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目次この記事でわかること18項目+
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読む前に押さえたいこと
心電図を見ると、「どこから読めばよいのか」「危険な波形を見逃さないか」と不安になりやすいものです。大切なのは、波形名を当てる前に患者の意識・呼吸・脈拍・血圧を確認し、毎回同じ順番で判読することです。この記事では、記録条件、心拍数、規則性、P波とQRSの関係、QRS幅、ST・T波、QTまでを基礎から整理します。さらに、心停止波形、危険な頻脈・徐脈、虚血や電解質異常を疑う所見について、看護師が何を観察し、誰へ何を報告し、どう再評価するかを説明します。
心電図は「患者の状態」から始め、毎回同じ順番で読む
この章の要点最初に見るのは波形名ではなく、患者の状態です。モニターに異常が表示されたら、意識、普段どおりの呼吸があるか、脈を触れるか、皮膚色、血圧、SpO₂、胸部症状、呼吸困難などを確認します。電気活動が見えていても、有効な循環があるとは限らないからです。
反応がなく、正常な呼吸や脈拍がない、または判断できない場合は、心停止を疑って応援要請と蘇生対応を開始します。脈拍確認に時間をかけ、必要な胸骨圧迫を遅らせてはいけません。反応と呼吸、脈拍は原則として10秒以内で評価します。
緊急事態でなければ、次の固定した順番で読みます。
1
- 確認すること
- 患者の反応・呼吸・脈拍・循環動態
- 看護での意味
- 心停止や循環不全を先に見つける
2
- 確認すること
- 記録条件・電極・アーチファクト
- 看護での意味
- 偽の異常を除外する
3
- 確認すること
- 心拍数
- 看護での意味
- 速さが病態に合うかを見る
4
- 確認すること
- RR間隔の規則性
- 看護での意味
- 規則的・不規則・周期的脱落を分ける
5
- 確認すること
- P波とQRSの関係、PR間隔
- 看護での意味
- 刺激の起源と房室伝導を考える
6
- 確認すること
- QRS幅と形
- 看護での意味
- 心室内伝導、心室起源、ペーシングなどを考える
7
- 確認すること
- ST・T波、QT/QTc
- 看護での意味
- 虚血、再分極異常、薬剤・電解質の影響を探る
8
- 確認すること
- 前回波形・症状・検査値との比較
- 看護での意味
- 新規変化か、患者に影響しているかを判断する
| 順番 | 確認すること | 看護での意味 |
|---|---|---|
| 1 | 患者の反応・呼吸・脈拍・循環動態 | 心停止や循環不全を先に見つける |
| 2 | 記録条件・電極・アーチファクト | 偽の異常を除外する |
| 3 | 心拍数 | 速さが病態に合うかを見る |
| 4 | RR間隔の規則性 | 規則的・不規則・周期的脱落を分ける |
| 5 | P波とQRSの関係、PR間隔 | 刺激の起源と房室伝導を考える |
| 6 | QRS幅と形 | 心室内伝導、心室起源、ペーシングなどを考える |
| 7 | ST・T波、QT/QTc | 虚血、再分極異常、薬剤・電解質の影響を探る |
| 8 | 前回波形・症状・検査値との比較 | 新規変化か、患者に影響しているかを判断する |
P・QRS・T波は心臓を進む電気活動を表している
この章の要点心電図が記録しているのは、心筋を伝わる電気活動です。心臓の収縮力や血流を直接測っているわけではありません。この違いが、PEAやアーチファクトを理解する土台になります。
P波は心房の脱分極、つまり心房が興奮する過程を表します。PR間隔は、心房から房室結節、His束を経て心室へ刺激が伝わる時間です。QRS波は心室の脱分極、ST部分とT波は心室が次の興奮に備えて電気的に回復する再分極を主に反映します。
したがって、整ったQRSがあっても、実際に十分な拍出があるとは限りません。反対に、振戦や電極不良による大きな揺れがあっても、心臓の異常とは限りません。心電図は収縮そのものではないため、脈拍、血圧、意識、末梢循環と組み合わせて判断します。
ベッドサイドモニター・テレメトリー
- 主な目的
- 心拍数、リズム、急な変化の連続監視
- 特徴
- 使用する電極数・誘導は機器と目的で異なる。アラームで変化を知らせる
- 主な限界
- 装着位置やフィルターが標準12誘導と異なる。アラームだけで診断しない
標準12誘導心電図
- 主な目的
- 不整脈、伝導障害、虚血、心肥大などの評価
- 特徴
