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読む前に押さえたいこと
「放射線治療を始めたけれど、まだ副作用がない」「治療が終わったのに皮膚炎や口内炎が悪化した」。どちらも不思議な経過ではありません。
放射線治療の副作用は、照射した瞬間にすべて現れるわけではなく、正常組織への影響が積み重なって数日〜数週間後に症状として現れるものがあります。さらに、治療終了後数カ月〜数年たってから起こる晩期の副作用もあります。
この記事では、副作用を「いつ起こりやすいか」という時間軸で整理し、照射部位ごとの症状と看護で確認したいポイントまでつなげます。
放射線治療の副作用は「時期」と「照射部位」の2軸で考える
この章の要点放射線治療の副作用を理解するとき、まず押さえたいのは「全身に同じ副作用が起こる治療ではない」という点です。
放射線は腫瘍だけでなく、照射範囲に含まれる正常組織にも影響します。そのため、頭頸部なら口腔・咽頭粘膜、胸部なら食道や肺、腹部・骨盤なら腸管や膀胱など、どこを照射しているかによって症状が変わります。
さらに副作用には、治療中〜終了直後に起こる「急性期」のものと、治療終了後しばらくしてから起こる「晩期」のものがあります。国立がん研究センターでは、急性期を治療中または終了直後、晩期を治療終了後半年〜数年後に起こるものとして説明しています。
ただし、この境界は副作用を理解するための大まかな分類です。「半年になるまでは晩期反応が起こらない」という意味ではありません。たとえば放射線肺臓炎は治療直後〜数カ月後に現れることがあります。
照射当日〜数日
- 起こり得る変化
- 吐き気・嘔吐など
- 特に関連する照射部位
- 上腹部、全脳、全脊髄、全身照射など
約1〜2週
- 起こり得る変化
- 粘膜炎、唾液減少、味覚変化、照射部位の脱毛など
- 特に関連する照射部位
- 頭頸部、頭部
約2〜3週〜治療後半
- 起こり得る変化
- 皮膚炎、食道炎、腸炎、膀胱炎など
- 特に関連する照射部位
- 頭頸部、胸部、腹部、骨盤
治療終了後数日〜数週
- 起こり得る変化
- 急性期症状が一時的にピークになる場合
- 特に関連する照射部位
- 特に皮膚・粘膜
治療後数週〜数カ月
- 起こり得る変化
- 放射線肺臓炎など
- 特に関連する照射部位
- 胸部
半年〜数年以降
- 起こり得る変化
- 線維化、内分泌障害、骨・軟部組織障害、消化管・尿路障害など
- 特に関連する照射部位
- 照射された各臓器
数年〜数十年
- 起こり得る変化
- 二次がんなど
- 特に関連する照射部位
- 長期フォローが必要な症例
| 時期の目安 | 起こり得る変化 | 特に関連する照射部位 |
|---|---|---|
| 照射当日〜数日 | 吐き気・嘔吐など | 上腹部、全脳、全脊髄、全身照射など |
| 約1〜2週 | 粘膜炎、唾液減少、味覚変化、照射部位の脱毛など | 頭頸部、頭部 |
| 約2〜3週〜治療後半 | 皮膚炎、食道炎、腸炎、膀胱炎など | 頭頸部、胸部、腹部、骨盤 |
| 治療終了後数日〜数週 | 急性期症状が一時的にピークになる場合 | 特に皮膚・粘膜 |
| 治療後数週〜数カ月 | 放射線肺臓炎など | 胸部 |
| 半年〜数年以降 | 線維化、内分泌障害、骨・軟部組織障害、消化管・尿路障害など | 照射された各臓器 |
| 数年〜数十年 | 二次がんなど | 長期フォローが必要な症例 |
照射当日から起こることがあるのは、主に吐き気・嘔吐
この章の要点放射線治療の副作用は数週間後に現れるものが多い一方、照射当日から起こる症状もあります。
代表例が吐き気・嘔吐です。国立がん研究センターでは、放射線治療後2〜3時間ほどしてから吐き気・嘔吐が起こる場合があるとしています。特に全身、上腹部、全脳、全脊髄などへの照射では起こりやすく、必要に応じて予防的に制吐薬が用いられます。
ここで重要なのは、「放射線治療をすれば必ず吐く」わけではないことです。照射部位や治療方法によってリスクは大きく異なります。
