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読む前に押さえたいこと
患者さんとの会話で「競馬が楽しみ」「パチンコに行く」「スマホで賭けている」と聞いたとき、制度の違いをどこまで理解できているでしょうか。日本では賭博は原則として禁止され、個別の法律によって認められる仕組みや、許可を受ける遊技営業が存在します。運営する団体と監督する役所は同じとは限らず、年齢条件も一律ではありません。この記事では、日本の主な賭け事の管轄、パチンコやオンラインカジノ、IRの位置づけを整理します。そのうえで、楽しみとしての意味や生活への負担を尊重して聴き取り、健康、家計、家族関係、退院後の生活を支える看護へつなげます。制度の確認日は2026年10月2日です。
日本では賭博は原則禁止で、認められる仕組みには個別の条件がある
この章の要点日本では、賭博は原則として禁止されています。刑法第185条は賭博を処罰対象とし、第186条には常習賭博などの規定があります。一方、競馬などには実施主体や方法を定める個別の法律があります。まず確認したいのは、賭け事の名前だけでなく、どの法律に基づく仕組みかという点です。[刑法](https://laws.e-gov.go.jp/law/140AC0000000045)
刑法第185条には、その場の一時的な娯楽に使う物を賭けるにとどまる場合の例外があります。しかし、この条文から「少額の現金なら一律に合法」とは判断できません。具体的な適法性は、賭ける物、運営や取引の実態、個別法の適用条件によって変わります。看護職が会話の場で適法・違法を最終判断することは避け、必要な法的相談につなぐ視点を持ちます。
また、法律で認められることと、本人の健康や生活への負担が小さいことは別の問題です。制度の知識は、患者さんが何を利用し、どのような生活上の影響を受けているかを正確に理解するために使います。
開催する団体と管轄する役所は、賭け事の種類ごとに異なる
この章の要点「管轄」を理解するには、実際に開催・発売する運営主体と、許可や監督を担う行政機関を分けます。例えば、中央競馬を開催するのは日本中央競馬会(JRA)であり、農林水産省が競馬を所管します。競輪・オートレースは経済産業省、ボートレースは国土交通省の分野です。[国土交通省の所管説明](https://www.mlit.go.jp/maritime/maritime_tk1_000031.html)、[経済産業省関東経済産業局の説明](https://www.kanto.meti.go.jp/seisaku/keirin_auto/index.html)
所管が分かれている背景には、地方財政や関連産業、公益事業を支えるという、それぞれの制度目的があります。例えば競馬法は馬の改良増殖など、モーターボート競走法は船舶や海事関係の振興などを掲げています。スポーツくじの収益はスポーツ振興などに使われます。ただし、こうした公共的な使途は、購入者の損失や依存の問題が生じないという意味にはなりません。[競馬法](https://laws.e-gov.go.jp/law/323AC0000000158/)、[モーターボート競走法](https://laws.e-gov.go.jp/law/326AC1000000242)、[日本スポーツ振興センターの説明](https://www.jpnsport.go.jp/sinko/Default.aspx?TabId=61)
宝くじでは、銀行等が発売や当せん金支払いの事務を受託する仕組みがあります。販売窓口が銀行であっても、法律上の発売主体は法定の自治体です。この区別は、見慣れた企業名やサイト名だけで制度を判断しないために役立ちます。[当せん金付証票法第4・6条](https://laws.e-gov.go.jp/law/323AC0000000144)
中央競馬
- 法律上の開催・発売・営業の主体
- JRA
- 主な所管・許可・監督
- 農林水産省
- 根拠法
- 競馬法
地方競馬
- 法律上の開催・発売・営業の主体
- 都道府県・法律上指定された市町村などの地方公共団体
- 主な所管・許可・監督
- 農林水産省。指定市町村の競馬には都道府県知事の監督もある
- 根拠法
- 競馬法
競輪
- 法律上の開催・発売・営業の主体
- 都道府県・総務大臣が指定する市町村
- 主な所管・許可・監督
- 経済産業省・経済産業局
- 根拠法
- [自転車競技法](https://laws.e-gov.go.jp/law/323AC1000000209)
オートレース
- 法律上の開催・発売・営業の主体