- 10個の電極から12方向の波形を記録する
- 主な限界
- 記録時間は短く、発作がない時間帯には異常を捉えられないことがある
ホルター・長時間心電図
- 主な目的
- 間欠的な動悸・失神の原因や、不整脈と症状の対応の確認
- 特徴
- 日常生活中に長時間記録できる
- 主な限界
- 標準12誘導より誘導数が少ない装置が多く、装着中に発作が起きないこともある
ウェアラブル機器
- 主な目的
- 不規則な脈や間欠的な発作を捉える補助
- 特徴
- 患者自身が記録しやすい
- 主な限界
- 光学式脈波は心電図そのものではない。ECG機能による記録も原波形を医療者が確認する必要がある
| 種類 | 主な目的 | 特徴 | 主な限界 |
|---|---|---|---|
| ベッドサイドモニター・テレメトリー | 心拍数、リズム、急な変化の連続監視 | 使用する電極数・誘導は機器と目的で異なる。アラームで変化を知らせる | 装着位置やフィルターが標準12誘導と異なる。アラームだけで診断しない |
| 標準12誘導心電図 | 不整脈、伝導障害、虚血、心肥大などの評価 | 10個の電極から12方向の波形を記録する | 記録時間は短く、発作がない時間帯には異常を捉えられないことがある |
| ホルター・長時間心電図 | 間欠的な動悸・失神の原因や、不整脈と症状の対応の確認 | 日常生活中に長時間記録できる | 標準12誘導より誘導数が少ない装置が多く、装着中に発作が起きないこともある |
| ウェアラブル機器 | 不規則な脈や間欠的な発作を捉える補助 | 患者自身が記録しやすい | 光学式脈波は心電図そのものではない。ECG機能による記録も原波形を医療者が確認する必要がある |
モニター心電図と12誘導心電図は目的が異なる
この章の要点モニター心電図は連続したリズム監視に向き、12誘導心電図は心臓を複数方向から短時間観察して、虚血、伝導障害、波形の形態を詳しく評価する検査です。どちらか一方が他方を完全に代用するものではありません。
モニターで新しい不整脈やST変化が疑われたら、患者状態を確認したうえで、必要に応じて12誘導を記録します。ただし、心停止や循環不全が疑われるときは、12誘導の準備を優先して救命対応を遅らせません。
主な目的
- モニター心電図
- 心拍数・リズムの連続監視、警報
- 12誘導心電図
- 虚血、伝導、波形形態、部位の評価
誘導
- モニター心電図
- 1~数誘導が中心
- 12誘導心電図
- 四肢誘導と胸部誘導の12方向
強み
- モニター心電図
- 発作性変化や発生時刻を捉えやすい
- 12誘導心電図
- 各誘導を比較でき、診断情報が多い
限界
- モニター心電図
- 単一誘導では波形の由来や虚血を確定しにくい
- 12誘導心電図
- 短時間記録のため、発作がなければ捉えられない
異常時
- モニター心電図
- 患者・電極・他誘導を確認し、波形を保存
- 12誘導心電図
- 症状、以前の心電図、検査値、経時変化と統合する
| 項目 | モニター心電図 | 12誘導心電図 |
|---|---|---|
| 主な目的 | 心拍数・リズムの連続監視、警報 | 虚血、伝導、波形形態、部位の評価 |
| 誘導 | 1~数誘導が中心 | 四肢誘導と胸部誘導の12方向 |
| 強み | 発作性変化や発生時刻を捉えやすい | 各誘導を比較でき、診断情報が多い |
| 限界 | 単一誘導では波形の由来や虚血を確定しにくい | 短時間記録のため、発作がなければ捉えられない |
| 異常時 | 患者・電極・他誘導を確認し、波形を保存 | 症状、以前の心電図、検査値、経時変化と統合する |
判読前に紙送り速度、感度、電極位置を確認する
この章の要点マス目を数える前に、記録条件が標準設定かを確認します。一般的な設定は、紙送り速度25 mm/s、感度10 mm/mVです。この条件では、小マス1個が0.04秒、大マス1個が0.20秒、縦1 mmが0.1 mVに相当します。
紙送り速度が50 mm/sなら、横1 mmは0.02秒です。設定を見ずに25 mm/s用の計算をすると、心拍数や間隔を誤ります。記録日時、患者、誘導名、校正波も確認します。
胸部誘導は、V1が右第4肋間胸骨縁、V2が左第4肋間胸骨縁、V4が左第5肋間鎖骨中線上です。V3はV2とV4の中間、V5とV6はV4と同じ高さで、それぞれ前腋窩線、中腋窩線上に置きます。位置のずれはR波、ST・T波、自動解析結果を変え得ます。
