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読む前に押さえたいこと
「Kが高いけれど溶血の表示もある」「Naが低い患者に、まず何を確認すればよい?」。Na・K異常は、基準範囲から外れたという事実だけでは、緊急度も原因も決まりません。現在値と前回値、変化の速さ、神経・筋症状、心電図、尿量や腎機能、輸液・薬剤、採血条件をつなげて読む必要があります。この記事では、低Na・高Na・低K・高Kの基本から、偽性異常を疑う場面、報告時にそろえる情報、治療後の再評価までを、看護で使う順番に沿って解説します。
最初に「値・速さ・症状・心電図・採血条件」の5点をそろえる
この章の要点Na・K異常を見たら、単独の数値に反応するのではなく、①現在値と前回値、②変化した時間、③症状とバイタルサイン、④心電図、⑤採血・輸液条件を同時に確認します。緊急度は値だけでは決まらないからです。
日本の共用基準範囲は、成人でNa 138~145 mmol/L、K 3.6~4.8 mmol/Lです。ただし、基準範囲は健康な集団の分布を示すもので、診断閾値、重症度分類、治療目標、施設の緊急報告値とは別です。Na・Kは1価のイオンなので、Na・Kについては mmol/L と mEq/L の数値が同じになります。
たとえば低Na血症は一般にNa 135 mmol/L未満、高Na血症は145 mmol/L超で扱われます。Kは、低K血症を3.5 mmol/L未満、高K血症を5.5 mmol/L以上とする資料が多い一方、検査室の基準範囲上限は4.8 mmol/Lです。この差を「4.9なら正常」「5.4なら高Kではない」と機械的に読むのは危険です。患者背景、変化速度、症状、腎機能、薬剤を重ねて判断します。
数値を見た直後に確認するのは、意識変容、痙攣、呼吸状態、胸部症状、脈拍の乱れ、著しい筋力低下、血圧低下です。これらがあれば、偽値の検証より先に患者を評価し、責任医師や院内急変対応チームへ施設手順に沿って連絡します。患者を先に見ることが出発点です。
Na
- 日本の共用基準範囲
- 138~145 mmol/L
- 臨床でよく使う区切り
- 低Na:135未満、高Na:145超
- 読み方の注意
- 低Naの重症度は値に加え、発症48時間未満か、神経症状があるかで変わる
K
- 日本の共用基準範囲
- 3.6~4.8 mmol/L
- 臨床でよく使う区切り
- 低K:3.5未満、高K:5.5以上とする資料が多い
- 読み方の注意
- 測定法・検体・施設で上限が異なる。高K 6.5以上は成人ガイドライン・国内総説で緊急評価の目安
| 項目 | 日本の共用基準範囲 | 臨床でよく使う区切り | 読み方の注意 |
|---|---|---|---|
| Na | 138~145 mmol/L | 低Na:135未満、高Na:145超 | 低Naの重症度は値に加え、発症48時間未満か、神経症状があるかで変わる |
| K | 3.6~4.8 mmol/L | 低K:3.5未満、高K:5.5以上とする資料が多い | 測定法・検体・施設で上限が異なる。高K 6.5以上は成人ガイドライン・国内総説で緊急評価の目安 |
Naは「水に対する濃さ」、Kは「細胞内外の移動と排泄」として読む
この章の要点NaとKは、同じ電解質でも異常値が示すものが違います。Na濃度は主に体内の水とNaの比を、K濃度は細胞内外の分布と腎・腸管からの排泄を反映します。Na=水分バランス、K=電気的安定性と押さえると、症状と検査を結び付けやすくなります。
血清Naが低いからといって、体内のNa総量が必ず少ないわけではありません。水が相対的に多い場合にも低下します。逆に高Naは、多くの場合「塩分を摂りすぎた」より「自由水が不足した」状態です。したがって、体重、口渇、飲水可能性、入出量、浮腫、嘔吐・下痢、発熱・発汗、輸液内容を時系列で見ます。
Kは約98%が細胞内にあり、血液中にあるのは一部です。インスリンや交感神経β2刺激はKを細胞内へ移し、腎臓は時間をかけて体外へ排泄します。腎機能低下、アルドステロン作用の低下、アシドーシス、組織破壊、薬剤によって高Kになり、消化管・腎からの喪失や細胞内移動で低Kになります。血清Kだけでは、体内総K量が不足しているか、単に細胞内へ移ったかまでは決まりません。