- 都道府県・競走場のある市町村など、法律で認められた地方公共団体
- 主な所管・許可・監督
- 経済産業省・経済産業局
- 根拠法
- [小型自動車競走法](https://laws.e-gov.go.jp/law/325AC1000000208)
ボートレース
- 法律上の開催・発売・営業の主体
- 都道府県・総務大臣が指定する市町村
- 主な所管・許可・監督
- 国土交通省
- 根拠法
- モーターボート競走法
宝くじ
- 法律上の開催・発売・営業の主体
- 都道府県・指定都市など法定の発売団体
- 主な所管・許可・監督
- 総務大臣が発売を許可
- 根拠法
- 当せん金付証票法
スポーツくじ
- 法律上の開催・発売・営業の主体
- 独立行政法人日本スポーツ振興センター(JSC)
- 主な所管・許可・監督
- 文部科学省
- 根拠法
- [スポーツ振興投票の実施等に関する法律](https://laws.e-gov.go.jp/law/410AC1000000063)
パチンコ・パチスロ
- 法律上の開催・発売・営業の主体
- 許可を受けた民間の営業者
- 主な所管・許可・監督
- 都道府県公安委員会が営業を許可。警察職員による立入り等の規定がある
- 根拠法
- [風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律](https://laws.e-gov.go.jp/law/323AC0000000122)
IR内のカジノ
- 法律上の開催・発売・営業の主体
- 法定の認定・免許等を受ける民間事業者
- 主な所管・許可・監督
- 区域整備計画は国土交通大臣が認定。カジノ事業はカジノ管理委員会が免許・監督
- 根拠法
- [特定複合観光施設区域整備法](https://laws.e-gov.go.jp/law/430AC0000000080)
| 種類 | 法律上の開催・発売・営業の主体 | 主な所管・許可・監督 | 根拠法 |
|---|---|---|---|
| 中央競馬 | JRA | 農林水産省 | 競馬法 |
| 地方競馬 | 都道府県・法律上指定された市町村などの地方公共団体 | 農林水産省。指定市町村の競馬には都道府県知事の監督もある | 競馬法 |
| 競輪 | 都道府県・総務大臣が指定する市町村 | 経済産業省・経済産業局 | [自転車競技法](https://laws.e-gov.go.jp/law/323AC1000000209) |
| オートレース | 都道府県・競走場のある市町村など、法律で認められた地方公共団体 | 経済産業省・経済産業局 | [小型自動車競走法](https://laws.e-gov.go.jp/law/325AC1000000208) |
| ボートレース | 都道府県・総務大臣が指定する市町村 | 国土交通省 | モーターボート競走法 |
| 宝くじ | 都道府県・指定都市など法定の発売団体 | 総務大臣が発売を許可 | 当せん金付証票法 |
| スポーツくじ | 独立行政法人日本スポーツ振興センター(JSC) | 文部科学省 | [スポーツ振興投票の実施等に関する法律](https://laws.e-gov.go.jp/law/410AC1000000063) |
| パチンコ・パチスロ | 許可を受けた民間の営業者 | 都道府県公安委員会が営業を許可。警察職員による立入り等の規定がある | [風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律](https://laws.e-gov.go.jp/law/323AC0000000122) |
| IR内のカジノ | 法定の認定・免許等を受ける民間事業者 | 区域整備計画は国土交通大臣が認定。カジノ事業はカジノ管理委員会が免許・監督 | [特定複合観光施設区域整備法](https://laws.e-gov.go.jp/law/430AC0000000080) |
パチンコは公営競技ではなく、許可を受ける遊技営業
この章の要点パチンコ・パチスロは、自治体などが投票券を発売する公営競技とは制度が異なります。風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律、通称「風営法」に基づく遊技営業です。この法律の「風俗営業」は、パチンコ店なども含む行政上の区分です。店舗ごとに都道府県公安委員会の許可を受ける必要があり、警察職員の立入りについても規定があります。[風営法第2・3・37条](https://laws.e-gov.go.jp/law/323AC0000000122)
