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目次この記事でわかること18項目+
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読む前に押さえたいこと
検査結果を見ても、基準範囲から外れた項目に印を付けるだけでは、患者の変化は読み取れません。必要なのは、その検査が何を測るのか、採取条件で動くのか、ほかの値や症状とどう結び付くのかを順番に考えることです。この記事では、病棟で頻繁に出会う血算、電解質、腎・肝機能、炎症、凝固、糖代謝、心筋マーカー、血液ガス、尿・培養に加え、画像・生理検査まで幅広く整理します。代表的な基準範囲と限界、観察の意味、急いで共有したい変化を、看護学生から臨床看護師まで使える形で説明します。
検査値は「高い・低い」ではなく、目的、時点、組み合わせで読む
この章の要点検査値を読むときの結論は、単独の数値だけで診断しないことです。同じ異常値でも、急に変化したのか、以前から続いているのか、症状があるのかによって意味が変わります。
最初に「何を確かめるための検査か」を確認します。次に、採取時刻、食事、輸液、酸素投与、薬剤、運動、体位など、値に影響する条件を確認します。そのうえで、患者の普段の値、直前値、関連検査、バイタルサイン、身体所見を結び付けます。
例えばクレアチニンが基準範囲内でも、筋肉量の少ない高齢者では腎機能低下を過小評価することがあります。反対に、筋肉量が多い人や強い運動後には高めになることがあります。「範囲内だから問題なし」「範囲外だから病気」とは限りません。
看護師は診断を確定するのではなく、検査値が示す可能性を患者の状態と照合し、変化を早くつなぐ役割を担います。
基準範囲、診断基準、治療目標、緊急報告値を区別する
この章の要点基準範囲は、一定の条件で選んだ基準個体の測定値の中央95%です。健康な人でも約5%は範囲外となり、病気があっても範囲内になることがあります。したがって、基準範囲は病気の有無を分ける合否線ではありません。
診断基準は特定の疾患を識別するための値、治療目標は治療中に目指す値です。緊急報告値、いわゆるパニック値は、生命への影響が懸念され、検査室から速やかな連絡が必要と施設が定めた値です。これらは目的が異なります。
JCCLS共用基準範囲は、強い運動を避け、前夜の過度な飲食・飲酒を控え、10時間以上絶食した後、午前7~10時に20分以上座位安静として採血したデータを基礎にしています。臨床では、この条件から外れることが多いため、採取条件の確認が欠かせません。
結果が予想外の場合は、患者取り違え、採取時刻、点滴側からの採血、採血量不足、凝固、溶血、検体保存・搬送の遅れを確認します。溶血すると赤血球内成分が漏れ、特にK、LD、ASTなどが見かけ上高くなることがあります。異常値と患者の状態が合わないときは、検体不良の表示を確認し、必要性を判断して再検査につなげます。
血算は「酸素を運ぶ・感染に反応する・止血する」の3系統で読む
この章の要点血算では、赤血球系、白血球系、血小板系を分けて考えます。さらに、値が減った理由を「作れない」「失われる・壊れる」「薄まる」、増えた理由を「増産」「濃縮」「反応性」に整理すると理解しやすくなります。
Hbは血液の酸素運搬能を反映します。低値では、息切れ、動悸、倦怠感、めまい、顔色、活動耐容能を確認します。ただし、急性出血直後は血球と血漿が同時に失われ、Hbがすぐには大きく低下しない場合があります。出血量、血圧、脈拍、冷汗、意識、末梢循環を優先して評価します。
