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読む前に押さえたいこと
モニターの心拍数が40回/分になったとき、「すぐ危険なのか」「洞性徐脈なのか、房室ブロックなのか」「何を見て報告すればよいのか」と迷うことがあります。徐脈の判断で大切なのは、数値だけでなく、患者の意識・血圧・呼吸・胸部症状と、P波からQRS波へ興奮が伝わる様子を同時に見ることです。この記事では、洞徐脈、洞不全症候群(SSS)、徐脈頻脈症候群、2:1・高度・完全房室ブロックを順に整理し、検査の目的、観察の意味、緊急連携、治療の考え方まで解説します。
徐脈は「何拍か」だけでなく、患者に必要な血流を保てているかで判断する
この章の要点徐脈とは心拍が遅い状態ですが、心拍数だけで病気や緊急性は決まりません。成人では従来60回/分未満を徐脈と表現してきましたが、急性期のアルゴリズムでは徐脈性不整脈を考える典型的な心拍数として50回/分未満が示されています。どちらも、それだけで治療を開始する診断基準ではありません。
睡眠中や運動習慣のある人では、無症状の洞性徐脈が生理的にみられます。一方、50回/分以上でも、その人に必要な心拍出量を保てず、低血圧、意識変容、ショック徴候、虚血性胸部不快感、急性心不全を伴えば、急性症候性徐脈として迅速な評価が必要です。
したがって看護では、「心拍数40回/分だから一律に緊急」「50回/分なら安全」と区切りません。普段の心拍数、発症時刻、症状、血圧・呼吸・末梢循環、波形の種類、薬剤や処置との時間関係をそろえて、循環への影響を判断します。
心拍数
- 確認する内容
- 実測脈拍、モニター値、最低値、持続時間、普段との差
- 判断にどう役立つか
- 遅さの程度と急な変化を捉える。ただし単独では重症度を決めない
リズム
- 確認する内容
- P波、QRS波、PR間隔、伝導比、休止、規則性
- 判断にどう役立つか
- 洞結節の問題か、房室伝導の問題かを考える
症状・循環
- 確認する内容
- 意識、失神・前失神、血圧、皮膚、尿量、胸部症状、呼吸状態
- 判断にどう役立つか
- 脳・心筋・全身への血流が不足しているかを判断する
原因と経過
- 確認する内容
- 新規か慢性か、薬剤変更、電解質、虚血、低酸素、体温、睡眠との関係
- 判断にどう役立つか
- 可逆的原因への対応と再発予測につなげる
| 判断する軸 | 確認する内容 | 判断にどう役立つか |
|---|---|---|
| 心拍数 | 実測脈拍、モニター値、最低値、持続時間、普段との差 | 遅さの程度と急な変化を捉える。ただし単独では重症度を決めない |
| リズム | P波、QRS波、PR間隔、伝導比、休止、規則性 | 洞結節の問題か、房室伝導の問題かを考える |
| 症状・循環 | 意識、失神・前失神、血圧、皮膚、尿量、胸部症状、呼吸状態 | 脳・心筋・全身への血流が不足しているかを判断する |
| 原因と経過 | 新規か慢性か、薬剤変更、電解質、虚血、低酸素、体温、睡眠との関係 | 可逆的原因への対応と再発予測につなげる |
洞結節でつくる問題と、房室結節より下で伝わらない問題を分けて考える
この章の要点徐脈性不整脈は大きく、電気刺激をつくる洞結節の機能が低下するものと、心房から心室へ刺激を伝える途中が障害されるものに分かれます。前者の代表が洞不全症候群、後者の代表が房室ブロックです。
正常では、右心房の洞結節が電気刺激をつくり、心房が興奮してP波が生じます。刺激は房室結節、ヒス束、脚、プルキンエ線維を通って心室へ伝わり、QRS波になります。洞性徐脈ではこの出発点が遅い一方、通常はP波に続いてQRS波が1対1で出ます。房室ブロックではP波が生じていても、途中で伝導が遅れたり途絶したりするため、P波に続くQRS波が欠けます。