賞品の扱いにも条件があります。風営法第23条は、店が現金や有価証券を賞品として出すことと、客に提供した賞品をその店が買い戻すことを禁止しています。政府は2016年の答弁で、風営法の規制内で適切に行われるパチンコ営業は賭博罪に当たらないという考えを示しています。[風営法第23条](https://laws.e-gov.go.jp/law/323AC0000000122)、[政府答弁書](https://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_shitsumon.nsf/html/shitsumon/b192157.htm)
店以外の第三者による賞品の買取りについても、政府答弁には条件があります。第三者が店と実質的に同一であれば、風営法違反や賭博罪に当たる場合があるという説明です。「別の場所で買い取れば、どのような実態でも合法」と言い換えることはできません。
看護では、法的な区分を確認しつつ、使う時間やお金、やめようとしたときの困難、生活への影響を聴きます。遊技として営業が認められていることだけで、健康面の心配を取り除くことはできません。
海外で認められたオンラインカジノでも、日本国内からの賭博は違法
この章の要点警察庁は、海外で合法的に運営されているオンラインカジノであっても、日本国内から接続して賭博をすることは犯罪と説明しています。海外のライセンス、外国企業の運営、日本語の案内、アプリが入手できることは、日本国内で賭博をしてよい根拠にはなりません。[警察庁の説明](https://www.npa.go.jp/bureau/safetylife/hoan/onlinecasino/onlinecasino.html)
賭博罪は50万円以下の罰金または科料(罰金より少額の金銭刑)、常習賭博罪は3年以下の拘禁刑(刑事施設に拘禁する刑罰)です。これは利用者にも関わる規定です。個別の犯罪成立や処分は事実関係によって判断されます。[刑法第185・186条](https://laws.e-gov.go.jp/law/140AC0000000045)
さらに、2025年9月25日施行の改正ギャンブル等依存症対策基本法では、国内の不特定の人に向けた違法オンライン賭博のサイト・アプリの提示や、そこへ誘導する情報の発信が禁止されました。利用者の賭博が、この改正から初めて違法になったわけではありません。[同法第9条の2](https://laws.e-gov.go.jp/law/430AC1000000074)、[警察庁の改正説明](https://www.npa.go.jp/bureau/safetylife/hoan/onlinecasino/onlinecasino.html)
一方、公営競技などの法定の仕組みに沿ったインターネット購入もあります。「スマホを使うかどうか」だけで適法性は分かりません。患者さんが「スマホで賭けている」と話したときは、何を利用しているか、どんな取引かを本人の説明から確認します。違法な利用への対応と、健康・生活の困りごとへの支援をともに考えます。
IRの制度は、一般のカジノやオンライン賭博を認めるものではない
この章の要点IRは、国際会議場や宿泊施設などとカジノを一体的に整備・運営する特定複合観光施設です。法律には、自治体と民間事業者が共同で区域整備計画を作成し、国土交通大臣に認定を申請する仕組みがあります。カジノを営業するには、さらにカジノ管理委員会の免許などが必要です。[IR整備法第2・9・39条](https://laws.e-gov.go.jp/law/430AC0000000080)
免許の審査では、事業を適切に行う能力や財産的基礎、関係者の社会的信用などが確認されます。刑法の賭博罪等が適用されないのも、同法が定める免許・施設・行為などの条件を満たす範囲です。区域整備計画が認定されたことだけで、カジノを自由に営業できるわけではありません。[カジノ管理委員会の免許説明](https://www.jcrc.go.jp/policy/regulatory/casino_licence.html)、[IR整備法第39条](https://laws.e-gov.go.jp/law/430AC0000000080)
カジノ行為は、同じ施設内に設置された機器や用具を使うものとして規定されています。この制度を根拠に、日本国内から海外のオンラインカジノを利用できるとは説明できません。[カジノ事業活動の規制](https://www.jcrc.go.jp/policy/regulatory/casino.html)
