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便秘薬は「出す薬」と一括りにできません。便に水分を保つ薬、腸の分泌や動きを促す薬、オピオイドの作用を腸で遮る薬、直腸へ使う薬では、適する状況も観察点も異なります。毎日排便がないことだけで便秘とは限らず、硬便、強いいきみ、残便感も判断材料です。本記事では成人の慢性便秘症を中心に、代表薬を作用別に整理し、腸閉塞を疑う所見、腎機能低下時の注意、服用後の評価、医師・薬剤師への報告内容まで、看護学生から臨床看護師が順に理解できるよう解説します。用量は処方・製剤ごとに異なるため、個別の電子添文と指示を確認してください。
便秘薬は「強さ」ではなく、便秘の型と患者の安全性から選ぶ
この章の要点便秘薬選びの基本は、最も強い薬を選ぶことではありません。器質的疾患や薬剤性便秘を見落とさず、便が硬いのか、回数が少ないのか、出口で出せないのかを確認し、便秘の型に合う治療を選びます。
成人の機能性便秘症や便秘型過敏性腸症候群では、生活・食事を見直したうえで、まず浸透圧性下剤が経口治療の候補になります。効果不十分なら、ルビプロストンやリナクロチドなどの上皮機能変容薬、エロビキシバットを検討します。刺激性下剤は、必要時または短期間の使用が基本です。
便が直腸まで来ていない状態では、坐剤や浣腸を使っても十分な効果は期待できません。反対に、直腸に硬い便が詰まっている場合には、経口薬を追加するだけでなく直腸内の評価が必要です。オピオイド誘発性便秘症には、一般的な下剤に加えてナルデメジンという原因機序に対応する薬があります。
治療目標は、毎日排便させることではなく、過度ないきみや残便感がなく、患者が快適に排便できる完全自発排便と生活の質の改善です。
排便回数が少ないだけでは便秘と判断できない
この章の要点便秘は、排便回数だけでなく、便の硬さ、強いいきみ、残便感、肛門付近の閉塞感、用手的な介助の必要性を含めて判断します。毎日排便があっても硬便や強い残便感が続けば便秘症に該当し得ます。
大腸では、内容物から水分を吸収しながら便を肛門側へ運びます。通過が遅いと水分が過剰に吸収され、硬い便になりやすくなります。この場合は、腸管内に水分を保つ薬や分泌を促す薬が理にかないます。
一方、便が適度に軟らかくても、骨盤底筋が排便時にうまく緩まない、直腸の便を押し出せない、直腸瘤などがある場合は、便排出障害が疑われます。こうした患者に便を軟らかくする薬だけを増やすと、排出困難は残ったまま軟便や便失禁が生じることがあります。
便秘は、一次性の機能性便秘だけではありません。大腸がんや炎症による狭窄、糖尿病、甲状腺機能低下症、パーキンソン病のほか、オピオイド、抗コリン薬、抗精神病薬、抗うつ薬、カルシウム拮抗薬、鉄剤などによる二次性便秘もあります。下剤を追加する前に、発症時期と薬剤変更の時間的関係を確かめる必要があります。
便秘薬一覧:代表薬を作用機序で整理する
この章の要点便秘薬は、便の水分を増やす薬、便量を増やす薬、腸の分泌・運動を促す薬、原因薬の作用を腸で遮る薬、直腸を刺激する薬に分けられます。分類が同じでも禁忌や服用時刻は異なるため、一般名と電子添文をセットで確認します。
膨張性下剤
- 代表的な一般名・製品例
- カルボキシメチルセルロース、ポリカルボフィルカルシウム
- 主な働きと位置づけ
- 水分を吸収して便の容積を増やす。食物繊維に近い働き
- 主な注意点・観察
