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読む前に押さえたいこと
下痢止めは、どれも同じように便を固める薬ではありません。腸の動きを抑える薬、粘膜を保護する薬、腸管内の水分や物質を吸着する薬、腸内環境を整える薬があり、原因と患者背景で選択が変わります。とくに発熱や血便を伴う感染性下痢では、便回数だけを減らすと病状を悪化させるおそれがあります。この記事では、日本で使われる代表的な成分を作用別に整理し、使う前の見極め、補水、投与後の観察、医師・薬剤師へ伝える情報まで、看護の判断につながる順に解説します。個別の投与量や中止・変更は、電子添文、処方指示、患者の年齢・基礎疾患を確認して判断します。
下痢止めを使う前に、脱水と原因を評価する
この章の要点最初に確認するのは「どの薬で止めるか」ではなく、止めてよい下痢か、そして脱水への対応が必要かです。止瀉薬は便回数や便性状を改善する対症療法であり、失われた水分・電解質を戻したり、原因疾患を治したりする薬ではありません。
厚生労働省の手引きでは、急性下痢症は発症から14日以内で、普段より軟便または水様便が1日3回以上増えた状態とされています。急性下痢症の多くは自然軽快しますが、下痢と嘔吐が続けば水分とナトリウム、カリウムなどが失われます。そのため、飲める患者では経口摂取を進め、脱水が強い、飲めない、循環が不安定といった場合には補液の必要性を評価します。
感染性下痢では、腸管内の病原体や毒素を排出する過程として下痢が起きている場合があります。腸管運動を強く抑えると、病原体や毒素が腸内にとどまり、病状や治療期間に影響する可能性があります。したがって、水・電解質補給と重症度評価を先に行い、止瀉薬は原因と禁忌を確認してから使用します。
下痢止めの薬を作用別に整理する
この章の要点下痢に使われる薬は、腸管運動を抑える薬、粘膜を保護する薬、腸管内の物質を吸着する薬、腸内菌叢を整える薬、原因疾患に合わせた薬に分けて考えると理解しやすくなります。ここでは日本で使われる代表的な有効成分を示します。
市販薬には複数成分を組み合わせた製品があります。同じ「下痢止め」という表示でも作用、年齢制限、禁忌、服用期間が異なるため、販売名だけで判断せず有効成分と添付文書を確認します。
腸管運動抑制薬
- 代表的な成分・薬剤
- ロペラミド塩酸塩
- 主な働き
- 腸管のμオピオイド受容体に作用し、蠕動と腸内容物の移動を抑える
- 主な位置づけと注意
- 急性・慢性下痢の症状緩和。感染性下痢、出血性大腸炎、偽膜性大腸炎などでは使用を避ける
収れん薬
- 代表的な成分・薬剤
- タンニン酸アルブミン
- 主な働き
- 腸管でタンニン酸を遊離し、粘膜表面を収れん・保護する
- 主な位置づけと注意
- 牛乳由来カゼインを含むため牛乳アレルギーでは禁忌。経口鉄剤との併用にも注意
吸着薬
- 代表的な成分・薬剤
- 天然ケイ酸アルミニウム
- 主な働き
- 過剰な水分、粘液、腸管内物質を吸着する
- 主な位置づけと注意
- 他薬の吸収を低下させることがある。腸閉塞、透析患者、出血性大腸炎では禁忌
収れん・被覆薬
- 代表的な成分・薬剤
- 次硝酸ビスマス
- 主な働き
- 腸粘膜を被覆・保護し、収れん作用を示す
- 主な位置づけと注意
- 黒色便、便秘、長期使用による精神神経系障害などに注意
配合止瀉薬
- 代表的な成分・薬剤
- ベルベリン塩化物水和物・ゲンノショウコエキス
- 主な働き
- 腸管運動抑制、収れんなど複数の作用を示す
- 主な位置づけと注意
- 出血性大腸炎では禁忌。試験管内の抗菌作用は、細菌性腸炎を自己治療できる意味ではない
生菌・整腸薬