MCVは赤血球の大きさです。低値では鉄欠乏やサラセミアなど、高値ではビタミンB12・葉酸欠乏、肝障害、アルコール、薬剤などを考えます。フェリチン、血清鉄、総鉄結合能またはトランスフェリン、網赤血球、ビタミン値などを組み合わせます。フェリチンは炎症でも上昇するため、単独で鉄が十分とは判断できません。
WBCは総数だけでなく白血球分画を見ます。好中球は細菌感染、炎症、組織障害、ストレス、ステロイドなどで増えることがあります。好酸球はアレルギー、薬剤反応、寄生虫などで変化します。時は、実数と発熱、口腔・皮膚・部位の所見が重要です。
電解質は症状、腎機能、薬剤、心電図を同時に確認する
この章の要点電解質異常は神経、筋肉、心臓に影響し、短時間の変化が危険につながることがあります。数値だけでなく、変化速度と症状が重要です。
Naは体内の総ナトリウム量より、主に水分との比を表します。低Naでは悪心、頭痛、傾眠、見当識障害、けいれんなど、高Naでは口渇、意識変化、筋力低下などを確認します。血糖、血清・尿浸透圧、尿Na、水分出納、体重、浮腫、口腔乾燥を組み合わせ、希釈、脱水、薬剤、内分泌異常などを整理します。
Kは神経・筋・心筋の電気活動に関係します。高値・低値のいずれでも筋力低下や不整脈を生じ得ます。動悸、脈の乱れ、胸部症状、脱力、心電図変化を確認し、腎機能、尿量、酸塩基平衡、利尿薬、RA系阻害薬、K補充薬、インスリンなどとの関係を見ます。高Kが患者の状態と合わず溶血表示がある場合は、偽高値を疑って確認します。
腎機能はクレアチニンだけでなく、尿量、eGFR、尿所見で読む
この章の要点腎機能の評価では、Crが基準範囲内かどうかより、患者の普段からの変化が重要です。腎臓は水分、電解質、酸塩基平衡、老廃物排泄、造血や骨代謝に関わるため、異常は全身に現れます。
尿素窒素(UN、BUN)は蛋白代謝で生じ、腎臓から排泄されます。腎機能低下だけでなく、脱水、消化管出血、蛋白異化、食事などで上昇し、肝機能低下や低栄養で低下することがあります。
Crは筋肉由来です。筋肉量の少ない高齢者、低栄養、切断後などでは低く、腎機能をよく見せることがあります。筋肉量の影響が問題となる場合はシスタチンCによるeGFRが補助になります。
成人のeGFRは血清Cr、年齢、性別から推算します。薬剤投与量を決める際には、体表面積補正eGFRをそのまま使えない場合があるため、使用する指標と薬剤ごとの規定を確認します。
CKDは、腎障害を示す所見またはGFR 60 mL/分/1.73 m²未満が3か月を超えて持続する状態です。一度のCr上昇やeGFR低下だけでは、慢性か急性かを区別できません。
観察では、時間尿量、尿の色、体重、浮腫、血圧、口腔乾燥、肺音、呼吸困難、、食欲、掻痒、意識を確認します。上昇と尿量減少、K上昇、性アシドーシス、呼吸苦などが重なる場合は、数値単独より緊急性が高まります。
肝胆道・膵検査は「細胞障害」「胆汁うっ滞」「合成能」を分ける
この章の要点ASTやALTが高いことと、肝臓の機能が低いことは同じではありません。肝胆道系では、障害の場所と肝合成能を分けて読みます。
AST・ALTは細胞内酵素で、主に肝細胞障害で上昇します。ただしASTは心筋や骨格筋、赤血球にもあり、CK、LD、溶血、運動歴を確認します。ALTはASTより肝臓との関連が強いものの、単独で原因は決まりません。
ALPとγGTは胆汁うっ滞で上昇しやすい項目です。ALPは骨由来でも上がるため、γGT、ビリルビン、画像、年齢、骨疾患を組み合わせます。総ビリルビン高値では黄疸、尿色、便色、掻痒を観察し、直接・間接ビリルビンで産生過剰、抱合、胆汁排泄のどこに問題があるかを整理します。
