- 間隔・形の手掛かり
- 典型的な第2度II型では休止が基本PPの整数倍
- 主な限界
- ほかの型、洞性不整脈、高度ブロックでは判定困難
第2度房室ブロック
- 予定時刻のP波
- 予定どおりにある
- 欠落部のQRS
- 一部ない
- 間隔・形の手掛かり
- P波は規則的。PRの推移でI型・II型を検討
- 主な限界
- 2:1は短い記録だけでI型・II型に分類不能
blocked PAC
- 予定時刻のP波
- 予定より早いP′波がある
- 欠落部のQRS
- P′波の後にない
- 間隔・形の手掛かり
- P′波がT波を変形し、回復周期は非代償性になりやすい
- 主な限界
- P′波が小さい、T波内に埋没、単一誘導では見逃す
| 鑑別 | 予定時刻のP波 | 欠落部のQRS | 間隔・形の手掛かり | 主な限界 |
|---|---|---|---|---|
| 洞停止 | ない | 通常ない | 休止が基本PPの整数倍にならないことが多い | 洞結節活動は体表心電図で直接見えない |
| 洞房ブロック | ない | 通常ない | 典型的な第2度II型では休止が基本PPの整数倍 | ほかの型、洞性不整脈、高度ブロックでは判定困難 |
| 第2度房室ブロック | 予定どおりにある | 一部ない | P波は規則的。PRの推移でI型・II型を検討 | 2:1は短い記録だけでI型・II型に分類不能 |
| blocked PAC | 予定より早いP′波がある | P′波の後にない | P′波がT波を変形し、回復周期は非代償性になりやすい | P′波が小さい、T波内に埋没、単一誘導では見逃す |
「3秒」「QRS幅」「モニター表示」の1項目だけでは診断も緊急度も決まらない
この章の要点ポーズの長さは重要ですが、秒数だけで病名や治療適応を決めません。国際ガイドラインの「洞性ポーズ3秒超」は洞機能不全を考える構成要素であり、単独の診断基準ではありません。日本のガイドラインで示される覚醒時の心拍数や心停止時間の参考値も、症状との関連を追究する文脈で用いられています。
QRS幅はブロック部位や補充調律を考える手掛かりですが、幅が狭いから安全、広いから確定という単純な関係ではありません。2:1房室ブロックでは、QRS幅だけでMobitz I型・II型を確定できません。
また、ベッドサイドモニターは誘導が少なく、P波が小さい、T波と重なる、体動で基線が揺れると誤判定しやすくなります。自動解析で「pause」や「AV block」と表示されても、原波形、別誘導、患者の脈拍で確かめます。確定できないこと自体が、12誘導心電図や長時間記録を追加する理由になります。
原因検索では可逆的な要因と慢性の伝導障害を分けて考える
この章の要点徐脈やポーズを認めたら、波形名を付けるだけでなく、可逆的な原因がないかを確認します。[JCS/JHRSの診断ガイドライン](https://www.j-circ.or.jp/cms/wp-content/uploads/2022/03/JCS2022_Takase.pdf)が挙げる薬剤、電解質異常、内分泌異常、低体温、迷走神経緊張などに加え、低酸素、虚血・心筋梗塞、睡眠時無呼吸なども、洞機能や房室伝導を一時的に抑えることがあります。
一方、加齢に伴う線維化、虚血性心疾患、心筋症、心筋炎、アミロイドーシスや心サルコイドーシスなどの浸潤性疾患、手術やカテーテル治療後の障害など、慢性・器質的な背景もあります。可逆的要因が慢性の伝導障害を悪化させる場合もあり、二者択一ではありません。
確認する検査は状況で変わります。12誘導心電図はP波、PR、QRS、虚血所見を複数誘導で確認するために行います。心エコーは構造的心疾患や心機能を調べます。血液検査は電解質、甲状腺機能、薬物影響などの原因検索に使います。発作が間欠的なら、頻度に合わせてホルター心電図、イベントレコーダ、植込み型ループレコーダを選びます。運動時の症状や2:1房室ブロックの部位評価では運動負荷心電図が検討されます。どの検査も単独で全例を確定できるわけではありません。
看護観察は波形、脈拍、灌流、症状、原因候補を同じ時刻で結び付ける
この章の要点看護で最も重要なのは、モニター波形を患者の状態と同じ時刻で結び付けることです。波形が重く見えても無症状で循環が保たれる場合と、短いポーズでも急な意識変容や低血圧を伴う場合では、優先度が異なります。