大阪・夢洲の区域整備計画は2023年4月14日に認定され、2025年4月24日にIR建設工事が始まったことが大阪府から公表されています。2026年7月31日更新の進捗資料も整備の経過を示しています。認定や工事着手という事実と、開業・営業開始という事実は分けて読む必要があります。[大阪府の進捗資料](https://www.pref.osaka.lg.jp/o080020/irs-suishin/ir_sintyoku/index.html)
年齢条件は、投票券の購入と施設への入場を分けて確認する
この章の要点年齢条件は賭け事の種類で異なります。投票券の「譲受」は、他人から受け取ることです。競馬、競輪、オートレース、ボートレースは20歳未満の投票券の購入・譲受が禁止されています。スポーツくじは19歳未満の購入・譲受が禁止され、パチンコ店は18歳未満の客の入場が禁止されています。購入条件と入場条件を混同しないことが大切です。
年齢を満たせばすべての人が購入できるという意味でもありません。競技やスポーツくじには、選手や運営関係者などに対する購入制限があります。具体的な対象は制度ごとの条文で確認します。
宝くじは、購入経路の条件を確認する必要があります。例えば、宝くじ公式サイトの会員規約は20歳未満の入会を認めていません。この規約を、そのまま全売り場・全購入経路に共通する法律上の年齢条件として説明しないようにします。
競馬
- 確認した年齢条件
- 20歳未満は禁止
- 条件の対象・根拠
- 投票券の購入・譲受。[競馬法第28条](https://laws.e-gov.go.jp/law/323AC0000000158/)
競輪
- 確認した年齢条件
- 20歳未満は禁止
- 条件の対象・根拠
- 車券の購入・譲受。[自転車競技法第9条](https://laws.e-gov.go.jp/law/323AC1000000209)
オートレース
- 確認した年齢条件
- 20歳未満は禁止
- 条件の対象・根拠
- 勝車投票券の購入・譲受。[小型自動車競走法第13条](https://laws.e-gov.go.jp/law/325AC1000000208)
ボートレース
- 確認した年齢条件
- 20歳未満は禁止
- 条件の対象・根拠
- 舟券の購入・譲受。[モーターボート競走法第12条](https://laws.e-gov.go.jp/law/326AC1000000242)
スポーツくじ
- 確認した年齢条件
- 19歳未満は禁止
- 条件の対象・根拠
- 購入・譲受。[スポーツ振興投票法第9条](https://laws.e-gov.go.jp/law/410AC1000000063)
パチンコ・パチスロ
- 確認した年齢条件
- 18歳未満の客は入場禁止
- 条件の対象・根拠
- 営業所への入場。[風営法第22条](https://laws.e-gov.go.jp/law/323AC0000000122)
IRのカジノ
- 確認した年齢条件
- 20歳未満は入場・滞在禁止
- 条件の対象・根拠
- カジノ施設への入場・滞在。IR全体の入場条件とは区別。[カジノ管理委員会の説明](https://www.jcrc.go.jp/policy/regulatory/casino.html)
宝くじ公式サイト
- 確認した年齢条件
- 会員は20歳以上
- 条件の対象・根拠
- このサイトの会員制度の条件。[宝くじ会員規約第2条](https://www.takarakuji-official.jp/member-terms.html)
| 種類 | 確認した年齢条件 | 条件の対象・根拠 |
|---|---|---|
| 競馬 | 20歳未満は禁止 | 投票券の購入・譲受。[競馬法第28条](https://laws.e-gov.go.jp/law/323AC0000000158/) |
| 競輪 | 20歳未満は禁止 | 車券の購入・譲受。[自転車競技法第9条](https://laws.e-gov.go.jp/law/323AC1000000209) |
| オートレース | 20歳未満は禁止 | 勝車投票券の購入・譲受。[小型自動車競走法第13条](https://laws.e-gov.go.jp/law/325AC1000000208) |
| ボートレース | 20歳未満は禁止 | 舟券の購入・譲受。[モーターボート競走法第12条](https://laws.e-gov.go.jp/law/326AC1000000242) |
