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読む前に押さえたいこと
「ニューロパチー=手足がしびれる病気」と覚えていると、臨床では重要な変化を見落とします。ニューロパチーは末梢神経障害の総称で、感覚神経だけでなく運動神経や自律神経も障害されるため、疼痛、感覚低下、筋力低下、転倒、起立時のふらつきなど症状は多様です。また糖尿病のように緩徐に進むものから、ギラン・バレー症候群のように短期間で呼吸や嚥下に関わる状態まで経過も異なります。この記事では、末梢神経の仕組みから原因、症状の読み方、検査、治療、看護観察、緊急報告につながる変化まで順番に整理します。
ニューロパチーとは「末梢神経が障害された状態」の総称
この章の要点ニューロパチー(neuropathy)とは、一つの特定疾患の名前ではなく、末梢神経障害を広く表す言葉です。脳と脊髄そのものではなく、そこから身体へ伸びる末梢神経が障害されることで、しびれ、疼痛、感覚低下、筋力低下などが生じます。
日本神経学会もニューロパチーを末梢神経障害として扱っており、免疫性、糖尿病・栄養欠乏などの代謝性、遺伝性、薬剤性、中毒性など多くの原因を挙げています。つまり「ニューロパチー」という言葉だけでは原因は分かりません。どの神経が、どのような分布で、どの程度の速さで障害されているかを確認し、原因を絞っていく必要があります。
臨床では「ニューロパチーあり」という情報を見ただけで「しびれがある患者」と考えないことが重要です。感覚だけでなく、運動や自律神経の障害がないかまで見る必要があります。
末梢神経には感覚・運動・自律神経があり、障害される機能によって症状が変わる
この章の要点ニューロパチーの症状が多彩なのは、末梢神経が一つの役割だけを担っているわけではないからです。大きくみると、感覚神経・運動神経・自律神経の3つの機能を考えると理解しやすくなります。
感覚神経は、触れた感覚、痛み、温度、振動、関節の位置などを中枢へ伝えます。ここが障害されると「ピリピリする」「焼けるように痛い」といった異常感覚が起こる一方、進行すると「触られても分かりにくい」「熱さに気づかない」という感覚低下も起こります。
運動神経は筋肉へ収縮の指令を送ります。障害されれば筋力低下や筋萎縮につながり、足関節を上げにくくなる、つまずく、階段を上りにくい、物を落とすといったADL上の変化として現れます。
自律神経は血圧調節、発汗、消化管運動などにも関与します。そのため一部のニューロパチーでは、起立時の血圧低下、発汗異常、便秘・下痢なども生じます。糖尿病性神経障害について、日本糖尿病学会も感覚・自律神経・運動機能の障害が複合して現れると説明しています。
神経の「軸索」と「髄鞘」のどこが障害されるかで病態は異なる
この章の要点末梢神経障害を理解するうえでは、神経の本体に相当する軸索と、その周囲を覆って信号伝達を助ける髄鞘を分けて考えることが役立ちます。
軸索は、神経細胞から長く伸びた電気信号の通り道です。軸索そのものが障害される「軸索障害型」では、神経線維の機能や本数が失われ、感覚低下や筋力低下などにつながります。
一方、髄鞘は神経の周囲を覆い、電気信号を効率よく伝えるために重要です。髄鞘が障害される「脱髄型」では、神経の信号が遅くなったり、途中で伝わりにくくなったりします。
実際のニューロパチーでは、この2つが完全に分かれるとは限りません。GBSには脱髄性タイプだけでなく軸索性タイプが含まれ、CIDPでは脱髄性末梢神経障害が中心になります。したがって「ニューロパチー」という診断名だけではなく、障害様式まで確認すると病態を理解しやすくなります。
原因は糖尿病だけではない―免疫・栄養・遺伝・薬剤など幅広く考える
この章の要点ニューロパチーには非常に多くの原因があります。そのため「しびれがあるから糖尿病性神経障害」と原因を決めつけることはできません。
日本神経学会は、ニューロパチーを起こす代表的な原因として、炎症性・自己免疫性、膠原病性、腫瘍性・傍腫瘍性、感染性、代謝性・栄養欠乏性、遺伝性、薬剤性、中毒性などを挙げています。糖尿病、尿毒症、ビタミン欠乏、アルコール関連、GBS、CIDP、血管炎、Charcot-Marie-Tooth病、アミロイドーシス、抗がん薬など、病態は大きく異なります。