Alb、コリンエステラーゼ、凝固因子は肝臓で作られます。ただしAlbは半減期が長く、炎症、腎や消化管からの喪失、希釈の影響も受けます。「Alb低値=栄養不足」とは限りません。体重変化、摂取量、CRP、、尿蛋白を合わせます。
炎症・感染検査は、感染源と臓器障害を探す補助情報である
この章の要点CRP、WBC、PCTなどは感染症の手掛かりになりますが、どれも感染や敗血症を単独で確定できません。炎症の原因、発症からの時間、治療開始時点、免疫状態を考慮します。
CRPは炎症刺激を受けて肝臓で作られます。感染だけでなく、手術、外傷、自己免疫疾患、組織壊死などでも上昇します。発症直後にはまだ上がっていないことがあり、改善後もすぐには正常化しません。単回値より推移を見ます。
PCT、プレセプシン、IL-6も補助的なバイオマーカーです。日本版敗血症診療ガイドライン2024では、これらは一般病棟、ER、ICUのいずれでも単独で高い診断精度を示さず、全身状態の観察に加える位置づけとされています。
体温、呼吸数、心拍数、血圧、意識、皮膚色、尿量、末梢循環に加え、Cr、Bil、血小板、凝固、血液ガス、乳酸などで臓器障害を評価します。ステロイド、免疫抑制、抗がん薬、高齢などでは発熱や上昇が目立たないことがあります。
血糖、HbA1c、脂質は測定条件と「診断用の値」を分けて読む
この章の要点血糖はその時点の値、HbA1cは過去1~2か月程度を中心とした血糖状態を反映します。両者が一致しないときは、測定時点と赤血球寿命を確認します。
糖尿病型は、静脈血漿の空腹時血糖126 mg/dL以上、75g OGTT 2時間値200 mg/dL以上、随時血糖200 mg/dL以上、またはHbA1c 6.5%以上です。ただしHbA1cのみを反復して糖尿病と診断することはできず、少なくとも一度は血糖値で確認します。これは健常者の基準範囲ではなく、糖尿病の診断に用いる臨床判断値です。
HbA1cは、鉄欠乏で高め、溶血、失血後、輸血、肝硬変、透析、エリスロポエチン治療などで低めになることがあります。急激な高血糖悪化にも遅れて反応します。
低血糖が疑われる場合は、発汗、振戦、動悸だけでなく、眠気、行動変化、集中力低下、転倒、けいれん、意識障害を確認します。高齢者や無自覚性低血糖では典型症状が乏しいことがあります。簡易血糖値と症状が合わない場合は、手指の汚染、末梢循環、機器・センサーの状態を確認し、必要に応じて血液検査で照合します。
凝固検査は出血傾向と血栓傾向の両方を評価する
この章の要点凝固検査が延長していれば出血、Dダイマーが高ければ血栓、と単純には判断できません。止血には血小板、凝固因子、血管、線溶が関わるため、検査の組み合わせが必要です。
PTは外因系・共通系凝固因子を反映し、肝合成能、ビタミンK、ワルファリンなどの評価に使います。PT-INRはワルファリン管理で用いますが、治療目標は疾患、年齢、出血リスクによって異なります。
APTTは内因系・共通系を反映し、未分画ヘパリン、凝固因子欠乏、インヒビターなどで変化します。採血管の規定量を満たさない、ヘパリン投与ルート付近から採血するなどの条件でも延長するため、採取状況を確認します。
フィブリノゲンは凝固で消費される一方、炎症では増加します。FDPはフィブリンとフィブリノゲンの分解産物、Dダイマーは架橋化フィブリンの分解を反映します。Dダイマーは血栓症の除外に役立つ場面がありますが、感染、がん、妊娠、術後、外傷、加齢などでも上昇し、陽性だけで血栓症とは診断できません。
