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目次この記事でわかること13項目+
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読む前に押さえたいこと
インタビューをコード化し、似た内容をカテゴリーにまとめても、「ここからどう図にすればよいのか」「矢印は何を根拠に引くのか」と迷いやすいものです。質的研究の図は、見栄えよく配置した要約ではありません。研究参加者の語りや観察記録から、どの概念が、どの状況で、どのように関係するのかを示す分析結果です。この記事では、概念枠組みの役割を整理し、問いからコード、カテゴリー、関係、結果図へ進む考え方を、架空の看護研究例で説明します。図の確かさを点検する方法、倫理、報告時の限界まで順に押さえます。
概念枠組みのイメージ化は、分析結果を「関係の地図」にすること
この章の要点結論からいうと、質的研究のイメージ化とは、研究で明らかにした概念とその関係を、第三者がたどれる図として表すことです。ここでいう概念は、複数の具体的な経験に共通する意味を、研究目的に沿って抽象化したものです。単語を丸で囲み、線で結ぶだけでは概念枠組みになりません。
日本看護科学学会は、看護研究を、看護現象に関する疑問に科学的方法で答える系統的な探究と位置づけています。研究の枠組みは、目的と方法をつなぎ、何をどの範囲で説明するかを明らかにする役割を持ちます。したがって、結果図も「研究の問いに何と答えたか」を中心に据えます。
図に最低限必要なのは、中心となる現象、それを構成する概念、概念間の関係、関係が成り立つ条件や文脈、図の読み方です。図にできない細かな意味や例外は本文で補います。図は本文の代用品ではなく、複雑な説明の見取り図です。
なお、「イメージ化」は質的研究全般で統一された方法名ではありません。本記事では、概念枠組み・概念モデル・結果図などを視覚的に表す作業という意味で用います。
最初に、事前の理論・分析の枠・結果のモデルを区別する
この章の要点同じ「枠組み」という語でも、研究の前に置く地図と、分析に使う整理棚と、研究後に得た地図は別物です。いつ作ったかと何を根拠にしたかを分けると、混乱が減ります。
理論的枠組みは、既存の理論を研究を見るレンズとして使うものです。概念枠組みは、先行研究や既存概念を研究目的に合わせて結び、調べる範囲を示す場合があります。分析枠組みは、データを整理するコードやカテゴリーの体系です。結果としての概念モデルは、今回のデータから導いた概念と関係を表します。
質的研究で理論を使う時期は一様ではありません。最初から既存理論を用いて質問・収集・分析を方向づける研究もあれば、データから帰納的に概念を作り、分析後に既存理論と対話させる研究もあります。重要なのは、理論を使った事実を後付けで装わず、どの段階で何に影響したかを明記することです。
事前の枠組みは焦点を明確にする一方、枠外の語りを見落とす危険があります。「既存枠に当てはまらないデータ」を残す欄を設け、枠組みを修正できるようにします。概念枠組みは答えを固定する型ではなく、問いとデータの往復を助ける仮の地図でもあります。
理論的枠組み
- 主な根拠
- 既存理論
- 主に使う時期
- 計画時から、または分析後
- 図で示すもの
- 理論上の概念と見方
- 注意点
- 使った段階と影響を明示する
事前の概念枠組み
- 主な根拠
- 先行研究・既存概念・研究目的
- 主に使う時期
- 計画時
- 図で示すもの
- 調べる概念と想定される関係
- 注意点
- データを枠へ無理に押し込まない
分析枠組み
- 主な根拠
- 研究目的とデータ
- 主に使う時期
- 分析中
- 図で示すもの
- コード、カテゴリー、整理軸
- 注意点
- 分析の道具であり、完成した結論とは限らない
結果の概念モデル
- 主な根拠
- 今回の分析結果
- 主に使う時期
- 分析後
- 図で示すもの
- 概念、条件、過程、関係、帰結
- 注意点
- 対象と文脈を超えて一般化しない
| 種類 | 主な根拠 | 主に使う時期 | 図で示すもの | 注意点 |
|---|---|---|---|---|