代謝性
- 代表例
- 糖尿病、尿毒症
- 臨床で確認したい情報
- 糖尿病歴、腎機能、経過
栄養・アルコール関連
- 代表例
- ビタミン欠乏など
- 臨床で確認したい情報
- 食事、体重変化、飲酒歴
免疫性
- 代表例
- GBS、CIDP
- 臨床で確認したい情報
- 発症速度、感染後、筋力低下
膠原病・血管炎
- 代表例
- 血管炎性ニューロパチーなど
- 臨床で確認したい情報
- 痛み、左右差、全身症状
遺伝性
- 代表例
- CMTなど
- 臨床で確認したい情報
- 若年発症、家族歴、足部変形
薬剤性
- 代表例
- 一部の抗がん薬など
- 臨床で確認したい情報
- 新規薬剤、累積治療歴、症状出現時期
中毒性
- 代表例
- 一部の重金属・有機溶剤など
- 臨床で確認したい情報
- 職業・曝露歴
| 原因群 | 代表例 | 臨床で確認したい情報 |
|---|---|---|
| 代謝性 | 糖尿病、尿毒症 | 糖尿病歴、腎機能、経過 |
| 栄養・アルコール関連 | ビタミン欠乏など | 食事、体重変化、飲酒歴 |
| 免疫性 | GBS、CIDP | 発症速度、感染後、筋力低下 |
| 膠原病・血管炎 | 血管炎性ニューロパチーなど | 痛み、左右差、全身症状 |
| 遺伝性 | CMTなど | 若年発症、家族歴、足部変形 |
| 薬剤性 | 一部の抗がん薬など | 新規薬剤、累積治療歴、症状出現時期 |
| 中毒性 | 一部の重金属・有機溶剤など | 職業・曝露歴 |
感覚障害は「しびれる」だけでなく、痛みが増える症状と感覚を失う症状の両方がある
この章の要点感覚神経障害では、異常な感覚が増える症状と、反対に感覚が低下する症状の両方が起こります。ここを分けて聞くことが重要です。
「ピリピリする」「ジンジンする」「電気が走る」「焼けるように痛い」「軽く触れただけでも痛い」といった症状は、感覚信号が異常に発生・処理されることで起こります。
一方で「触っても分かりにくい」「足裏の感覚が鈍い」「熱いものに気づきにくい」といった陰性症状では、患者自身が障害に気づいていないことがあります。日本糖尿病学会のDPNマニュアルでも、疼痛・しびれなどの陽性症状だけでなく、知覚鈍麻は本人が自覚していない場合があるため注意が必要とされています。
看護では「しびれはありますか」だけで終えず、痛み、感覚低下、温度感覚、左右差、範囲の広がりなどを具体的に確認します。
感覚低下が強ければ、疼痛が少ないから軽症とは限りません。傷や熱傷、靴ずれなどに気づかず組織障害が進むことがあるため、皮膚観察と組み合わせて評価します。
運動神経障害では、筋力低下が転倒やADL低下として現れる
この章の要点運動神経が障害されると、筋力低下や筋萎縮が生じます。ただし患者が最初から「筋力が低下した」と表現するとは限りません。
臨床では、「最近つまずく」「スリッパが脱げる」「階段を上れない」「椅子から立ち上がりにくい」「ペットボトルを開けにくい」「箸を落とす」といった生活上の変化として現れることがあります。
看護師はMMTだけでなく、立ち上がり、移乗、歩行、足の上がり方、物品操作など実際の動作を見ることが重要です。昨日まで自立歩行していた患者が急に介助を必要とするようになれば、単に「ADL低下」と記録するのではなく、神経症状の進行を疑う必要があります。
筋力低下が急速に上行する場合や、上肢・顔面・嚥下・呼吸へ広がる場合は、後述するGBSなど緊急性の高い病態も考えます。
自律神経障害では血圧・発汗・消化管症状まで確認する
この章の要点末梢神経障害は手足の感覚だけの問題ではありません。自律神経障害を伴うニューロパチーでは、循環・発汗・消化管などにも症状が現れます。
糖尿病性神経障害では、起立性低血圧、発汗異常、頑固な便秘・下痢、胃運動障害などが代表的な自律神経症状として挙げられています。
看護では、臥位の血圧が正常だから問題ないとは判断できません。離床時のめまい、ふらつき、失神前症状と血圧・脈拍の変化を合わせて確認します。