皮下出血、点状出血、鼻出血、歯肉出血、血尿、黒色便、月経量、穿刺部止血、頭痛や意識変化を確認します。急な血小板低下、PT・延長、フィブリノゲン低下、FDP・上昇が重なる場合は、全身性の凝固異常を考えて速やかに共有します。基準範囲は試薬や測定法に依存するため、検査報告書の値を使います。
胸痛・呼吸困難では、心電図と心筋・心不全マーカーを並行して読む
この章の要点急性心筋障害を疑うときは、心筋トロポニンの結果待ちだけで判断せず、症状、12誘導心電図、循環状態を並行して評価します。時間経過が診断情報になります。
高感度心筋トロポニンT・Iは心筋障害に鋭敏です。測定法ごとの99パーセンタイル上限を超えたか、時間を追って上昇・下降したかを確認します。心筋梗塞の診断には、虚血を示唆する症状、心電図または画像所見などが必要です。腎機能低下、心不全、頻脈、肺塞栓症、心筋炎、敗血症などでも上昇し得ます。
CKとCK-MBも心筋・骨格筋障害の情報になりますが、心筋障害の評価ではトロポニンを中心に考えます。筋肉注射、けいれん、転倒、長時間の圧迫、強い運動でもCKは上昇します。
BNP、NT-proBNPは心室への負荷を反映し、心不全の診断補助や経過評価に用います。2025年心不全診療ガイドラインでは、心不全の可能性があるカットオフとしてBNP 35 pg/mL、NT-proBNP 125 pg/mL以上が示されています。ただし腎機能低下、加齢、心房細動などで高くなり、肥満では低くなることがあります。低値でも病態によってはを完全に否定できません。
血液ガスはpHから入り、換気、代謝、酸素化、循環の順に読む
この章の要点血液ガスは、最初にpH、次にPaCO₂とHCO₃⁻、その後にPaO₂と酸素投与条件、乳酸を確認します。酸素化と換気は別の機能です。
pHが7.35未満ならアシデミア、7.45を超えればアルカレミアです。PaCO₂は肺胞換気の指標で、上昇は低換気、低下は過換気を示します。HCO₃⁻は主に代謝・腎による調節を反映します。pHが正常範囲でも、呼吸性と代謝性の異常が併存して相殺されている場合があります。
PaO₂は酸素化を示しますが、年齢、吸入酸素濃度、体位などの影響を受けます。採血時の酸素デバイス、流量またはFiO₂を必ず記録します。SpO₂は連続的な酸素化観察に有用ですが、PaCO₂を評価できません。SpO₂が保たれていても、低換気によるCO₂貯留は否定できません。
乳酸上昇は組織低灌流の重要な手掛かりです。ただし、肝代謝低下、けいれん、強い筋活動、薬剤、ビタミンB1欠乏などでも上がります。単回値だけでなく、血圧、末梢冷感、毛細血管再充満、尿量、意識、皮膚色と推移を確認します。
動脈採血後は穿刺部の圧迫止血、末梢循環、疼痛、血腫を確認します。使用、、凝固異常がある患者では止血状況を特に注意して観察します。
尿・便・髄液は、採取方法と検体の新鮮さが結果を左右する
この章の要点尿検査は腎臓だけでなく、尿路、代謝、水分状態の情報を非侵襲的に得られます。試験紙の陽性・陰性だけでなく、定量値と尿沈渣を組み合わせます。
尿蛋白試験紙は尿の濃さに影響されます。陽性時は尿蛋白/Cr比などで定量します。糖尿病関連腎臓病では尿アルブミン/Cr比が早期評価に使われます。CKDの腎障害指標には、尿蛋白0.15 g/gCr以上、尿アルブミン30 mg/gCr以上などが含まれますが、3か月を超えた持続の確認が必要です。
尿潜血陽性は、尿中赤血球だけでなく、溶血によるヘモグロビンや横紋筋融解によるミオグロビンでも起こります。尿沈渣で赤血球数・形態、白血球、上皮、細菌、円柱、結晶を確認します。月経血や採取時の汚染にも注意します。