| スポーツくじ | 19歳未満は禁止 | 購入・譲受。[スポーツ振興投票法第9条](https://laws.e-gov.go.jp/law/410AC1000000063) |
| パチンコ・パチスロ | 18歳未満の客は入場禁止 | 営業所への入場。[風営法第22条](https://laws.e-gov.go.jp/law/323AC0000000122) |
| IRのカジノ | 20歳未満は入場・滞在禁止 | カジノ施設への入場・滞在。IR全体の入場条件とは区別。[カジノ管理委員会の説明](https://www.jcrc.go.jp/policy/regulatory/casino.html) |
| 宝くじ公式サイト | 会員は20歳以上 | このサイトの会員制度の条件。[宝くじ会員規約第2条](https://www.takarakuji-official.jp/member-terms.html) |
依存症対策は、事業の監督とは別に国・自治体・医療福祉が連携する
この章の要点依存症対策は、競馬やパチンコなどの所管機関だけで完結する仕組みではありません。ギャンブル等依存症対策基本法は、国と地方公共団体の責務、関連事業者の取組、医療・相談・社会復帰支援、関係機関の連携を定めています。国には内閣のギャンブル等依存症対策推進本部が置かれ、その事務を内閣官房が担います。[同法第5~7・16~20・24・34条](https://laws.e-gov.go.jp/law/430AC1000000074)
医療や回復支援に関する情報は厚生労働省、地域の相談は保健所・精神保健福祉センター・依存症相談拠点などが入口になります。借金や消費者問題、法的な問題も含めて支えるため、医療と生活支援の連携が必要になります。[厚生労働省の相談機関案内](https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000070789.html)
2025年4月には、同年3月21日閣議決定の基本計画を踏まえ、地域の包括的な連携体制への参画を求める通知が金融庁・消費者庁から出されています。添付の厚生労働省通知は、司法書士会や教育委員会などとの連携も求めています。これは行政が発出した方針・要請であり、全国の連携体制が同じ水準で完成したことを示す資料ではありません。[2025年の連携通知](https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_policy/caution/caution_012/assets/consumer_policy_cms104_250512_01.pdf)
看護職には、本人の健康問題と生活問題を結びつけ、本人の希望を踏まえて必要な担当者につなぐ役割があります。相談先を考えるときは、「その事業を監督する役所」と「本人や家族の困りごとを相談する機関」を分けて案内します。
依存症を考えるときは、賭けた額だけでなく制御の困難と生活への影響を見る
この章の要点賭け事をしているという事実だけで、依存症とは判断できません。着目するのは、やめたり減らしたりしようとしても難しいこと、賭け事を優先して健康や生活に支障が生じていることです。行動を制御する困難と、本人・家族の困りごとを合わせて捉えます。[厚生労働省の依存症解説](https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000149274.html)
人は普段、楽しみや安心を求めながら、睡眠、食事、仕事、人間関係などの優先順位を調整して暮らしています。依存の状態では、報酬への期待や行動の繰り返しが、この調整を難しくすることがあります。単に「意志が弱い」と理解すると、本人への非難が先行し、相談の機会を失いやすくなります。
負けを取り戻そうと繰り返す、使う金額が増える、借金や物の売却で資金を作る、といった行動は、詳しく生活への影響を確認する手がかりになります。ただし、どれか一つの行動や一定の支出額だけを、診断の基準にすることはできません。[久里浜医療センターのPGSI解説・質問内容](https://kurihama.hosp.go.jp/hospital/screening/pgsi.html)
基本法でいう「ギャンブル等依存症」は、法令に基づく公営競技、パチンコ等の遊技、その他の射幸行為(偶然の結果による利益を期待する行為)へののめり込みによって、日常生活や社会生活に支障が生じる状態という政策上の定義です。この定義と、医療での診断を同一視しないようにします。[基本法第2条](https://laws.e-gov.go.jp/law/430AC1000000074)