便秘・下痢についても「消化器症状」と独立して処理するのではなく、糖尿病性神経障害など背景によっては自律神経障害との関連を考える必要があります。ただし、便秘や血圧低下には薬剤、脱水、感染症など他の原因も多いため、単独症状からニューロパチーと断定しないことが重要です。
症状の「分布」と「進み方」は原因を絞る重要な手掛かりになる
この章の要点ニューロパチーでは、症状の強さだけでなく「どこから始まり、左右対称か、どのくらいの速さで広がったか」を確認することが重要です。
長い神経線維から障害されるタイプでは、まず足趾や足底など身体の遠位部から症状が始まり、進行するとより近位へ広がります。糖尿病性多発神経障害では、下肢遠位優位かつ左右対称の感覚症状が特徴的です。日本糖尿病学会は、片側だけの症状の場合には他疾患も考慮する必要があるとしています。
一方、左右非対称で神経ごとに症状が異なる場合には、単一神経障害、多発単ニューロパチー、圧迫性神経障害、血管炎など、別のパターンを考えます。
さらに発症速度も重要です。数年かけて徐々に進む状態と、数日で歩行困難になる状態は同じ「ニューロパチー」でも緊急度がまったく異なります。
両足先から左右対称に徐々に広がる
- 考え方の例
- 長さ依存性多発ニューロパチーを考える
一つの神経領域だけ
- 考え方の例
- 単ニューロパチー・圧迫などを考える
左右非対称で複数神経
- 考え方の例
- 血管炎なども鑑別
数日〜数週で筋力低下が進む
- 考え方の例
- 急性免疫性ニューロパチーなどを考慮
慢性的・再発性に筋力低下が進む
- 考え方の例
- CIDPなども鑑別
| パターン | 考え方の例 |
|---|---|
| 両足先から左右対称に徐々に広がる | 長さ依存性多発ニューロパチーを考える |
| 一つの神経領域だけ | 単ニューロパチー・圧迫などを考える |
| 左右非対称で複数神経 | 血管炎なども鑑別 |
| 数日〜数週で筋力低下が進む | 急性免疫性ニューロパチーなどを考慮 |
| 慢性的・再発性に筋力低下が進む | CIDPなども鑑別 |
糖尿病性多発神経障害では、症状がなくても神経障害が進んでいることがある
この章の要点糖尿病性多発神経障害(DPN)では、無症状でも神経障害が存在する可能性があります。そのため「患者がしびれを訴えていない=神経障害なし」とは判断できません。
日本糖尿病学会の2025年マニュアルでは、DPNは初期に無症状であることが多く、進行に伴って感覚、自律神経、運動機能の異常が複合して現れるとされています。下肢遠位の左右対称性疼痛・しびれ・異常感覚に加えて、アキレス腱反射や振動覚などが評価されます。
同資料が掲載する糖尿病性多発神経障害の簡易診断基準では、前提として「糖尿病が存在すること」と「糖尿病以外の末梢神経障害を否定し得ること」が置かれています。そのうえで、自覚症状、両側アキレス腱反射低下・消失、両側内踝振動覚低下などを組み合わせます。
ここで大切なのは、これはすべてのニューロパチーに共通する診断基準ではなく、糖尿病性多発神経障害を評価するための基準だということです。
看護では足趾・足底の感覚だけでなく、皮膚の傷、発赤、胼胝、靴ずれなどを確認します。感覚低下がある患者は、小さな外傷を自覚しにくいためです。
急速な筋力低下ではGBS、慢性的な進行・再発ではCIDPも考える
この章の要点ニューロパチーの中には、単なる慢性的なしびれとして扱ってはいけない免疫性疾患があります。代表がギラン・バレー症候群(GBS)とCIDPです。
日本神経学会の「ギラン・バレー症候群,フィッシャー症候群診療ガイドライン2024」では、GBSは多くの場合、感染などの先行イベントを伴い、両側性の弛緩性運動麻痺と腱反射消失を特徴とする急性発症の免疫介在性多発ニューロパチーとされています。一般に発症後4週間以内にピークへ達する単相性の経過をとります。
重要なのは、GBSでは四肢筋力だけを見ればよいわけではないことです。症状が進行すると嚥下や呼吸に関わる機能まで障害される可能性があり、急速に進む筋力低下は緊急評価につながります。
一方、CIDPは慢性的・再発性に進行する免疫性脱髄性ニューロパチーです。四肢の筋力低下や感覚障害などを呈します。日本神経学会では2024年にCIDP/MMN診療ガイドラインを公開しています。
