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目次この記事でわかること15項目+
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読む前に押さえたいこと
採血結果に並ぶAST、Cr、Naなどを見て、「何の検査なのか」「高い・低いと何を観察するのか」で迷うことはありませんか。生化学検査を読む出発点は、略語と基準範囲の暗記に加え、その物質がどこで作られ、どう使われ、どう排泄されるかを理解することです。この記事では成人の血液生化学検査を中心に、蛋白、肝胆道、腎機能、電解質、糖、脂質、炎症、筋・膵酵素の主要項目を整理します。数値の意味から症状や経時変化の捉え方、報告と再評価までをつなげ、同じ採血で併用する心不全マーカーにも触れます。小児・妊娠中・透析中の専用基準や薬剤の投与量は扱わず、実際の判断では検査票の基準範囲と患者ごとの診療方針を確認します。
生化学検査は、血液中の成分から体の状態を捉える検査
この章の要点生化学検査は、血液中の蛋白、酵素、糖、脂質、電解質などを測り、臓器の働きや代謝の状態を捉える検査です。ただし、一つの値だけで病名は決まりません。同じ物質でも、作られる量、細胞から血液へ出る量、排泄される量、血液中での濃縮・希釈によって値が変わります。[国立病院機構埼玉病院「血液検査の解説ガイド」](https://saitama.hosp.go.jp/department/examination-blood-list.php)
例えば、肝細胞に含まれる酵素が血液中へ出ればASTやALTが上がります。一方、腎臓から排泄される物質では、排泄の低下が血中濃度の上昇につながります。「高い」という結果が同じでも、起きていることは異なります。
看護では、検査の目的を確認し、患者の症状、前回からの変化、治療や採血の条件を合わせて考えます。基準範囲から外れていても、それだけで疾患とはいえず、範囲内でも病態を否定できません。[日本臨床検査医学会「検査データの読み方と考え方」](https://www.jslm.org/books/guideline/2024/GL2024_05.pdf)
なお、白血球・ヘモグロビン・血小板などは血算、PT・APTTなどは凝固検査です。生化学検査と一緒に採血されても、測っている対象と判断の目的は異なります。
基準範囲、診断基準、治療目標、緊急報告の基準を分けて読む
この章の要点検査票のH・Lは、多くの場合、その施設の基準範囲より高い・低いことを示します。基準範囲と臨床判断値は別です。基準範囲は、一定の条件を満たす基準個体の検査値分布の中央95%などから設定され、病気の有無を直接区切る値ではありません。[日本臨床検査医学会「基準範囲・臨床判断値」](https://www.jslm.org/books/guideline/2024/GL2024_04.pdf)
この記事の基準範囲は、JCCLSの共用基準範囲と日本臨床検査医学会の2025年改定の学習用資料を中心に示します。成人一般診療を学ぶための範囲例であり、実際には検査票の範囲、測定法、患者背景を確認してください。Mgとリパーゼは施設が公表する範囲例を明示します。[JCCLS「共用基準範囲の解説と利用の手引き」](https://www.jccls.org/wp-content/uploads/2022/10/kijyunhani20221031.pdf)、[日本臨床検査医学会「学生用共通基準範囲」2025年改定](https://www.jslm.org/committees/standard/20251101.pdf)
単位と測定法も確認します。mg/dLとmg/Lはそのまま比較できません。U/Lは酵素活性を示す単位です。ALPとLDの表はIFCC法、すなわち国際臨床化学連合の標準法に沿った測定を前提にしています。過去の異なる測定法の数値を、そのまま経時比較しないことが大切です。
基準範囲
- 何を示すか
- 基準個体の検査値分布から設定した範囲
- 読み方の注意
- 範囲外だけで病気とはいえず、範囲内でも病気を除外できない
診断基準・診断閾値
- 何を示すか
- 特定の疾患や状態を判定する条件
- 読み方の注意
- 採血条件、症状、反復確認などを含めて判断する
重症度分類
- 何を示すか
- 病状や予後の程度を分ける分類
- 読み方の注意
- 基準範囲から外れた幅だけでは決まらない