心拍出量は心拍数と1回拍出量の積で決まります。心拍が遅くても1回拍出量を増やして補える人は無症状ですが、急な徐脈、心機能低下、発熱や活動による需要増加があると補償できません。脳血流が不足すればめまい・失神、全身血流が不足すれば倦怠感・冷感・尿量低下、肺うっ血を伴えば息切れや湿性ラ音が現れます。看護では、波形名より先に患者が保てている循環を確認します。
洞性徐脈は心電図所見、SSSは症状との関係を含む臨床的な病態である
この章の要点洞性徐脈があるだけで、洞不全症候群(sick sinus syndrome:SSS)とは診断しません。洞性徐脈はリズムの記述であり、SSSは洞結節自動能の低下や洞房伝導障害が慢性的に高度となり、症状を生じる病態です。
洞性徐脈では、洞性P波が規則的に出現し、基本的に各P波の後にQRS波が続きます。JCS/JHRS 2022のRubenstein分類I型では、原因不明の持続性洞徐脈を50回/分以下としていますが、これはSSSの心電図分類です。あらゆる成人に共通する「50回/分以下ならSSS」という診断基準ではありません。
SSSでは、徐脈と症状が同じ時刻に起きていることを心電図で示すことが重要です。全身倦怠感・息切れは持続性徐脈、突然のめまい・失神は洞停止や洞房ブロックと関連しやすいものの、症状は非特異的です。貧血、脱水、低血圧、神経疾患、薬剤など別の原因もあるため、症状―リズム相関を確かめます。
SSSは洞徐脈・洞停止/洞房ブロック・徐脈頻脈症候群に分けて理解する
この章の要点SSSは「ずっと遅い」だけではありません。洞結節から刺激が出ない休止、刺激が心房へ伝わらない洞房ブロック、心房性頻拍の前後に強い徐脈や休止が起こる徐脈頻脈症候群を含みます。
徐脈頻脈症候群では、心房細動(AF)がもっとも多く、心房粗動や心房頻拍の場合もあります。頻拍が止まった直後、抑制されていた洞結節がすぐに再開できず長い休止を生じ、動悸の後にめまい・失神が起こることが特徴です。頻拍中に使う心拍数調節薬や抗不整脈薬が徐脈を悪化させる場合があるため、頻脈と徐脈を一体で評価します。
JCS/JHRS 2022の分類では、洞停止はPP間隔が基本調律のPP間隔の150%以上へ突然延長するもの、洞房ブロックは休止時のPP間隔が基本PP間隔の整数倍となるものです。ただし体表心電図では洞結節そのものの興奮は見えず、両者を明確に区別しにくい場合があります。名称だけでなく、休止の長さ、症状との同時性、補充収縮の有無を捉えます。
また、徐脈頻脈症候群にAFを伴う場合、塞栓リスクはペースメーカを入れただけでは消えません。AFの再発、脳梗塞リスク、出血リスクを別に評価し、抗凝固療法や頻拍治療を個別に検討します。患者へは「遅い脈を支える治療」と「AFによる塞栓を予防する治療」は目的が異なると説明します。
I型
- 主な心電図所見
- 原因不明の持続性洞徐脈(分類上は50回/分以下)
- 症状を捉えるポイント
- 倦怠感、息切れ、運動時に心拍が上がらない、心不全徴候
II型
- 主な心電図所見
- 洞停止または洞房ブロック
- 症状を捉えるポイント
- 休止と同時のめまい、眼前暗黒感、失神。夜間だけなら長時間記録が必要
III型
- 主な心電図所見
- 徐脈頻脈症候群
- 症状を捉えるポイント
- 動悸の停止直後のめまい・失神、頻拍治療薬との関係、AFの塞栓リスク
| Rubenstein分類 | 主な心電図所見 | 症状を捉えるポイント |
|---|---|---|
| I型 | 原因不明の持続性洞徐脈(分類上は50回/分以下) | 倦怠感、息切れ、運動時に心拍が上がらない、心不全徴候 |
| II型 | 洞停止または洞房ブロック | 休止と同時のめまい、眼前暗黒感、失神。夜間だけなら長時間記録が必要 |
| III型 | 徐脈頻脈症候群 | 動悸の停止直後のめまい・失神、頻拍治療薬との関係、AFの塞栓リスク |
2:1・高度・完全房室ブロックは、P波が心室へ何回伝わるかで区別する
