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目次この記事でわかること12項目+
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読む前に押さえたいこと
精神科では、沈黙、落ち着かなさ、食事低下、眠気など、一つの所見だけでは意味を決められません。症状の悪化に見えても、せん妄や低血糖、薬の副作用が隠れることがあり、反対に「大丈夫」という言葉だけで安全とは判断できません。本記事では、成人の入院・外来・訪問看護を想定し、精神状態、身体、薬、安全、生活機能を同じ枠組みで観察する方法を整理します。診断名を当てるのではなく、普段との差、始まり方、推移、所見の組み合わせを、次の判断につながる形で報告するための実務ガイドです。
精神疾患の看護観察は「心・体・安全・生活」を同時に見る
この章の要点観察の中心は、精神症状だけでなく、4領域を同時に捉えることです。
- 精神状態:意識、注意、思考、気分、知覚、行動
- 身体状態:呼吸・循環、体温、痛み、神経症状、水分・栄養、排泄
- 安全:自殺・自傷、他害、転倒、誤嚥、離院・行方不明につながる危険
- 生活・治療:睡眠、食事、清潔、活動、対人関係、服薬状況、治療への理解
観察値は単独で解釈せず、「その人の普段」「直前」「前勤務帯」「介入前」と比べます。以前から小声で話す人と、急に返答が遅くなった人では、同じ「発語が少ない」でも意味が異なるからです。
さらに、所見がいつ始まり、持続しているか、変動するか、何の後に現れたかを確認します。薬の変更、睡眠不足、感染、疼痛、対人トラブル、外出、家族との連絡などが手がかりになります。
診断名ではなく変化を共有することが看護師の役割です。新しい変化を認めたら、精神・身体・安全の各領域を追加確認し、必要な相手へ報告した後、介入によって状態がどう変わったかを再評価します。[[出典1](https://www.jaep.jp/gl/gl202401.pdf)・[出典2](https://www.jspn.or.jp/modules/residents/index.php?content_id=63)]
外見・行動
- 観察する内容
- 服装、清潔、姿勢、視線、動作、表情、対人距離、見えない対象への反応
- 変化の意味を考える視点
- 普段との差、活動性、恐怖、薬剤性運動症状
意識・注意・認知
- 観察する内容
- 覚醒、注意の持続、日時・場所の理解、記憶、指示理解
- 変化の意味を考える視点
- 急な変動なら、せん妄や身体疾患を優先して検討
会話・思考過程
- 観察する内容
- 話す量、速さ、声量、返答までの時間、まとまり、話題の飛躍・途絶
- 変化の意味を考える視点
- 睡眠、薬剤、気分、意識状態との組み合わせ
気分・感情
- 観察する内容
- 本人が語る気分、表情、反応性、場面との一致、変動
- 変化の意味を考える視点
- 抑うつ、躁状態、不安、薬剤影響、危機状況
思考内容
- 観察する内容
- 被害感、罪責感、絶望、こだわり、自殺・他害に関する考え
- 変化の意味を考える視点
- 確信度、苦痛、行動への影響、計画・手段
知覚
- 観察する内容
- 幻聴・幻視等の有無、内容、頻度、命令性、対処可能性
- 変化の意味を考える視点
- 行動化の可能性、せん妄・中毒、本人の苦痛
判断・病識・衝動
- 観察する内容
- 状態や治療の理解、選択、援助要請、衝動の制御
- 変化の意味を考える視点
- 安全確保や治療参加に必要な支援
生活機能
- 観察する内容
- 睡眠、食事、清潔、服薬、活動、対人関係
- 変化の意味を考える視点
- 症状の重症度と回復・悪化の方向性