PGSI日本語版は、一般住民の疫学調査で使うために開発された自記式のスクリーニング、つまり問題の可能性を拾い上げる質問票です。9問について過去12か月を振り返ります。回答結果だけで診断や緊急性は確定せず、現在の状態や生活歴を含む専門的な評価が必要です。「12か月続くまで相談を待つ」という意味でもありません。[PGSI日本語版](https://kurihama.hosp.go.jp/hospital/screening/pgsi.html)、[医療機関での評価の例](https://kurihama.hosp.go.jp/hospital/section/gamble.html)
会話は許可を取って始め、本人が大切にしたい生活を聴く
この章の要点賭け事についての会話は、本人が話してよいと感じる関係と場を整えて始めます。賭け事が楽しみ、交流、気分転換としてどのような意味を持つかを聴くことは、その人の価値観や希望の理解につながります。困りごとがある場合も、話さない選択や沈黙を尊重しながら対話します。看護職の倫理綱領は、信頼関係、本人の価値観と意思決定、秘密の保持、安全への配慮を示しています。[日本看護協会「看護職の倫理綱領」](https://www.nurse.or.jp/nursing/assets/statistics_publication/publication/rinri/code_of_ethics.pdf)
以下は、架空の学習用会話例です。実在する患者の発言ではありません。
- 許可を取る:「普段の楽しみや、お金の心配について少し伺ってもよいですか。今は話したくないことは、無理にお話ししなくて大丈夫です」
- 開かれた質問をする:「賭け事は、ご自身の生活の中でどんな時間になっていますか。最近、変わったことはありますか」
- 気持ちを受け止める:本人が「負けを取り戻したくて、生活費が心配」と話したら、「生活費のことが気になって、不安が続いているのですね」
- 理解を確認する:「お金の心配が頭から離れず、眠りにも影響している、という理解で合っていますか」
- ケアにつなぐ:「今、一番守りたい生活はどんなことですか。眠りのことと生活費の相談を、担当者と一緒に考えてみませんか」
質問を続けることに負担がある場合は、間を置き、相談できる機会を伝えます。同室者などに聞こえる場で金銭や家族の詳しい話を進めないようにします。家族との情報共有も、誰に何を伝えるかを本人と確認し、同意や意向、安全確保の必要性を踏まえてチームで判断します。
会話から得たいのは、賭け事の種類だけではありません。楽しみとしての意味、変化した時期、生活への影響、支えになる人、本人が望む暮らしを理解し、説明や意思決定支援、退院後の支援に結びつけます。
観察では普段との違いを捉え、安全と生活の変化を具体的に伝える
この章の要点観察は、普段との違いと経時変化を軸に行います。本人の話と実際の生活状況を組み合わせ、賭け事との関連を決めつけずに整理します。依存に伴って睡眠や食事、仕事、家計、人間関係が損なわれることがあるため、金銭の話だけで健康上の評価を終えないようにします。[厚生労働省の生活への影響の解説](https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000149274.html)
睡眠では、いつから眠れなくなったか、夜間の利用やお金の心配と時間的に重なるか、日中の活動にどう響いているかを確認します。食事では、食欲の低下だけでなく、食費の不足や生活時間の乱れも聴きます。睡眠・食事の変化は心身の不調にも関わるため、気分の落ち込みや他の病気の状態と合わせて考えます。
通院や療養への影響も具体化します。受診できない、薬を受け取れないなどの話があれば、その理由が費用、時間、気力、移動などのどこにあるかを確認します。家計では借金の額だけでなく、食事、住まい、医療といった生活の土台が保てているかを捉え、支援担当者へつなぐ材料にします。これは、依存症の診断を看護職だけで確定するための観察ではありません。
担当医や看護責任者、医療ソーシャルワーカーなどへ伝える際は、「いつから何が変わったか」「本人が何と言っているか」「どの生活・療養上の支障があるか」「本人は何を希望しているか」を分けます。支援後は、睡眠、食事、受診の継続、生活費の見通し、不安、相談先への接続がどう変わったかを本人と再確認します。これらは、生活への影響と協働の原則を踏まえた一般的な看護の整理です。[看護職の倫理綱領](https://www.nurse.or.jp/nursing/assets/statistics_publication/publication/rinri/code_of_ethics.pdf)