低Na血症は「低張性か」と「脳症状があるか」を最初に分ける
この章の要点低Naを見たら、まず意識変容・頭痛・悪心・嘔吐・傾眠・痙攣などの神経症状を確認し、同時に血糖と血漿浸透圧を確認します。真に水が過剰な低張性低Na血症か、高血糖などで水が細胞外へ移った非低張性低Na血症かで、意味と対応が変わるためです。
低Na血症は、数値による一分類では130~134 mmol/Lが軽度、125~129 mmol/Lが中等度、125 mmol/L未満が重度です。ただし、同じNa 124でも数時間で低下した場合と、数日以上かけて低下した場合では脳への影響が違います。急性では脳細胞へ水が入り脳浮腫を起こしやすく、慢性では脳が低張環境へ適応しています。重い症状があるときは、値の分類より症状を伴う低Naであることが重要です。
血漿浸透圧が低い場合は、尿浸透圧と尿Naが鑑別を助けます。尿浸透圧が低ければ、腎は水を薄い尿として排泄しようとしており、多飲や溶質摂取不足が候補になります。尿が十分に薄まっていなければ、抗利尿ホルモン不適切分泌症候群(SIADH)、循環血液量低下、薬剤、心不全・肝硬変、腎機能低下、副腎不全などを考えます。尿Naは利尿薬、腎機能、食事摂取、採尿時点の影響を受けるため、単独で病名を決めません。
高Na血症は「水を失った理由」と「自分で飲めない理由」を探す
この章の要点高Na血症の多くは、Naそのものの過剰より自由水不足です。口渇があっても飲めない、意識障害や嚥下障害で水にアクセスできない、多尿・下痢・発熱・発汗が続く、といった状況を探します。
高Naでは細胞外液が高張になり、脳細胞から水が引かれます。いらいら、傾眠などから、急性・高度では痙攣、昏睡、脳出血に至ることがあります。高齢者、意識障害や身体機能低下がある人は、口渇を訴えられない、飲水できないために進行しやすい点が重要です。
観察は、飲水量だけでなく、尿量と尿の薄さ、発熱・呼吸数増加・発汗、嘔吐・下痢、経管栄養に伴う水分量、輸液・薬剤に含まれるNa、体重と循環状態を見ます。多尿と低い尿浸透圧が続くなら尿崩症、著しい高血糖と多尿なら浸透圧利尿が候補になります。乏尿・頻脈・低血圧・末梢冷感があれば、自由水不足だけでなく循環血液量低下を急いで評価します。
治療では、循環の安定化と不足水分・持続する喪失の補充を分けて考えます。急性か慢性か、原因が水喪失かNa負荷かで補正計画が変わります。慢性例を急に下げると脳浮腫の懸念がある一方、成人の最適速度には不確実性が残るため、看護では指示された輸液の種類・速度、Naの推移、尿量、神経症状、呼吸状態をセットで追い、予測より速い・遅い変化を報告します。
低K血症は「喪失」「細胞内移動」「摂取不足」を酸塩基とMgで絞る
この章の要点低Kを見たら、嘔吐・下痢・胃液吸引、利尿薬、インスリンやβ2刺激薬、食事摂取、血圧、酸塩基平衡、血清マグネシウム(Mg)を確認します。血清K低下と体内K欠乏は同じではないため、原因によって症状と補充後の動きが変わります。
Kが細胞内へ急に移動する周期性四肢麻痺などでは、体内総K量が保たれていても強い麻痺が出ることがあります。一方、利尿薬や消化管喪失では体内Kが失われ、筋力低下や不整脈が現れます。呼吸筋の筋力低下や著しい麻痺は緊急所見です。
代謝性アルカローシスを伴えば、嘔吐・胃液吸引、利尿薬、ミネラルコルチコイド過剰などが候補です。代謝性アシドーシスを伴えば、下痢、尿細管性アシドーシス、糖尿病性ケトアシドーシスなどを考えます。尿Kは腎から失っているかを調べる手掛かりですが、随時尿K濃度は尿の濃さに左右されます。必要時は尿Crで補正した指標などを医師が解釈します。
低Mg血症があると、腎からKが失われ続け、K補充だけでは上がりにくくなります。低Kが持続するときはMgを確認し、継続する喪失、薬剤、補充後の再検時点を一緒に見ます。
高K血症は「排泄低下」「細胞外移動」「組織破壊」「負荷」で考える