この章の要点房室ブロックでは、P波とQRS波の対応を数えると基本分類が見えてきます。2:1房室ブロックは心房興奮2回のうち1回だけが心室へ伝わる第2度房室ブロックです。高度房室ブロックはJCS/JHRS 2022では伝導比3:1以上、完全房室ブロックは心房から心室への伝導がなく、P波とQRS波が互いに無関係に出現する状態です。
「高度/high-grade」の表現は資料間で範囲が少し異なります。JCS/JHRS 2022は3:1以上の伝導比を高度房室ブロックとし、ACC/AHA/HRS 2018は正常な心房レートで2個以上のP波が連続して伝導しないが、一部の房室伝導は残る状態と定義しています。本記事の表は日本のガイドライン表記に合わせ、臨床で海外資料や記録と照合するときは、名称だけでなく実際のP:QRS比と連続非伝導数を確認します。
2:1房室ブロックでは、伝導するP波が連続しないため、PR間隔が徐々に延びるMobitz I型か、一定のPR間隔のまま突然脱落するMobitz II型かを、その短い波形だけで判別できないことが多くあります。したがって「2:1だからMobitz II型」と決めつけず、症状、QRS幅、出現状況、運動負荷での変化、必要時の心臓電気生理学的検査を組み合わせてブロック部位を評価します。
完全房室ブロックでも心室が直ちに停止するとは限らず、房室接合部や心室側の補充調律が心室を動かします。しかし補充調律は不安定になり得ます。一般にブロック部位が房室結節より遠位になるほど補充調律は遅く、重症度が高くなるため、補充調律の安定性、QRS幅、心拍数、休止、症状を継続して見ます。
2:1房室ブロック
- P波とQRS波の関係
- P波2個にQRS波1個
- 判断上の注意
- 短い記録だけではMobitz I型かII型か、ブロック部位を決めにくい
- 看護で重視すること
- 新規性、症状、伝導比の変化、QRS幅、長い記録
高度房室ブロック
- P波とQRS波の関係
- 伝導比3:1以上
- 判断上の注意
- 心室拍数が著しく低下し、完全房室ブロックへ進行し得る
- 看護で重視すること
- 低灌流、心停止、補充調律、緊急治療の準備
完全房室ブロック
- P波とQRS波の関係
- P波とQRS波が独立し、PR間隔に一定の関係がない
- 判断上の注意
- 一見2:1に見える瞬間があっても、長い記録では房室解離を示す
- 看護で重視すること
- 補充調律の消失・変化、失神、低血圧、心不全
| 種類 | P波とQRS波の関係 | 判断上の注意 | 看護で重視すること |
|---|---|---|---|
| 2:1房室ブロック | P波2個にQRS波1個 | 短い記録だけではMobitz I型かII型か、ブロック部位を決めにくい | 新規性、症状、伝導比の変化、QRS幅、長い記録 |
| 高度房室ブロック | 伝導比3:1以上 | 心室拍数が著しく低下し、完全房室ブロックへ進行し得る | 低灌流、心停止、補充調律、緊急治療の準備 |
| 完全房室ブロック | P波とQRS波が独立し、PR間隔に一定の関係がない | 一見2:1に見える瞬間があっても、長い記録では房室解離を示す | 補充調律の消失・変化、失神、低血圧、心不全 |
徐脈の心電図は「患者→P波→PとQRSの関係→PR間隔→QRS」の順で読む
この章の要点モニターで徐脈を見たら、最初に患者の反応、呼吸、触知脈、血圧を確認します。その後、波形が読める記録でP波を探し、P-P間隔は規則的か、各P波の後にQRS波があるか、P:QRS比はいくつか、伝導した拍のPR間隔は一定か、QRS幅はどうかを順に見ます。患者確認が波形診断より先です。
洞性徐脈に見えるときも、T波に隠れた非伝導P波がないかを確認します。2:1房室ブロックでは、見えているQRS波の中間付近にもう1個のP波が隠れることがあります。反対に、早く出た心房期外収縮が房室結節を通れずT波に重なると、洞停止や房室ブロックのような休止に見えることがあります。1誘導の短いモニター波形だけで決めず、誘導を変え、長めに記録し、可能なら12誘導心電図で確認します。