皮膚の汗や汚れ、体毛、乾いた電極、コードの牽引もノイズの原因です。記録条件や電極を直した場合は、修正前後の時刻と患者状態を残します。ただし、明らかな循環不全時は電極の修正だけに時間を使わないことが重要です。
0
- 確認すること
- 患者状態
- 主な問い
- 意識、呼吸、実際の脈、血圧、皮膚所見、症状は安定しているか
1
- 確認すること
- 記録条件
- 主な問い
- 患者、日時、速度、感度、電極位置、ノイズは適切か
2
- 確認すること
- 心拍数
- 主な問い
- 速いか、遅いか。機械表示と実測が一致するか
3
- 確認すること
- RR間隔
- 主な問い
- 規則的か、不規則か。一定の繰り返しがあるか
4
- 確認すること
- P波
- 主な問い
- 見えるか。形と向きは一定か。各QRSと対応するか
5
- 確認すること
- PR間隔
- 主な問い
- 一定か。延長していないか。P波の後のQRSが脱落しないか
6
- 確認すること
- QRS波
- 主な問い
- 幅は狭いか広いか。形、電気軸、異常Q波はどうか
7
- 確認すること
- ST-T波・QT
- 主な問い
- 基線からの偏位、T波変化、QT延長はないか
8
- 確認すること
- 比較
- 主な問い
- 過去の心電図から何が新しく変わったか。症状と時間的に合うか
| 順番 | 確認すること | 主な問い |
|---|---|---|
| 0 | 患者状態 | 意識、呼吸、実際の脈、血圧、皮膚所見、症状は安定しているか |
| 1 | 記録条件 | 患者、日時、速度、感度、電極位置、ノイズは適切か |
| 2 | 心拍数 | 速いか、遅いか。機械表示と実測が一致するか |
| 3 | RR間隔 | 規則的か、不規則か。一定の繰り返しがあるか |
| 4 | P波 | 見えるか。形と向きは一定か。各QRSと対応するか |
| 5 | PR間隔 | 一定か。延長していないか。P波の後のQRSが脱落しないか |
| 6 | QRS波 | 幅は狭いか広いか。形、電気軸、異常Q波はどうか |
| 7 | ST-T波・QT | 基線からの偏位、T波変化、QT延長はないか |
| 8 | 比較 | 過去の心電図から何が新しく変わったか。症状と時間的に合うか |
心拍数はリズムの規則性に合わせて計算する
この章の要点心拍数は、規則的なリズムならRR間隔、不規則なリズムなら一定時間内のQRS数から求めます。計算前に紙送り速度を確かめます。
25 mm/sで規則的なら、隣り合うR波間の大マス数で300を割る300法が簡便です。大マス4個なら約75回/分です。より細かく求める場合は、1500を小マス数で割ります。
不規則なら、10秒間のQRS数を6倍します。記録が6秒なら10倍です。モニター画面に表示された心拍数だけでなく、実際のQRS数と脈拍を比べます。期外収縮後の弱い収縮では、電気的心拍数より触知する脈拍数が少なくなる「脈拍欠損」が起こるためです。
成人安静時の洞調律は一般に60~100回/分と説明されますが、この範囲だけで正常・異常や緊急性は決まりません。運動、発熱、疼痛、低酸素、薬剤、睡眠、日頃の心拍数を併せて考えます。また、救急アルゴリズムの「臨床的に問題となる徐脈」は通常50回/分未満を目安にしていますが、これは一般的な正常範囲や一律の報告基準とは別の概念です。
規則性とP波を見て、洞結節から始まるリズムかを考える
この章の要点洞調律を考えるときは、心拍数だけでなく、P波とQRSの関係を見ます。各QRSの前に形のそろったP波があり、P波ごとにQRSが続き、PR間隔がほぼ一定なら、洞結節からの刺激が心室まで伝わっていると考えやすくなります。
RR間隔は、紙に印を付けて隣の間隔へ移すと比較しやすくなります。完全に不規則、徐々に短くなってから間が空く、一定間隔でQRSが抜ける、といった違いを言葉にします。
洞性不整脈では、呼吸に伴ってRR間隔が変動することがあります。このため、完全に一定でないだけで異常リズムとは断定できません。一方、P波が判別できずRR間隔が不規則に不規則なら心房細動を、鋸歯状の心房波が繰り返されるなら心房粗動を考えます。アーチファクトとの区別には他誘導、脈拍、12誘導が必要です。
P波
- 成人での基本的な目安
- 心房の脱分極を表す
- 読むときのポイント
- 形、向き、QRSとの1対1対応を見る
PR間隔
- 成人での基本的な目安
- 0.12~0.20秒がおおよその目安
- 読むときのポイント
- 0.20秒を超える場合は房室伝導遅延を考える。延長だけで症状の原因と断定しない
QRS幅
- 成人での基本的な目安
- 0.12秒未満が基本
- 読むときのポイント