- 十分な水分が必要。腹部膨満、口渇に注意。ポリカルボフィルカルシウムは腎機能低下時の高カルシウム血症にも注意する
浸透圧性下剤・塩類
- 代表的な一般名・製品例
- 酸化マグネシウム
- 主な働きと位置づけ
- 腸管内に水分を保ち、硬便を軟らかくする。国内で広く使われる
- 主な注意点・観察
- 高マグネシウム血症。高齢者、腎機能障害、長期投与では特に注意するが、正常腎機能・通常量でも重症例はある。抗菌薬やビスホスホネートなどとの相互作用も確認する
浸透圧性下剤・糖類
- 代表的な一般名・製品例
- ラクツロース(ラグノスNFなど)
- 主な働きと位置づけ
- 吸収されにくい糖の浸透圧作用で水分を保持する
- 主な注意点・観察
- 下痢、腹痛、腹部膨満、鼓腸。ラグノスNFはガラクトース血症に禁忌
浸透圧性下剤・高分子化合物
- 代表的な一般名・製品例
- PEG・マクロゴール+電解質(モビコール)
- 主な働きと位置づけ
- 水分を保持し、電解質バランスにも配慮して便を軟らかくする
- 主な注意点・観察
- 指定量の水に溶かす。下痢、腹痛、膨満。腸閉塞、腸管穿孔、重症炎症性腸疾患またはその疑いでは使用しない
浸潤性下剤
- 代表的な一般名・製品例
- ジオクチルソジウムスルホサクシネート(DSS)
- 主な働きと位置づけ
- 便の表面張力を下げて水分を浸透させる。配合薬に含まれることが多い
- 主な注意点・観察
- 単独作用は比較的弱い。配合されている刺激性成分との重複を確認する
刺激性下剤・アントラキノン系
- 代表的な一般名・製品例
- センナ、センノシド、ダイオウ
- 主な働きと位置づけ
- 大腸の運動を促進し、水分吸収を抑える。レスキューや短期間使用が中心
- 主な注意点・観察
- 腹痛、水様便、脱水、電解質異常。長期連用による耐性・習慣性や大腸黒皮症が問題となり得る
刺激性下剤・ジフェニール系
- 代表的な一般名・製品例
- ピコスルファートナトリウム、ビサコジル
- 主な働きと位置づけ
- 大腸で活性化され、蠕動と排便反射を促す
- 主な注意点・観察
- 腹痛、下痢、脱水。急性腹症が疑われる場合は使用しない。滴剤は滴数の取り違えにも注意する
上皮機能変容薬
- 代表的な一般名・製品例
- ルビプロストン(アミティーザ)
- 主な働きと位置づけ
- クロライド分泌を促し、水分を腸管内へ移動させる
- 主な注意点・観察
- 朝・夕食後に服用。悪心、下痢、腹痛。腸閉塞では禁忌。妊婦・妊娠している可能性がある女性には禁忌
上皮機能変容薬
- 代表的な一般名・製品例
- リナクロチド(リンゼス)
- 主な働きと位置づけ
- GC-C受容体を介して水分分泌と輸送を促し、内臓知覚過敏も抑える
- 主な注意点・観察
- 1日1回食前。下痢、特に重度の下痢に注意。機械的消化管閉塞またはその疑いでは禁忌
胆汁酸トランスポーター阻害薬
- 代表的な一般名・製品例
- エロビキシバット(グーフィス)
- 主な働きと位置づけ
- 胆汁酸の再吸収を抑え、大腸で水分分泌と蠕動を促す
- 主な注意点・観察
- 1日1回食前。腹痛、下痢。腸閉塞では禁忌。重い肝障害や胆道閉塞、胆汁酸関連薬との併用も確認する
末梢性μオピオイド受容体拮抗薬
- 代表的な一般名・製品例
- ナルデメジン(スインプロイク)
- 主な働きと位置づけ
- 腸管でオピオイドの作用を遮り、オピオイド誘発性便秘症を改善する
- 主な注意点・観察
- 一般的な便秘には使わない。消化管閉塞・穿孔、オピオイド離脱症候群、鎮痛状態の変化を観察。オピオイド終了時は本剤も終了する