治療目標・管理目標
- 何を示すか
- 治療によって目指す状態
- 読み方の注意
- 年齢、合併症、治療の危険性などで変わる
緊急報告・対応の基準
- 何を示すか
- 速やかな評価・対応が必要な結果を共有する仕組み
- 読み方の注意
- 項目・閾値・連絡経路は施設内で定める
| 数値・基準の種類 | 何を示すか | 読み方の注意 |
|---|---|---|
| 基準範囲 | 基準個体の検査値分布から設定した範囲 | 範囲外だけで病気とはいえず、範囲内でも病気を除外できない |
| 診断基準・診断閾値 | 特定の疾患や状態を判定する条件 | 採血条件、症状、反復確認などを含めて判断する |
| 重症度分類 | 病状や予後の程度を分ける分類 | 基準範囲から外れた幅だけでは決まらない |
| 治療目標・管理目標 | 治療によって目指す状態 | 年齢、合併症、治療の危険性などで変わる |
| 緊急報告・対応の基準 | 速やかな評価・対応が必要な結果を共有する仕組み | 項目・閾値・連絡経路は施設内で定める |
TP・Albは、蛋白の状態を複数の要因から考える
この章の要点TPとAlbは血液中の蛋白をみる項目ですが、Alb低値だけで低栄養とは判定できません。Albは主に肝臓で作られる蛋白で、その濃度には合成、蛋白の喪失、炎症、体液の状態などが関わります。[国立病院機構埼玉病院「血液検査の解説ガイド」](https://saitama.hosp.go.jp/department/examination-blood-list.php)、[JSPEN「GLIM FAQ」](https://files.jspen.or.jp/2024/03/GLIM-FAQ20240319.pdf)
TPはアルブミンとグロブリンなどを合わせた総量です。そのため、TPが保たれていても、蛋白の内訳まで同じとは限りません。TPとAlbは並べて確認し、尿蛋白、肝胆道の検査、CRPなどとも組み合わせます。
栄養状態を捉えるには、食事摂取量の低下がいつから続いているか、体重が減っているか、筋肉量や活動性が変わっているかを確認します。浮腫や体液貯留があれば、体重だけでは栄養状態の変化を捉えにくくなります。GLIMの考え方でも、栄養評価はAlbだけに置き換えず、妥当性が確認されたスクリーニングと身体・摂取状況の評価につなげます。[JSPEN「GLIM FAQ」](https://files.jspen.or.jp/2024/03/GLIM-FAQ20240319.pdf)
食事量の低下や体重・筋肉の変化がある場合は、値とともに経過を医師や管理栄養士へ共有します。摂取を妨げている嚥下、悪心、口腔内の問題なども伝えると、必要な支援を検討しやすくなります。
肝胆道系の検査は、細胞障害・胆汁の流れ・合成能を分けて捉える
この章の要点肝胆道系の検査は、肝細胞の障害と肝臓の働きを分けて読むと理解しやすくなります。AST・ALTは主に細胞障害、ALP・γ-GTは胆汁の流れ、Alb・ChEは合成能を考える手がかりです。[日本臨床検査専門医会「肝臓の検査」](https://jaclap.org/guests/guests-3155/)
AST・ALTは細胞内にある酵素です。細胞が障害されると血液中に出て、測定値が上がります。ただしASTは筋肉などにも存在するため、AST上昇だけで肝臓由来とは断定できません。筋症状やCKも確認します。[国立病院機構東京病院「各検査について」](https://tokyo-hp.hosp.go.jp/bumon/kensa/kensa.html)
ALPも肝胆道だけでなく骨などに由来します。γ-GT、ビリルビン、症状、画像所見を合わせて原因を考えます。ビリルビンは赤血球中のヘモグロビンの代謝で生じ、肝臓で処理されて排泄されるため、生成・処理・排泄のどこに問題があるかが重要になります。
看護では、黄疸、腹痛、発熱、尿や便の色の変化、食欲、意識状態を前回と比べます。飲酒歴、服薬・サプリメントの開始や変更時期も原因を考える情報です。検査値の上昇に新たな症状が重なった場合は、数値と症状の出現時刻を医師へ伝えます。
ChE低値も原因を一つに決められません。また、NH3、すなわちアンモニアは、肝臓での代謝などを評価する際に追加される検査です。意識変化がある場合は検査値を待たずに患者状態を評価し、血糖など他の原因も含めて医師へ共有します。[国立病院機構東京病院「各検査について」](https://tokyo-hp.hosp.go.jp/bumon/kensa/kensa.html)