尿白血球反応や亜硝酸塩は尿路感染の手掛かりですが、症状、尿沈渣、培養を合わせます。亜硝酸塩陰性でも感染を否定できません。排尿痛、頻尿、残尿感、尿混濁、発熱、側腹部痛、カテーテルの有無を確認します。
便潜血は消化管出血のスクリーニングに用いますが、出血部位や原因を確定しません。黒色便、鮮血便、腹痛、循環変化、Hbの推移を確認します。感染性下痢では便培養、抗原、毒素、核酸検査などが選択されます。採便前に便性状、回数、歴を記録します。
内分泌・免疫・腫瘍マーカー・薬物濃度は条件依存性を理解する
この章の要点専門検査ほど、単独の異常値を病名に直結させないことが大切です。採取時刻、薬剤、急性疾患、妊娠、測定法を確認します。
甲状腺ではTSHとFT4を組み合わせます。原発性甲状腺機能低下では一般にTSH高値・FT4低値、原発性甲状腺機能亢進ではTSH低値・FT4高値の方向になりますが、下垂体疾患、重症疾患、薬剤では異なる組み合わせがあります。
コルチゾールやACTHには日内変動があり、採取時刻が不可欠です。レニン・アルドステロンは体位、塩分、K、降圧薬などの影響を受けます。検査指示の採取条件をそろえます。
免疫グロブリン、補体、抗核抗体、疾患特異的自己抗体は、症状や臓器障害を補助する検査です。自己抗体陽性だけで自己免疫疾患とは診断しません。
腫瘍マーカーは、良性疾患、炎症、喫煙、腎肝機能などでも変化します。一般に単独でがんの有無を確定する検査ではなく、診断後の経過観察など、マーカーごとの目的を確認します。
薬物血中濃度モニタリングでは、採血時刻が結果の意味を決めます。トラフ値なのか、投与後の特定時点なのか、最終投与時刻、採血時刻、腎肝機能、透析の有無を記録します。
培養・迅速検査では、抗菌薬前の適切な検体採取が診断精度を左右する
この章の要点微生物検査では、検査名より「どこから、いつ、どのように採ったか」が重要です。敗血症またはその疑いでは、原則として抗菌薬投与前に血液培養を2セット以上採取します。
複数セットは検出率を上げるだけでなく、皮膚常在菌による汚染と真の菌血症を区別する助けになります。1セットは通常、好気ボトルと嫌気ボトルの組み合わせです。具体的な採血量、消毒薬、ボトルへの分注順序は、年齢、製品、施設手順に従います。
尿、喀痰、創部、膿、便、髄液などは、疑われる感染源から採取します。喀痰では唾液主体になっていないか、尿では採取法とカテーテルの有無、創部では表面のぬぐい液か深部検体かを確認します。
グラム染色は菌の形態や染色性、炎症細胞を迅速に確認します。培養・同定は原因微生物の特定、薬剤感受性検査は有効な抗菌薬選択の補助になります。抗原・核酸検査は速い一方、死菌や保菌でも陽性になる検査があります。
陽性結果を受けたら、採取部位、セット数、陽性ボトル数、陽性化までの時間、患者の症状、デバイス、抗菌薬状況をまとめます。培養陽性=感染確定ではなく、定着・保菌・汚染との区別が必要です。
画像・生理・内視鏡検査では、検査前確認と検査後観察までが看護である
この章の要点画像・生理検査は「送り出したら終了」ではありません。検査目的、侵襲、造影剤、鎮静、体位、放射線・磁場などの特徴を理解し、前後の安全確認を行います。
単純X線やCTはX線を使用します。CTは短時間で広い範囲を評価できますが、造影時は過去の造影剤反応、喘息・アレルギー歴、腎機能、関連薬剤、静脈路を確認します。薬剤の休止や投与可否を看護師が一律に判断せず、使用造影剤の電子添文、検査部門・処方医の指示に従います。