直腸用薬
- 代表的な一般名・製品例
- グリセリン浣腸、ビサコジル坐剤、炭酸ガス発生坐剤
- 主な働きと位置づけ
- 直腸内の便を軟らかくする、または直腸を刺激して排便を促す
- 主な注意点・観察
- 直腸に便がある場合に検討する。粘膜損傷、出血、腹痛、血圧低下に注意。長期連用を避け、肛門病変や術後状態などの禁忌を確認する
| 分類 | 代表的な一般名・製品例 | 主な働きと位置づけ | 主な注意点・観察 |
|---|---|---|---|
| 膨張性下剤 | カルボキシメチルセルロース、ポリカルボフィルカルシウム | 水分を吸収して便の容積を増やす。食物繊維に近い働き | 十分な水分が必要。腹部膨満、口渇に注意。ポリカルボフィルカルシウムは腎機能低下時の高カルシウム血症にも注意する |
| 浸透圧性下剤・塩類 | 酸化マグネシウム | 腸管内に水分を保ち、硬便を軟らかくする。国内で広く使われる | 高マグネシウム血症。高齢者、腎機能障害、長期投与では特に注意するが、正常腎機能・通常量でも重症例はある。抗菌薬やビスホスホネートなどとの相互作用も確認する |
| 浸透圧性下剤・糖類 | ラクツロース(ラグノスNFなど) | 吸収されにくい糖の浸透圧作用で水分を保持する | 下痢、腹痛、腹部膨満、鼓腸。ラグノスNFはガラクトース血症に禁忌 |
| 浸透圧性下剤・高分子化合物 | PEG・マクロゴール+電解質(モビコール) | 水分を保持し、電解質バランスにも配慮して便を軟らかくする | 指定量の水に溶かす。下痢、腹痛、膨満。腸閉塞、腸管穿孔、重症炎症性腸疾患またはその疑いでは使用しない |
| 浸潤性下剤 | ジオクチルソジウムスルホサクシネート(DSS) | 便の表面張力を下げて水分を浸透させる。配合薬に含まれることが多い | 単独作用は比較的弱い。配合されている刺激性成分との重複を確認する |
| 刺激性下剤・アントラキノン系 | センナ、センノシド、ダイオウ | 大腸の運動を促進し、水分吸収を抑える。レスキューや短期間使用が中心 | 腹痛、水様便、脱水、電解質異常。長期連用による耐性・習慣性や大腸黒皮症が問題となり得る |
| 刺激性下剤・ジフェニール系 | ピコスルファートナトリウム、ビサコジル | 大腸で活性化され、蠕動と排便反射を促す | 腹痛、下痢、脱水。急性腹症が疑われる場合は使用しない。滴剤は滴数の取り違えにも注意する |
| 上皮機能変容薬 | ルビプロストン(アミティーザ) | クロライド分泌を促し、水分を腸管内へ移動させる | 朝・夕食後に服用。悪心、下痢、腹痛。腸閉塞では禁忌。妊婦・妊娠している可能性がある女性には禁忌 |
| 上皮機能変容薬 | リナクロチド(リンゼス) | GC-C受容体を介して水分分泌と輸送を促し、内臓知覚過敏も抑える | 1日1回食前。下痢、特に重度の下痢に注意。機械的消化管閉塞またはその疑いでは禁忌 |
| 胆汁酸トランスポーター阻害薬 | エロビキシバット(グーフィス) | 胆汁酸の再吸収を抑え、大腸で水分分泌と蠕動を促す | 1日1回食前。腹痛、下痢。腸閉塞では禁忌。重い肝障害や胆道閉塞、胆汁酸関連薬との併用も確認する |
| 末梢性μオピオイド受容体拮抗薬 | ナルデメジン(スインプロイク) | 腸管でオピオイドの作用を遮り、オピオイド誘発性便秘症を改善する | 一般的な便秘には使わない。消化管閉塞・穿孔、オピオイド離脱症候群、鎮痛状態の変化を観察。オピオイド終了時は本剤も終了する |