| 領域 | 観察する内容 | 変化の意味を考える視点 |
|---|---|---|
| 外見・行動 | 服装、清潔、姿勢、視線、動作、表情、対人距離、見えない対象への反応 | 普段との差、活動性、恐怖、薬剤性運動症状 |
| 意識・注意・認知 | 覚醒、注意の持続、日時・場所の理解、記憶、指示理解 | 急な変動なら、せん妄や身体疾患を優先して検討 |
| 会話・思考過程 | 話す量、速さ、声量、返答までの時間、まとまり、話題の飛躍・途絶 | 睡眠、薬剤、気分、意識状態との組み合わせ |
| 気分・感情 | 本人が語る気分、表情、反応性、場面との一致、変動 | 抑うつ、躁状態、不安、薬剤影響、危機状況 |
| 思考内容 | 被害感、罪責感、絶望、こだわり、自殺・他害に関する考え | 確信度、苦痛、行動への影響、計画・手段 |
| 知覚 | 幻聴・幻視等の有無、内容、頻度、命令性、対処可能性 | 行動化の可能性、せん妄・中毒、本人の苦痛 |
| 判断・病識・衝動 | 状態や治療の理解、選択、援助要請、衝動の制御 | 安全確保や治療参加に必要な支援 |
| 生活機能 | 睡眠、食事、清潔、服薬、活動、対人関係 | 症状の重症度と回復・悪化の方向性 |
急な精神状態の変化では、まず身体の緊急性を確認する
この章の要点急変時は、精神疾患の悪化と決めつける前に、身体要因を先に確認します。低酸素、低血糖、感染、脱水、頭部外傷、けいれん、薬物中毒・離脱、脳血管障害、せん妄などでも、興奮、幻覚、まとまりのない会話、拒否、眠気が現れます。
最初に見るのは次の項目です。
- 呼びかけへの反応と意識の変化
- 気道、呼吸の回数・深さ・努力性、酸素化
- 脈拍、血圧、体温、皮膚色、冷汗
- 新しい麻痺、ろれつ困難、けいれん、転倒・頭部打撲
- 疼痛、嘔吐、下痢、尿閉、著しい便秘
- 水分・食事摂取、糖尿病やの可能性
精神状態は、本人の言葉と観察事実を分けて系統的に見る
この章の要点精神状態は、事実と解釈を分けて記録します。「不穏」「妄想的」とだけ書くのではなく、発言、表情、声、動作、状況、生活への影響を具体化します。
本人の訴えと外見が一致しないこともあります。「落ち着いている」と話しながら手を強く握る、笑顔で「消えたい」と話す、といった不一致も重要な所見です。無理に専門用語へ置き換えず、本人の言葉を短く正確に残します。
直ちに対応
- 主な状況
- 気道・呼吸・循環の障害、意識低下、けいれん、新しい神経症状、重篤な中毒、発熱・筋固縮・意識変化の組み合わせ、切迫した自殺・他害
- 報告先・初期対応
- 医師、責任看護師、院内救急チーム。院外では地域救急。学生は直ちに指導看護師へ
- 再評価
- 状態に応じて連続または高頻度に、呼吸・循環・意識・安全を確認
速やかな臨床評価
- 主な状況
- 急な混乱・変動、新しい幻覚や行動変化、増強する自殺念慮、摂取不良、転倒、尿閉、著しい便秘、薬剤性が疑われる変化
- 報告先・初期対応
- 担当医または当直医と責任看護師。発症時刻、薬歴、身体所見を添える
- 再評価
- 指示された観察と、介入前後の変化を確認
計画的な共有
- 主な状況
- 緩徐な睡眠、食事、清潔、体重、服薬、活動、対人関係の変化
- 報告先・初期対応
- 申し送り、カンファレンス、担当医・多職種チーム
- 再評価
- 同じ指標を継続し、回復・悪化の方向を見る
| 緊急度 | 主な状況 | 報告先・初期対応 | 再評価 |
|---|---|---|---|
| 直ちに対応 | 気道・呼吸・循環の障害、意識低下、けいれん、新しい神経症状、重篤な中毒、発熱・筋固縮・意識変化の組み合わせ、切迫した自殺・他害 | 医師、責任看護師、院内救急チーム。院外では地域救急。学生は直ちに指導看護師へ | 状態に応じて連続または高頻度に、呼吸・循環・意識・安全を確認 |