この章の要点高Kを見たら、まず腎機能と尿量、薬剤、酸塩基、血糖、組織障害、K投与・摂取を確認します。正常腎機能では食事だけで著しい高Kになることはまれで、腎排泄低下や薬剤が重なることが多いためです。
腎機能低下や脱水ではK排泄が減ります。アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬、アンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)、ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬、K保持性利尿薬、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)、トリメトプリム、K製剤などは原因になり得ます。患者持参薬、一般用医薬品、サプリメント、減塩塩に含まれるKも確認しますが、自己判断で中止を指示せず、処方目的を含めて医師・薬剤師と調整します。
アシドーシスやインスリン不足ではKが細胞外へ移ります。横紋筋融解、腫瘍崩壊、広範な組織損傷では細胞内Kが放出されます。糖尿病性ケトアシドーシスでは来院時Kが高くても、浸透圧利尿などで体内総K量は不足していることがあり、治療開始後にKが急低下し得ます。現在値と体内総量を混同しないことが必要です。
筋力低下、しびれ、弛緩性麻痺がみられることがありますが、無症状でも否定できません。成人ではK 6.5 mmol/L以上を重症・緊急評価の目安とする国内総説とUKKAガイドラインがあります。ただし、それ未満でも急上昇、腎障害、アシドーシス、症状、心電図異常があれば緊急性は高くなります。
心電図はK異常の危険度を示すが、正常でも除外には使えない
この章の要点K異常では、数値と心電図を必ず組み合わせます。心電図変化があれば心筋への影響を示しますが、正常心電図は安全証明ではありません。特に重症高Kでも典型的変化が出ない例があります。
低Kでは再分極が遅れ、T波の平低化・陰転化、ST低下、目立つU波がみられます。T波とU波が融合すると、見かけ上QTが延びたように見えることがあります。心室性期外収縮、心室頻拍、トルサード・ド・ポワン(多形性心室頻拍)、心室細動などの危険も高まります。ジギタリス使用、虚血性心疾患、心不全、低Mg、QT延長薬が重なると、同じK値でも危険が増します。
高Kでは、狭く尖ったテント状T波、PR延長、P波の減高・消失、QRS幅拡大、徐脈、サインカーブ様波形へ進むことがあります。ただし、この順番どおりに進むとは限りません。テント状は急性冠症候群でもみられ得るため、胸痛、局在性変化、前回と合わせて評価します。
異常値が患者像と合わないときは採血前後のエラーを点検する
この章の要点突然のK高値やNaの不自然な変化では、真の異常と同時に採血前誤差を考えます。ただし、重症値、症状、心電図異常があるときは、再採血の結果を待つだけにしてはいけません。患者評価と再検を並行します。
Kの代表は溶血です。赤血球内のKが検体へ出るため偽高値になります。採血困難、強い吸引、不適切な混和、搬送・処理の影響で起こり得ます。検査室の溶血指数、検体コメント、乳酸脱水素酵素(LD)・アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)の不自然な上昇、前回値との乖離を確認します。拳を何度も握るパンピングや長時間駆血でもKは上がり得ます。血小板・白血球が著しく多い場合は、採血管内でKが放出される偽性高Kもあります。
輸液中のルート近くや同じ側から採血すると、輸液の成分と希釈の両方が結果へ影響します。生理食塩液の混入ならNa・Clが輸液濃度へ寄り、ブドウ糖液なら電解質が低く血糖が高く見えるなど、組成でパターンが変わります。採血部位、輸液内容、採血までの間隔、ラインから採ったかを確認し、施設の採血手順に従って適切な部位から取り直します。
Naでは、高脂血症や高蛋白血症があると、検体を希釈して測る間接イオン選択電極法で偽性低Na血症が起こり得ます。血漿浸透圧が低くない、患者に低張性低Naの症状が乏しい場合は、測定法を検査室へ確認し、必要に応じて血液ガス装置などの直接法で確認します。高血糖による低Naは測定ミスではなく、水が細胞外へ移る生理的変化なので、偽性低Naとは区別します。