| 直腸用薬 | グリセリン浣腸、ビサコジル坐剤、炭酸ガス発生坐剤 | 直腸内の便を軟らかくする、または直腸を刺激して排便を促す | 直腸に便がある場合に検討する。粘膜損傷、出血、腹痛、血圧低下に注意。長期連用を避け、肛門病変や術後状態などの禁忌を確認する |
薬の使い分けは「原因除外→便秘の型→安全性→再評価」の順で考える
この章の要点便秘薬を選ぶ前に、まず狭窄、急性腹症、基礎疾患、原因薬剤を確認します。安全上の問題がなければ、便の硬さと排出のしにくさを分けて考えます。
- 硬便や排便回数の減少が中心
食事・生活習慣を調整し、浸透圧性下剤を検討します。腎機能、電解質、必要な水分量、服薬負担から酸化マグネシウム、ラクツロース、PEGなどを選びます。
- 浸透圧性下剤で不十分
上皮機能変容薬またはエロビキシバットを検討します。ただし、ルビプロストン、リナクロチド、エロビキシバットを患者像だけで明確に選び分ける方法は確立していません。悪心、下痢、腹痛、服用時刻、妊娠可能性、併用薬を含めて選びます。
- 一時的に排便を促したい
刺激性下剤を必要時に使います。頓用が頻回になる場合は、単に回数を増やすのではなく、基礎薬、便秘の型、服薬状況を再評価します。
- 軟らかい便でも出せない
便排出障害を考えます。直腸診、排便造影、バルーン排出検査、直腸肛門内圧検査などが検討され、骨盤底筋協調運動障害ではバイオフィードバック療法が選択肢になります。
- 直腸に便が貯留している
坐剤、浣腸、必要に応じた摘便を検討します。直腸内の便の有無を確かめず、排便日数だけで一律に処置を進めないことが重要です。
腎機能、妊娠、オピオイド使用などで選択は大きく変わる
この章の要点便秘薬の安全性は、年齢だけでなく腎・肝機能、妊娠可能性、併用薬、消化管疾患によって変わります。薬を追加する前に、患者背景と電子添文を照合します。
酸化マグネシウムでは、腎機能低下によりマグネシウムの排泄が遅れます。高齢者や長期投与では血清マグネシウム濃度の定期確認が必要です。ただし、腎機能が正常でも高マグネシウム血症は否定できません。嘔吐、徐脈、筋力低下、傾眠は重要な警告症状です。
妊娠中に便秘が起きやすいからといって、すべての便秘薬を使用できるわけではありません。ルビプロストンは、妊婦または妊娠している可能性がある女性に禁忌です。ほかの薬にも妊娠・授乳中の注意があるため、自己判断で市販薬や漢方薬を追加せず、医師・薬剤師へ相談します。
オピオイド使用開始後の便秘では、腸管のμオピオイド受容体を介した蠕動低下、腸液分泌低下、水分吸収増加が関与します。浸透圧性下剤や刺激性下剤に加え、ナルデメジンが選択肢です。ナルデメジン使用中は、激しい腹痛、下痢、発汗、流涙、鼻汁、筋肉痛、不安など、消化管穿孔やオピオイド離脱を疑う変化を観察します。
高齢者では、夜間の便意や下痢が転倒につながることがあります。認知機能、トイレまでの移動能力、排泄介助の必要性まで含めて、投与時刻と薬効の現れ方を評価します。
下剤投与前に、腸閉塞や器質的疾患を疑う所見を確認する
この章の要点強い腹痛、腹部膨満、繰り返す嘔吐、排ガス停止がある場合は、便秘だからと下剤を追加せず、腸閉塞や急性腹症を評価します。腸管を刺激したり内容量を増やしたりすると、症状の悪化や穿孔につながる薬があるためです。