BUN・Cr・eGFRは、腎機能と前回からの変化を合わせて読む
この章の要点腎機能は、一回のCrやeGFRだけでは判断できません。Crは筋肉に由来する代謝産物で、腎臓からの排泄が低下すると上がります。一方、筋肉量が少ない人ではCrが低く、Crから求めたeGFRが腎機能を実際より良く見せる場合があります。必要に応じて、シスタチンCなどによる評価を医師が検討します。[日本腎臓学会「CKD診療ガイド2024」第13章](https://jsn.or.jp/data/gl2024_ckd_ch13.pdf)
eGFRは「推算糸球体濾過量」の略で、腎臓が血液を濾過する能力を推定した値です。通常はmL/分/1.73m²という、標準的な体表面積に補正した単位で表示されます。
BUN、またはUNは尿素窒素です。尿素は蛋白代謝に伴って肝臓で作られ、腎臓から排泄されます。そのため、BUN高値には腎機能低下だけでなく、脱水、消化管出血、蛋白摂取や体蛋白分解の影響などもあります。[八戸市医師会臨床検査センター「尿素窒素」](https://labo-hachinohe-ishikai.jp/1592/)
慢性的な低下と急な変化を分ける
CKD、すなわち慢性腎臓病は、腎障害を示す所見、またはGFR60mL/分/1.73m²未満などの状態が、
Na・K・Clは、体液と心臓・神経・筋肉の状態につなげる
この章の要点電解質は、体液や細胞の働きを保つ成分です。Naは水分との関係、Kは心臓・筋肉への影響、Clは体液と酸塩基平衡との関係を考えると、観察の意味が分かります。[国立病院機構埼玉病院「血液検査の解説ガイド」](https://saitama.hosp.go.jp/department/examination-blood-list.php)
Na低値は「塩分不足」だけでは説明できない
血清Naは濃度です。Naと水のバランスが変われば、体内の水分が減った状態でも、増えた状態でも低Na血症が起こります。したがって、低値だけを見て塩分や輸液を増やす判断はできません。[日本内科学会「日常診療における低ナトリウム血症」](https://www.jstage.jst.go.jp/article/naika/112/9/112_1662/_pdf/-char/en)
低張性の低Na血症では、細胞内へ水が移動し、脳の症状が生じることがあります。意識、頭痛、悪心、けいれんなどを確認し、発症の速さ、飲水・輸液、尿量、浮腫、血圧の変化と合わせます。高血糖などでNaの解釈が変わる場合もあるため、血糖や血清浸透圧の情報も重要です。
低Naの治療は原因と症状に応じて行われます。過度の補正では浸透圧性脱髄症候群という重い神経障害が起こり得るため、治療中はNaの経時変化と意識・神経症状を合わせて報告します。補正速度を一律に決めて実施するものではありません。[日本内科学会の解説論文](https://www.jstage.jst.go.jp/article/naika/112/9/112_1662/_pdf/-char/en)
K異常は症状が乏しくても見逃さない
Kは消化管や腎臓からの喪失、腎臓からの排泄低下、細胞内外への移動などで変化します。低Kでは脱力、便秘、筋症状、不整脈などが生じる場合があります。嘔吐・、、などの使用状況も確認します。[厚生労働省「低血症」対応マニュアル](https://www.pmda.go.jp/files/000224778.pdf)
Ca・Mg・リンは、測定対象と関連する電解質を確認する
この章の要点Ca・Mg・リンは、骨だけでなく筋肉、神経、酵素やエネルギー代謝にも関わります。Caは総Caとイオン化Caを区別し、他の電解質や腎機能も合わせて読むことが大切です。[国立病院機構埼玉病院「血液検査の解説ガイド」](https://saitama.hosp.go.jp/department/examination-blood-list.php)
通常の「Ca」は総カルシウムで、蛋白に結合している分と、イオン化している分などを含みます。生理的な働きに直接関わるのはイオン化Caです。Albや血液のpHが変わると、総Caとイオン化Caの関係も変わります。