- 0.12秒以上なら脚ブロック、心室起源、変行伝導、ペーシングなどを検討する
QRS電気軸
- 成人での基本的な目安
- 成人では概ね-30°~+90°
- 読むときのポイント
- Ⅰ・aVFに加えて必要時はⅡ誘導も用い、体格や伝導障害の影響を考える
QT・QTc
- 成人での基本的な目安
- QTは心拍数で変わるためQTcも確認する
- 読むときのポイント
- 補正式、心拍数、QRS幅、薬剤、電解質、年齢・性別の影響を受ける
| 項目 | 成人での基本的な目安 | 読むときのポイント |
|---|---|---|
| P波 | 心房の脱分極を表す | 形、向き、QRSとの1対1対応を見る |
| PR間隔 | 0.12~0.20秒がおおよその目安 | 0.20秒を超える場合は房室伝導遅延を考える。延長だけで症状の原因と断定しない |
| QRS幅 | 0.12秒未満が基本 | 0.12秒以上なら脚ブロック、心室起源、変行伝導、ペーシングなどを検討する |
| QRS電気軸 | 成人では概ね-30°~+90° | Ⅰ・aVFに加えて必要時はⅡ誘導も用い、体格や伝導障害の影響を考える |
| QT・QTc | QTは心拍数で変わるためQTcも確認する | 補正式、心拍数、QRS幅、薬剤、電解質、年齢・性別の影響を受ける |
房室ブロックはPR間隔とQRS脱落の仕方で整理する
この章の要点房室ブロックは、P波からQRSへ刺激がどう伝わり、どのように脱落するかを見て整理します。型の名前だけでなく、心拍数、QRS幅、症状、脱落の頻度、新規かどうかが重要です。
第1度房室ブロック
- 主な心電図所見
- すべてのP波にQRSが続くが、PR間隔が200 msを超える
- 看護で確認すること
- 薬剤、虚血、電解質、以前のPR間隔、症状
第2度Mobitz I型
- 主な心電図所見
- PR間隔が徐々に延びてQRSが1拍脱落し、周期が繰り返す
- 看護で確認すること
- 夜間・迷走神経緊張との関係、症状、心拍数
第2度Mobitz II型
- 主な心電図所見
- PR間隔がほぼ一定のままQRSが突然脱落する
- 看護で確認すること
- 失神、低血圧、QRS幅、脱落増加、高度化
2:1房室ブロック
- 主な心電図所見
- P波2個に対してQRSが1個
- 看護で確認すること
- 表面心電図だけでMobitz I・IIを安易に決めない
高度房室ブロック
- 主な心電図所見
- 連続する複数のP波が心室へ伝わらない
- 看護で確認すること
- 補充調律の速さ、循環不全、心停止への移行
完全房室ブロック
- 主な心電図所見
- P波とQRSが互いに独立し、PR関係が一定しない
- 看護で確認すること
- 著しい徐脈、意識、血圧、胸痛、心不全徴候
| 型 | 主な心電図所見 | 看護で確認すること |
|---|---|---|
| 第1度房室ブロック | すべてのP波にQRSが続くが、PR間隔が200 msを超える | 薬剤、虚血、電解質、以前のPR間隔、症状 |
| 第2度Mobitz I型 | PR間隔が徐々に延びてQRSが1拍脱落し、周期が繰り返す | 夜間・迷走神経緊張との関係、症状、心拍数 |
| 第2度Mobitz II型 | PR間隔がほぼ一定のままQRSが突然脱落する | 失神、低血圧、QRS幅、脱落増加、高度化 |
| 2:1房室ブロック | P波2個に対してQRSが1個 | 表面心電図だけでMobitz I・IIを安易に決めない |
| 高度房室ブロック | 連続する複数のP波が心室へ伝わらない | 補充調律の速さ、循環不全、心停止への移行 |
| 完全房室ブロック | P波とQRSが互いに独立し、PR関係が一定しない | 著しい徐脈、意識、血圧、胸痛、心不全徴候 |
QRS幅は心室へ刺激が広がる経路を考える手掛かりになる
この章の要点成人でQRS幅が0.12秒以上なら、幅広いQRSとして評価します。心室起源の刺激、脚ブロック、変行伝導、副伝導路、心室ペーシング、電解質異常などで心室興奮に時間がかかると、QRSが広がります。
幅広い頻拍はVTだけではありませんが、表面心電図だけで安全に鑑別できないことがあります。特に基礎心疾患があり、規則的で幅広い頻拍が突然始まった場合は、VTの可能性を含む危険な頻拍として患者状態と循環動態を直ちに評価します。
PVCは予定より早く出る幅広いQRSで、先行する通常のP波を伴わないことが一般的です。ただし、脚ブロックを伴う上室性期外収縮との区別が難しい場合もあります。新規出現、頻度増加、二連発・三連発、多形性、持続する幅広い頻拍への移行、胸痛、失神、低血圧、QT延長、電解質異常を組み合わせて評価します。