MRIは電離放射線を使いませんが、検査室内には常時強い磁場があります。植込み型医療機器、金属クリップ、人工内耳、体内金属、貼付剤、酸素ボンベ、ストレッチャー、はさみなどを確認します。植込み機器は「金属があるから全例不可」ではなく、MR適合条件と撮像条件の確認が必要です。
超音波検査は放射線被ばくがなく、臓器形態、血流、心機能、体液貯留などを評価できます。検査部位によって絶食、蓄尿、体位などの条件が異なります。
内視鏡では、絶食、義歯、抗血栓薬、鎮静薬、アレルギー、呼吸循環状態、帰宅手段を確認します。観察だけか、生検・治療を伴うかで出血リスクが異なります。抗血栓薬は自己判断で中止させず、医と処方医の計画を確認します。
複数の検査を病態パターンとして読む
この章の要点臨床では、ひとつの値より、同じ方向に動く検査と逆方向に動く検査を組み合わせると病態が見えます。パターンと経時変化を患者所見に重ねます。
脱水では、体重減少、口腔乾燥、尿量減少、濃い尿とともに、Ht、TP、Alb、UNなどが濃縮で上昇することがあります。ただし腎不全や出血など別の原因もあるため、輸液量、浮腫、血圧、脈拍を確認します。
急性出血では、頻脈、血圧低下、冷汗、末梢冷感、尿量減少がHb低下より先に現れる場合があります。Hb、Ht、血小板、PT、APTT、乳酸の推移と、創部、ドレーン、便、尿を確認します。
感染・敗血症では、体温、呼吸、循環、意識、尿量を中心に、WBC分画、CRP、PCT、乳酸、血小板、Cr、Bil、凝固、培養を組み合わせます。炎症値が低いだけで重症感染を否定しません。
腎機能悪化では、Cr・eGFRだけでなく、尿量、K、Na、HCO₃⁻、体重、浮腫、呼吸状態を見ます。尿量減少とK上昇、アシドーシス、肺うっ血が重なる場合は、迅速な連携が必要です。
肝細胞障害ではAST・ALTが上がりやすく、胆汁うっ滞ではALP・γGT・Bilが上がりやすくなります。一方、重い肝合成能低下はAlb、PT、血糖、意識、アンモニアなどに現れます。AST・ALTが低下したことだけで回復とは判断しません。
心不全では、呼吸困難、体重増加、浮腫、肺音、頸静脈、SpO₂、尿量に、BNP・NT-proBNP、胸部X線、心エコー、腎機能、Naを組み合わせます。
糖尿病性ケトアシドーシスが疑われる場合は、血糖だけでなく、血中・尿中ケトン、pH、HCO₃⁻、アニオンギャップ、K、脱水、呼吸、意識を確認します。血清Kが正常または高値でも、体内総K量が不足している場合があります。
架空の学習例
患者Aは発熱とCRP上昇がありますが、血圧、意識、尿量は保たれています。感染源と培養結果を確認しつつ推移を追います。
急いで報告するときは、値、症状、経過、採取条件を一緒に伝える
この章の要点報告が必要なのは、施設が定めた緊急報告値だけではありません。新しい症状を伴う異常、短時間の大きな変化、関連検査が同時に悪化している場合は、患者の状態を含めて速やかに共有します。
特に注意する組み合わせには、電解質異常と不整脈・脱力、Naや血糖異常と意識変化、Hb低下と出血・循環変化、血小板・凝固異常と活動性出血、胸痛と心電図・トロポニン変化、呼吸苦とSpO₂・血液ガス悪化、Cr上昇と尿量減少・K上昇、感染徴候と低血圧・意識変化・乳酸上昇などがあります。
報告前に、患者氏名、検査時刻、結果と単位、直前値、基準範囲、検体不良表示を確認します。次にバイタルサイン、意識、呼吸、疼痛、出血、尿量、酸素、輸液、関連薬剤、実施済みの対応を整理します。
報告例は次の順序です。
- 何が起きているか:新しい症状と最重要の検査変化
- 背景:診断、処置、薬剤、酸素、輸液
- 評価:バイタル、関連所見、前回値との差
- 依頼:診察、再検査、モニター、指示確認の必要性