報告は「値」ではなく、危険度を再現できる情報を一組で伝える
この章の要点報告では、現在値だけでなく、患者の状態と変化を一組にします。受け手が緊急度と次の行動を判断できる情報を短くそろえることが目的です。
最初に、患者識別、採血時刻、Na・Kの現在値と前回値、どの時間で変化したかを伝えます。続けて、意識・痙攣、脈拍・血圧・呼吸、胸部症状、筋力、尿量、12誘導またはモニター心電図の変化を伝えます。さらに、血清クレアチニン(Cr)・推算糸球体濾過量(eGFR)、血糖、酸塩基、Mg、輸液、直近の薬剤変更、嘔吐・下痢・発熱、採血部位と溶血コメントを加えます。
報告先は、通常は担当医または当直医です。痙攣、意識の急速な悪化、循環不安定、致死性不整脈、幅広いQRSなどがあれば、院内迅速対応・救急チームを同時に要請します。採血エラーが疑わしいときは検査室にも相談します。施設のパニック値・連絡経路がある場合はそれを優先し、独自の一律閾値を作りません。
再確認の指示を受けたら、「いつ」「どの検体で」「何と一緒に」測るかを明確にします。Naなら血糖、実測浸透圧、尿浸透圧・尿Na、Kなら血液ガスまたは中央検査、腎機能、Mg、血糖、酸塩基、血算・溶血情報が候補です。再採血を依頼した事実だけでなく、患者の監視をどう続けるかまで共有します。
値と時間
- 具体的に伝える内容
- 現在値、前回値、採血時刻、変化速度
- なぜ必要か
- 急性変化ほど症状・不整脈リスクが高いことがある
患者状態
- 具体的に伝える内容
- 意識、痙攣、脈・血圧・呼吸、筋力、胸部症状
- なぜ必要か
- 数値より先に処置が必要か判断する
心電図
- 具体的に伝える内容
- 12誘導の有無、新規T波・P波・QRS・不整脈
- なぜ必要か
- 心筋への影響を示すが、正常でも高Kを除外しない
原因の手掛かり
- 具体的に伝える内容
- 尿量、腎機能、血糖、酸塩基、Mg、薬剤、消化管喪失、輸液
- なぜ必要か
- 病態と再上昇・再低下の予測につながる
検体条件
- 具体的に伝える内容
- 採血側、ライン、溶血、パンピング、処理遅延
- なぜ必要か
- 偽値の可能性と再検方法を決める
| 報告要素 | 具体的に伝える内容 | なぜ必要か |
|---|---|---|
| 値と時間 | 現在値、前回値、採血時刻、変化速度 | 急性変化ほど症状・不整脈リスクが高いことがある |
| 患者状態 | 意識、痙攣、脈・血圧・呼吸、筋力、胸部症状 | 数値より先に処置が必要か判断する |
| 心電図 | 12誘導の有無、新規T波・P波・QRS・不整脈 | 心筋への影響を示すが、正常でも高Kを除外しない |
| 原因の手掛かり | 尿量、腎機能、血糖、酸塩基、Mg、薬剤、消化管喪失、輸液 | 病態と再上昇・再低下の予測につながる |
| 検体条件 | 採血側、ライン、溶血、パンピング、処理遅延 | 偽値の可能性と再検方法を決める |
治療後は「数値が動いたか」だけでなく副作用と再上昇・再低下を見る
この章の要点治療の目的は、異常値を基準範囲へ急いで戻すことだけではありません。臓器障害を防ぎ、原因を止め、安全な速度で補正し、再発を防ぐことです。治療後の再評価までが一連の看護です。
症候性低Naでは脳浮腫を抑えることが優先されますが、慢性低Naの過度に速い補正は浸透圧性脱髄症候群につながります。補正後すぐだけでなく、数日後の構音障害、嚥下障害、四肢麻痺、見当識変化も見逃せません。高Naでは循環と自由水不足を補いながら、Na推移、尿量、神経症状、呼吸状態を追います。
低Kでは原因治療とK補充を行い、必要に応じてMgも補います。静脈投与は致死性不整脈や血管障害を起こし得るため、濃度・速度・投与経路・ポンプ・心電図監視は施設手順を厳守します。Kが上がらないときは、継続する喪失と低Mgを再確認し、上がり始めた後は過補正を警戒します。