- 代表的な成分・薬剤
- ビフィズス菌、乳酸菌、酪酸菌など
- 主な働き
- 腸内菌叢を整え、腸内環境の改善を図る
- 主な位置づけと注意
- 直ちに腸管運動を止める薬ではない。効果は菌株、対象、原因によって異なる
抗コリン薬・鎮痙薬
- 代表的な成分・薬剤
- ロートエキス、ブチルスコポラミンなど
- 主な働き
- 腸管平滑筋の過度な収縮や腹部痙攣を抑える
- 主な位置づけと注意
- 主に腹痛・痙攣への補助。口渇、排尿障害、眼症状、便秘などに注意
オピオイド系の強力な止瀉薬
- 代表的な成分・薬剤
- アヘンチンキ
- 主な働き
- 腸管運動を強く抑える
- 主な位置づけと注意
- 激しい下痢など限定された状況で用いる麻薬・処方箋医薬品。呼吸抑制、眠気、依存性がある
下痢型IBS治療薬
- 代表的な成分・薬剤
- ラモセトロン
- 主な働き
- 5-HT3受容体を遮断し、下痢、便意切迫、腹痛などを改善する
- 主な位置づけと注意
- 下痢型過敏性腸症候群に用いる。一般的な急性下痢薬ではなく、便秘や虚血性大腸炎に注意
原因別治療薬
- 代表的な成分・薬剤
- 胆汁酸吸着薬、消化酵素薬、抗菌薬、オクトレオチドなど
- 主な働き
- 胆汁酸性下痢、膵外分泌不全、特定の感染症・分泌性下痢などの原因に作用する
- 主な位置づけと注意
- 診断に基づいて選ぶ。一般的な止瀉薬として相互に置き換えることはできない
| 分類 | 代表的な成分・薬剤 | 主な働き | 主な位置づけと注意 |
|---|---|---|---|
| 腸管運動抑制薬 | ロペラミド塩酸塩 | 腸管のμオピオイド受容体に作用し、蠕動と腸内容物の移動を抑える | 急性・慢性下痢の症状緩和。感染性下痢、出血性大腸炎、偽膜性大腸炎などでは使用を避ける |
| 収れん薬 | タンニン酸アルブミン | 腸管でタンニン酸を遊離し、粘膜表面を収れん・保護する | 牛乳由来カゼインを含むため牛乳アレルギーでは禁忌。経口鉄剤との併用にも注意 |
| 吸着薬 | 天然ケイ酸アルミニウム | 過剰な水分、粘液、腸管内物質を吸着する | 他薬の吸収を低下させることがある。腸閉塞、透析患者、出血性大腸炎では禁忌 |
| 収れん・被覆薬 | 次硝酸ビスマス | 腸粘膜を被覆・保護し、収れん作用を示す | 黒色便、便秘、長期使用による精神神経系障害などに注意 |
| 配合止瀉薬 | ベルベリン塩化物水和物・ゲンノショウコエキス | 腸管運動抑制、収れんなど複数の作用を示す | 出血性大腸炎では禁忌。試験管内の抗菌作用は、細菌性腸炎を自己治療できる意味ではない |
| 生菌・整腸薬 | ビフィズス菌、乳酸菌、酪酸菌など | 腸内菌叢を整え、腸内環境の改善を図る | 直ちに腸管運動を止める薬ではない。効果は菌株、対象、原因によって異なる |
| 抗コリン薬・鎮痙薬 | ロートエキス、ブチルスコポラミンなど | 腸管平滑筋の過度な収縮や腹部痙攣を抑える | 主に腹痛・痙攣への補助。口渇、排尿障害、眼症状、便秘などに注意 |
| オピオイド系の強力な止瀉薬 | アヘンチンキ | 腸管運動を強く抑える | 激しい下痢など限定された状況で用いる麻薬・処方箋医薬品。呼吸抑制、眠気、依存性がある |
| 下痢型IBS治療薬 | ラモセトロン | 5-HT3受容体を遮断し、下痢、便意切迫、腹痛などを改善する | 下痢型過敏性腸症候群に用いる。一般的な急性下痢薬ではなく、便秘や虚血性大腸炎に注意 |
| 原因別治療薬 | 胆汁酸吸着薬、消化酵素薬、抗菌薬、オクトレオチドなど | 胆汁酸性下痢、膵外分泌不全、特定の感染症・分泌性下痢などの原因に作用する | 診断に基づいて選ぶ。一般的な止瀉薬として相互に置き換えることはできない |