| 速やかな臨床評価 | 急な混乱・変動、新しい幻覚や行動変化、増強する自殺念慮、摂取不良、転倒、尿閉、著しい便秘、薬剤性が疑われる変化 | 担当医または当直医と責任看護師。発症時刻、薬歴、身体所見を添える | 指示された観察と、介入前後の変化を確認 |
| 計画的な共有 | 緩徐な睡眠、食事、清潔、体重、服薬、活動、対人関係の変化 | 申し送り、カンファレンス、担当医・多職種チーム | 同じ指標を継続し、回復・悪化の方向を見る |
症状の意味は、単独の行動ではなく所見の組み合わせで考える
この章の要点一つの症状だけで原因や危険性を決めず、関連する所見を組み合わせます。
幻覚・妄想がある場合は、正誤を争うより、何が聞こえる・感じるのか、どれほど確信しているか、苦痛や恐怖、命令性、行動への影響を確認します。「誰かを傷つけろと言われている」など安全に直結する内容は、本人の言葉に近い形で速やかに共有します。
抑うつが疑われる場合は、気分だけでなく、興味、活動、睡眠、食欲、集中、疲労、罪責感、絶望、自殺念慮を見ます。過去に睡眠欲求が減っても活動できた時期、著しい多弁や浪費などがなかったかも確認します。抑うつ症状があることと、単極性うつ病であることは同義ではありません。
多弁、活動増加、易刺激性がある場合は、睡眠欲求、思考の速さ、予定の増加、衝動的行動、金銭・対人・性的行動への影響を確認します。声が大きいという一所見だけで躁状態とは判断しません。
無気力や閉じこもりは、陰性症状だけでなく、抑うつ、鎮静、低活動型せん妄、痛み、脱水、感染の可能性があります。歩き回りや焦燥は、精神症状のほか、アカシジア、疼痛、尿閉、便秘、低酸素、離脱でも起こります。
急な発症、普段にない変動、身体所見との併存があれば医師・責任看護師へ速やかに報告し、身体評価と薬歴確認につなげます。[[出典2](https://www.jspn.or.jp/uploads/uploads/files/senkoi/03_ver2.pdf)・[出典7](https://www.pmda.go.jp/safety/info-services/drugs/adr-info/manuals-for-hc-pro/0001.html)]
身体状態と生活機能は、精神症状と同じ重要度で継続観察する
この章の要点精神科でも、身体観察は看護の基本です。精神症状、認知機能、鎮静などにより、痛みや体調不良をうまく言語化できないことがあります。
観察する主な領域は次のとおりです。
- バイタルサイン:単発値だけでなく本人の平常値と推移
- 呼吸:回数、深さ、努力性、いびき様呼吸、咳、痰、酸素化
- 水分・栄養:摂取量、口渇、嚥下、むせ、嘔吐、体重変化
- 排泄:排尿、尿閉、便秘、下痢、腹部膨満、腹痛
- 運動機能:歩行、ふらつき、転倒、筋緊張、振戦、不随意運動
- 皮膚・循環:外傷、発赤、浮腫、末梢循環、褥瘡リスク
- 睡眠:時間だけでなく、眠りの連続性、日中の眠気、睡眠欲求
- 生活:清潔、着替え、買い物、調理、金銭管理、住環境
- 慢性疾患:体重・腹囲、血糖・HbA1c、脂質など、診療計画に沿った確認
「食べない」場合も、被害妄想、抑うつ、嚥下障害、、、歯痛、経済的事情では必要な対応が異なります。摂取量だけでなく、理由と身体徴候を確認します。
薬剤使用中は、治療効果と副作用を同じ時間軸で確認する
この章の要点向精神薬の使用前後では、効果と副作用を同時に観察します。「静かになった」ことが症状の軽減なのか、過鎮静なのかを見分ける必要があります。
確認するのは、薬剤名、投与・内服時刻、変更内容、服薬状況、変化の出現時刻、併用薬、飲酒・物質使用です。観察間隔や次回投与の扱いは、処方指示と施設手順に従います。