Albが低い場合に補正Caを用いることがありますが、補正値にも限界があります。カナダの成人を対象とした横断研究では、補正してもイオン化Caによる分類と一致しない場合が示されています。この研究だけで日本の治療手順を一律に変えるのではなく、補正値だけで異常を否定しないことが重要です。[JAMA Network Open掲載の原著論文](https://jamanetwork.com/journals/jamanetworkopen/fullarticle/2829419)
値と症状が合わない場合は、Alb、腎機能、酸塩基の情報を確認し、イオン化Caの測定が必要か医師・検査部門に相談します。新たな脱力、筋けいれん、しびれ、意識や脈の変化は、いつから生じたかを伝えます。
Mgとリンも単独値だけでなく、摂取状況、消化器症状、腎機能、薬剤・輸液の変更と合わせます。補充や調整後は、値が動いたかと、症状が改善・悪化していないかの両方を確認します。
Ca:総カルシウム
- 主な役割・測定対象
- 骨、神経・筋肉、血液凝固など。蛋白結合分も含む
- 範囲例と条件
- 共用基準範囲8.8~10.1mg/dL
Mg:マグネシウム
- 主な役割・測定対象
- 酵素の働き、心臓・筋肉、骨など
- 範囲例と条件
- 施設例1.8~2.6mg/dL。全国共通値ではない
IP/P:無機リン
- 主な役割・測定対象
- 骨やエネルギー代謝など
- 範囲例と条件
- 共用基準範囲2.7~4.6mg/dL
| 項目 | 主な役割・測定対象 | 範囲例と条件 |
|---|---|---|
| Ca:総カルシウム | 骨、神経・筋肉、血液凝固など。蛋白結合分も含む | 共用基準範囲8.8~10.1mg/dL |
| Mg:マグネシウム | 酵素の働き、心臓・筋肉、骨など | 施設例1.8~2.6mg/dL。全国共通値ではない |
| IP/P:無機リン | 骨やエネルギー代謝など | 共用基準範囲2.7~4.6mg/dL |
血糖は測定時点、HbA1cは一定期間の血糖状態を捉える
この章の要点血糖とHbA1cは、見ている時間が違う検査です。血糖は測定時点の濃度で、食事、薬剤、病態などによって変動します。HbA1cは赤血球のヘモグロビンに糖が結合した割合で、主に過去1~2か月の血糖状態を反映します。[国立病院機構東京病院「各検査について」](https://tokyo-hp.hosp.go.jp/bumon/kensa/kensa.html)
HbA1cは平均的な状態の指標なので、その日の低血糖や高血糖を直接示すものではありません。また、赤血球の寿命、出血・輸血などで、平均血糖との関係が変わる場合があります。[日本循環器学会・日本糖尿病学会合同ステートメント2026、表2](https://www.j-circ.or.jp/cms/wp-content/uploads/2026/05/jcs_jds_statement_202605.pdf)
「糖尿病型」と「糖尿病の診断」を分ける
下表は糖尿病型を判定する値です。通常は慢性的な高血糖を確認し、診断条件に沿って医師が判断します。HbA1cだけを反復して診断することはできません。
同じ採血でとがともに型の場合や、型の値と典型的な症状・確実な網膜症がある場合などには、1回の検査で診断される条件があります。診断に用いるは静脈血漿で測定し、簡易測定器やの値を、そのまま診断基準へ当てはめません。[日本学会「診断の指針」](https://www.jds.or.jp/uploads/files/publications/gl2024/01.pdf)
脂質は、採血条件と患者ごとの動脈硬化リスクを確認する
この章の要点脂質検査では、診断基準と管理目標を分けます。LDL-Cなどの値は動脈硬化のリスク評価に使われますが、治療で目指す値は、動脈硬化性疾患の既往、糖尿病などのリスクに応じて変わります。[日本動脈硬化学会「動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版」第2章](https://www.j-athero.org/jp/wp-content/uploads/publications/pdf/GL2022_s/02_230210.pdf)
LDL-C、HDL-Cなどは、血液中で脂質を運ぶリポ蛋白に含まれるコレステロールを測る項目です。総コレステロールだけでは、どの成分が増えているか分かりません。non-HDL-Cは総コレステロールからHDL-Cを引いた値で、LDL以外も含む評価に使われます。
TG、すなわち中性脂肪は採血条件で診断値が異なります。同ガイドラインでは、空腹時は10時間以上絶食した状態で、カロリーのない水分の摂取は可能としています。条件が不明な場合も、随時として扱います。