まず患者へ行き、反応、気道・呼吸、皮膚色、冷汗、胸部不快感、呼吸困難、めまい、眼前暗黒感、失神・前失神を確認します。橈骨動脈などで実際の脈拍を触れ、血圧、呼吸数、SpO2、必要に応じて末梢循環や尿量の変化を見ます。心電図上のQRSが本当に有効な拍出を伴うか、プレチスモグラムや脈拍とも照合します。
次に、イベント前後の波形を保存します。基本PP、欠落を含むPP、PR、RR、QRS幅、最長休止、最低心拍数、発生回数、連続性、補充収縮を確認します。症状が出た正確な時刻を記録し、波形と一致するかを見ます。
さらに、直前の体動、睡眠、吸引、排泄、疼痛、嘔気など迷走神経反射の誘因、酸素化の低下、発熱・感染兆候、服薬・点滴変更を確認します。β遮断薬、非ジヒドロピリジン系Ca拮抗薬、ジギタリス、抗不整脈薬など、徐脈や伝導抑制に関係し得る薬剤は、
低灌流を伴う徐脈・ポーズは波形確定を待たず緊急対応へつなぐ
この章の要点[AHAの2025年成人徐脈アルゴリズム](https://cpr.heart.org/-/media/CPR-Files/CPR-Guidelines-Files/2025-Algorithms/Algorithm-ACLS-Bradycardia-250514.pdf)が示す低血圧、急な意識変容、ショック徴候、虚血を疑う胸部不快感、急性心不全を示す呼吸困難・肺うっ血などが徐脈と同時にある場合は、循環不全を伴う徐脈として迅速な対応が必要です。反応がなく正常な呼吸や脈拍が確認できない場合は、波形分類より先に院内救急・蘇生手順へ移ります。
脈拍があっても循環不全がある、失神を反復する、ポーズが長く・頻回になる、心室拍数が低下する、新たなMobitz II型・高度・完全房室ブロックが疑われる、補充調律が不安定といった変化は、施設の緊急連絡基準に従って直ちに医師・迅速対応チームへ伝えます。AHAアルゴリズムの「心拍数は通常50/分未満」は急性徐脈を評価する入口であり、すべての患者に共通する報告境界ではありません。
報告では、「○時○分、意識状態と症状、血圧・脈拍・SpO2、最長休止と最低心拍数、P波とQRSの関係、QRS幅、反復回数、イベント前後の波形、直前の処置・活動、関連薬の最終投与、確認済みの電解質や酸素化」をまとめます。処置後も意識、血圧、脈拍、呼吸、再発波形を再評価し、変化を追加報告します。
治療の目的は灌流を保ち、可逆的原因を除き、危険な徐脈の再発を防ぐこと
この章の要点治療は波形名だけでなく、症状、循環動態、原因、ブロックの部位と程度で決まります。[JCS/JHRSの不整脈薬物治療ガイドライン](https://www.j-circ.or.jp/cms/wp-content/uploads/2020/01/JCS2020_Ono.pdf)に沿って、急性に循環が不安定なら、気道・呼吸・循環を支えながら原因を探し、医師が薬物治療や経皮的・経静脈的一時ペーシングを検討します。これは恒久治療まで、または可逆的原因が改善するまで灌流を保つ橋渡しです。
薬剤、高カリウム血症、低酸素、虚血などの可逆的原因があれば、その是正が中心です。原因が解消すると伝導が戻る場合があるため、すべてのポーズが恒久ペースメーカの対象ではありません。
恒久ペースメーカは、[JCS/JHRSの非薬物治療ガイドライン](https://www.j-circ.or.jp/cms/wp-content/uploads/2018/07/JCS2018_kurita_nogami.pdf)に基づき、症状との関連が確認された洞機能不全や、重要な第2度・高度・第3度房室ブロックなどで検討されます。洞機能不全では、症状と徐脈の関連が特に重要です。一方、Mobitz II型、高度、完全房室ブロックでは、現在の症状が乏しくてもブロック部位、可逆性、進行リスクを含めた専門的評価が必要です。
blocked PACという所見だけを理由にペースメーカ治療を決めるものではありません。異所性P波を見分け、症状、頻発性、ほかの不整脈、背景心疾患、誘因を評価して方針を決めます。
患者には「波が抜けた理由は複数あり、症状と長い記録で確かめる」と説明する
この章の要点患者へは、「心電図で1拍抜けたように見えても、心拍を作る場所が休んだ場合、電気が途中で伝わらなかった場合、予定より早い余分な興奮が伝わらなかった場合があります」と説明すると、違いを伝えやすくなります。
同時に、「波形だけでなく、そのときのめまい、失神、息苦しさ、胸部不快感、血圧や脈拍を合わせて判断します。短い記録で決められないときは12誘導心電図や長時間心電図を行います」と伝えます。症状が出た時刻と状況を記録してもらうことは、症状と不整脈の一致を確かめる助けになります。