ST・T波は虚血を考える手掛かりだが、1枚だけでは診断も除外もできない
この章の要点胸痛などから急性冠症候群(ACS)が疑われる成人では、医療機関到着後10分以内の12誘導心電図が推奨されています。初回心電図が診断的でなくても、強い症状が続く場合は5~10分ごとの反復や経時記録が必要です。
ST上昇は、J点を基準に隣接する2誘導以上で評価します。左室肥大や左脚ブロックがないことなど、基準の適用条件があります。
第1度房室ブロック
- 基本的な心電図所見
- すべてのP波が伝導するが、PR間隔が0.20秒を超える
第2度房室ブロック MobitzⅠ型
- 基本的な心電図所見
- PR間隔が一定でなく、典型的には徐々に延長してQRSが1拍脱落する
第2度房室ブロック MobitzⅡ型
- 基本的な心電図所見
- 伝導した拍のPR間隔は一定で、突然QRSが脱落する。2:1ブロックはこの定義から除く
高度房室ブロック
- 基本的な心電図所見
- 連続する2個以上のP波が心室へ伝導しないが、一部の房室伝導は残る
完全房室ブロック
- 基本的な心電図所見
- P波とQRS波の間に房室伝導がなく、それぞれ独立して出現する
洞機能不全
- 基本的な心電図所見
- 不適切な洞性徐脈、洞停止・洞房ブロック、徐脈頻脈症候群など
| 種類 | 基本的な心電図所見 |
|---|---|
| 第1度房室ブロック | すべてのP波が伝導するが、PR間隔が0.20秒を超える |
| 第2度房室ブロック MobitzⅠ型 | PR間隔が一定でなく、典型的には徐々に延長してQRSが1拍脱落する |
| 第2度房室ブロック MobitzⅡ型 | 伝導した拍のPR間隔は一定で、突然QRSが脱落する。2:1ブロックはこの定義から除く |
| 高度房室ブロック | 連続する2個以上のP波が心室へ伝導しないが、一部の房室伝導は残る |
| 完全房室ブロック | P波とQRS波の間に房室伝導がなく、それぞれ独立して出現する |
| 洞機能不全 | 不適切な洞性徐脈、洞停止・洞房ブロック、徐脈頻脈症候群など |
V2~V3、40歳以上の男性
- STEMIを考えるST上昇の基準
- 2.0 mm以上
V2~V3、40歳未満の男性
- STEMIを考えるST上昇の基準
- 2.5 mm以上
V2~V3、女性
- STEMIを考えるST上昇の基準
- 1.5 mm以上
V2~V3以外の誘導
- STEMIを考えるST上昇の基準
- 1.0 mm以上
| 誘導・対象 | STEMIを考えるST上昇の基準 |
|---|---|
| V2~V3、40歳以上の男性 | 2.0 mm以上 |
| V2~V3、40歳未満の男性 | 2.5 mm以上 |
| V2~V3、女性 | 1.5 mm以上 |
| V2~V3以外の誘導 | 1.0 mm以上 |
QTは心室の興奮開始から再分極終了までの時間を表す
この章の要点QT間隔はQRS開始からT波終末までを測り、心拍数で補正した値をQTcと呼びます。QTcは測定法と条件込みで読む必要があり、自動表示値だけで確定しません。
実用上、成人男性で450 ms超、女性で460 ms以上はQT延長を考える目安です。QTcが500 msを超えるとトルサード・ド・ポアン(TdP)などのリスク増加に関連しますが、500 ms未満なら危険がないという境界ではありません。また、この値だけで先天性QT延長症候群を診断するものでもありません。
QTは心拍数、性別、年齢、補正式の影響を受けます。広く使われるBazett式は、頻脈で過大、徐脈で過小に補正することがあり、心房細動のようにRR間隔が大きく変動する場合は評価が難しくなります。T波の終わりが不明瞭な場合も、無理に断定せず専門的な確認が必要です。
新たなQTc 500 ms超、以前からの著しい延長、失神、心室期外収縮、徐脈、QTを延長し得る薬剤、低カリウム・低マグネシウム血症が重なる場合は、単なる数値として扱わず迅速な評価につなげます。経時比較では、同じ誘導、同じ補正方法、近い記録条件を用います。
よくみる不整脈は「形」だけでなく症状と背景を合わせて読む
この章の要点不整脈の名前が分かっても、緊急度は一律ではありません。症状・循環動態・持続時間・新規性を組み合わせて考えます。
洞性頻脈
- 主な所見
- 各QRS前に洞性P波、通常は規則的
- 看護で考えること
- 発熱、疼痛、低酸素、脱水、出血、不安、薬剤など原因への反応
洞性徐脈
- 主な所見
- 洞調律の形で心拍数が遅い