慢性便秘症の警告症状・徴候には、排便習慣の急激な変化、血便、6か月以内の予期しない3kg以上の体重減少、発熱、関節痛、腹部または直腸の腫瘤、診察時の血液付着などがあります。50歳以上での新規発症、大腸器質的疾患の既往・家族歴も危険因子です。これらは病名を確定する所見ではありませんが、器質的疾患の検査を検討する理由になります。
投与前には次を確認します。
- 最終排便・排ガス、普段の排便間隔、便量
- ブリストル便形状スケール、怒責、残便感、閉塞感
- 腹痛の部位・強さ・持続時間、膨満、悪心・嘔吐
- 食事・水分摂取、活動量、トイレ環境
- 新しく開始・増量・中止した薬、市販薬、サプリメント、漢方薬
- 腎機能、肝機能、電解質、妊娠可能性、消化管疾患・手術歴
- 直腸用薬を検討する場合は、直腸内の便、肛門出血、裂創、痔核
血液検査は全員に同じ項目を行うのではありません。病歴に応じて、貧血をみる血算、糖尿病をみる血糖、甲状腺機能、血清カルシウム、腎機能、などが選ばれます。酸化マグネシウム使用中は血清マグネシウムも重要です。便潜血検査は大腸がんに役立ちますが、陰性だけで器質的疾患を完全には否定できません。
投与後は「出たか」だけでなく、便の質と全身への影響を見る
この章の要点排便の有無だけでは、薬が適切に効いたか判断できません。便の硬さ、いきみ、残便感、腹部症状、水分・電解質への影響を合わせて評価します。
排便回数、時刻、量、便形状
- なぜ見るのか・変化の意味
- 硬便の改善、過量による軟便・水様便を評価する
- 組み合わせて確認する所見
- 投与薬・時刻、食事、水分、活動量
怒責、残便感、閉塞感、用手介助
- なぜ見るのか・変化の意味
- 便が軟らかくても残る場合は便排出障害を考える
- 組み合わせて確認する所見
- 直腸内便、肛門病変、便失禁
腹痛、膨満、悪心・嘔吐、排ガス
- なぜ見るのか・変化の意味
- 一過性の薬効か、閉塞・穿孔などの異常かを区別する
- 組み合わせて確認する所見
- 痛みの強さと持続、腹膜刺激症状、バイタルサイン
腸蠕動音
- なぜ見るのか・変化の意味
- 腸管活動の変化を知る補助になる
- 組み合わせて確認する所見
- 音だけで閉塞を診断せず、痛み、膨満、嘔吐、排ガスと合わせる
水分出納、口渇、尿量、立ちくらみ
- なぜ見るのか・変化の意味
- 下痢による脱水を早期に捉える
- 組み合わせて確認する所見
- 血圧、脈拍、体重、腎機能、電解質
腎機能、血清Mg、Na、K
- なぜ見るのか・変化の意味
- 酸化マグネシウム蓄積や下痢による電解質異常を捉える
- 組み合わせて確認する所見
- 意識、筋力、脈拍、心電図所見
服用方法と併用薬
- なぜ見るのか・変化の意味
- 食前・食後、溶解方法、相互作用の違いが効果と副作用に影響する
- 組み合わせて確認する所見
- 飲み忘れ、自己増量、市販薬の重複
浣腸・坐剤後の出血、疼痛、血圧変化
- なぜ見るのか・変化の意味
- 粘膜損傷、直腸刺激、迷走神経反射などを疑う
- 組み合わせて確認する所見
- 顔色、冷汗、脈拍、意識、肛門病変
| 観察すること | なぜ見るのか・変化の意味 | 組み合わせて確認する所見 |
|---|---|---|
| 排便回数、時刻、量、便形状 | 硬便の改善、過量による軟便・水様便を評価する | 投与薬・時刻、食事、水分、活動量 |
| 怒責、残便感、閉塞感、用手介助 | 便が軟らかくても残る場合は便排出障害を考える | 直腸内便、肛門病変、便失禁 |
| 腹痛、膨満、悪心・嘔吐、排ガス | 一過性の薬効か、閉塞・穿孔などの異常かを区別する | 痛みの強さと持続、腹膜刺激症状、バイタルサイン |
