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読む前に押さえたいこと
「脳出血では何を観察すればいい?」「血圧は140mmHg未満なら安心?」「被殻出血と視床出血は何が違う?」と迷うことは少なくありません。脳出血では、血腫そのものによる障害だけでなく、血腫拡大、脳浮腫、脳室内への出血、水頭症などによって状態が変化します。そのため、一度の測定値よりも、意識・瞳孔・麻痺・血圧・呼吸の経時的な変化が重要です。この記事では、病態から部位別症状、治療、看護観察、再発予防までを、最新ガイドラインに沿って整理します。
脳出血は、脳の組織内で血管が破れて血腫をつくる脳卒中
この章の要点脳出血は、脳の血管が破れ、脳実質と呼ばれる脳の組織内に血液が漏れ出す病気です。「脳内出血」や英語でintracerebral hemorrhage、略してICHとも呼ばれます。
漏れた血液は血腫となり、周囲の脳組織を直接圧迫します。さらに、血腫周囲の浮腫、頭蓋内圧の上昇、脳室内への出血、水頭症などが加わることで、発症後に神経症状が悪化する場合があります。
くも膜下出血、急性硬膜下血腫、急性硬膜外血腫も頭蓋内の出血ですが、出血する場所と原因が異なります。特に脳梗塞とは症状だけで確実に区別できないため、突然の麻痺や言語障害があれば、画像検査による確認が必要です。
脳出血
- 主な出血・障害部位
- 脳実質内
- 代表的な原因
- 高血圧性小血管障害、脳アミロイド血管症など
- 脳出血との違い
- 脳組織内に血腫をつくる
くも膜下出血
- 主な出血・障害部位
- 脳表のくも膜下腔
- 代表的な原因
- 脳動脈瘤破裂など
- 脳出血との違い
- 突然の激しい頭痛が代表的
硬膜下血腫
- 主な出血・障害部位
- 硬膜とくも膜の間
- 代表的な原因
- 頭部外傷など
- 脳出血との違い
- 脳卒中とは別に扱われることが多い
硬膜外血腫
- 主な出血・障害部位
- 頭蓋骨と硬膜の間
- 代表的な原因
- 頭部外傷など
- 脳出血との違い
- 急速に血腫が拡大する場合がある
脳梗塞
- 主な出血・障害部位
- 血流が途絶えた脳組織
- 代表的な原因
- 血栓・塞栓
- 脳出血との違い
- 血管が「詰まる」病気
| 疾患 | 主な出血・障害部位 | 代表的な原因 | 脳出血との違い |
|---|---|---|---|
| 脳出血 | 脳実質内 | 高血圧性小血管障害、脳アミロイド血管症など | 脳組織内に血腫をつくる |
| くも膜下出血 | 脳表のくも膜下腔 | 脳動脈瘤破裂など | 突然の激しい頭痛が代表的 |
| 硬膜下血腫 | 硬膜とくも膜の間 | 頭部外傷など | 脳卒中とは別に扱われることが多い |
| 硬膜外血腫 | 頭蓋骨と硬膜の間 | 頭部外傷など | 急速に血腫が拡大する場合がある |
| 脳梗塞 | 血流が途絶えた脳組織 | 血栓・塞栓 | 血管が「詰まる」病気 |
脳出血の最大の危険因子は高血圧だが、原因は一つではない
この章の要点脳出血の代表的な原因は、高血圧による脳小血管の障害と脳アミロイド血管症です。高血圧性脳出血は被殻、視床、橋、小脳などの深部に起こりやすく、脳アミロイド血管症による出血は高齢者の脳葉・皮質下に起こりやすい傾向があります。
ほかに、脳動静脈奇形、硬膜動静脈瘻、海綿状血管奇形、もやもや病、脳腫瘍、血液疾患などが原因になることもあります。若年者、脳葉出血、反復する出血、典型的でない部位では、背景疾患の検索が特に重要です。
抗凝固薬や抗血小板薬は必要な疾患を治療・予防するための薬ですが、出血時には血腫拡大へ影響する可能性があります。発症時は薬剤名だけでなく、最終内服時刻、用量、飲み忘れの有無を確認します。患者自身の判断で中止させるものではありません。