ロペラミドは有効性と「止めすぎ」の両方を考える
この章の要点ロペラミドは代表的な止瀉薬ですが、感染性下痢を含むすべての下痢に使える薬ではありません。腸管運動を遅くして内容物の通過時間を延ばすため、水分が吸収されやすくなり、便回数や水様性が改善します。
医療用電子添文では、腸管出血性大腸菌や赤痢菌などによる出血性大腸炎、抗菌薬投与に伴う偽膜性大腸炎、低出生体重児・新生児・6か月未満の乳児などが禁忌です。感染性下痢や潰瘍性大腸炎でも、治療上やむを得ない場合を除いて投与しないよう注意されています。
投与後は便回数だけでなく、腹部膨満と排ガスを確認します。便が出なくなっても、腹痛や膨満、悪心・嘔吐が強まり、排ガスが止まっていれば、単純な改善ではなくイレウスや巨大結腸を疑う変化です。次回投与を漫然と続けず、直ちに処方医へ状況を伝えます。
便秘、腹部不快感、眠気、めまいも起こり得ます。過量では呼吸抑制、麻痺性イレウス、QT延長を含む重篤な不整脈が報告されているため、自己増量や市販薬と処方薬の重複を防ぐことが重要です。
慢性下痢症ではロペラミドが広く使われますが、日本のガイドラインは研究数が少ないため、エビデンスレベルをC、推奨の強さを「推奨なし」としています。「よく使われる」と「十分な比較試験で確立している」は同じ意味ではありません。
収れん薬・吸着薬・整腸薬には固有の禁忌と相互作用がある
この章の要点ロペラミド以外の薬も「作用が穏やかそう」という理由だけで安全とは判断できません。成分ごとのアレルギー歴と併用薬を確認します。
タンニン酸アルブミンは、腸内で遊離したタンニン酸が粘膜を収れん・保護します。乳性カゼインを原料とするため、牛乳アレルギーの患者には投与できません。経口鉄剤は互いの作用を弱めるため併用禁忌で、ロペラミドを吸着して効果を弱める可能性もあります。呼吸困難、蕁麻疹、顔面浮腫などはアナフィラキシーを考える所見です。
天然ケイ酸アルミニウムは、水分や腸管内物質を吸着します。同時に他の薬も吸着したり、アルミニウムと薬剤が結合したりして吸収を低下させる場合があります。ニューキノロン系抗菌薬などを含む併用薬と服用時刻を確認し、処方・薬剤部の指示に従います。腸閉塞の患者、透析患者、出血性大腸炎では禁忌です。
次硝酸ビスマスでは便が黒色になることがあります。ただし、消化管出血による黒色便との区別を便色だけで行うことはできません。服薬歴、タール状か、臭気、腹痛、循環状態、貧血所見などを組み合わせます。長期連続投与では錯乱、振戦、運動障害などの精神神経系障害や、メトヘモグロビン血症などが報告されているため、漫然と継続しません。
ベルベリン・ゲンノショウコ配合薬にも腸管運動抑制や収れん作用があり、出血性大腸炎では禁忌です。試験管内で抗菌活性が確認されていても、血便や発熱のある細菌性腸炎を市販薬だけで治療できるという意味ではありません。
発熱・血便・強い腹痛がある下痢は安易に止めない
この章の要点感染性下痢や炎症性腸疾患、虚血性腸炎などが疑われる場合は、自己判断で止瀉薬を追加せず、原因と重症度を評価します。とくに血便・粘血便、強い腹痛、しぶり腹、発熱は、細菌性腸炎などを考える所見です。
厚生労働省の手引きでは、細菌性下痢はウイルス性下痢よりも、38℃以上の高熱、血便・粘血便、強い腹痛、しぶり腹を伴いやすいとされています。ただし、38℃という数値だけを全患者共通の報告基準にするものではありません。平熱、症状の組み合わせ、経時変化、年齢、免疫状態を合わせて判断します。
腸管出血性大腸菌(EHEC)による腸炎では、止瀉薬が溶血性尿毒症症候群(HUS)の危険を高める可能性があるため、使用しないことが推奨されています。血便があるのに「熱が高くないから軽症」とは判断できません。