「しびれ+筋力低下」という組み合わせだけで両者を区別するのではなく、発症からの時間経過が非常に重要です。
検査では「ニューロパチーの存在」だけでなく、障害部位・タイプ・原因を調べる
この章の要点ニューロパチーの診断は、一つの血液検査だけではできません。問診、神経診察、神経伝導検査、血液検査などを組み合わせて評価します。
まず問診では、発症時期、症状の範囲、左右差、進行速度、糖尿病・腎疾患・自己免疫疾患などの背景、薬剤歴、感染症、栄養状態、飲酒歴、家族歴などを確認します。
身体診察では、触覚や痛覚、振動覚、筋力、筋萎縮、深部腱反射、歩行などを評価します。
神経伝導検査では末梢神経に電気刺激を加え、信号がどの程度伝わるかを調べます。伝導速度、振幅、潜時などを評価し、障害の存在やタイプを判断する材料にします。糖尿病性神経障害の評価でも神経伝導検査は定量的評価として位置づけられています。
血液検査は「ニューロパチーの値」を測る検査ではなく、背景となる原因を探す目的で行われます。患者の状況によって糖代謝、腎機能、栄養関連、免疫関連など評価内容が変わります。
GBSやCIDPなどでは、臨床症状と神経伝導検査に加え、脳脊髄液検査などが診断を補助する場合があります。
重要なのは、一つの検査だけで診断を確定・否定しないことです。症状の分布や時間経過と検査結果を合わせて解釈します。
治療は「ニューロパチーを一括して治す」のではなく、原因治療と症状管理を組み合わせる
この章の要点ニューロパチーに共通する一つの治療薬があるわけではありません。基本は、原因への治療と、疼痛・筋力低下・ADL障害などへの対症的な介入を組み合わせることです。
糖尿病性神経障害であれば糖尿病管理が重要です。免疫性ニューロパチーでは疾患によって免疫治療が検討されます。薬剤性であれば原因薬剤との関連を評価し、治療継続・減量・変更などを主治医が原疾患治療とのバランスをみて判断します。患者や看護師が自己判断で薬剤を中止するものではありません。
疼痛が強い場合には神経障害性疼痛に対する薬物療法が検討されますが、薬剤選択は年齢、腎機能、併用薬、副作用、疼痛の原因などで変わります。日本ペインクリニック学会では2026年に神経障害性疼痛薬物療法ガイドライン改訂第3版が発行されていますが、今回の調査では本文全体を確認できなかったため、本記事では個別薬剤の推奨順位を掲載していません。
リハビリテーション、歩行補助具、装具、転倒予防、皮膚保護なども機能維持と安全確保に重要です。
つまり治療目標は「しびれを消す」だけではなく、原因疾患を管理しながら、神経機能・ADL・安全性・QOLを守ることです。
看護では「感覚・筋力・自律神経・ADL」を経時的に組み合わせて見る
この章の要点ニューロパチー患者の看護で最も重要なのは、一回の観察結果だけでなく、前回からどう変化したかを見ることです。
感覚については、しびれ・疼痛の有無だけでなく、範囲、左右差、強さ、感覚低下を確認します。「昨日は足趾だけだったしびれが、今日は膝付近まで広がった」という変化は重要です。
筋力については、上下肢の動きだけでなく、歩行、立ち上がり、移乗、食事動作などを見ると変化を捉えやすくなります。「歩ける/歩けない」だけでなく、介助量が増えていないかを確認します。
深部腱反射は診断評価の一部ですが、看護師が施設の役割を超えて独自に診断するものではありません。既に評価されている場合は、反射低下と筋力低下など神経所見の組み合わせを理解しておくことが重要です。
自律神経については、血圧・脈拍だけでなく、離床時のめまい・ふらつき、発汗、排便状態などを観察します。
さらに感覚低下がある患者では、皮膚障害も重要です。足底、踵、趾間などを確認し、発赤、傷、熱傷、靴ずれなどがないか見ます。
感覚
- 何を見るか
- しびれ、疼痛、感覚低下、範囲
- なぜ見るか
- 神経障害の進行を捉える
筋力
- 何を見るか
- 上下肢、立位、歩行、握力・巧緻動作
- なぜ見るか
- 運動神経障害とADLへの影響を見る
呼吸
- 何を見るか
- 呼吸数、呼吸困難感、会話、咳嗽
- なぜ見るか