- 看護で考えること
- 睡眠・運動習慣の影響、薬剤、虚血、低体温、頭蓋内病変、症状
心房細動
- 主な所見
- 明瞭な一定のP波がなく、RRが不規則に不規則
- 看護で考えること
- 発症時期、心拍数、血圧、心不全・虚血症状、抗凝固薬歴
心房粗動
- 主な所見
- 規則的な鋸歯状の心房波。2:1伝導では見えにくいことがある
- 看護で考えること
- 心拍数約150回/分だけで断定せず、12誘導で確認
PAC
- 主な所見
- 予定より早い異なる形のP波に続くQRS
- 看護で考えること
- 誘因、症状、頻度、AFなどへの移行
PVC
- 主な所見
- 先行する通常P波を欠くことが多い早期の幅広いQRS
- 看護で考えること
- 新規性、連発・多形性、症状、虚血、QT、電解質、基礎心疾患
| リズム | 主な所見 | 看護で考えること |
|---|---|---|
| 洞性頻脈 | 各QRS前に洞性P波、通常は規則的 | 発熱、疼痛、低酸素、脱水、出血、不安、薬剤など原因への反応 |
| 洞性徐脈 | 洞調律の形で心拍数が遅い | 睡眠・運動習慣の影響、薬剤、虚血、低体温、頭蓋内病変、症状 |
| 心房細動 | 明瞭な一定のP波がなく、RRが不規則に不規則 | 発症時期、心拍数、血圧、心不全・虚血症状、抗凝固薬歴 |
| 心房粗動 | 規則的な鋸歯状の心房波。2:1伝導では見えにくいことがある | 心拍数約150回/分だけで断定せず、12誘導で確認 |
| PAC | 予定より早い異なる形のP波に続くQRS | 誘因、症状、頻度、AFなどへの移行 |
| PVC | 先行する通常P波を欠くことが多い早期の幅広いQRS | 新規性、連発・多形性、症状、虚血、QT、電解質、基礎心疾患 |
心停止波形はVF・無脈性VTと、PEA・心静止に分ける
この章の要点心停止では、波形名より先に反応、正常な呼吸、実際の脈の有無を確認します。同じVTでも、脈がある場合と無脈性VTでは対応区分が異なります。
VF
- 所見の考え方
- 無秩序な電気活動で、識別できるQRSがない
- 初期の区分
- ショック適応
無脈性VT
- 所見の考え方
- 幅広い頻拍を認めるが、有効な脈がない
- 初期の区分
- ショック適応
PEA
- 所見の考え方
- 整った電気活動が見えても脈がない
- 初期の区分
- 非ショック適応
心静止
- 所見の考え方
- 心室の電気活動を認めない
- 初期の区分
- 非ショック適応
| 心停止波形 | 所見の考え方 | 初期の区分 |
|---|---|---|
| VF | 無秩序な電気活動で、識別できるQRSがない | ショック適応 |
| 無脈性VT | 幅広い頻拍を認めるが、有効な脈がない | ショック適応 |
| PEA | 整った電気活動が見えても脈がない | 非ショック適応 |
| 心静止 | 心室の電気活動を認めない | 非ショック適応 |
脈があっても循環不全を伴う頻脈・徐脈は緊急である
この章の要点脈が触れていても、低血圧、急な意識変容、ショック徴候、虚血性胸部不快感、急性心不全を伴う頻脈・徐脈は緊急です。波形名より循環不全の有無を優先します。
成人の頻脈性不整脈は通常150回/分以上、臨床的に問題となる徐脈性不整脈は通常50回/分未満がアルゴリズム上の目安ですが、数値だけで対応を決めません。100回/分台でも病態に不釣り合いで循環不全を伴えば重要であり、50回/分未満でも無症状で日頃から同程度なら緊急性が異なります。
危険な例には、持続性VT、幅広い頻拍、多形性VT・TdP、症状を伴う高度・完全房室ブロック、著しい徐脈があります。多形性VTは急速に循環を失う可能性があり、直ちに応援を要請します。
同期下カルディオバージョンは脈のある不安定な頻脈、除細動はVF・無脈性VT、経皮的ペーシングは選択された不安定な徐脈で検討される処置です。看護師は患者から離れず、救急チーム・医師へ連絡し、気道・呼吸・循環を評価し、血圧・SpO₂を監視します。対応を遅らせない範囲で12誘導と波形を保存し、機器と必要物品を施設手順に沿って準備します。
電解質異常や薬剤の影響は波形から疑い、検査値で確かめる
この章の要点電解質異常は特徴的な変化を示すことがありますが、ECGだけで種類や血清値を確定できません。症状、腎機能、薬剤、採血結果、経時変化を統合します。
高カリウム血症では、尖鋭化したT波、P波の減高・消失、PR延長、QRS拡大、重症時の正弦波様波形がみられることがあります。しかし、変化は必ずしも順番どおりに現れず、重度でも心電図が正常に見える場合があります。腎機能障害、透析、組織障害、カリウムを上昇させ得る薬剤などの背景があれば、正常波形でも除外できません。