高血圧性小血管障害
- 起こりやすい特徴
- 被殻、視床、橋、小脳などの深部出血
- 確認する情報
- 高血圧歴、普段の血圧、降圧薬
脳アミロイド血管症
- 起こりやすい特徴
- 高齢者、脳葉・皮質下出血、再発
- 確認する情報
- 年齢、過去の出血、MRI所見
抗凝固薬
- 起こりやすい特徴
- 血腫拡大や重症化に関係する可能性
- 確認する情報
- 薬剤名、最終内服、PT-INR、腎機能
抗血小板薬
- 起こりやすい特徴
- 止血機能へ影響
- 確認する情報
- アスピリンなどの薬剤名、最終内服
血管奇形
- 起こりやすい特徴
- 若年者や非典型部位でも考える
- 確認する情報
- CTA、MRA、脳血管撮影
腫瘍・血液疾患
- 起こりやすい特徴
- 出血以外の病態を伴う
- 確認する情報
- 既往歴、血算、凝固検査、造影画像
大量飲酒・違法薬物など
- 起こりやすい特徴
- 血圧変動や血管障害と関連
- 確認する情報
- 生活歴、摂取時刻、使用物質
| 原因・関連因子 | 起こりやすい特徴 | 確認する情報 |
|---|---|---|
| 高血圧性小血管障害 | 被殻、視床、橋、小脳などの深部出血 | 高血圧歴、普段の血圧、降圧薬 |
| 脳アミロイド血管症 | 高齢者、脳葉・皮質下出血、再発 | 年齢、過去の出血、MRI所見 |
| 抗凝固薬 | 血腫拡大や重症化に関係する可能性 | 薬剤名、最終内服、PT-INR、腎機能 |
| 抗血小板薬 | 止血機能へ影響 | アスピリンなどの薬剤名、最終内服 |
| 血管奇形 | 若年者や非典型部位でも考える | CTA、MRA、脳血管撮影 |
| 腫瘍・血液疾患 | 出血以外の病態を伴う | 既往歴、血算、凝固検査、造影画像 |
| 大量飲酒・違法薬物など | 血圧変動や血管障害と関連 | 生活歴、摂取時刻、使用物質 |
突然の麻痺・言語障害・意識障害は、脳梗塞か脳出血かを決めつけず対応する
この章の要点脳出血では、突然の片麻痺、感覚障害、構音障害、失語、視野障害、意識障害などが現れます。頭痛、嘔気・嘔吐、けいれんを伴う場合もありますが、頭痛がない脳出血もあります。
顔のゆがみ、腕や脚の脱力、言葉の異常を認めたら、発症時刻または最後に正常だった時刻を確認し、直ちに脳卒中対応へつなげます。症状が軽い、血圧が正常、頭痛がないという理由で脳出血を除外することはできません。
小脳出血では、明らかな片麻痺がなくても、突然のめまい、歩行不能、嘔吐が中心になることがあります。FASTだけでは拾いにくい症状にも注意が必要です。
顔面麻痺
- 確認する内容
- 口角差、額の動き
- 注意する点
- 左右を比較する
上下肢麻痺
- 確認する内容
- 挙上保持、握力、下肢の落下
- 注意する点
- 前回所見との変化を見る
言語障害
- 確認する内容
- 構音、呼称、理解、復唱
- 注意する点
- 失語と構音障害を分けて捉える
意識障害
- 確認する内容
- JCS・GCS、応答の速さ
- 注意する点
- 数値だけでなく反応内容も記録する
頭痛・嘔吐
- 確認する内容
- 発症時刻、程度、回数
- 注意する点
- 増悪は頭蓋内圧上昇の可能性
めまい・失調
- 確認する内容
- 座位、立位、眼振、体幹の傾き
- 注意する点
- 小脳・脳幹病変でもみられる
けいれん
- 確認する内容
- 持続時間、左右、意識、眼位
- 注意する点
- 発作後の麻痺との区別も必要
| 症状 | 確認する内容 | 注意する点 |
|---|---|---|
| 顔面麻痺 | 口角差、額の動き | 左右を比較する |
| 上下肢麻痺 | 挙上保持、握力、下肢の落下 | 前回所見との変化を見る |