数値を読み上げるだけで終わらず、「患者は今どう見えるか」を伝えます。口頭指示や重要結果は復唱し、誰に何時に報告し、どの指示を受け、再評価でどう変化したかを記録します。全国共通の報告値を独自に作らず、施設の緊急報告基準と診療科の指示を確認します。
患者には「検査は体の一部を映す情報」と説明する
この章の要点患者への説明では、基準範囲を合否のように伝えないことが大切です。「少し外れていますが、この値だけで病気が決まるわけではありません」「以前の値や症状、ほかの検査と合わせて確認します」と説明すると、不要な不安を減らせます。
再検査の理由は、「間違いだったから」ではなく、食事や採血条件の影響を除くため、変化が一時的か持続するかを見るため、治療への反応を確かめるためなど、目的を具体的に伝えます。
検査前には、絶食、飲水、薬剤、蓄尿、検体採取、体位、金属類など、守る必要がある条件と理由を説明します。検査後には、出血、発疹、呼吸苦、強い痛み、意識変化など、知らせてほしい症状を具体的に伝えます。
検査を読む基本は、目的・条件・推移・組み合わせ・患者所見の5点です。数値を暗記するだけでなく、「なぜこの検査を見るのか」「この患者の何が変化したのか」「次に何を確かめるか」を考えることで、検査結果を安全な看護へつなげられます。
学習メモ・復習の予定気づきを自分の言葉で残す+
わかったこと、まだ曖昧なこと、次に調べたいことを残せます。
学びを、もう一度
復習日になると、ホームと復習リストで確認できます。
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詳しい編集方針を見る →参考にした資料
- 日本における主要な臨床検査項目の共用基準範囲―解説と利用の手引き― 2022/10/01版公益社団法人 日本臨床検査標準協議会・2022年表1-1の40項目の共用基準範囲、2章2節の基準範囲の定義、4節の採血条件、10節の基準範囲と臨床判断値の違い。見出し1~8・13に対応。原資料を開く
- 糖尿病診療ガイドライン2024 第1章 糖尿病診断の指針一般社団法人 日本糖尿病学会・2024年糖尿病型の血糖・HbA1c基準、診断手順、HbA1cと血糖が乖離する病態、簡易血糖・CGMを診断に用いない条件。見出し8に対応。原資料を開く
- エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2023 第1章 CKD診断とその臨床的意義一般社団法人 日本腎臓学会・2023年CKDの定義、GFR区分、蛋白尿・アルブミン尿区分、eGFRの限界。見出し5・12に対応。原資料を開く
残り7件の参考資料を見る原資料・発行元・発行年を確認できます+
- CKD診療ガイド2024一般社団法人 日本腎臓学会・2024年第1章のCKD診断基準、尿蛋白・尿アルブミン、尿潜血・尿沈渣の解釈。見出し5・12に対応。原資料を開く
- 日本版敗血症診療ガイドライン2024日本集中治療医学会・日本救急医学会・2024年CQ1-4の血液培養採取、CQ1-6の炎症バイオマーカーの位置づけ、CQ3-1の乳酸を含む組織低灌流評価。見出し7・11・14・16に対応。原資料を開く
- 急性冠症候群ガイドライン(2018年改訂版)一般社団法人 日本循環器学会ほか・2018年心筋トロポニンの99パーセンタイル、経時的な上昇・下降、症状・心電図・画像所見との組み合わせ。見出し10に対応。原資料を開く
- 2025年改訂版 心不全診療ガイドライン一般社団法人 日本循環器学会・一般社団法人 日本心不全学会・2025年