自殺・自傷リスクは、直接、具体的に、繰り返し確認する
この章の要点自殺・自傷リスクは、遠回しな推測ではなく、本人に直接確認します。自傷行為に自殺の意図がなかった場合でも、自殺リスクの評価は必要です。
主な確認項目は次のとおりです。
- 現在、死にたい・消えたいと思うか
- どの程度強く、どのくらい続き、制御できるか
- 方法、時期、場所を考えているか
- 道具、薬、場所などへのアクセスや準備があるか
- 最近または過去の自殺企図・自傷
- 喪失、孤立、経済・住居・対人問題、身体的苦痛
- 飲酒・物質使用、焦燥、衝動性、強い不眠
- 幻聴などから危険な命令を受けていないか
- 支えになる人、治療とのつながり、生きる理由
- 危険が高まったときに援助を求められるか
「大丈夫」「考えていない」という返答だけで安全とは判断しません。隠したい気持ち、混乱、質問への理解不足がある可能性を考え、表情、行動、準備、周囲の情報と組み合わせます。反対に「死にたい」という一言だけで切迫性を決めず、計画、手段、時期、持続、制御可能性を確認します。
具体的な計画と利用可能な手段、直近の企図・準備、急速な悪化、命令性幻聴、強い衝動性などがある場合は、本人を一人にせず、安全を確保しながら直ちに医師・責任看護師・施設の緊急対応先へ連絡します。訪問・外来では地域救急や警察を含む施設手順に従います。
危険性は変化するため、評価は一度で終わりません。面接後、薬剤投与後、家族との連絡後、外出・退院前後など、状況が変わった時点で再確認します。企図後に急に穏やかに見えることも、改善の証拠とは限りません。[[出典5](https://www.jaep.jp/gl/gl2022_06.pdf)]
死に関する考え
- 質問・観察の焦点
- 「消えたい」「眠ったままでいたい」などの間接的表現も含める
- 意味
- 本人が「自殺」と表現できない苦痛も捉える
発現と変化
- 質問・観察の焦点
- いつから、どのくらい続くか、強くなる状況は何か
- 意味
- 現在の変化と切迫性を捉える
意図・計画・準備
- 質問・観察の焦点
- 実行するつもり、方法・時期の具体性、準備、手段への接近可能性
- 意味
- 具体化しているほど緊急の評価が必要になる
過去の行動
- 質問・観察の焦点
- 自殺企図、自傷、過量服薬と、その時の経過
- 意味
- 現在の訴えだけでは分からない危険を補う
精神・身体状態
- 質問・観察の焦点
- 絶望感、焦燥、不眠、酩酊、離脱、幻聴、疼痛、身体疾患
- 意味
- 衝動性や判断への影響を考える
支えと対処
- 質問・観察の焦点
- 相談できる人、治療者、現在役立っている対処、本人が大切にしているもの
- 意味
- 安全計画と継続支援を考える材料になる
客観的変化
- 質問・観察の焦点
- 持ち物の整理、別れを示唆する行動、急な連絡断絶など
- 意味
- 本人の言葉と行動が一致しない可能性を検討する
| 確認すること | 質問・観察の焦点 | 意味 |
|---|---|---|
| 死に関する考え | 「消えたい」「眠ったままでいたい」などの間接的表現も含める | 本人が「自殺」と表現できない苦痛も捉える |
| 発現と変化 | いつから、どのくらい続くか、強くなる状況は何か | 現在の変化と切迫性を捉える |
| 意図・計画・準備 | 実行するつもり、方法・時期の具体性、準備、手段への接近可能性 | 具体化しているほど緊急の評価が必要になる |
| 過去の行動 | 自殺企図、自傷、過量服薬と、その時の経過 | 現在の訴えだけでは分からない危険を補う |
| 精神・身体状態 | 絶望感、焦燥、不眠、酩酊、離脱、幻聴、疼痛、身体疾患 | 衝動性や判断への影響を考える |