| 言語障害 | 構音、呼称、理解、復唱 | 失語と構音障害を分けて捉える |
| 意識障害 | JCS・GCS、応答の速さ | 数値だけでなく反応内容も記録する |
| 頭痛・嘔吐 | 発症時刻、程度、回数 | 増悪は頭蓋内圧上昇の可能性 |
| めまい・失調 | 座位、立位、眼振、体幹の傾き | 小脳・脳幹病変でもみられる |
| けいれん | 持続時間、左右、意識、眼位 | 発作後の麻痺との区別も必要 |
脳出血の症状は出血部位で傾向が変わるが、典型像だけで判断しない
この章の要点被殻出血では内包へ影響しやすく、反対側の片麻痺や構音障害が目立ちます。視床出血では反対側の感覚障害が中心になりやすいものの、内包へ広がれば麻痺も起こります。
小脳出血では、回転性めまい、嘔吐、体幹・四肢の運動失調、眼振がみられます。後頭蓋窩は空間が狭く、血腫が脳幹を圧迫したり、第四脳室を閉塞して水頭症を起こしたりするため、急速な意識低下に注意します。
橋出血では、意識障害、四肢麻痺、呼吸障害、眼球運動障害、縮瞳などがみられ、少量でも重症になり得ます。脳葉出血では、前頭葉・頭頂葉・側頭葉・後頭葉のどこに出血したかによって、失語、半側空間無視、視野障害、けいれんなどが現れます。
ただし、実際の症状は血腫の大きさ、周囲への進展、脳室内穿破、左右の優位半球などで変わります。「被殻なら必ず共同偏視」「視床なら麻痺はない」と固定して覚えないことが大切です。
被殻
- 現れやすい症状
- 反対側の片麻痺、構音障害、感覚障害、共同偏視
- 悪化時に注目する所見
- 麻痺拡大、意識低下、瞳孔変化
視床
- 現れやすい症状
- 反対側の感覚障害、意識障害、眼球運動異常
- 悪化時に注目する所見
- 内包進展による麻痺、脳室内穿破
脳葉・皮質下
- 現れやすい症状
- 失語、半側空間無視、視野障害、けいれん
- 悪化時に注目する所見
- けいれん、局所症状の拡大
小脳
- 現れやすい症状
- めまい、嘔吐、失調、眼振、歩行不能
- 悪化時に注目する所見
- 意識低下、呼吸変化、水頭症
橋
- 現れやすい症状
- 意識障害、四肢麻痺、眼球運動障害、縮瞳
- 悪化時に注目する所見
- 呼吸障害、急速な意識低下
脳室内出血
- 現れやすい症状
- 意識障害、頭痛、嘔吐
- 悪化時に注目する所見
- 急性水頭症、頭蓋内圧上昇
| 出血部位 | 現れやすい症状 | 悪化時に注目する所見 |
|---|---|---|
| 被殻 | 反対側の片麻痺、構音障害、感覚障害、共同偏視 | 麻痺拡大、意識低下、瞳孔変化 |
| 視床 | 反対側の感覚障害、意識障害、眼球運動異常 | 内包進展による麻痺、脳室内穿破 |
| 脳葉・皮質下 | 失語、半側空間無視、視野障害、けいれん | けいれん、局所症状の拡大 |
| 小脳 | めまい、嘔吐、失調、眼振、歩行不能 | 意識低下、呼吸変化、水頭症 |
| 橋 | 意識障害、四肢麻痺、眼球運動障害、縮瞳 | 呼吸障害、急速な意識低下 |
| 脳室内出血 | 意識障害、頭痛、嘔吐 | 急性水頭症、頭蓋内圧上昇 |
脳出血は頭部CTで確認し、血腫の大きさ・広がり・原因を追加評価する
この章の要点急性期の脳出血は、一般に頭部単純CTで迅速に確認します。急性期の血液はCTで高吸収域、つまり白く見えます。CTでは部位、大きさ、脳室内穿破、水頭症、正中偏位などを評価します。
必要に応じて、CTA、MRI・MRA、造影検査、脳血管撮影を追加し、血管奇形、腫瘍、脳アミロイド血管症などの原因を調べます。症状が悪化した場合や血腫拡大の確認が必要な場合には、再度の画像検査が検討されます。