高Kの緊急治療は、①心筋膜を安定させる、②Kを一時的に細胞内へ移す、③体外へ除去する、の目的に分かれます。カルシウム製剤は心筋を保護しますがK値そのものは下げません。インスリン・ブドウ糖療法後は低血糖、Kの再上昇を監視します。利尿・吸着薬・透析などの除去が十分か、腎機能と尿量、再検Kで確認します。
架空の学習例で「再採血と緊急評価を並行する」考え方を確認する
この章の要点次は実在患者ではない架空の学習例です。
例1:慢性腎臓病(CKD)のある患者でK 6.7 mmol/L。溶血コメントがあり、自覚症状はなく、モニターに明らかな変化がない。この場合、「溶血だから偽値」「心電図が正常だから安全」とは決めません。患者の意識、脈拍、血圧、筋力、尿量を直ちに確認し、12誘導心電図を準備します。採血側、パンピング、輸液、前回K、腎機能、薬剤を確認して医師へ報告し、適切な検体で迅速に再検します。重症高Kとしての評価・治療と再検を並行する場面です。
例2:利尿薬使用中でK 2.8 mmol/L。食欲低下と嘔吐があり、脱力、T波平低化とU波を認める。この場合は値だけでなく症状と心電図が一致しており、緊急度が上がります。Mg、酸塩基、腎機能、尿量、継続する嘔吐、QT延長薬を確認し、医師へ報告します。補充後はKだけでなく心電図、筋力、Mg、嘔吐の持続を再評価します。
例3:Na 126 mmol/Lで軽い傾眠があり、血糖が著しく高い。この場合、ただちに「水過剰による低張性低Na」と決めず、血漿浸透圧と高血糖による水移動を評価します。一方、意識悪化がNa以外の高浸透圧状態でも起こり得るため、神経所見、循環、尿量を継続観察し、原因評価を急ぎます。
患者には自己調整を促さず、「なぜ再検・観察が必要か」を説明する
この章の要点患者への説明では、「塩を取ればよい」「水を控えればよい」「果物をやめればよい」と単純化しません。Na・K異常は原因によって対応が逆になることがあり、自己判断で水分・食塩・K・薬を増減しないことを伝えます。
再採血が必要な場合は、「採血時の血球の壊れや点滴の混入で、実際と違う値になることがあります。ただし危険な値なので、体調と心電図を見ながら正しい条件で確かめます」と説明すると、待ち時間の意味が伝わります。
退院・外来では、筋力低下、動悸、失神、しびれ、嘔吐・下痢、飲水不能、多尿、強い口渇、意識の変化など、受診につながる症状を患者の理解度に合わせて確認します。薬剤は処方目的があるため、休薬・減量は医師や薬剤師の指示に従うこと、採血予定を守ることを具体的に伝えます。
繰り返すパンピング
- 起こりうる影響
- Kの偽高値
- 確認・予防の要点
- 手は軽く握るだけにし、反復運動を避ける
長い駆血
- 起こりうる影響
- 血液濃縮などによる変動
- 確認・予防の要点
- 駆血は可能なら1分以内、遅くとも2分以内を目安とする
体外溶血
- 起こりうる影響
- K、LDH、ASTなどの偽高値
- 確認・予防の要点
- 溶血表示を確認し、検査室の基準で再検を判断する
注射器から強く押し込む、激しく振る
- 起こりうる影響
- 溶血リスクの増加
- 確認・予防の要点
- 専用移注器を用い、規定どおり穏やかに混和する
輸液中の腕・ルート近傍から採血
- 起こりうる影響
- 輸液成分によってNa・Kなどが偽高値または偽低値
- 確認・予防の要点
- 原則として反対側から採血し、例外時は施設手順と記録を徹底する
採血管添加剤の混入
- 起こりうる影響
- K-EDTAでK偽高値、クエン酸NaでNa偽高値など
- 確認・予防の要点
- 採血管の順序と規定量を守る
分離・測定までの遅延
- 起こりうる影響
- 細胞からのK漏出など
- 確認・予防の要点
- 速やかに搬送・処理する
著しい高脂血症・高蛋白血症と間接法
- 起こりうる影響
- 偽性低Na
- 確認・予防の要点
- 浸透圧、脂質・蛋白、測定法を確認する
著しい白血球・血小板増加
- 起こりうる影響
- 偽性高K
- 確認・予防の要点
- 血算、血清・血漿の違い、採血・搬送条件を検査室と確認する
| 採血・検体の条件 | 起こりうる影響 | 確認・予防の要点 |
|---|---|---|
| 繰り返すパンピング | Kの偽高値 | 手は軽く握るだけにし、反復運動を避ける |