最近の抗菌薬使用後に始まった下痢では、Clostridioides difficile感染症を含む抗菌薬関連下痢を考えます。免疫抑制状態、高齢者、乳幼児、炎症性腸疾患、最近の海外渡航、同様の症状の集団発生がある場合も、止瀉薬を使う前に医師へ共有します。
低血圧、頻脈、起立時のふらつき、意識状態の変化、尿量低下、飲水不能、繰り返す嘔吐、強い口渇などは、脱水・循環不全
急性下痢では補水を治療の中心に置き、検査の目的を区別する
この章の要点急性下痢症の治療では、飲める患者には水分と電解質を補給し、飲めない、脱水が強い、循環が不安定などの場合は静脈補液を検討します。経口補水液は、水分だけでなく糖とナトリウムなどを組み合わせ、腸管からの吸収を利用するものです。補水の必要性は止瀉薬の使用とは別に評価します。
観察では、摂取量、嘔吐、尿量、体重、口腔内の乾燥、脈拍、血圧、起立時の変化、末梢循環、意識状態を組み合わせます。単独の所見より、普段との差と経時変化が重要です。高齢者や乳幼児は、口渇を訴えにくい、状態が変化しやすいなどの特徴があります。
軽症の急性下痢患者全員に便培養を行う意義は大きくありません。一方、中等症から重症、血便、長引く下痢、免疫不全、抗菌薬投与を検討する症例などでは、原因微生物を確認するために便検査が検討されます。検体採取前に抗菌薬を開始するかどうかは、緊急性と診療方針を確認します。
ノロウイルス迅速抗原検査は、陰性でも感染を否定できません。検査結果だけで感染対策を解除せず、吐物・排泄物は感染性がある可能性を踏まえて取り扱います。
採血では必要に応じて電解質、腎機能、血算、炎症反応などを確認します。これらは原因、脱水、腎障害、炎症の程度を推定する材料であり、単一の検査値だけで止瀉薬の使用可否や重症度を決めるものではありません。
4週間以上続く下痢は、薬で止め続ける前に原因を見直す
この章の要点軟便または水様便が4週間以上持続・反復する場合は慢性下痢症として評価します。急性下痢と異なり、原因薬剤や基礎疾患を系統的に見直すことが重要です。
問診では、下剤、マグネシウム製剤、メトホルミン、抗菌薬、プロトンポンプ阻害薬、選択的セロトニン再取り込み阻害薬、消化管運動促進薬、経腸栄養剤などを確認します。自己判断で原因と思われる処方薬を中止せず、開始時期・増量時期と下痢の経過を整理して処方医・薬剤師へ伝えます。
体重減少、貧血、血便、炎症性腸疾患や大腸がんの家族歴などがあれば、器質的疾患の評価が必要です。食物起因性、薬剤性、感染性、炎症性腸疾患、胆汁酸性下痢、膵外分泌機能不全、甲状腺疾患などを除外せずに、止瀉薬だけを継続することは避けます。
ロペラミドやプロバイオティクスは慢性下痢の症状緩和に使われますが、効果判定と原因の再評価が必要です。下痢型過敏性腸症候群ではラモセトロン、胆汁酸性下痢では胆汁酸吸着薬、膵外分泌機能不全では消化酵素薬というように、病態に合う治療が異なります。オクトレオチドやアヘンチンキなどは、難治性・特殊な病態で専門的管理のもと使用される薬です。
投与前後の看護観察は、便回数と全身状態を結び付ける
この章の要点看護観察の目的は便回数を記録することだけではありません。下痢の原因、脱水の進行、薬の効果、副作用を区別し、次の治療判断につながる情報をそろえます。とくに、投与後に便が減っても腹部所見が悪化していないかを確認します。
記録は同じ条件で経時的に比較します。排便回数だけでなく、便性状、推定量、尿量、飲水量、体重などを組み合わせると、変化の意味を判断しやすくなります。
便
- 何を見るか
- 発症時期、回数、推定量、Bristol便形状、血液・粘液、色、臭気、便意切迫