「消えてしまいたい」などの発言、強い絶望感や急な行動の変化があるときは、自分を傷つける考えや死にたい気持ちについて、落ち着いて明確に尋ねます。死にたい気持ちや自傷の考えが分かった場合は、計画の有無にかかわらず担当医・看護責任者と速やかに共有して安全を評価します。具体的な計画・準備や差し迫った危険が疑われる場合は、ひとりにしないことを含めて安全を確保し、担当医・看護責任者へ直ちに共有して評価と対応につなげます。計画がないという返答だけで安全と断定せず、その時点の言動や生活状況も伝えます。[厚生労働省「こころの耳」のTALKの原則・警告サイン](https://kokoro.mhlw.go.jp/mental-health-pro-topics/mh-pro-topics003/)
回復支援は、治療と家計・家族・退院後の生活を合わせて考える
この章の要点依存症は、適切な治療とその後の支援によって回復を目指せる疾患です。支援では、賭け事に関する行動だけでなく、本人の健康、家族の負担、住まい、就労、経済的な問題も扱います。[厚生労働省の依存症対策](https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000070789.html)
治療の一例として、公的医療機関では認知行動療法を用いたプログラムが行われています。認知行動療法は、問題につながる考え方と行動を整理し、別の対応を身につける心理的な治療です。併存する精神疾患への治療や、生活支援も本人の状態に応じて検討されます。施設の実施例から、全員に同じ検査、薬、入院期間、回数が必要とは説明できません。[久里浜医療センターの診療案内](https://kurihama.hosp.go.jp/hospital/section/gamble.html)
相談先は、困りごとに応じて選びます。本人が受診や相談に踏み出せない場合にも、家族は保健所や精神保健福祉センターなどに相談できます。家族自身の疲労や不安、経済的な負担を支援の対象に含めます。地域の相談事業や受付方法には違いがあるため、予約、居住地、対象者などを確かめます。[厚生労働省の相談機関案内](https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000070789.html)
退院支援では、本人が守りたい生活を確認し、次の相談先、予約や連絡の方法、受診に必要な費用・交通、困ったときに連絡する相手を具体化します。借金の問題は医療だけでは解決しないため、医療ソーシャルワーカーなどと相談し、法律・多重債務の相談につなぎます。医療と消費者・法的支援を結ぶ方向は、基本法と地域連携通知にも示されています。[基本法第17・20条](https://laws.e-gov.go.jp/law/430AC1000000074)、[地域連携通知](https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_policy/caution/caution_012/assets/consumer_policy_cms104_250512_01.pdf)
公営競技などには、本人や家族の申請による利用制限の取組もあります。利用する制度の条件を確認し、専門的な支援と合わせて考えます。利用制限があることを、それだけで治療や生活再建が完了するという意味にしないようにします。[ボートレースの依存症対策](https://www.mlit.go.jp/maritime/maritime_tk1_000031.html)
やめたくても難しい、心身や療養に支障がある
- 相談の入口
- 担当医、依存症に対応する医療機関、地域の依存症相談拠点
- つなぐ際に確認すること
- 現在の安全、受診の希望、紹介・予約の方法
本人や家族がどう対応すればよいか分からない
- 相談の入口
- 保健所、精神保健福祉センター
- つなぐ際に確認すること
- 居住地域の窓口、家族相談の受付、相談方法
借金や生活費、住まいに問題がある
- 相談の入口
- 院内の支援担当者、消費生活・多重債務の窓口、法テラスなどの法的相談先
- つなぐ際に確認すること
- 生活の切迫度、扱える相談内容、費用・利用条件
当事者同士、家族同士で支え合いたい
- 相談の入口
- 当事者の自助グループ、家族会・家族の自助グループ
- つなぐ際に確認すること
- 本人・家族の希望、地域の開催状況、参加方法
| 主な困りごと | 相談の入口 | つなぐ際に確認すること |