| 支えと対処 | 相談できる人、治療者、現在役立っている対処、本人が大切にしているもの | 安全計画と継続支援を考える材料になる |
| 客観的変化 | 持ち物の整理、別れを示唆する行動、急な連絡断絶など | 本人の言葉と行動が一致しない可能性を検討する |
興奮・攻撃性は、診断名ではなく動的な変化と文脈から評価する
この章の要点他害・攻撃性の評価では、診断名だけで危険を予測しません。過去の行動、現在の変化、誘因、本人の対処法を組み合わせます。
早期に現れ得る変化には、次のようなものがあります。
- 声量・話し方の変化、威嚇的な発言
- 顔や体の緊張、握りこぶし、にらむ動作
- 発汗、呼吸・脈拍の増加
- 歩き回る、急に距離を詰める、物を投げる
- 注意低下、混乱、著しい易刺激性
- 攻撃を命じる幻聴、強い被害感
- 特定の相手・場所・要求をきっかけとした悪化
過去の暴力歴は重要な情報ですが、将来の行動を確定するものではありません。誰が対象になり得るか、手段へのアクセス、頻度、切迫性、悪化・軽減要因、本人が気づく前兆、落ち着く方法を確認します。
対応では、応援を早めに要請し、安全な距離と退路を確保します。刺激を減らし、落ち着いた声で、一度に一つの内容を伝え、実行可能な選択肢を示します。妄想の正誤を争う、長く説得する、複数人で取り囲む、予告なく接触するといった行為は、緊張を高める可能性があります。
評価尺度は情報整理に利用できますが、点数だけで拘束や注射を決定したり、将来の行動を断定したりはできません。介入後は声量、姿勢、対話可能性、生理的興奮、本人の主観を再確認します。[[出典4](https://www.jaep.jp/gl/gl2022_03.pdf)]
じっと座れない、足を動かしたい、歩き続ける、身体の内側が落ち着かない
- 考慮する副作用
- アカシジア
- 看護観察の要点
- 投与前との違い、開始・増量との時間関係、主観的な苦痛、不眠や自傷への影響を確認する
発熱、筋肉のこわばり、振戦、嚥下・発語の変化、意識変化、発汗、頻脈、血圧変動
- 考慮する副作用
- 悪性症候群など
- 看護観察の要点
- 複数の所見が急に出た場合は重大な副作用を疑い、迅速に報告・対応する
不安・混乱・興奮に、振戦、筋のぴくつき、発汗、発熱、下痢、頻脈が加わる
- 考慮する副作用
- セロトニン症候群など
- 看護観察の要点
- セロトニンに作用する薬の開始・増量・併用変更を確認し、速やかに専門的評価へつなぐ
眠気、ふらつき、便秘、食欲・体重変化、口渇、排尿の変化
- 考慮する副作用
- 薬剤ごとに異なる有害事象
- 看護観察の要点
- 転倒、摂食・水分、排泄、生活への影響を見て、個別薬の添付文書で確認する
| 観察される変化 | 考慮する副作用 | 看護観察の要点 |
|---|---|---|
| じっと座れない、足を動かしたい、歩き続ける、身体の内側が落ち着かない | アカシジア | 投与前との違い、開始・増量との時間関係、主観的な苦痛、不眠や自傷への影響を確認する |
| 発熱、筋肉のこわばり、振戦、嚥下・発語の変化、意識変化、発汗、頻脈、血圧変動 | 悪性症候群など | 複数の所見が急に出た場合は重大な副作用を疑い、迅速に報告・対応する |
| 不安・混乱・興奮に、振戦、筋のぴくつき、発汗、発熱、下痢、頻脈が加わる | セロトニン症候群など | セロトニンに作用する薬の開始・増量・併用変更を確認し、速やかに専門的評価へつなぐ |
| 眠気、ふらつき、便秘、食欲・体重変化、口渇、排尿の変化 | 薬剤ごとに異なる有害事象 | 転倒、摂食・水分、排泄、生活への影響を見て、個別薬の添付文書で確認する |
報告の速さは、診断名ではなく現在の危険と変化で決める