- 急性免疫性ニューロパチーなどの進行を捉える
嚥下・発声
- 何を見るか
- むせ、飲み込みにくさ、声の変化
- なぜ見るか
- 脳神経・球機能への進展を捉える
循環
- 何を見るか
- BP、HR、体位変換時症状
- なぜ見るか
- 自律神経障害を捉える
歩行
- 何を見るか
- つまずき、ふらつき、介助量
- なぜ見るか
- 転倒リスクと筋力変化を見る
皮膚
- 何を見るか
- 足底、踵、趾、外傷
- なぜ見るか
- 感覚低下による損傷を早期発見する
ADL
- 何を見るか
- 食事、更衣、移乗、排泄
- なぜ見るか
- 小さな機能低下を経時的に把握する
| 観察 | 何を見るか | なぜ見るか |
|---|---|---|
| 感覚 | しびれ、疼痛、感覚低下、範囲 | 神経障害の進行を捉える |
| 筋力 | 上下肢、立位、歩行、握力・巧緻動作 | 運動神経障害とADLへの影響を見る |
| 呼吸 | 呼吸数、呼吸困難感、会話、咳嗽 | 急性免疫性ニューロパチーなどの進行を捉える |
| 嚥下・発声 | むせ、飲み込みにくさ、声の変化 | 脳神経・球機能への進展を捉える |
| 循環 | BP、HR、体位変換時症状 | 自律神経障害を捉える |
| 歩行 | つまずき、ふらつき、介助量 | 転倒リスクと筋力変化を見る |
| 皮膚 | 足底、踵、趾、外傷 | 感覚低下による損傷を早期発見する |
| ADL | 食事、更衣、移乗、排泄 | 小さな機能低下を経時的に把握する |
急速な筋力低下、呼吸・嚥下障害は「いつものしびれ」として経過観察しない
この章の要点ニューロパチー患者で最も注意したいのは、症状が短時間で進行している場合です。特に急速な筋力低下に呼吸・嚥下などの異常が加われば、速やかな医療評価が必要です。
日本神経学会のGBSガイドラインでは、GBSは急性に発症する免疫介在性多発ニューロパチーで、四肢の運動麻痺が進行します。
次のような変化は、単に「末梢神経障害あり」と記録して終えず、速やかに担当医・上級者へ共有すべき重要情報です。
- 数時間〜数日単位で筋力低下が進んでいる
- 歩けていた患者が急に立てない、歩行困難になった
- 上肢や顔面まで筋力低下が広がる
- 新たな飲み込みにくさ、むせ、声の変化がある
- 呼吸困難感、咳を十分に出せないなど呼吸機能低下を疑う
- 急激な血圧・脈拍変動など全身状態の変化を伴う
報告では「ニューロパチーがあります」だけでは情報不足です。「いつから」「どの部位が」「どの程度」「どの速度で変化したか」「呼吸・嚥下・歩行への影響」「バイタルサイン」を合わせます。
また、突然の片麻痺、構音障害、意識障害などがあれば、ニューロパチーだけで説明せず、脳卒中など中枢神経疾患も考える必要があります。
転倒・熱傷・足病変を防ぐには、患者自身が「感覚低下」に気づける説明が重要
この章の要点患者への説明では、「しびれがひどくなったら教えてください」だけでは不十分です。ニューロパチーでは、むしろ感覚が鈍くなること自体が症状だからです。
「痛みがない=傷がないとは限らない」「足裏を毎日確認する」「熱源へ直接触れない」「合わない靴による圧迫や靴ずれに注意する」など、患者が実際の生活で確認できる形にします。
筋力低下や感覚低下がある場合は、転倒予防のために履物、室内環境、歩行補助具なども確認します。「自分では歩けると思う」という患者でも、足関節の背屈が弱くなれば小さな段差でつまずきやすくなります。
薬剤治療中に新しく手足のしびれ、疼痛、感覚低下、筋力低下などが出現した場合には、自己判断で薬を中止せず、医療者へ症状を伝えるよう説明します。厚生労働省・PMDAも、薬剤性末梢神経障害では初期症状へ早く気づき、医師・薬剤師へ相談する重要性を示しています。
「しびれ=ニューロパチー」「痛くない=軽い」という理解は正しくない
この章の要点ニューロパチーを理解するときに避けたい誤解がいくつかあります。
まず、しびれだけでは診断できません。頸椎・腰椎疾患、脳・脊髄疾患、局所的な神経圧迫などでも似た症状が生じます。症状の分布、筋力、反射、発症速度などを合わせて考える必要があります。