|---|---|---|
| やめたくても難しい、心身や療養に支障がある | 担当医、依存症に対応する医療機関、地域の依存症相談拠点 | 現在の安全、受診の希望、紹介・予約の方法 |
| 本人や家族がどう対応すればよいか分からない | 保健所、精神保健福祉センター | 居住地域の窓口、家族相談の受付、相談方法 |
| 借金や生活費、住まいに問題がある | 院内の支援担当者、消費生活・多重債務の窓口、法テラスなどの法的相談先 | 生活の切迫度、扱える相談内容、費用・利用条件 |
| 当事者同士、家族同士で支え合いたい | 当事者の自助グループ、家族会・家族の自助グループ | 本人・家族の希望、地域の開催状況、参加方法 |
次に確認する公式資料は、制度と相談先の順に読む
この章の要点制度を確かめたいときは、まず見出し2・6の根拠法と行政機関の説明を読み、何が認められ、誰にどの条件が適用されるかを確認します。オンラインカジノについては警察庁、IRについてはカジノ管理委員会と大阪府の資料が入口になります。原資料の適用範囲と確認日を押さえると、制度の変更や計画の進捗を読み分けやすくなります。
患者さんや家族への支援を深めるときは、[厚生労働省「依存症対策」](https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000070789.html)の相談機関・医療機関の案内から地域の公式情報へ進みます。質問票を学ぶ場合は、見出し8のPGSIの目的と限界を先に確認します。
制度と資料の確認日:2026年10月2日(日本時間)。ここで挙げた相談先の種類と、実際の地域の受付時間・利用条件は分けて確認してください。
学習メモ・復習の予定気づきを自分の言葉で残す+
わかったこと、まだ曖昧なこと、次に調べたいことを残せます。
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復習日になると、ホームと復習リストで確認できます。
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この記事の編集方針
主要な定義・数値・推奨は、公開時点で確認できるガイドライン、公的資料、学会資料、査読論文を優先して確認しています。未確認の編集メモは公開せず、根拠の範囲や限界を区別して、読者が原資料を確認できるよう参考資料を掲載します。
詳しい編集方針を見る →参考にした資料
- 刑法日本国(e-Gov法令検索)・20252026年5月21日施行版の第12・17・185・186条を確認。拘禁刑・科料の説明、賭博罪、常習賭博罪、一時の娯楽に供する物の例外。見出し1・4。原資料を開く
- 競馬法日本国(e-Gov法令検索)・20222025年6月1日施行版の第1条、第1条の2、第28条と監督規定を確認。開催主体、制度目的、20歳未満の購入・譲受禁止。見出し2・6。原資料を開く
- モーターボート競走(ボートレース)国土交通省冒頭の所管説明、ボートレース事業、ギャンブル等依存症対策の各項を確認。公営競技の所管、自治体による開催、収益の使途、利用制限。見出し2・11。原資料を開く
残り23件の参考資料を見る原資料・発行元・発行年を確認できます+
- 競輪・オートレース経済産業省関東経済産業局・20232023年7月28日更新。本文の所管・施行者、地方財政への貢献、JKAへの交付金を確認。見出し2。原資料を開く
- 当せん金付証票法日本国(e-Gov法令検索)・20222025年6月1日施行版の第1・4・6条を確認。地方財政上の目的、法定の発売団体、総務大臣の許可、銀行等への事務委託。見出し2。原資料を開く
- スポーツ振興投票の実施等に関する法律日本国(e-Gov法令検索)・20222025年6月1日施行版の第3・9・10条、文部科学大臣の関与規定を確認。JSCによる実施、19歳未満の購入・譲受禁止、関係者の制限。見出し2・6。原資料を開く
- スポーツ振興くじってなに?(成り立ち・運営体制)独立行政法人日本スポーツ振興センタースポーツくじの成り立ち・運営体制・収益の扱いを確認。JSCとスポーツ振興の関係。見出し2。原資料を開く
- 風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律日本国(e-Gov法令検索)・20252025年11月28日施行版の第2条第1項第4号、第3・22・23・37条を確認。ぱちんこ屋の許可、警察職員の立入り、18歳未満の客の入場禁止、現金等の賞品と自店賞品買戻しの禁止。未施行改正と区別。見出し2・3・6。