2:1房室ブロックと完全房室ブロックの区別では、数拍の見かけの比率ではなく、長い区間でP波とQRS波の関係を追います。伝導した拍のPR間隔が固定していれば2:1を支持し、P波とQRS波がそれぞれの周期で動いてPR間隔が変化すれば完全房室ブロックを考えます。ただし、偶然P波とQRS波が近づく拍もあるため、長い記録での房室解離を確認します。
新しい徐脈では、可逆的な原因を探しながら患者を安定化する
この章の要点徐脈を見つけたら、加齢性の刺激伝導系変性だけでなく、治療できる原因がないかを同時に確認します。可逆的原因の検索は、緊急治療を遅らせず並行して行います。
洞機能不全の一過性要因には、副交感神経緊張、薬剤、電解質異常、内分泌異常、頭蓋内圧亢進、低体温などがあります。低酸素、アシドーシス、睡眠呼吸障害も重要です。慢性的な原因には、加齢に伴う線維化、虚血性心疾患、心筋症、アミロイドーシス、心筋炎などがあります。房室ブロックでも、薬剤、虚血、電解質異常、睡眠時の迷走神経緊張、心臓手術・カテーテル治療後、浸潤性心筋症、心内膜炎などを考えます。
徐脈を起こし得る薬剤には、β遮断薬、非ジヒドロピリジン系Ca拮抗薬、ジゴキシン、複数の抗薬などがあります。点眼、向精神薬、鎮静・なども病歴に含めます。看護師は処方薬、市販薬、点眼薬、最近の増量、腎機能低下、服薬重複を確認しますが、
緊急性は、脳・心筋・全身への血流不足を示す症状で見極める
この章の要点徐脈に低血圧、急な意識変容、ショック徴候、虚血性胸部不快感、急性心不全が伴えば、血行動態不安定な徐脈として緊急対応が必要です。失神や反復する前失神、痙攣様運動も一過性脳虚血の可能性があります。
見るべき変化は「症状があるか」だけではありません。会話が遅くなる、落ち着きがなくなる、冷汗、四肢冷感、毛細血管再充満遅延、尿量低下、新しい酸素化悪化、呼吸仕事量増加、湿性ラ音なども低灌流や心不全を示し得ます。高齢者では転倒、活動性低下、食欲低下、せん妄が入口になることもありますが、いずれも非特異的なので、血圧・呼吸・心電図・発症経過を組み合わせます。
胸痛やST-T変化があれば、徐脈が心筋虚血を悪化させている場合と、心筋虚血が徐脈・房室ブロックを起こしている場合の両方を考えます。脈が触れない、正常呼吸がない場合は「徐脈の観察」を続ける場面ではなく、心停止として院内救命手順へ移ります。
検査は、波形の確定、症状との同時記録、原因と心機能の評価に分ける
この章の要点12誘導心電図は、P波、PR間隔、QRS幅、虚血や他の伝導障害を詳しく見る基本検査です。ただし短時間の一場面なので、発作が終わっていれば正常に見えることがあります。テレメトリー、ホルター心電図、イベントレコーダ、植込み型ループレコーダは、発作頻度に合わせて選び、症状とリズムを同時に記録するために使います。症状時刻を正確に残すことは、検査の診断力を高めます。
運動時の息切れや易疲労感があるSSSでは、運動負荷心電図で必要に応じて心拍数が上がるかを見ます。JCS/JHRS 2022は一般的な心拍応答不全の目安として、年齢予測最大心拍数「220-年齢」の85%に到達できない場合を示しています。ただし、服薬、運動能力、試験方法の影響を受けるため、単独の診断や報告基準にはしません。無症候性2:1房室ブロックでは、運動で伝導が改善するか悪化するかがブロック部位推定の手掛かりになります。
モビッツII型、2:1、発作性、高度、完全房室ブロックでは、経胸壁心エコー図検査(TTE)で器質的心疾患を評価することが推奨されています。血液検査では電解質、腎機能、甲状腺機能、薬物濃度などを病歴に応じて調べます。非侵襲的検査で2:1房室ブロックの部位を特定できない場合は、心臓電気生理学的検査(EPS)が検討されます。
心室拍数40回/分未満や3秒を超える心室停止は、ガイドラインの一部場面で治療判断の参考値として示されていますが、診断基準でも、全国共通の看護報告基準でもありません。測定時刻、覚醒・睡眠、症状、ブロック部位、基礎疾患と合わせて解釈します。