低カリウム血症ではT波平低化、ST低下、U波などがみられ、低マグネシウム血症とともにQT関連不整脈のリスクを高めます。低カルシウム血症ではQT延長、高カルシウム血症ではQT短縮を示すことがあります。
QTを延長し得る薬剤、心拍数を低下させる薬剤、房室伝導を抑える薬剤の開始・増量・追加後は、波形変化、症状、電解質、腎肝機能を確認します。薬剤を自己判断で中止せず、処方医・薬剤師を含むチームで評価します。
波形が患者に合わないときはアーチファクトと自動解析の限界を疑う
この章の要点突然の異常波形が患者の様子に合わないときは、患者を確認してから機器を確認します。振戦、悪寒、体動、電極の乾燥・剝離、コード不良、電気的干渉は、不整脈や心静止に似た波形を作ります。
アーチファクトを疑うときは、脈拍、血圧、SpO₂の脈波、他誘導、必要なら動脈圧波形を比較します。電極を押さえるだけでなく、皮膚処置と新品への交換、コード接続を確認します。逆に、意識消失や脈拍消失があれば、アーチファクト確認を理由に救命対応を遅らせません。
心電計やモニターの自動解析は、計測と見落とし防止を助けますが、誘導位置、ノイズ、基礎波形の影響を受けます。自動解析は補助情報であり、患者状態、原波形、12誘導、前回記録を人が再確認します。
ペーシングスパイクが見えても、後にP波やQRSが続く「電気的捕捉」と、実際に脈や血圧が生じる「機械的捕捉」は別です。スパイク後の波形と脈拍・血圧の両方を確認します。
報告は「時刻・患者への影響・波形・経時変化」をそろえる
この章の要点報告では、波形名だけでなく、いつ・何が・患者にどう起きたかを伝えます。受け手が緊急度を判断し、次の評価や処置を選べる情報が必要です。
発生状況
- 具体的に伝える内容
- 開始時刻、突然か徐々か、持続・反復
- 意味
- 発作性か持続性かを判断する
患者状態
- 具体的に伝える内容
- 意識、呼吸、脈拍、血圧、SpO₂、皮膚、尿量
- 意味
- 循環・呼吸への影響を判断する
症状
- 具体的に伝える内容
- 胸痛、動悸、息苦しさ、失神・前失神、悪心
- 意味
- 虚血や低灌流との関係を見る
波形
- 具体的に伝える内容
- 心拍数、規則性、P-QRS関係、QRS幅、ST・T、QT
- 意味
- リズムと危険所見を共有する
比較
- 具体的に伝える内容
- 前回心電図、普段の心拍数、出現頻度の変化
- 意味
- 新規か慢性かを分ける
背景
- 具体的に伝える内容
- 診断、直近の処置、薬剤変更、電解質・腎機能
- 意味
- 可逆的原因を探る
実施と反応
- 具体的に伝える内容
- 体位、酸素、電極修正、12誘導などと前後の変化
- 意味
- 介入効果と次の行動を判断する
| 報告要素 | 具体的に伝える内容 | 意味 |
|---|---|---|
| 発生状況 | 開始時刻、突然か徐々か、持続・反復 | 発作性か持続性かを判断する |
| 患者状態 | 意識、呼吸、脈拍、血圧、SpO₂、皮膚、尿量 | 循環・呼吸への影響を判断する |
| 症状 | 胸痛、動悸、息苦しさ、失神・前失神、悪心 | 虚血や低灌流との関係を見る |
| 波形 | 心拍数、規則性、P-QRS関係、QRS幅、ST・T、QT | リズムと危険所見を共有する |
| 比較 | 前回心電図、普段の心拍数、出現頻度の変化 | 新規か慢性かを分ける |
| 背景 | 診断、直近の処置、薬剤変更、電解質・腎機能 | 可逆的原因を探る |
| 実施と反応 | 体位、酸素、電極修正、12誘導などと前後の変化 | 介入効果と次の行動を判断する |
患者には「電気の流れを見る検査」と説明する
この章の要点患者には、心電図を「心臓を動かす電気の流れを、皮膚に貼った電極で記録する検査」と説明すると伝わりやすくなります。12誘導心電図は電気を体へ流す検査ではなく、皮膚から信号を受け取ります。
安静にし、会話や体動を控える理由は、筋肉の電気活動や揺れが記録に混ざるためです。皮膚処置や電極位置の調整が必要なことも、羞恥心と保温に配慮して説明します。
「正常でした」と伝える場合も、その時点の電気活動を記録した結果であり、発作性不整脈やACSなど、1回の記録で除外できない状態があることに注意します。症状が再発したときは、時刻、状況、持続時間を伝えてもらうよう説明します。
心電図はパターン暗記より、同じ手順を繰り返すと身につく