重症度は意識レベルだけでは決まりません。血腫量、出血部位、脳室内穿破、年齢、GCSなどを組み合わせたICHスコアが用いられることもあります。ただし、重症度スコアだけを根拠に治療を制限することは推奨されません。
頭部単純CT
- 確認する内容
- 血腫の部位・大きさ
- 意味
- 脳出血の迅速な確認
脳室内穿破
- 確認する内容
- 脳室内の血液
- 意味
- 水頭症・意識障害のリスク
正中偏位
- 確認する内容
- 脳の左右方向への偏り
- 意味
- 強い圧迫、脳ヘルニアの危険
CTA・血管撮影
- 確認する内容
- 血管奇形、活動性出血の所見
- 意味
- 原因検索と治療計画
MRI・MRA
- 確認する内容
- 微小出血、腫瘍、血管病変
- 意味
- 原因や再発リスクの評価
GCS・JCS
- 確認する内容
- 意識レベル
- 意味
- 経時変化が特に重要
ICHスコア
- 確認する内容
- GCS、年齢、部位、血腫量、脳室内出血
- 意味
- 全体的な重症度評価の補助
| 評価 | 確認する内容 | 意味 |
|---|---|---|
| 頭部単純CT | 血腫の部位・大きさ | 脳出血の迅速な確認 |
| 脳室内穿破 | 脳室内の血液 | 水頭症・意識障害のリスク |
| 正中偏位 | 脳の左右方向への偏り | 強い圧迫、脳ヘルニアの危険 |
| CTA・血管撮影 | 血管奇形、活動性出血の所見 | 原因検索と治療計画 |
| MRI・MRA | 微小出血、腫瘍、血管病変 | 原因や再発リスクの評価 |
| GCS・JCS | 意識レベル | 経時変化が特に重要 |
| ICHスコア | GCS、年齢、部位、血腫量、脳室内出血 | 全体的な重症度評価の補助 |
急性期の血圧管理は「140未満」だけでなく、早く滑らかに下げて過降圧を避ける
この章の要点脳出血急性期では、高血圧が血腫拡大に関係するため、早期の降圧が重要です。日本の『脳卒中治療ガイドライン2021〔改訂2025〕』では、血圧高値に対して、できるだけ早期に収縮期血圧140mmHg未満へ下げることは妥当とされています。収縮期血圧の下限を110mmHg超に維持することは、弱い推奨です。
ただし、血圧目標は重症度、血腫量、発症前血圧、腎機能、手術予定などによって調整されます。過度な降圧や大きな変動は避け、持続的で安定した管理を目指します。単に一度140mmHg未満になったことではなく、その後の推移が重要です。
日本のガイドラインと欧州ガイドラインでは、急激な低下を避ける具体的な幅が異なります。日本では90mmHg以上の低下を避ける考え方、ESO/EANSでは70mmHgを超える低下を避ける専門家合意が示されています。この違いは対象研究や評価方法によるもので、共通する結論は「早期に下げるが、下げすぎず、変動を小さくする」です。
ニカルジピンなど調整しやすい静注薬が用いられることがありますが、薬剤は患者背景と施設プロトコルに応じて選択されます。看護師は目標範囲、投与速度、増減方法、報告基準を指示と照合します。
目標値
- 確認する内容
- 医師指示と治療プロトコル
- 理由
- 患者ごとに適正範囲が異なる
到達までの経過
- 確認する内容
- 開始時、変更後、到達時刻
- 理由
- 早期治療と過降圧を評価する
血圧変動
- 確認する内容
- 急上昇・急低下、上下幅
- 理由
- 変動を抑えた管理が重要
神経所見
- 確認する内容
- 意識、瞳孔、麻痺、言語
- 理由
- 降圧中の悪化を捉える
全身循環
- 確認する内容
- 心拍数、末梢冷感、尿量
- 理由
- 低灌流や腎障害を確認する
点滴部位
- 確認する内容
- 発赤、腫脹、疼痛、漏れ
- 理由
- 持続静注薬の血管外漏出を確認する
| 血圧管理の視点 | 確認する内容 | 理由 |