| 長い駆血 | 血液濃縮などによる変動 | 駆血は可能なら1分以内、遅くとも2分以内を目安とする |
| 体外溶血 | K、LDH、ASTなどの偽高値 | 溶血表示を確認し、検査室の基準で再検を判断する |
| 注射器から強く押し込む、激しく振る | 溶血リスクの増加 | 専用移注器を用い、規定どおり穏やかに混和する |
| 輸液中の腕・ルート近傍から採血 | 輸液成分によってNa・Kなどが偽高値または偽低値 | 原則として反対側から採血し、例外時は施設手順と記録を徹底する |
| 採血管添加剤の混入 | K-EDTAでK偽高値、クエン酸NaでNa偽高値など | 採血管の順序と規定量を守る |
| 分離・測定までの遅延 | 細胞からのK漏出など | 速やかに搬送・処理する |
| 著しい高脂血症・高蛋白血症と間接法 | 偽性低Na | 浸透圧、脂質・蛋白、測定法を確認する |
| 著しい白血球・血小板増加 | 偽性高K | 血算、血清・血漿の違い、採血・搬送条件を検査室と確認する |
Na・K異常は「数値の暗記」から「変化をつなぐ判断」へ進める
この章の要点Naは水分との比、Kは細胞内外の分布と排泄として読むと、症状・検査・治療がつながります。低Na・高Naでは神経症状と発症時間、低K・高Kでは筋症状と心電図、全例で前回値、腎機能、尿量、薬剤、輸液を確認します。
異常値が患者像と合わないときは、溶血、パンピング、長時間駆血、輸液混入、測定法を考えます。しかし、採血エラーの可能性は患者評価を省く理由になりません。患者評価と検体確認を並行することが、安全なNa・K異常の読み方です。
学習メモ・復習の予定気づきを自分の言葉で残す+
わかったこと、まだ曖昧なこと、次に調べたいことを残せます。
学びを、もう一度
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この記事の編集方針
主要な定義・数値・推奨は、公開時点で確認できるガイドライン、公的資料、学会資料、査読論文を優先して確認しています。未確認の編集メモは公開せず、根拠の範囲や限界を区別して、読者が原資料を確認できるよう参考資料を掲載します。
詳しい編集方針を見る →参考にした資料
- 臨床検査のガイドライン JSLM2024 基準範囲・臨床判断値一般社団法人日本臨床検査医学会・2024p.2 表1で日本の共用基準範囲Na 138~145 mmol/L、K 3.6~4.8 mmol/Lを確認。見出し1の基準範囲に使用。原資料を開く
- 臨床検査のガイドライン JSLM2024 標準採血法ガイドラインに基づく正しい採血法一般社団法人日本臨床検査医学会・2024pp.11~14で輸液ルート近位部、採血管添加物のキャリーオーバー、駆血時間、パンピングによるK上昇を確認。見出し8・9に使用。原資料を開く
- 低ナトリウム血症~その病態に基づいた鑑別診断~一般社団法人日本内科学会・2022日本内科学会雑誌111巻5号pp.902~911。低Naの定義、症状、血漿・尿浸透圧と尿Naによる鑑別、偽性低Na、高血糖、薬剤・副腎不全、急速補正によるODSを確認。見出し2・3・8・10に使用。原資料を開く
残り5件の参考資料を見る原資料・発行元・発行年を確認できます+
- 高ナトリウム血症一般社団法人日本内科学会・2022日本内科学会雑誌111巻5号pp.912~916。自由水不足、体液量による鑑別、中枢神経症状、急性・慢性と補正上の注意、尿崩症を確認。見出し2・4・10に使用。原資料を開く
- 低カリウム血症一般社団法人日本内科学会・2022日本内科学会雑誌111巻5号pp.917~925。K欠乏と細胞内移動の違い、酸塩基・尿電解質による鑑別、低Mg、症候性低Kの治療原則と過補正リスクを確認。見出し2・5・10に使用。原資料を開く
- 高カリウム血症一般社団法人日本内科学会・2022日本内科学会雑誌111巻5号pp.926~933。高Kの定義・原因、筋症状、心電図変化と限界、偽性高K、K 6.5 mEq/L以上の緊急評価、治療目的を確認。見出し6~11に使用。原資料を開く