この章の要点報告は、緊急度に応じて相手と再評価方法を変えます。施設の基準や医師の指示が優先され、以下は全国共通の数値基準ではありません。
報告はSBARに時系列と客観的所見を載せる
この章の要点伝わる報告は、結論、根拠、依頼を短くまとめます。SBARは、精神症状と身体状態が混在する場面にも利用できます。
- S:現在何が起きており、なぜ今報告するのか
- B:診断、普段の状態、直前の出来事、薬剤・身体疾患などの背景
- A:本人の言葉、客観的所見、時間的推移、看護師の懸念
- R:診察、指示、検査、観察方法など、何を求めるか
報告例:
S:向精神薬の追加投与後、普段より呼びかけへの反応が低下し、呼吸状態も変化したため報告します。
B:投与前は会話でき、独歩していました。投与後から眠気が強くなりました。
A:現在は強い刺激で開眼します。呼吸数と酸素化が投与前より低下し、いびき様の呼吸があります。血圧・脈拍も測定済みです。過鎮静による呼吸への影響を懸念しています。
R:至急診察をお願いします。次回投与の扱いと、必要なモニタリングについて指示を確認したいです。
「不穏です」「様子がおかしいです」だけでは、変化と緊急性が伝わりません。発症時刻、本人の正確な言葉、行動、バイタルサイン、服薬との時間関係、実施した対応と反応を添えます。口頭指示は復唱し、不明点を確認したうえで、実施後の結果を報告します。[[出典11](https://www.ahrq.gov/teamstepps-program/resources/additional/sbar.html)]
安全確保は、患者の尊厳を守る最も制限の少ない方法から始める
この章の要点安全対策は、最小限・一時的・説明可能であることが基本です。観察は監視や制裁ではなく、安全と治療参加を支えるために行います。
まず、刺激の調整、安心できる場所、担当者の変更、疼痛・空腹・排泄への対応、本人が使ってきた対処法、対話、内服の選択肢などを検討します。安全上可能な範囲で、本人に希望を尋ね、選択肢を示します。
日本の精神科病院における身体的拘束は、生命の保護または重大な身体損傷の防止を目的とし、代替方法がなく、精神保健指定医が必要と認めた場合に限られます。制裁、懲罰、見せしめを目的にはできません。理由を本人へ知らせるよう努め、実施理由、開始・解除時刻を記録し、原則として常時の臨床的観察が必要です。
拘束中も、呼吸・循環・意識、皮膚、疼痛、体位、栄養・水分、排泄、嚥下、血栓・褥瘡等のリスクを確認します。同時に「なぜまだ必要なのか」「代替手段へ移行できないか」を再評価します。観察間隔や解除手順は、法令、医師の指示、施設基準に従います。[[出典6](https://www.jaep.jp/gl/gl2022_05.pdf)・[出典9](https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=00ta4584&dataType=1&pageNo=1)・[出典10](https://laws.e-gov.go.jp/document?lawid=325AC0100000123_20221216_504AC0000000104)]
観察は「確認した事実・意味・次の行動」で締める
この章の要点実践では、観察して終わらないことが重要です。次の7点を一続きで確認します。
- 今、生命を脅かす身体異常はないか
- 本人の普段と比べて何が変化したか
- いつ始まり、どのように推移しているか
- 精神・身体・薬・安全・生活の各領域を確認したか
- 単独所見ではなく、どの所見が組み合わさっているか
- 誰へ、どの緊急度で、何を依頼するか
- 報告・介入後に、何を再評価するか