|---|---|---|
| 目標値 | 医師指示と治療プロトコル | 患者ごとに適正範囲が異なる |
| 到達までの経過 | 開始時、変更後、到達時刻 | 早期治療と過降圧を評価する |
| 血圧変動 | 急上昇・急低下、上下幅 | 変動を抑えた管理が重要 |
| 神経所見 | 意識、瞳孔、麻痺、言語 | 降圧中の悪化を捉える |
| 全身循環 | 心拍数、末梢冷感、尿量 | 低灌流や腎障害を確認する |
| 点滴部位 | 発赤、腫脹、疼痛、漏れ | 持続静注薬の血管外漏出を確認する |
抗凝固薬関連の脳出血では、薬剤名と最終内服時刻が中和治療を左右する
この章の要点抗凝固薬を使用中の脳出血では、抗凝固作用の迅速な中和が検討されます。ワルファリン、ダビガトラン、第Xa因子阻害薬では、中和方法が異なります。
ワルファリン内服中でPT-INRが延長している場合は、プロトロンビン複合体製剤などによる中和が行われます。ダビガトランにはイダルシズマブ、第Xa因子阻害薬であるアピキサバン、リバーロキサバン、エドキサバンにはアンデキサネット アルファが選択肢となります。
ANNEXA-I試験では、アンデキサネット アルファは通常治療より血腫拡大を抑えましたが、血栓性イベントが増加し、30日後の機能転帰や死亡の改善は示されませんでした。したがって、中和薬は「投与すれば安全になる薬」ではなく、止血効果と血栓症リスクを評価して用いられます。
抗血小板薬内服中の自然発症脳出血に対する血小板輸血は、緊急手術や重度の血小板減少などの特別な状況を除き、ルーチンには勧められません。
ワルファリン
- 主な確認項目
- 最終内服、PT-INR
- 検討される対応
- PCC、ビタミンKなど
ダビガトラン
- 主な確認項目
- 最終内服、腎機能
- 検討される対応
- イダルシズマブ
アピキサバン
- 主な確認項目
- 最終内服、腎機能
- 検討される対応
- アンデキサネット アルファなど
リバーロキサバン
- 主な確認項目
- 最終内服、腎機能
- 検討される対応
- アンデキサネット アルファなど
エドキサバン
- 主な確認項目
- 最終内服、腎機能
- 検討される対応
- アンデキサネット アルファなど
抗血小板薬
- 主な確認項目
- 薬剤名、手術予定、血小板数
- 検討される対応
- 血小板輸血は原則ルーチンに行わない
ヘパリン類
- 主な確認項目
- 投与時刻、凝固検査
- 検討される対応
- 薬剤に応じた中和を検討
| 内服・使用薬 | 主な確認項目 | 検討される対応 |
|---|---|---|
| ワルファリン | 最終内服、PT-INR | PCC、ビタミンKなど |
| ダビガトラン | 最終内服、腎機能 | イダルシズマブ |
| アピキサバン | 最終内服、腎機能 | アンデキサネット アルファなど |
| リバーロキサバン | 最終内服、腎機能 | アンデキサネット アルファなど |
| エドキサバン | 最終内服、腎機能 | アンデキサネット アルファなど |
| 抗血小板薬 | 薬剤名、手術予定、血小板数 | 血小板輸血は原則ルーチンに行わない |
| ヘパリン類 | 投与時刻、凝固検査 | 薬剤に応じた中和を検討 |
脳出血の手術は、部位・血腫量・意識・水頭症を合わせて判断する
この章の要点脳出血はすべて手術になるわけではありません。降圧、抗凝固作用の中和、呼吸・循環管理などを中心に治療する症例も多くあります。
一方、意識や神経症状の悪化、脳幹圧迫、水頭症、大きな血腫などがあれば、血腫除去術、内視鏡手術、定位的血腫吸引術、減圧開頭術、脳室ドレナージなどが検討されます。