看護観察は「何を見るか」と「変化が何を意味するか」を結びつける
この章の要点徐脈の観察では、心電図だけを見続けず、同じ時点の意識、血圧、呼吸、末梢循環、症状をそろえます。経時変化と組合せが、単独の数値より重要です。
たとえば心拍数42回/分でも、以前から同程度で、会話・血圧・呼吸が安定し、歩行時に適切に上昇する場合と、新たに42回/分となり、血圧低下、冷汗、意識変容を伴う場合では意味が異なります。反対に心拍数55回/分でも、急性心不全やショックがあれば安心できません。
意識、めまい、失神、眼前暗黒感
- なぜ見るか
- 脳灌流低下を捉える
- 重要な変化と組み合わせ
- 徐脈・休止と同時、急な意識変容、転倒は緊急度が高い
血圧、脈圧、触知脈、皮膚、毛細血管再充満、尿量
- なぜ見るか
- 心拍出量と末梢灌流を評価する
- 重要な変化と組み合わせ
- 低血圧、冷汗、四肢冷感、尿量低下が重なるとショックを疑う
呼吸数、SpO2、呼吸仕事量、肺音、浮腫
- なぜ見るか
- 心不全・低酸素・原因疾患を捉える
- 重要な変化と組み合わせ
- 新しい低酸素、湿性ラ音、起座呼吸は急性心不全を疑う
胸部不快感、12誘導のST-T変化
- なぜ見るか
- 心筋虚血を原因・結果の両面から評価する
- 重要な変化と組み合わせ
- 胸痛と徐脈・房室ブロックの新規出現は迅速に連携する
P波、PR、QRS、伝導比、休止、補充調律
- なぜ見るか
- 徐脈の機序と進行を捉える
- 重要な変化と組み合わせ
- 2:1から3:1、完全房室ブロックへの変化、補充調律の消失は重要
発症時刻、持続、体位、運動、睡眠、食事・排泄、処置との関係
- なぜ見るか
- 迷走神経反射、心拍応答不全、夜間イベントを考える
- 重要な変化と組み合わせ
- 症状日誌と心電図時刻を合わせる
薬剤、最終投与、増量、腎機能、電解質、体温
- なぜ見るか
- 可逆的原因を探す
- 重要な変化と組み合わせ
- 変更後の徐脈、腎機能悪化、電解質異常は薬剤性を含め再評価する
| 観察項目 | なぜ見るか | 重要な変化と組み合わせ |
|---|---|---|
| 意識、めまい、失神、眼前暗黒感 | 脳灌流低下を捉える | 徐脈・休止と同時、急な意識変容、転倒は緊急度が高い |
| 血圧、脈圧、触知脈、皮膚、毛細血管再充満、尿量 | 心拍出量と末梢灌流を評価する | 低血圧、冷汗、四肢冷感、尿量低下が重なるとショックを疑う |
| 呼吸数、SpO2、呼吸仕事量、肺音、浮腫 | 心不全・低酸素・原因疾患を捉える | 新しい低酸素、湿性ラ音、起座呼吸は急性心不全を疑う |
| 胸部不快感、12誘導のST-T変化 | 心筋虚血を原因・結果の両面から評価する | 胸痛と徐脈・房室ブロックの新規出現は迅速に連携する |
| P波、PR、QRS、伝導比、休止、補充調律 | 徐脈の機序と進行を捉える | 2:1から3:1、完全房室ブロックへの変化、補充調律の消失は重要 |
| 発症時刻、持続、体位、運動、睡眠、食事・排泄、処置との関係 | 迷走神経反射、心拍応答不全、夜間イベントを考える | 症状日誌と心電図時刻を合わせる |
| 薬剤、最終投与、増量、腎機能、電解質、体温 | 可逆的原因を探す | 変更後の徐脈、腎機能悪化、電解質異常は薬剤性を含め再評価する |
報告は「波形名」より、患者状態・新規性・経過・対応への反応を先に伝える
この章の要点徐脈を認めたら、まず患者を直接見て、反応、呼吸、触知脈、血圧を確認します。不安定なら院内緊急対応を要請し、気道・呼吸・循環を支えながらモニター、除細動・経皮ペーシングが可能な機器、静脈路、12誘導心電図、採血などをチームで準備します。検査のために緊急治療を遅らせません。