看護では、照射部位を確認したうえで、悪心の程度、嘔吐回数、食事・水分摂取量、脱水徴候、制吐薬の効果を追います。症状が強い場合には、放射線だけでなく、併用薬、疼痛、便秘、電解質異常、病変そのものなど別の原因も考える必要があります。
1〜2週ごろから、粘膜炎・味覚変化・唾液減少が目立つことがある
この章の要点頭頸部への通常分割照射では、治療開始1〜2週ごろから口内炎・咽頭炎などの粘膜炎、唾液の減少、味覚変化が現れ始めることがあります。
症状が進むと、「口が痛い」だけでは終わりません。
咽頭痛や嚥下痛によって食事量が減る、飲水量が減る、内服が難しくなる、体重が落ちるといった二次的な問題につながります。十分な栄養や水分を確保できなくなると、治療継続に影響する可能性もあります。
そのため看護では、粘膜を「赤いか・荒れているか」だけで見るのではなく、
- 疼痛の程度
- 嚥下時痛
- 食事摂取量
- 飲水量
- 体重変化
- 口腔乾燥
- 唾液の状態
- 味覚変化
- 口腔内の清潔状態
- 内服できているか
まで一続きで評価することが重要です。
治療前からの口腔ケアと、治療中の継続的な口腔管理も重要とされています。
照射部位の脱毛は、開始約10日後から起こることがある
この章の要点放射線治療による脱毛は、抗がん薬による脱毛とは考え方が異なります。
原則として、放射線が当たった部位の毛が抜けます。頭部を照射すれば頭髪、胸部の皮膚が照射範囲に入ればその部位の体毛というように、照射されていない場所まで一律に脱毛するわけではありません。
国立がん研究センターでは、照射開始から10日ほどで脱毛が始まる場合があるとしています。多くの場合は治療後3〜6カ月ほどで発毛を実感するようになりますが、照射線量などによっては永久的な脱毛となることもあります。
看護師は脱毛の有無だけでなく、治療前に「どこが抜ける可能性があるのか」を説明できると、患者の不安軽減やアピアランスケアにつなげやすくなります。
2〜3週以降は、照射範囲に応じた炎症症状が目立ってくる
この章の要点通常分割の放射線治療では、治療が進んで正常組織への影響が蓄積してくると、皮膚や粘膜などに症状が目立つようになります。
頭頸部では皮膚炎、粘膜炎、嚥下痛。胸部では食道炎による飲み込みづらさや痛み。腹部・骨盤では下痢や腹痛、直腸炎、膀胱炎による頻尿・排尿時の違和感などが代表例です。
たとえば食道への照射では、治療開始2〜3週ほどで食道炎による痛みやつかえ感が現れることがあるとされています。頭頸部の皮膚炎も2〜3週ごろから目立ち始める代表的な急性期反応です。
一方、腹部・骨盤照射による下痢や膀胱炎については、すべての患者に共通する「○日目」という開始時期を設定することはできません。「数週間以内に起こり得る」と考え、照射範囲と症状の変化をセットで評価する方が実用的です。
倦怠感も治療期間中にみられますが、がんそのもの、睡眠、疼痛、栄養状態、活動量、薬物療法など複数の要因が関係するため、「放射線治療○日目だから倦怠感」と決めつけないことが重要です。
頭部
- 治療中にみられやすい症状の例
- 脱毛、頭痛、吐き気など
- 看護でつなげて見るポイント
- 意識・神経症状、食事、水分、照射範囲
頭頸部
- 治療中にみられやすい症状の例
- 粘膜炎、口腔乾燥、味覚変化、皮膚炎、嚥下障害
- 看護でつなげて見るポイント
- 口腔内、疼痛、嚥下、食事量、体重、皮膚
胸部
- 治療中にみられやすい症状の例
- 食道炎、皮膚炎、咳など
- 看護でつなげて見るポイント
- 嚥下痛、食事量、呼吸状態
上腹部
- 治療中にみられやすい症状の例
- 吐き気、食欲低下など
- 看護でつなげて見るポイント
- 悪心、嘔吐、水分・栄養
腹部・骨盤
- 治療中にみられやすい症状の例
- 下痢、腹痛、直腸炎、膀胱炎など
- 看護でつなげて見るポイント
- 排便回数・性状、腹痛、水分、尿回数・排尿症状
骨髄を多く含む範囲
- 治療中にみられやすい症状の例
- 骨髄抑制が起こる場合
- 看護でつなげて見るポイント
- 血算、感染・出血徴候
| 照射部位 | 治療中にみられやすい症状の例 | 看護でつなげて見るポイント |
|---|---|---|
| 頭部 | 脱毛、頭痛、吐き気など | 意識・神経症状、食事、水分、照射範囲 |