不安を和らげるために「よくある」「心配ない」と一律に断定したり、反対に「1拍抜けたから危険」と決めつけたりしません。失神、強い息苦しさ、胸部症状などがあればすぐ知らせるよう、現在の状態と施設の連絡方法に合わせて具体的に説明します。
架空の学習例:同じ“1拍抜け”でも、P波の時刻で候補が変わる
この章の要点以下は理解のための架空例です。実在患者の事例ではありません。
例1では、基本PP間隔が0.8秒で規則的でした。P波とQRS波が1組欠け、休止を含むPP間隔が1.6秒でした。典型的な第2度II型洞房ブロックを支持します。ただし、症状、ほかの記録、洞性不整脈の有無を確認してから判断します。
例2では、予定位置にP波がありましたが、その後のQRS波がありません。P波は一定間隔で進み、伝導した拍のPR間隔も一定でした。Mobitz II型房室ブロックが候補です。もしP波2個にQRS波1個だけが続く2:1伝導なら、その比率だけでMobitz II型とは呼びません。
例3では、一見するとP波もQRS波も抜けていました。しかし欠落直前のT波だけに小さな切れ込みがあり、その位置は次の洞性P波の予定より早い時刻でした。T波内のP′波が心室へ伝わらなかったblocked PACが候補です。
どの例でも、波形名を答えて終わりではありません。患者の意識、血圧、脈拍、症状、反復性、原因候補を確認し、必要な追加記録と連携へつなげます。
まとめ:P波の予定時刻、QRSへの伝導、患者の灌流をこの順で確認する
この章の要点予定位置にP波・QRS波がないときは、まずP波を時間軸で追います。予定時刻のP波がなければ洞停止・洞房ブロック、予定どおりのP波にQRS波が続かなければ房室ブロック、予定より早いP′波にQRS波が続かなければblocked PACを考えます。
次にPP、PR、RR間隔とQRS幅を比較します。休止が基本PPの整数倍という所見は典型的な第2度II型洞房ブロックを支持し、PRの推移は第2度房室ブロックの分類を助けます。ただし、2:1房室ブロック、隠れたP′波、単一誘導、アーチファクトでは確定できません。
最後に、波形より先に患者を見ます。低灌流の有無、症状との時間的一致、経時変化、可逆的原因を確認し、12誘導心電図や長時間記録、迅速な報告・再評価へつなげることが、安全な看護判断の中心です。
学習メモ・復習の予定気づきを自分の言葉で残す+
わかったこと、まだ曖昧なこと、次に調べたいことを残せます。
学びを、もう一度
復習日になると、ホームと復習リストで確認できます。
次に見返す日を決める
この記事の編集方針
主要な定義・数値・推奨は、公開時点で確認できるガイドライン、公的資料、学会資料、査読論文を優先して確認しています。未確認の編集メモは公開せず、根拠の範囲や限界を区別して、読者が原資料を確認できるよう参考資料を掲載します。
詳しい編集方針を見る →参考にした資料
- 2022年改訂版 不整脈の診断とリスク評価に関するガイドライン日本循環器学会/日本不整脈心電学会・2022第2章1.1~1.2、表13・14、図6~9、pp.32-37を確認。洞不全症候群と房室ブロックの定義・分類、原因、症状、各種心電図検査、2:1房室ブロックの評価を見出し1、2、4-6、8-13で使用。原資料を開く
- 臨床心電図解析の実際―不整脈編 第3章 心房性不整脈日本不整脈心電学会心房(上室)期外収縮ECG A011、p.119を確認。ST-T部に隠れる早期異所性P波、非伝導性心房期外収縮、非代償性回復周期を見出し1、3、7、8、15で使用。原資料を開く
- 2018 ACC/AHA/HRS Guideline on the Evaluation and Management of Patients With Bradycardia and Cardiac Conduction DelayAmerican College of Cardiology/American Heart Association/Heart Rhythm Society・2018Section 2.2 Definitions、Table 3を確認。洞性ポーズ、洞停止、洞房出口ブロック、各房室ブロックの定義と、3秒超のポーズ単独では洞機能不全を診断しない点を見出し2、4-6、8、9、13で使用。原資料を開く