看護では、最終食事の時刻、飲酒、服薬の継続状況、血圧、喫煙、糖尿病などを確認します。結果を伝える際は、診断値を超えたかだけでなく、患者に設定された目標と、実行を妨げる生活上の事情を共有します。無症状だから治療や経過観察が不要とはいえません。
TC:総コレステロール
- 主な意味
- コレステロール全体の量
- 脂質異常症の診断基準など
- LDL-Cなどの内訳と合わせて評価する
LDL-C
- 主な意味
- 動脈硬化リスクの評価に用いる
- 脂質異常症の診断基準など
- 140mg/dL以上。120~139mg/dLは境界域
HDL-C
- 主な意味
- 脂質代謝・リスク評価の一項目
- 脂質異常症の診断基準など
- 40mg/dL未満
TG:中性脂肪
- 主な意味
- 食事の影響を受ける脂質
- 脂質異常症の診断基準など
- 空腹時150mg/dL以上、随時175mg/dL以上
non-HDL-C
- 主な意味
- TC-HDL-C
- 脂質異常症の診断基準など
- 170mg/dL以上。150~169mg/dLは境界域
| 項目 | 主な意味 | 脂質異常症の診断基準など |
|---|---|---|
| TC:総コレステロール | コレステロール全体の量 | LDL-Cなどの内訳と合わせて評価する |
| LDL-C | 動脈硬化リスクの評価に用いる | 140mg/dL以上。120~139mg/dLは境界域 |
| HDL-C | 脂質代謝・リスク評価の一項目 | 40mg/dL未満 |
| TG:中性脂肪 | 食事の影響を受ける脂質 | 空腹時150mg/dL以上、随時175mg/dL以上 |
| non-HDL-C | TC-HDL-C | 170mg/dL以上。150~169mg/dLは境界域 |
CRP・乳酸は、炎症や循環の状態を補う情報として使う
この章の要点CRPは炎症や組織障害を捉える手がかりですが、CRPだけで感染の有無や重症度は決まりません。感染以外でも上がるため、発熱、局所症状、バイタルサイン、測定時点と経過を合わせます。[国立病院機構東京病院「各検査について」](https://tokyo-hp.hosp.go.jp/bumon/kensa/kensa.html)
敗血症は感染に伴って生命を脅かす臓器障害が生じる状態です。日本版敗血症診療ガイドラインでも、CRPなどのバイオマーカー単独では診断に十分でなく、身体所見などの補助として用いる位置付けです。低いCRPだけを理由に、意識変化、呼吸数の増加、血圧低下、尿量減少を軽視しないことが大切です。[日本版敗血症診療ガイドライン2024、CQ1-6](https://www.jsicm.org/pdf/cq/J-SSCG2024/J-SSCG2024_Main.pdf)
乳酸は代謝で生じ、肝臓などで処理されます。循環が不十分な状態の評価に役立ちますが、肝機能の低下や薬剤などでも上がり、必ずしも組織への血流不足だけを示しません。[同ガイドライン、CQ3-1・Table 3-1-1](https://www.jsicm.org/pdf/cq/J-SSCG2024/J-SSCG2024_Main.pdf)
乳酸が上昇している場合は、血圧、意識、尿量、皮膚の冷感などと組み合わせて医師へ伝えます。治療後も、数値の変化と患者状態の変化が一致しているかを確認します。CRPの値だけでの開始・中止を判断したり、乳酸だけで輸液量を決めたりするものではありません。
CK・LD・AMY・LIPは、酵素の由来と症状を組み合わせる
この章の要点酵素の上昇は、どの組織に由来するかを考えることが重要です。CKは筋肉、LDは多くの組織、AMYは膵臓と唾液腺などに関係するため、一つの酵素だけで病変の場所を決められません。[国立病院機構東京病院「各検査について」](https://tokyo-hp.hosp.go.jp/bumon/kensa/kensa.html)
CK上昇では筋症状と腎機能を確認する
CKは筋細胞の障害などで上がり、運動や筋肉注射の影響も受けます。直前の活動や処置を確認し、病的な変化と区別する情報を集めます。
筋痛、強い脱力、赤褐色の尿などが重なる場合は、横紋筋融解症の可能性も考えられます。これは筋細胞の障害により筋成分が血液中へ流出する状態で、腎障害を伴うことがあります。CKの変化とともに、尿量・尿の色、Cr、電解質、薬剤の開始・変更時期を医師へ伝えます。[厚生労働省「横紋筋融解症」対応マニュアル](https://www.pmda.go.jp/files/000143227.pdf)