| 頭頸部 | 粘膜炎、口腔乾燥、味覚変化、皮膚炎、嚥下障害 | 口腔内、疼痛、嚥下、食事量、体重、皮膚 |
| 胸部 | 食道炎、皮膚炎、咳など | 嚥下痛、食事量、呼吸状態 |
| 上腹部 | 吐き気、食欲低下など | 悪心、嘔吐、水分・栄養 |
| 腹部・骨盤 | 下痢、腹痛、直腸炎、膀胱炎など | 排便回数・性状、腹痛、水分、尿回数・排尿症状 |
| 骨髄を多く含む範囲 | 骨髄抑制が起こる場合 | 血算、感染・出血徴候 |
治療が終わった直後こそ、副作用が強くなることがある
この章の要点放射線治療で特に覚えておきたいのが、「最終照射日=副作用のピークが終わる日」ではないことです。
照射が終了しても、それまでに放射線の影響を受けた正常細胞や組織の炎症反応がすぐにゼロになるわけではありません。そのため、一部の急性期反応は治療終了後もしばらく進行します。
頭頸部放射線治療では、粘膜炎が治療開始1〜2週から現れ、照射終了後7〜10日ごろに最も強くなることがあります。その後、多くは治療終了後2週間〜1カ月程度で徐々に改善します。
皮膚炎も同様で、頭頸部治療では開始2〜3週ごろから起こり、治療終了後数日〜1週間以内に最も強くなり、その後1〜2カ月程度で改善することが多いとされています。
患者が「治療が終わったのに悪くなった」と不安にならないよう、治療終了前からこの経過を伝えておくことは重要です。
放射線皮膚炎は「赤み」だけでなく、痛み・湿潤・日常生活への影響まで見る
この章の要点放射線皮膚炎では、乾燥、赤み、ほてり、かゆみなどから始まり、反応が強くなると疼痛や皮膚剥離につながることがあります。
看護では発赤の有無だけではなく、照射範囲、乾燥、かゆみ、疼痛、びらん・湿潤、衣服との摩擦、患者が行っているセルフケアまで確認します。
基本的なスキンケアとして、公的資料では「清潔・保湿・保護・観察」が示されています。洗浄するときは強くこすらず、ぬるめの湯と泡でやさしく洗い、水分を拭くときも押さえるようにします。摩擦や熱すぎる湯、紫外線などの刺激を避けることも重要です。
2023年のMASCCガイドラインでは、急性放射線皮膚炎について多数の研究を系統的に検討し、予防・管理に関する推奨が整理されています。また、外用ステロイドを扱ったRCTのメタ解析では重度皮膚炎の予防効果が示されています。とはいえ、外用薬の種類や塗布方法は照射部位や施設の方針によって異なるため、患者が自己判断で薬剤を追加するのではなく、放射線治療チームの指示に沿う必要があります。
数週〜数カ月後に注意したい代表例が放射線肺臓炎
この章の要点胸部に放射線が照射された患者では、急性期の皮膚炎や食道炎が改善したあとに、新たな呼吸器症状が現れることがあります。
代表的なのが放射線肺臓炎です。
国立がん研究センターでは、放射線肺臓炎は治療直後〜数カ月後にみられることがあり、咳、発熱、息苦しさなどが現れる場合があるとしています。重症化する例もあるため、胸部放射線治療後の新たな空咳、発熱、呼吸困難は「治療が終わったから関係ない」と判断しないことが重要です。
2025年の放射線肺臓炎に関するレビューでも、典型的な症状は放射線治療終了後およそ1〜6カ月に出現することが示されています。
感染症、がんの進行、肺血栓塞栓症、薬剤性肺障害などでも似た症状が起こるため、看護師が放射線肺臓炎と診断するのではなく、「胸部照射歴+症状出現時期+呼吸状態」を整理して速やかに医師へ共有することが大切です。
半年〜数年後には「晩期の副作用」が現れることがある
この章の要点放射線治療の影響は、急性期症状が治ったら完全に終了するとは限りません。
晩期の副作用は、治療後数カ月〜数年、場合によってはさらに長い時間がたってから現れます。国立がん研究センターは一般向け情報で、放射線治療終了後半年〜数年後に起こる副作用を晩期として整理しています。
代表的な晩期変化は照射部位によって異なります。
頭頸部では、唾液分泌障害、嚥下障害、開口障害、甲状腺機能低下、顎骨障害などが起こる場合があります。胸部では肺・心臓などへの影響、腹部・骨盤では腸管や膀胱からの出血、潰瘍、狭窄・閉塞などが問題になる場合があります。