安定していても、新規のモビッツII型、2:1、高度、完全房室ブロック、反復する長い休止、症状を伴う徐脈は、速やかな医師評価が必要です。担当医へ連絡し、状態に応じて循環器医や急変対応チームへつなぎます。施設の手順がある場合はそれに従いますが、数値だけで報告を見送らないことが大切です。
報告では、①いつから、初回か既知か、②最低心拍数と持続、実測脈拍、③P波とQRS波の関係、伝導比、QRS幅、休止、④意識・失神・胸部症状・呼吸、⑤血圧・SpO2・末梢循環、⑥直前の薬剤・処置・活動、⑦12誘導や保存波形、⑧行った対応と反応を伝えます。治療後も、心拍数上昇だけでなく、血圧・意識・脈の改善と原因の是正を再評価します。
治療は、循環を支える一時的治療と、再発を防ぐ恒久治療に分けて考える
この章の要点急性期治療の目的は、患者に必要な灌流を回復し、同時に可逆的原因を治すことです。無症候で循環が安定していれば、原因検索と経過観察が中心になります。血行動態不安定なら、呼吸・循環を支持し、適応を判断してアトロピンなどの薬物治療、一時的ペーシング、専門医連携へ進みます。
房室結節より遠位の高度房室ブロックでは、アトロピンへの反応が乏しく、心房拍数だけが上がって心室への伝導比が悪化することがあります。薬剤反応を待ち続けず、ペーシング準備を遅らせないことが重要です。経皮ペーシングは迅速に始められる橋渡しですが、意識のある患者には疼痛を伴います。波形上の電気的捕捉だけでなく、触知脈と血圧が得られる機械的捕捉を確認し、鎮痛・鎮静を含めチームで管理します。
恒久ペースメーカは、単に心拍数が遅いから植え込むのではありません。徐脈、洞停止、洞房ブロック、心拍応答不全が失神・息切れ・易疲労感・心不全などの原因と確認されたSSS、徐脈による明らかな症状がある第2度・高度・第3度房室ブロックなどが主要な適応です。無症候でも持続性完全房室ブロックや遠位ブロックなど、進行・停止リスクから検討する場合があります。可逆性、症状との因果関係、心機能、併存疾患、本人の希望を合わせて判断します。
徐脈頻脈症候群では、ペースメーカで徐脈を支えたうえで頻拍治療を行う場合があります。一方、AF停止時だけ洞停止する選択例では、AFアブレーションによりペースメーカを回避できる可能性が報告されていますが、適応を一律に決める十分な根拠はありません。専門医による個別判断が必要です。
患者には「脈の遅さ」ではなく、症状・原因・治療目的を分けて説明する
この章の要点患者へは、「脈が遅いだけで直ちに危険とは限りませんが、脳や全身へ十分な血液を送れているかを一緒に見ます」と説明すると、必要な観察の意味が伝わります。洞結節の問題か、心房から心室への伝導の問題かを、発電と配線にたとえることもできます。ただし実際の心臓には補充調律や自律神経の影響があり、単純な機械と同じではないと補います。
退院・外来では、失神、失神しそうな感覚、新しい息切れ、胸部不快感、動悸が止まった直後の強いめまいを早めに伝えるよう説明します。症状の時刻、活動、脈拍、血圧を記録できれば診断に役立ちます。失神歴がある間は転倒・外傷を避ける行動を相談し、運転や就労は病状と地域の規則に沿って主治医へ確認します。
薬が原因に見えても、自己判断で中断しないよう伝えます。中止で心不全や頻拍が悪化する薬もあるためです。ペースメーカ植込み後も、心房細動の再発や塞栓リスク、服薬の必要性は別に評価されるため、「機器が入ったから不整脈と脳梗塞の心配はすべてなくなった」とは説明しません。
「徐脈=SSS」「2:1=Mobitz II」「ペースメーカ=すべて解決」は誤解である
この章の要点徐脈で起こりやすい誤解は、心拍数と病名を直結させることです。洞性徐脈は生理的なことがあり、SSSは症状との関連を含めて診断します。2:1房室ブロックは第2度房室ブロックですが、短い波形だけではMobitz I型かII型かを決めにくく、ブロック部位の評価が必要です。完全房室ブロックは「QRSがまったく出ない」という意味ではなく、心房からの刺激が伝わらず、補充調律が心室を動かしている場合があります。