よくある誤りは、正常範囲のバイタルサイン一回だけで身体疾患を除外すること、本人が否定しただけで自殺リスクなしとすること、眠ったことを症状改善とみなすこと、歩き回りをすべて精神症状と捉えることです。
記録では、「問題行動」「操作的」といった評価語を避けます。「14時10分から廊下を往復し、5分間に3回『ここから出せ』と発言。両手を握り、呼吸が速い。静かな場所を提案すると着席した」のように、第三者が状況を再現できる事実を残します。
精神科看護の観察力とは、症状名を早く付ける力ではありません。小さな変化を比較可能な形で捉え、身体の危険を除外し、安全と尊厳を両立させ、次の判断をする人へ確実につなぐ力です。
学習メモ・復習の予定気づきを自分の言葉で残す+
わかったこと、まだ曖昧なこと、次に調べたいことを残せます。
学びを、もう一度
復習日になると、ホームと復習リストで確認できます。
次に見返す日を決める
この記事の編集方針
主要な定義・数値・推奨は、公開時点で確認できるガイドライン、公的資料、学会資料、査読論文を優先して確認しています。未確認の編集メモは公開せず、根拠の範囲や限界を区別して、読者が原資料を確認できるよう参考資料を掲載します。
詳しい編集方針を見る →参考にした資料
- うつ病看護ガイドライン日本うつ病学会 気分障害の治療ガイドライン検討委員会・2020年作成、2022年7月5日一部改訂精神状態診察、感情・生理・認知・行動面のアセスメント、生活機能、自殺リスク、服薬後の効果・副作用の観察、共感的で非評価的な関わり。主に見出し1、3、5、7、9に対応。国内外の文献・ガイドラインと専門家の知見を基にした看護指針であり、うつ病以外への適用は共通原則に限定した。原資料を開く
- うつ病診療ガイドライン2025日本うつ病学会・2025年患者背景、症状、ライフステージ、治療経過を踏まえた個別的判断と、身体疾患・脳器質性疾患・低活動型せん妄などを含む診断の見直し。主に見出し2、4に対応。システマティックレビューとMindsの方法論を取り入れた診療ガイドライン。原資料を開く
- 令和2年度障害者総合福祉推進事業「精神障害者の心理的危機に対する早期対応や危機介入方法の普及と教育効果に関する検討」報告書厚生労働省、学校法人岩手医科大学・2021年代表的な精神疾患と症状、生活上の変化への気づき、傾聴、包括的支援、多職種連携。主に見出し1、2、5、10に対応。一般市民・支援者向け教育モデルの開発と試行であり、個別治療の効果を評価した診療ガイドラインではない。原資料を開く
残り6件の参考資料を見る原資料・発行元・発行年を確認できます+
- 薬局における疾患別対応マニュアル~患者支援の更なる充実に向けて~ 精神疾患(統合失調症)厚生労働省・2024年幻聴・妄想の内容を頭から否定せず、苦痛へ焦点を当てる関わり、患者情報の収集、服薬中のフォローアップ、医療機関との連携。主に見出し6、8、9に対応。対象は主に薬局薬剤師であるため、看護へは共通するコミュニケーション原則のみ適用した。原資料を開く
- 自殺未遂患者への対応―救急外来(ER)・救急科・救命救急センターのスタッフのための手引き日本臨床救急医学会、厚生労働科学研究班・2009年死にたい気持ちの直接・間接的表現、念慮の強さ、出現時期、計画性、自殺未遂後の看護・連携。主に見出し6、7、9に対応。対象は救急現場の自殺未遂患者であり、一般精神科看護への適用では対象範囲の違いに留意した。原資料を開く
- 重篤副作用疾患別対応マニュアル 薬剤性せん妄厚生労働省・資料本文から発行年・最終改定年を確認できずせん妄の急性発症、注意・意識・認知の障害、日内変動、過活動型・低活動型・混合型、薬剤や離脱の検討。主に見出し4、5に対応。副作用の早期発見を目的とするマニュアルで、原因は薬剤以外にも多因子となり得る。