この章の要点初学者は、すべての波形名を一度に暗記するより、判読手順を固定するほうが臨床につながります。患者状態、記録条件、心拍数、規則性、P波、PR、QRS、ST・T、QT、前回比較を毎回声に出して確認します。
よくある誤解は次のとおりです。
- モニターにQRSがあれば脈もある、とは限らない。
- 心拍数が正常範囲なら安全、とは限らない。
- 初回心電図にST上昇がなければACSではない、とは言えない。
- PVCやR on Tがあれば必ずVFになる、とは言えない。
- 平坦な線が出れば、電極確認なしに心静止と断定できるわけではない。
- 自動解析の診断名は最終診断ではない。
- 2:1房室ブロックを、表面心電図だけでMobitz IまたはIIと決められないことがある。
学習用心電図では、最初に波形名を隠して手順どおり所見を記述します。その後に模範診断と比較し、違った箇所を「P波を見落とした」「QRS幅を測らなかった」など、手順へ戻して振り返ります。
臨床では、診断名を完全に当てること以上に、「規則的な幅広い頻拍」「P波とQRSが独立した著しい徐脈」「脈のない整った電気活動」のように、所見と患者状態を説明できる判読が安全な報告につながります。
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この記事の編集方針
主要な定義・数値・推奨は、公開時点で確認できるガイドライン、公的資料、学会資料、査読論文を優先して確認しています。未確認の編集メモは公開せず、根拠の範囲や限界を区別して、読者が原資料を確認できるよう参考資料を掲載します。
詳しい編集方針を見る →参考にした資料
- 2022年改訂版 不整脈の診断とリスク評価に関するガイドライン(JCS/JHRS 2022 Guideline on Diagnosis and Risk Assessment of Arrhythmia)一般社団法人 日本循環器学会/一般社団法人 日本不整脈心電学会・2022年(2025年11月5日更新)心電図検査の位置づけ、心房細動・心房粗動、房室ブロック、PVC・VT、QT延長症候群の診断とリスク評価。見出し6~8、10、11に対応。
- 急性冠症候群ガイドライン(2018年改訂版)一般社団法人 日本循環器学会・2018年(正誤表2022年12月9日)ACS疑いにおける到着後10分以内の12誘導心電図、症状持続時の5~10分ごとの反復、隣接2誘導のST上昇基準、初回心電図の限界。診断・初期評価、表5、p.20–21相当。見出し3・9・16に対応。
- JRC蘇生ガイドライン2020 第2章 成人の二次救命処置(ALS)一般社団法人 日本蘇生協議会・2021年(ガイドライン名称は2020)反応・呼吸・脈拍の評価、VF・無脈性VT、PEA・心静止の分類、ショック適応・非適応波形。PDF p.4–6、印刷ページp.51–53相当。見出し1・12・16に対応。原資料を開く
残り5件の参考資料を見る原資料・発行元・発行年を確認できます+
- Part 9: Adult Advanced Life Support: 2025 American Heart Association Guidelines for Cardiopulmonary Resuscitation and Emergency Cardiovascular CareAmerican Heart Association・2025年成人心停止波形、循環不全徴候、幅広いQRSの基準、脈のある頻脈・徐脈、多形性VT・TdPの緊急性。見出し1・8・10・12・13・16に対応。
- Recommendations for the Standardization and Interpretation of the Electrocardiogram, Part I: The Electrocardiogram and Its TechnologyAmerican Heart Association/American College of Cardiology Foundation/Heart Rhythm Society・2007年安静時心電図の技術標準、胸部誘導位置、皮膚処置、誘導位置の誤り、自動解析の限界。見出し2~4・15に対応。原資料を開く
- Update to Practice Standards for Electrocardiographic Monitoring in Hospital Settings: A Scientific Statement From the American Heart Association