- 変化の意味と組み合わせ方
- 水様便の増加は水分喪失を示す。血便・粘血便、強い腹痛、発熱の組み合わせは感染・炎症を考える
水分出納
- 何を見るか
- 飲水・食事量、嘔吐、尿量、排液量
- 変化の意味と組み合わせ方
- 摂取低下と尿量低下が並行すれば脱水進行を疑う。排便回数だけで改善と判断しない
循環・意識
- 何を見るか
- 脈拍、血圧、起立時変化、末梢循環、意識、倦怠感
- 変化の意味と組み合わせ方
- 頻脈、血圧低下、起立時症状、意識変化は循環血液量低下を示し得る。患者の基礎値と比較する
体重
- 何を見るか
- 可能なら同じ時刻・条件で測定
- 変化の意味と組み合わせ方
- 短期間の減少は体液喪失を反映し得る。浮腫や輸液量なども合わせて解釈する
腹部
- 何を見るか
- 腹痛の部位・強さ、膨満、圧痛、腸音、悪心・嘔吐、排ガス
- 変化の意味と組み合わせ方
- 止瀉薬後に排便が止まり、膨満・嘔吐・排ガス停止が出ればイレウスを疑う
感染に関する情報
- 何を見るか
- 発熱、悪寒、食事歴、渡航歴、接触歴、抗菌薬歴、免疫状態
- 変化の意味と組み合わせ方
- 原因推定、便検査、感染対策、抗菌薬の適応判断に必要
薬歴
- 何を見るか
- 処方薬、市販薬、サプリメント、最終投与時刻、追加服用
- 変化の意味と組み合わせ方
- 薬剤性下痢、止瀉薬の重複、吸着薬による相互作用を確認する
薬の副作用
- 何を見るか
- 便秘、眠気、めまい、口渇、排尿障害、発疹、呼吸状態
- 変化の意味と組み合わせ方
- 薬ごとの副作用を疑い、投与継続の可否を処方医・薬剤師と確認する
皮膚
- 何を見るか
- 肛門周囲・会陰部の発赤、びらん、疼痛、失禁
- 変化の意味と組み合わせ方
- 頻回便による皮膚障害を早期に捉え、洗浄、乾燥、皮膚保護を調整する
| 観察項目 | 何を見るか | 変化の意味と組み合わせ方 |
|---|---|---|
| 便 | 発症時期、回数、推定量、Bristol便形状、血液・粘液、色、臭気、便意切迫 | 水様便の増加は水分喪失を示す。血便・粘血便、強い腹痛、発熱の組み合わせは感染・炎症を考える |
| 水分出納 | 飲水・食事量、嘔吐、尿量、排液量 | 摂取低下と尿量低下が並行すれば脱水進行を疑う。排便回数だけで改善と判断しない |
| 循環・意識 | 脈拍、血圧、起立時変化、末梢循環、意識、倦怠感 | 頻脈、血圧低下、起立時症状、意識変化は循環血液量低下を示し得る。患者の基礎値と比較する |
| 体重 | 可能なら同じ時刻・条件で測定 | 短期間の減少は体液喪失を反映し得る。浮腫や輸液量なども合わせて解釈する |
| 腹部 | 腹痛の部位・強さ、膨満、圧痛、腸音、悪心・嘔吐、排ガス | 止瀉薬後に排便が止まり、膨満・嘔吐・排ガス停止が出ればイレウスを疑う |
| 感染に関する情報 | 発熱、悪寒、食事歴、渡航歴、接触歴、抗菌薬歴、免疫状態 | 原因推定、便検査、感染対策、抗菌薬の適応判断に必要 |
| 薬歴 | 処方薬、市販薬、サプリメント、最終投与時刻、追加服用 | 薬剤性下痢、止瀉薬の重複、吸着薬による相互作用を確認する |
| 薬の副作用 | 便秘、眠気、めまい、口渇、排尿障害、発疹、呼吸状態 | 薬ごとの副作用を疑い、投与継続の可否を処方医・薬剤師と確認する |
| 皮膚 | 肛門周囲・会陰部の発赤、びらん、疼痛、失禁 | 頻回便による皮膚障害を早期に捉え、洗浄、乾燥、皮膚保護を調整する |
緊急性がある変化は、止瀉薬の効果判定を待たずに報告する