もう一つの誤解は、モニター表示をそのまま診断にすることです。電極不良、アーチファクト、T波に隠れたP波、非伝導性心房期外収縮、脈拍欠損によって、見かけの徐脈が起こります。患者と実脈を確認し、保存波形と12誘導心電図で確かめます。
ペースメーカは遅すぎる心拍を支える治療であり、心筋症、虚血、感染、電解質異常、AFの塞栓リスクを直接治すものではありません。植込み後も原因疾患と頻拍性不整脈の管理が必要です。
徐脈を見たら「患者の循環」「P波とQRS波」「可逆的原因」の3点に戻る
この章の要点徐脈の学習で最も大切なのは、波形名を暗記することではなく、判断の順番を身につけることです。まず患者に低灌流があるかを確認し、次にP波とQRS波の関係から洞結節の問題か房室伝導の問題かを考え、同時に薬剤・電解質・低酸素・低体温・睡眠呼吸障害などの原因を探します。
洞性徐脈とSSSは同義ではありません。2:1房室ブロックはMobitz型やブロック部位が未確定のことがあり、高度・完全房室ブロックでは補充調律の安定性と循環への影響を重視します。観察結果は症状の時刻と波形を対応させ、患者状態、新規性、経過、対応への反応まで報告します。数値ではなく全体像を見ることが、安全な看護判断につながります。
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この記事の編集方針
主要な定義・数値・推奨は、公開時点で確認できるガイドライン、公的資料、学会資料、査読論文を優先して確認しています。未確認の編集メモは公開せず、根拠の範囲や限界を区別して、読者が原資料を確認できるよう参考資料を掲載します。
詳しい編集方針を見る →参考にした資料
- 2022年改訂版 不整脈の診断とリスク評価に関するガイドライン日本循環器学会・日本不整脈心電学会・2022第2章1.1(32~34頁、表13、図6・7)でSSSの定義・分類・原因・症状・検査、第2章1.2(34~37頁、表14、図8・9)で2:1・高度・完全房室ブロックの定義、TTE・運動負荷・EPS、ブロック部位を確認。見出し1~10、14、15に使用。原資料を開く
- 不整脈非薬物治療ガイドライン(2018年改訂版)日本循環器学会・日本不整脈心電学会・2018第2章3.1・3.3(20~21頁、表7・9)で房室ブロックと洞不全症候群の恒久ペースメーカ適応、症状との因果関係、40回/分未満・3秒超を参考値として扱う条件を確認。見出し9、11、12、15に使用。原資料を開く
- 2020年改訂版 不整脈薬物治療ガイドライン日本循環器学会・日本不整脈心電学会・2020第2章(24頁以降)で徐脈性不整脈の症状、可逆的原因、薬物治療と一時的ペーシング、遠位房室ブロックでのアトロピン反応の注意を確認。第5章7.3・表47で徐脈頻脈症候群の頻拍治療を確認。見出し2、4、7、8、11、12に使用。原資料を開く
残り5件の参考資料を見る原資料・発行元・発行年を確認できます+
- 2024年JCS/JHRSガイドラインフォーカスアップデート版 不整脈治療日本循環器学会・日本不整脈心電学会・2024第3章で心房細動の脳卒中予防と包括管理を確認し、徐脈頻脈症候群でもペースメーカ治療とAFの塞栓予防を別に考える説明に使用。見出し4、13に使用。原資料を開く
- 2025年改訂版 心不全診療ガイドライン日本循環器学会・日本心不全学会・2025推奨表66で、SSS・心拍応答不全・第2度/高度/第3度房室ブロックによる心不全症状に対する恒久ペースメーカ植込みの推奨を確認。見出し8、12に使用。原資料を開く
- Part 9: Adult Advanced Life Support: 2025 American Heart Association Guidelines for Cardiopulmonary Resuscitation and Emergency Cardiovascular Care