反対に「痛みがないから軽症」とも限りません。感覚神経が障害されて知覚が低下すると、痛みそのものを感じにくくなる場合があります。糖尿病性神経障害では、患者自身が知覚低下に気づいていないこともあるとされています。
また、「糖尿病患者のしびれ=糖尿病性ニューロパチー」と決めつけることもできません。日本糖尿病学会の簡易診断基準でも、糖尿病があることだけでなく、他の末梢神経障害を否定し得ることが前提とされています。
看護師に求められるのは原因を一人で診断することではなく、患者の症状を正確に言語化し、分布・時間経過・機能変化を捉え、必要な診察や検査につながる情報を共有することです。
ニューロパチーは「どの神経機能が、どこから、どの速さで変化したか」で捉える
この章の要点ニューロパチーを臨床で理解するポイントは、感覚・運動・自律神経の3方向と、「分布」「左右差」「発症速度」をセットで見ることです。
しびれや疼痛だけを追うと、筋力低下、自律神経障害、無自覚の感覚低下を見逃す可能性があります。反対に、末梢神経障害という診断名だけで全ての症状を説明しようとすると、脳卒中や脊髄疾患など別の病態を見逃す可能性があります。
看護では、
「どこがしびれるか」
「感覚は低下していないか」
「昨日より力が入らなくなっていないか」
「歩行やADLは変わったか」
「呼吸・嚥下へ症状が広がっていないか」
という順に考えると、ニューロパチーを単なる症状名ではなく、変化する神経障害として捉えやすくなります。
特に短期間で進行する筋力低下は、慢性的なしびれとは緊急性が異なります。ニューロパチーでは病名だけを見るのではなく、「今、この患者の神経機能がどの方向へ変化しているか」を継続して評価することが重要です。
学習メモ・復習の予定気づきを自分の言葉で残す+
わかったこと、まだ曖昧なこと、次に調べたいことを残せます。
学びを、もう一度
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次に見返す日を決める
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- (疾患・用語編)免疫性ニューロパチー一般社団法人 日本神経学会・公開ページ上で発行年の明示を確認できずニューロパチーが末梢神経障害であること、免疫性ニューロパチーの病態、代表的検査。見出し1、4、11に対応。原資料を開く
- (疾患・用語編)代謝性・遺伝性ニューロパチーなど一般社団法人 日本神経学会・公開ページ上で発行年の明示を確認できず免疫性、膠原病性、腫瘍性、感染性、代謝性・栄養欠乏性、遺伝性、薬剤性、中毒性などニューロパチーの主な原因。見出し1、4に対応。原資料を開く
- 糖尿病性神経障害の評価・診断マニュアル一般社団法人 日本糖尿病学会・2025年糖尿病性多発神経障害の特徴、感覚・運動・自律神経症状、簡易診断基準、アキレス腱反射、振動覚、神経伝導検査など。特にp.3〜6を確認。見出し2、5、7〜9、11、13、16に対応。原資料を開く
残り3件の参考資料を見る原資料・発行元・発行年を確認できます+
- ギラン・バレー症候群,フィッシャー症候群診療ガイドライン2024監修:一般社団法人 日本神経学会・2024年GBSが急性発症の免疫介在性多発ニューロパチーであり、両側性弛緩性運動麻痺、腱反射消失などを呈すること、一般に発症後4週間以内にピークへ達する経過など。第1章「疾患概念」を原文確認。見出し3、10、14に対応。原資料を開く
- 慢性炎症性脱髄性多発根ニューロパチー,多巣性運動ニューロパチー診療ガイドライン2024監修:一般社団法人 日本神経学会・2024年CIDP・MMNなど免疫性ニューロパチーの疾患概念、脱髄性末梢神経障害、鑑別と電気生理学的評価に関する記載を確認。見出し3、10、11、12に対応。原資料を開く
- 重篤副作用疾患別対応マニュアル 末梢神経障害厚生労働省/独立行政法人 医薬品医療機器総合機構(PMDA公開)・2009年(2022年2月時点修正)薬剤による末梢神経障害で注意するしびれ、疼痛、感覚低下、筋力低下、つまずき、物をつかみにくいなどの症状と早期発見の考え方。見出し4、13、15に対応。原資料を開く