この章の要点循環不安定、意識変化、飲水不能、著しい尿量低下、強いまたは増悪する腹痛、血便、繰り返す嘔吐、急速な腹部膨満、排ガス停止などがあれば、直ちに医師へ報告します。施設の緊急対応基準に該当する場合は、救急対応や迅速対応チームへの連絡を優先します。
報告では、次の情報をまとめます。
- 下痢の開始時期、直近の回数・推定量・便性状・血液や粘液の有無
- バイタルサインと普段からの変化、意識、尿量、摂取量、嘔吐
- 腹痛の部位と強さ、腹部膨満、腸音、排ガス
- 止瀉薬の名称、投与量、最終投与時刻、投与後の変化
- 最近の抗菌薬使用、入院・施設滞在、食事、渡航、周囲の発症者
- 年齢、妊娠・授乳、免疫抑制、炎症性腸疾患、腎・肝機能障害、アレルギー歴
- 現在行っている補水、採取済みの検体、感染対策
同時に、次回の止瀉薬をどうするか、経口補水または輸液の方針、便検体の必要性、隔離・感染対策、再評価時刻を確認します。「下痢が続いています」だけでなく、経時変化と随伴所見を伝えることが治療判断につながります。
患者には、薬が原因を治すとは限らないこと、補水を続けること、血便・発熱・強い腹痛・腹部膨満・尿量低下があれば追加服用せず相談することを説明します。市販薬を使用する場合も、処方薬との重複、年齢制限、妊娠・授乳、持病、アレルギーを医師または薬剤師に伝えてもらいます。
「便が止まった=回復」とは限らない
この章の要点下痢止めの評価では、便回数の減少だけを成功とみなしません。腹痛や膨満が軽くなり、水分を摂取でき、尿量や循環状態が回復し、原因疾患が悪化していないことまで確認して、初めて全身状態の改善と捉えます。
止瀉薬、整腸薬、抗菌薬は目的が異なります。止瀉薬は症状を抑え、整腸薬は腸内環境を整え、抗菌薬は適応のある細菌感染症を治療します。どれも、すべての下痢に一律に使用する薬ではありません。
下痢への対応で重要なのは、原因・重症度・脱水を順に評価し、使ってよい場合にだけ適切な薬を選ぶことです。投与後も便と腹部所見、循環、意識、尿量を再評価し、「止まった便の裏で悪化していないか」を確認する視点が安全な看護につながります。
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主要な定義・数値・推奨は、公開時点で確認できるガイドライン、公的資料、学会資料、査読論文を優先して確認しています。未確認の編集メモは公開せず、根拠の範囲や限界を区別して、読者が原資料を確認できるよう参考資料を掲載します。
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- 便通異常症診療ガイドライン2023―慢性下痢症一般社団法人日本消化管学会・2023慢性下痢症の定義・診断基準、プロバイオティクス、ロペラミド、5-HT3受容体拮抗薬、原因別治療の位置づけを確認。CQ1-1、BQ1-1、CQ5-1、CQ5-2、FRQ5-2~5-9。原資料を開く
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- アドソルビン原末 電子添文独立行政法人医薬品医療機器総合機構・2022天然ケイ酸アルミニウムの吸着作用、腸閉塞・透析・出血性大腸炎の禁忌、他薬の吸収への影響を確認。2、10、18項。原資料を開く
- リーダイ配合錠 電子添文独立行政法人医薬品医療機器総合機構・2026ベルベリン塩化物水和物・ゲンノショウコエキス配合剤の禁忌、細菌性下痢への注意、便秘、作用機序を確認。2、8、9、11、18項。原資料を開く
- 次硝酸ビスマス「ニッコー」電子添文独立行政法人医薬品医療機器総合機構・2023次硝酸ビスマスの禁忌、長期連続投与の制限、精神神経系障害・血液障害、黒色便、収れん・被覆作用を確認。2、7、9、11、14、18項。