LDは多くの組織に存在し、上昇だけでは臓器を特定しにくい項目です。検体の溶血の影響も確認します。
膵酵素は腹部症状・画像所見と合わせる
AMY上昇は膵臓由来とは限りません。LIPや膵型アミラーゼなど、医師が選択した関連検査と合わせて評価します。
急性膵炎の診断では、急性の上腹部痛・圧痛、膵酵素の上昇、画像所見の3項目中2項目以上を満たし、他の膵疾患や急性腹症を除外する条件があります。酵素の値だけで診断・重症度を決めません。[日本膵臓学会誌「急性膵炎の診断と重症度判定」](https://www.jstage.jst.go.jp/article/suizo/37/5/37_215/_pdf/-char/ja)
看護では、痛みの部位・出現時刻・変化、嘔吐、血圧、呼吸、意識、尿量などを確認します。初めの評価で軽症でも状態が変わる場合があるため、腹痛や全身状態の悪化を再評価につなげます。
CK:CPKとも表記
- 主な由来・意味
- 骨格筋・心筋など。運動や処置の影響も受ける
- 成人の基準範囲例
- 男性59~248、女性41~153U/L
LD:LDHとも表記
- 主な由来・意味
- 多くの組織にある酵素。単独では臓器を特定しにくい
- 成人の基準範囲例
- IFCC法124~222U/L
AMY:アミラーゼ
- 主な由来・意味
- 膵臓・唾液腺などに由来する消化酵素
- 成人の基準範囲例
- 44~132U/L
LIP:リパーゼ
- 主な由来・意味
- 膵臓の評価に用いる消化酵素
- 成人の基準範囲例
- 施設例14~56U/L。全国共通値ではない
| 項目 | 主な由来・意味 | 成人の基準範囲例 |
|---|---|---|
| CK:CPKとも表記 | 骨格筋・心筋など。運動や処置の影響も受ける | 男性59~248、女性41~153U/L |
| LD:LDHとも表記 | 多くの組織にある酵素。単独では臓器を特定しにくい | IFCC法124~222U/L |
| AMY:アミラーゼ | 膵臓・唾液腺などに由来する消化酵素 | 44~132U/L |
| LIP:リパーゼ | 膵臓の評価に用いる消化酵素 | 施設例14~56U/L。全国共通値ではない |
BNP・NT-proBNPは、心不全の評価で併用するマーカー
この章の要点BNP・NT-proBNPは、心臓への負荷を捉えるマーカーとして、心不全の診断や経過評価を補います。ただし、数値だけで心不全を確定しません。心筋の壁にかかる負荷などに関連して増え、症状や身体所見、心エコーなどと合わせて解釈します。[日本心不全学会「BNP・NT-proBNPステートメント2023年改訂版」](https://www.jhfs.or.jp/statement-guideline/statement20231017.html)
両者は別の検査であり、数値を直接比較しません。表示単位はpg/mLなどですが、診断に用いる値や解釈は検査と診療場面によって異なります。腎機能低下、年齢、心房細動などで高くなり、肥満などでは低めになる場合があります。
ARNIという種類の心不全治療薬の導入後には、BNPが一過性に上昇する場合があります。薬剤の影響も考えるため、治療変更の時期を確認します。[同ステートメントの解釈上の注意](https://www.jhfs.or.jp/statement-guideline/statement20231017.html)
看護では、息切れの程度、横になると苦しくなるか、体重・浮腫・尿量の変化を確認します。数値が上がったことと、呼吸や体液状態の悪化が同時に起きているかを伝えると、評価につながります。
BNPなどは免疫測定で扱われることもあります。ここでは、生化学項目と同じ採血で併用される検査として補足しています。
採血条件や検体の状態で、患者の病態以外の変化も起こる
この章の要点予想と合わない結果では、患者状態と検体の条件を並行して確認します。食事、運動、輸液の混入、検体の処理・搬送などでも検査値は変わります。[日本臨床検査医学会「検体検査のサンプリング」](https://www.jslm.org/books/guideline/2024/GL2024_02.pdf)