| 腸蠕動音 | 腸管活動の変化を知る補助になる | 音だけで閉塞を診断せず、痛み、膨満、嘔吐、排ガスと合わせる |
| 水分出納、口渇、尿量、立ちくらみ | 下痢による脱水を早期に捉える | 血圧、脈拍、体重、腎機能、電解質 |
| 腎機能、血清Mg、Na、K | 酸化マグネシウム蓄積や下痢による電解質異常を捉える | 意識、筋力、脈拍、心電図所見 |
| 服用方法と併用薬 | 食前・食後、溶解方法、相互作用の違いが効果と副作用に影響する | 飲み忘れ、自己増量、市販薬の重複 |
| 浣腸・坐剤後の出血、疼痛、血圧変化 | 粘膜損傷、直腸刺激、迷走神経反射などを疑う | 顔色、冷汗、脈拍、意識、肛門病変 |
緊急性のある変化は、追加投与を避けて具体的に報告する
この章の要点激しい、または持続する腹痛、進行する腹部膨満、繰り返す嘔吐、排ガス停止、血便、発熱、腹膜刺激症状、血圧低下や意識変化がある場合は、追加の下剤や浣腸を行わず、速やかに医師へ報告します。循環・呼吸が不安定なら施設の急変対応につなげます。
報告前後に、次を再確認します。
- 症状の開始時刻、部位、強さ、持続・増悪の有無
- 最終排便・排ガス、便の性状、血液の有無
- 腹部膨満、圧痛、嘔吐、バイタルサイン、意識
- 便秘薬の名称、量、投与時刻、直腸処置の有無
- 腹部手術歴、消化管疾患、オピオイド使用、腎機能
- 利用可能な検査結果と、普段からの変化
酸化マグネシウム使用中に嘔吐、徐脈、筋力低下、傾眠が現れた場合は、高マグネシウム血症を疑います。追加投与を避け、服用量・期間、腎機能、併用薬を確認して速やかに報告します。医師の判断で血清マグネシウム、電解質、腎機能、心電図などが確認されます。
頻回の水様便、尿量低下、口渇、立ちくらみ、血圧低下がある場合は、脱水・電解質異常を考えます。排便回数だけでなく、水分出納と全身状態を伝えます。
浣腸や坐剤の挿入時に抵抗、強い疼痛、出血が生じた場合は中止し、挿入の深さ、出血量、腹痛、バイタルサインを報告します。グリセリン浣腸では、損傷部からの吸収による溶血や腎障害にも注意が必要です。
患者には服用時刻、自己増量の危険、受診すべき症状を説明する
この章の要点患者説明では、「毎日出す」よりも「苦痛なく十分に出せる状態」を目標にします。薬の名称、目的、飲み方、起こりやすい症状、相談が必要な変化を具体的に伝えます。
- ルビプロストンは食後、リナクロチドとエロビキシバットは食前など、薬ごとに服用時刻が異なる
- PEG製剤は指示された水量で溶かし、粉末のまま服用しない
- 効果がないからと自己判断で倍量にしたり、処方薬と市販薬を重ねたりしない
- センナ、センノシド、ダイオウを含む薬は、商品名が異なっても刺激性成分が重なることがある
- 水分摂取は有用な場合があるが、心不全や腎不全などで水分制限がある人は指示量を守る
- 下痢、腹痛、悪心が続く場合は、我慢して漫然と継続せず相談する
- 激しい腹痛、嘔吐、血便、排ガス停止、意識の変化は早めに医療機関へ連絡する
- 酸化マグネシウム服用中の徐脈、筋力低下、傾眠は直ちに相談する症状である
- 便の回数だけでなく、硬さ、いきみ、残便感、薬を飲んだ時刻を記録する
「便秘薬はすべてくせになる」という説明も正確ではありません。長期連用への注意が特に必要なのは刺激性下剤です。浸透圧性下剤や上皮機能変容薬まで同じ危険性があると考えて中断すると、かえって症状が不安定になることがあります。中止・減量は薬の種類と便通を確認して相談します。