また、照射された組織では時間をかけて線維化が進行することがあります。文献では放射線誘発性線維化は治療終了後4〜12カ月ごろから始まり、その後何年にもわたって進行する場合があると報告されています。
だからこそ、晩期反応は「入院中の放射線治療看護」だけでは完結せず、外来・地域を含めた長期フォローにつながる視点が必要です。
二次がんは「すぐ起こる副作用」ではなく、長期的に考える影響
この章の要点放射線治療を学ぶと「放射線で別のがんができるのでは?」という疑問も出てきます。
放射線による二次がんは晩期影響の1つですが、急性期の皮膚炎や粘膜炎とは時間軸がまったく異なります。国立がん研究センターでは、がん治療の影響による二次がんは治療終了から数年〜数十年後に発生することがあると説明しています。
一方で、二次がんのリスクだけを切り取って「放射線治療は危険」と考えるのは適切ではありません。放射線治療では、治療するがんに対する利益と正常組織への影響を考慮して治療計画が立てられます。
看護師が患者説明を補足するときも、「将来的に可能性がゼロではない」という情報と、「現在の治療目的・期待される利益」を切り離さずに伝えることが重要です。
看護では「何日目か」だけでなく、照射野・線量・併用治療を最初に確認する
この章の要点放射線治療患者を受け持つとき、最初に「放射線○回目」とだけ確認しても十分ではありません。
副作用を予測するために、少なくとも次の情報を結び付けて考えます。
- どこを照射しているか
- 治療開始から何日・何回目か
- 治療終了予定日はいつか
- どの臓器が照射範囲に含まれているか
- 薬物療法を併用しているか
- これまでにどんな症状が出ているか
- 食事・水分・体重・ADLに影響していないか
化学放射線療法では、放射線治療単独より副作用が強くなる場合があります。また、悪心、骨髄抑制、倦怠感などは併用薬によっても起こるため、「放射線による症状」と即断せず、治療全体を見ることが重要です。
時期を知る目的は「副作用を当てること」ではなく、変化を早く拾うこと
この章の要点放射線治療の副作用は、教科書どおりの日付に現れるわけではありません。
「1〜2週なら粘膜」「2〜3週なら皮膚」と暗記するだけではなく、
照射部位 → 起こり得る症状 → 出現しやすい時期 → 患者の現在の変化
という順番で考えると、臨床で使いやすくなります。
特に覚えておきたいのは、治療終了後も急性期症状が強くなることがある点と、数カ月後に新しい副作用が現れる場合がある点です。頭頸部の粘膜炎・皮膚炎は治療終了後にピークとなる場合があり、胸部照射後の放射線肺臓炎は治療直後〜数カ月後に発症することがあります。
放射線治療の看護では、照射期間だけを見るのではなく、治療前・治療中・終了直後・数カ月後・長期まで連続した時間軸で患者を見ることが大切です。
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- 中咽頭がん 治療国立研究開発法人 国立がん研究センター がん情報サービス・2026年頭頸部放射線治療では、粘膜炎・唾液分泌障害・味覚障害が治療開始1〜2週ごろから現れ、照射終了7〜10日ごろにピークとなること、粘膜炎は治療終了後2週間〜1カ月程度で改善することを確認。頭頸部癌診療ガイドライン2025年版を踏まえ、2026年2月27日に更新されている。原資料を開く
- 喉頭がん 治療国立研究開発法人 国立がん研究センター がん情報サービス・2026年放射線皮膚炎が治療開始2〜3週ごろから現れ、終了後数日〜1週間以内に最も強くなり、1〜2カ月程度で改善すること、晩期に嚥下障害、開口障害、唾液分泌障害、顎骨障害、甲状腺機能低下などが起こり得ることを確認。2026年4月6日更新。原資料を開く
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- 肺がん 非小細胞肺がん 治療国立研究開発法人 国立がん研究センター がん情報サービス・2025年胸部放射線治療中の食道炎・皮膚炎などと、治療直後〜数カ月後に発症し得る放射線肺臓炎について確認。発熱、息苦しさ、空咳などを認める場合は担当医への連絡が必要とされている。2025年6月11日更新。