小脳出血は、脳幹圧迫と閉塞性水頭症を起こしやすい点が重要です。AHA/ASA 2022では、神経学的悪化、脳幹圧迫、水頭症に加え、15mLを超える血腫も緊急手術を検討する条件として示されています。
テント上出血では、手術の効果は一律ではありません。ENRICH試験では、発症24時間以内の低侵襲血腫除去術による機能転帰の改善が示されましたが、主に脳葉出血の効果によるもので、深部出血への効果は明確ではありません。手術適応は画像、重症度、発症時間、全身状態を統合して判断されます。
大きな小脳出血
- 検討される治療
- 緊急血腫除去術
- 主な目的
- 脳幹圧迫の解除、死亡低減
閉塞性水頭症
- 検討される治療
- 脳室ドレナージ
- 主な目的
- 脳脊髄液の排出、頭蓋内圧低下
脳葉出血
- 検討される治療
- 開頭術・低侵襲血腫除去術
- 主な目的
- 血腫による圧迫の軽減
深部出血
- 検討される治療
- 保存的治療または選択的手術
- 主な目的
- 症例ごとに利益と侵襲を評価
切迫脳ヘルニア
- 検討される治療
- 血腫除去・減圧術など
- 主な目的
- 救命と圧迫解除
血管奇形による出血
- 検討される治療
- 手術・血管内治療・放射線治療
- 主な目的
- 原因病変の治療と再出血予防
| 状況 | 検討される治療 | 主な目的 |
|---|---|---|
| 大きな小脳出血 | 緊急血腫除去術 | 脳幹圧迫の解除、死亡低減 |
| 閉塞性水頭症 | 脳室ドレナージ | 脳脊髄液の排出、頭蓋内圧低下 |
| 脳葉出血 | 開頭術・低侵襲血腫除去術 | 血腫による圧迫の軽減 |
| 深部出血 | 保存的治療または選択的手術 | 症例ごとに利益と侵襲を評価 |
| 切迫脳ヘルニア | 血腫除去・減圧術など | 救命と圧迫解除 |
| 血管奇形による出血 | 手術・血管内治療・放射線治療 | 原因病変の治療と再出血予防 |
看護では意識・瞳孔・麻痺・血圧・呼吸を同じ条件で繰り返し比較する
この章の要点脳出血急性期の観察では、単独の数値より「前回からどう変わったか」が重要です。意識レベル、瞳孔径・左右差・対光反射、眼位、上下肢の運動、感覚、言語、頭痛、嘔吐、けいれんを、可能な限り同じ方法で評価します。
意識低下、新たな瞳孔不同、麻痺の悪化、反復する嘔吐、呼吸パターンの変化は、血腫拡大、脳浮腫、水頭症、脳ヘルニアなどの可能性があります。血圧上昇、徐脈、不規則呼吸からなるクッシング現象は頭蓋内圧亢進の晩期所見であり、そろうまで待ってはいけません。
報告では、「意識が悪い」だけでなく、「JCS 1から10へ変化」「右上肢MMT4から2へ低下」「瞳孔3/3mmから右3mm・左5mmへ変化」「変化を認めた時刻」など、比較可能な情報を伝えます。
意識
- 具体的な項目
- JCS、GCS、応答内容
- 直ちに共有したい変化
- 新たな傾眠、指示に従えない
瞳孔・眼位
- 具体的な項目
- 瞳孔径、左右差、対光反射、共同偏視
- 直ちに共有したい変化
- 新規の瞳孔不同、対光反射低下
運動
- 具体的な項目
- 上下肢挙上、MMT、左右差
- 直ちに共有したい変化
- 新たな麻痺、既存麻痺の悪化
言語
- 具体的な項目
- 構音、呼称、理解、復唱
- 直ちに共有したい変化
- 新規失語、急な発語減少
呼吸
- 具体的な項目
- 呼吸数、リズム、SpO₂、気道
- 直ちに共有したい変化
- 不規則呼吸、酸素化低下
循環
- 具体的な項目
- 血圧、心拍数、変動
- 直ちに共有したい変化
- 目標外、急変、降圧薬への過反応
随伴症状
- 具体的な項目
- 頭痛、嘔吐、けいれん
- 直ちに共有したい変化
- 頭痛増悪、反復嘔吐、発作
時間
- 具体的な項目
- 発症・最終正常・変化時刻