溶血は赤血球が壊れることで、採血後の検体内で起これば、赤血球内の成分などが測定結果へ影響します。K、LD、ASTなどが見かけ上高くなる場合があります。[日本臨床検査専門医会「採血方法や溶血の影響」](https://jaclap.org/guests/guests-2840/)
検体由来の影響を考えることは、異常値を無視する理由にはなりません。特に緊急異常値では、再検査の結果を待つことだけに集中せず、患者を確認して医師へ連絡します。学会提言も、初回値の緊急報告と、患者状態・取り違えなどの確認を求めています。[日本臨床検査医学会「パニック値運用に関する提言書」](https://www.jslm.org/committees/team_med/20240610-1.pdf)
採血時刻、食事・薬剤の時刻、採血部位、輸液の状況、溶血のコメントなどを共有し、再採血の要否と条件は医師・検査部門へ確認します。再採血後も患者を再評価し、数値だけが変わったのか、症状も変わったのかを確認します。
食事
- 起こり得る変化
- 血糖・TGなどが変わる
- 確認する情報
- 最終食事時刻、空腹時か随時か
運動・筋肉への処置
- 起こり得る変化
- CKなどが変わる
- 確認する情報
- 採血前の運動、筋肉注射など
検体内の溶血
- 起こり得る変化
- K・LD・ASTなどが高くなる場合がある
- 確認する情報
- 溶血コメント、採血状況、関連項目
輸液の混入
- 起こり得る変化
- 輸液成分や希釈による高値・低値
- 確認する情報
- 採血部位、投与内容、採血時の状況
処理・搬送の条件
- 起こり得る変化
- 血糖の低下、乳酸・アンモニアの上昇など
- 確認する情報
- 採血から処理までの条件、検査部門の規定
| 影響する条件 | 起こり得る変化 | 確認する情報 |
|---|---|---|
| 食事 | 血糖・TGなどが変わる | 最終食事時刻、空腹時か随時か |
| 運動・筋肉への処置 | CKなどが変わる | 採血前の運動、筋肉注射など |
| 検体内の溶血 | K・LD・ASTなどが高くなる場合がある | 溶血コメント、採血状況、関連項目 |
| 輸液の混入 | 輸液成分や希釈による高値・低値 | 採血部位、投与内容、採血時の状況 |
| 処理・搬送の条件 | 血糖の低下、乳酸・アンモニアの上昇など | 採血から処理までの条件、検査部門の規定 |
報告は、値・変化した時間・患者状態を一緒に伝える
この章の要点重要な異常や急な変化を認めたら、値と患者状態を一緒に報告します。緊急異常値では依頼医、連絡がつかない場合は施設の経路に沿って対応可能な医師へ、情報が確実に届くことが必要です。[日本臨床検査医学会「パニック値運用に関する提言書」](https://www.jslm.org/committees/team_med/20240610-1.pdf)
新たな意識障害、強い呼吸困難、けいれん、循環の悪化などがある場合は、検査票のH・Lの確認だけで対応を止めず、患者の緊急評価につなげます。施設の緊急対応体制に従って連絡し、検体の問題の確認も並行して行います。
報告では、次の情報をまとめます。
- 項目、値、単位、採血時刻、検査部門からの連絡内容。
- 前回値とその採血時刻。どれだけ、どの時間で変わったか。
- 現在の症状、意識、呼吸、脈・血圧、尿量など、項目に関係する所見。
- 食事、輸液、服薬、処置、溶血など、解釈を変える条件。
- 確認してほしい点と、受けた指示、再検査・再評価の予定。
基準範囲内でも報告が必要になる学習例
以下は架空の学習例です。
成人男性のCrが48時間以内に0.70mg/dLから1.00mg/dLへ上昇したとします。両方ともこの記事の基準範囲例には入っていますが、0.30mg/dL上昇しており、AKIの診断基準の一つに合致します。[AKI診療ガイドライン2016、表3](https://cdn.jsn.or.jp/guideline/pdf/419-533.pdf)
ここで大切なのは「基準範囲内だから腎機能は変わっていない」と扱わないことです。尿量、血圧、摂取・輸液、症状、薬剤の変化を確認し、上昇幅と時間を医師へ伝えます。この例の数値を、全患者共通の緊急連絡基準として使うものではありません。
指示後は、検査値と症状を再評価します。誰へいつ伝え、どの指示を受け、実施後にどう変わったかを記録します。再検査で値が改善しても症状が続く場合や、症状が改善しても値が悪化する場合には、再度共有が必要です。[日本臨床検査医学会の提言書](https://www.jslm.org/committees/team_med/20240610-1.pdf)