便秘薬を安全に使うためのまとめ
この章の要点便秘薬は、作用機序と便秘の型を対応させて選びます。硬便や回数減少には浸透圧性下剤が基本となり、効果不十分なら上皮機能変容薬やエロビキシバットを検討します。刺激性下剤は主に必要時・短期間、直腸用薬は直腸内に便がある場合、ナルデメジンはオピオイド誘発性便秘症に用います。
看護では、排便回数だけでなく、便形状、怒責、残便感、腹部症状、水分出納、腎機能・電解質、服用方法を経時的に確認します。特に、腸閉塞を疑う症状、高マグネシウム血症、脱水、直腸粘膜損傷を見逃さないことが重要です。
薬を増やしても「便は軟らかいのに出せない」状態が続く場合は、便排出障害を考えます。薬効だけでなく原因に戻って再評価することが、安全な排便管理につながります。
学習メモ・復習の予定気づきを自分の言葉で残す+
わかったこと、まだ曖昧なこと、次に調べたいことを残せます。
学びを、もう一度
復習日になると、ホームと復習リストで確認できます。
次に見返す日を決める
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主要な定義・数値・推奨は、公開時点で確認できるガイドライン、公的資料、学会資料、査読論文を優先して確認しています。未確認の編集メモは公開せず、根拠の範囲や限界を区別して、読者が原資料を確認できるよう参考資料を掲載します。
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- 便通異常症診療ガイドライン2023―慢性便秘症日本消化管学会(編集)/南江堂(発行)・2023定義・分類・警告症状、治療目標、治療フローチャート、CQ5-1〜5-4、BQ5-4・5-5・5-8、FRQ5-1を確認。成人慢性便秘症の薬物療法と見出し1〜10に使用。原資料を開く
- 酸化マグネシウム細粒83%「ヨシダ」電子添文独立行政法人医薬品医療機器総合機構・20268.重要な基本的注意、9.特定の背景を有する患者、10.相互作用、11.副作用を確認。高マグネシウム血症、腎機能・高齢者・長期投与時の注意を見出し3・5・7〜9に使用。原資料を開く
- ラグノスNF経口ゼリー分包12g電子添文独立行政法人医薬品医療機器総合機構・20222.禁忌、4.効能又は効果、8.重要な基本的注意、11.副作用を確認。ラクツロースの適応、下痢・腹部膨満、ガラクトース血症の注意を見出し3・7・9に使用。原資料を開く
残り8件の参考資料を見る原資料・発行元・発行年を確認できます+
- モビコール配合内用剤LD/HD電子添文独立行政法人医薬品医療機器総合機構・20262.禁忌、4.効能又は効果、6.用法及び用量、8.重要な基本的注意、11.副作用を確認。PEG製剤の溶解投与、腸閉塞等の禁忌、腹痛・下痢の観察を見出し3・4・7・9に使用。原資料を開く
- アミティーザカプセル12μg/24μg電子添文独立行政法人医薬品医療機器総合機構・20252.禁忌、4.効能又は効果、6〜9.用法・注意、11.副作用を確認。ルビプロストンの食後投与、悪心・下痢、妊婦禁忌、腎・肝機能障害時の注意を見出し3・5・7・9に使用。原資料を開く
- リンゼス錠0.25mg電子添文独立行政法人医薬品医療機器総合機構・20262.禁忌、4〜6.効能・用法、8.重要な基本的注意、11.副作用を確認。リナクロチドの食前投与、機械的消化管閉塞、重度の下痢を見出し3・4・7・9に使用。原資料を開く