- 直ちに共有したい変化
- 不明の場合も「不明」と明確にする
| 観察領域 | 具体的な項目 | 直ちに共有したい変化 |
|---|---|---|
| 意識 | JCS、GCS、応答内容 | 新たな傾眠、指示に従えない |
| 瞳孔・眼位 | 瞳孔径、左右差、対光反射、共同偏視 | 新規の瞳孔不同、対光反射低下 |
| 運動 | 上下肢挙上、MMT、左右差 | 新たな麻痺、既存麻痺の悪化 |
| 言語 | 構音、呼称、理解、復唱 | 新規失語、急な発語減少 |
| 呼吸 | 呼吸数、リズム、SpO₂、気道 | 不規則呼吸、酸素化低下 |
| 循環 | 血圧、心拍数、変動 | 目標外、急変、降圧薬への過反応 |
| 随伴症状 | 頭痛、嘔吐、けいれん | 頭痛増悪、反復嘔吐、発作 |
| 時間 | 発症・最終正常・変化時刻 | 不明の場合も「不明」と明確にする |
誤嚥・血栓・発熱・低血糖・けいれんを防ぎ、二次的な悪化を減らす
この章の要点意識障害、顔面麻痺、構音障害が軽く見えても、嚥下障害が隠れていることがあります。嚥下スクリーニングを終える前の経口摂取は避け、内服や飲水も含めて指示を確認します。
歩行できない患者では、診断当日から間欠的空気圧迫法を開始することがAHA/ASAで推奨されています。一方、弾性ストッキング単独では深部静脈血栓症予防の利益が示されていません。低用量ヘパリンなどの薬物予防は、発症24~48時間後を目安に、画像上の出血安定性などを評価して検討されます。
発熱と血糖異常は転帰不良に関連するため、体温・血糖を観察し、低血糖を避けながら施設基準に沿って管理します。明らかなけいれんには治療が必要ですが、発作がない患者への予防的な抗てんかん発作薬のルーチン投与は推奨されません。原因不明の意識変動や眼球偏倚、口角・手指の反復運動では非けいれん性発作も考え、脳波検査が検討されます。
発症24時間以内の積極的な離床は有害となる可能性があります。状態が安定した軽症から中等症例では、24~48時間以降の評価されたリハビリが検討されます。
脳出血の再発予防では、退院後も続く血圧管理が中心になる
この章の要点慢性期の中心は血圧管理です。日本のガイドライン、AHA/ASA、ESO/EANSでは、再発予防のため、おおむね130/80mmHg未満を目指す方向で一致しています。ただし、年齢、腎機能、起立性低血圧、主幹動脈病変などを考慮して個別に設定します。
家庭血圧、服薬状況、飲酒、食塩摂取、受診継続を確認します。抗凝固薬・抗血小板薬の再開は、出血再発と血栓塞栓症の両方を考えて判断するため、患者自身の判断で再開・中止しないよう説明します。
後遺症は片麻痺だけではありません。嚥下障害、失語、半側空間無視、認知機能低下、脳卒中後うつ、てんかん、疲労などが生活へ影響します。患者と家族が、再発時の症状、服薬、移動・食事介助、受診先を理解できるよう支援します。
血圧管理
- 確認する内容
- 家庭血圧、服薬、立ちくらみ
- 支援のポイント
- 個別目標と測定方法を共有する
飲酒・食事
- 確認する内容
- 大量飲酒、食塩摂取
- 支援のポイント
- 続けられる目標へ調整する
抗血栓薬
- 確認する内容
- 再開時期、適応、出血リスク
- 支援のポイント
- 自己判断で中断・再開しない
運動・リハビリ
- 確認する内容
- 麻痺、失調、心肺機能
- 支援のポイント
- 安全性を評価して段階的に進める
嚥下・栄養
- 確認する内容
- むせ、体重、食形態
- 支援のポイント
- 誤嚥と低栄養を予防する
認知・心理
- 確認する内容
- 物忘れ、意欲、抑うつ
- 支援のポイント
- 本人と家族の双方を支援する
てんかん
- 確認する内容
- 発作の有無、服薬