患者への説明は、検査目的と次に確認することを具体的に伝える
この章の要点患者には、何を調べ、次に何を確認するかを伝えます。「高いです」「正常です」だけでは、結果の意味や経過観察の理由が分かりません。
例えば、「この検査は腎臓から老廃物を出す働きをみる手がかりです。前回からの変化や尿量も合わせて確認します」と説明すると、追加の確認の目的が伝わります。基準範囲外というだけで病名が決まるわけではなく、範囲内でも経時変化が重要になることを、患者の結果に即して説明します。
説明には、確認できた結果、医師が示した方針、次回の検査・受診、連絡が必要な症状を含めます。薬剤や飲水・食事の変更は患者ごとの指示を確認して伝え、検査値だけを理由に一律の変更を勧めません。最後に患者自身の言葉で理解を確かめると、単位や検査名の取り違えにも気付きやすくなります。
学習を深めるときは、次の順に原資料へ進むと理解をつなげられます。
- 略語と範囲を整理する:[日本臨床検査医学会の2025年改定資料](https://www.jslm.org/committees/standard/20251101.pdf)。
- 腎機能を尿所見や持続期間と結び付ける:[CKD診療ガイドライン2023の第1章](https://cdn.jsn.or.jp/medic/guideline/pdf/guide/001-294.pdf)。
- 血糖の診断・目標・急性異常を区別する:[糖尿病診療ガイドライン2024の第1・2・20章](https://www.jds.or.jp/modules/publication/index.php?content_id=40)。
学習メモ・復習の予定気づきを自分の言葉で残す+
わかったこと、まだ曖昧なこと、次に調べたいことを残せます。
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この記事の編集方針
主要な定義・数値・推奨は、公開時点で確認できるガイドライン、公的資料、学会資料、査読論文を優先して確認しています。未確認の編集メモは公開せず、根拠の範囲や限界を区別して、読者が原資料を確認できるよう参考資料を掲載します。
詳しい編集方針を見る →参考にした資料
- 日本における主要な臨床検査項目の共用基準範囲―解説と利用の手引き―日本臨床検査標準協議会・20222022年10月1日版。共用基準範囲と利用条件、TP・Alb・UN・Cr・Na・K・Cl・Ca・IPの該当表を確認。見出し2・3・5・6・7。原資料を開く
- 学生用共通基準範囲の考え方と利用時の留意事項-2025年改定日本臨床検査医学会標準化委員会・2025pp.1–3の利用上の注意と医療系学生用基準範囲を確認。肝胆道・CK・LD・AMY・CRPの数値、ALP・LDのIFCC法、基準範囲と臨床判断値の区別。見出し2・4・10・11・15。原資料を開く
- 臨床検査のガイドライン JSLM2024日本臨床検査医学会・2024基準範囲・臨床判断値pp.16–27、検査データの読み方と考え方pp.28–31、検体検査のサンプリングpp.6–10の該当部分を公開章別PDFで確認。全巻精読ではない。見出し1・2・13・14。原資料を開く
残り23件の参考資料を見る原資料・発行元・発行年を確認できます+
- 臨床検査科 各検査について独立行政法人国立病院機構 東京病院・20222022年6月改訂の生化学検査欄を確認。AST・ALT・ALP・γ-GT・ビリルビン・ChE・CK・LD・AMY・血糖・HbA1cの測定対象と限界。栄養評価はGLIM資料と照合。見出し4・8・10・11。原資料を開く
- GLIM FAQ よくあるご質問日本栄養治療学会・2024pp.1–3の栄養スクリーニング、アルブミンの限界、筋肉量・摂取量に関する説明を確認。Albだけで低栄養を判定しない根拠。見出し3。原資料を開く
- 肝臓の検査[ラボ NO.571(2026.8.発行)より]一般社団法人日本臨床検査専門医会・2026血液検査の節を確認。肝細胞障害、胆汁うっ滞、肝臓の合成能を異なる指標で捉える説明。見出し4。原資料を開く
- 尿素窒素(BUN)一般社団法人八戸市医師会臨床検査センターコンペジウムの解説と高値の原因を確認。尿素の生成・排泄、脱水、消化管出血などの影響のみ採用。同施設の基準値・緊急報告値は採用していない。見出し5。