- 支援のポイント
- 発作時の対応と受診基準を共有する
再発時対応
- 確認する内容
- FAST、頭痛、嘔吐、意識
- 支援のポイント
- 症状が突然出たら救急要請する
| 再発予防・生活支援 | 確認する内容 | 支援のポイント |
|---|---|---|
| 血圧管理 | 家庭血圧、服薬、立ちくらみ | 個別目標と測定方法を共有する |
| 飲酒・食事 | 大量飲酒、食塩摂取 | 続けられる目標へ調整する |
| 抗血栓薬 | 再開時期、適応、出血リスク | 自己判断で中断・再開しない |
| 運動・リハビリ | 麻痺、失調、心肺機能 | 安全性を評価して段階的に進める |
| 嚥下・栄養 | むせ、体重、食形態 | 誤嚥と低栄養を予防する |
| 認知・心理 | 物忘れ、意欲、抑うつ | 本人と家族の双方を支援する |
| てんかん | 発作の有無、服薬 | 発作時の対応と受診基準を共有する |
| 再発時対応 | FAST、頭痛、嘔吐、意識 | 症状が突然出たら救急要請する |
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この記事の編集方針
主要な定義・数値・推奨は、公開時点で確認できるガイドライン、公的資料、学会資料、査読論文を優先して確認しています。未確認の編集メモは公開せず、根拠の範囲や限界を区別して、読者が原資料を確認できるよう参考資料を掲載します。
詳しい編集方針を見る →参考にした資料
- 脳卒中治療ガイドライン2021〔改訂2025〕日本脳卒中学会 脳卒中ガイドライン委員会・2025年日本国内における脳出血急性期の血圧管理、抗血栓療法関連脳出血の中和、慢性期の再発予防。2022年1月~2023年12月の主要文献を追加評価した国内ガイドライン。原資料を開く
- 脳卒中ガイドライン2021(改訂2025)解説日本大学医学会・2026年改訂2025の方法、推奨度・エビデンスレベル、急性期降圧、ワルファリン関連脳出血へのPCC、抗血小板薬内服中の血小板輸血に関する変更点。原資料を開く
- 2022 Guideline for the Management of Patients With Spontaneous Intracerebral HemorrhageAmerican Heart Association/American Stroke Association・2022年成人の自然発症脳出血を対象とした診療ガイドライン。血圧変動、抗凝固薬中和、静脈血栓塞栓症予防、けいれん、手術、嚥下、リハビリ、予後評価の推奨を確認した。原資料を開く
残り7件の参考資料を見る原資料・発行元・発行年を確認できます+
- European Stroke Organisation and European Association of Neurosurgical Societies Guideline on Stroke Due to Spontaneous Intracerebral HaemorrhageEuropean Stroke Organisation/European Association of Neurosurgical Societies・2025年成人の自然発症脳出血を対象に37のPICOを評価したガイドライン。専門病棟管理、急性期降圧、降圧幅、止血治療、手術、ケアバンドル、合併症予防、二次予防を確認した。原資料を開く
- 脳卒中|病気について|循環器病について知る国立研究開発法人 国立循環器病研究センター・2025年脳出血の定義、高血圧と脳アミロイド血管症、深部・脳葉出血の傾向、抗血栓薬、血管奇形、手術、再発予防における血圧管理。原資料を開く