| 理論的枠組み | 既存理論 | 計画時から、または分析後 | 理論上の概念と見方 | 使った段階と影響を明示する |
| 事前の概念枠組み | 先行研究・既存概念・研究目的 | 計画時 | 調べる概念と想定される関係 | データを枠へ無理に押し込まない |
| 分析枠組み | 研究目的とデータ | 分析中 | コード、カテゴリー、整理軸 | 分析の道具であり、完成した結論とは限らない |
| 結果の概念モデル | 今回の分析結果 | 分析後 | 概念、条件、過程、関係、帰結 | 対象と文脈を超えて一般化しない |
研究方法によって、適切な結果図の形は変わる
この章の要点すべての質的研究が、箱と矢印のプロセス図を目指すわけではありません。研究目的と方法論が、どこまで抽象化し、何を成果として示すかを決めます。
たとえば、経験の特徴を整理する質的記述研究では、カテゴリーと文脈の対応表が適することがあります。テーマ分析では、データ全体に通じる意味のパターンとテーマ同士の関係をテーママップで表せます。グラウンデッド・セオリーでは、行為や相互作用が生じる条件、過程、帰結を結ぶモデルが研究目的に合う場合があります。一方、現象学では、生きられた経験の意味や構造を記述することが中心で、直線的な流れ図にすると経験の重なりを損なうことがあります。
エスノグラフィーでは、文化的実践、規範、場、関係者の配置が重要です。事例研究では、事例の境界と文脈を保った図が必要です。Framework Methodは、事例を行、コードを列に置くマトリクスで事例内・事例間を比較しやすくしますが、このマトリクス自体が必ず最終モデルになるわけではありません。
したがって、「質的研究だからコード→サブカテゴリー→カテゴリー→テーマの順」と固定しないことが大切です。カテゴリーとテーマの呼び方や階層は方法論により異なります。採用した方法の原典に従い、研究内で各語を定義します。
質的記述・内容分析
- 図に向きやすい表現
- 分類表、カテゴリーの配置図
- 図にしにくいものをどう補うか
- 代表的なデータと文脈を本文で示す
テーマ分析
- 図に向きやすい表現
- テーママップ、中心テーマと下位テーマ
- 図にしにくいものをどう補うか
- 各テーマの共有された意味を文章で定義する
グラウンデッド・セオリー
- 図に向きやすい表現
- 条件―行為/相互作用―帰結などの過程図
- 図にしにくいものをどう補うか
- 比較と理論生成の手続きを説明する
現象学
- 図に向きやすい表現
- 意味の構造、重なりや循環を示す図
- 図にしにくいものをどう補うか
- 経験の厚みを記述と引用で保つ
エスノグラフィー
- 図に向きやすい表現
- 人・場・規範・実践の関係図
- 図にしにくいものをどう補うか
- 文化と観察場面の説明を添える
事例研究
- 図に向きやすい表現
- 事例の境界、文脈、出来事の関係図
- 図にしにくいものをどう補うか
- 事例固有性と比較範囲を明記する
| 研究の狙い・方法の例 | 図に向きやすい表現 | 図にしにくいものをどう補うか |
|---|---|---|
| 質的記述・内容分析 | 分類表、カテゴリーの配置図 | 代表的なデータと文脈を本文で示す |
| テーマ分析 | テーママップ、中心テーマと下位テーマ | 各テーマの共有された意味を文章で定義する |
| グラウンデッド・セオリー | 条件―行為/相互作用―帰結などの過程図 | 比較と理論生成の手続きを説明する |
| 現象学 | 意味の構造、重なりや循環を示す図 | 経験の厚みを記述と引用で保つ |
| エスノグラフィー | 人・場・規範・実践の関係図 | 文化と観察場面の説明を添える |
| 事例研究 | 事例の境界、文脈、出来事の関係図 | 事例固有性と比較範囲を明記する |
コード、カテゴリー、テーマは抽象度と役割が異なる
この章の要点結果図を作る前に、元データからの距離を意識します。コードは、発言や観察記録の一部に付ける意味のラベルです。カテゴリーは、共通点や関連性のあるコードをまとめた概念的なまとまりです。テーマは、複数のカテゴリーやデータ全体を横断し、研究の問いに対して何を意味するのかを表す解釈的な主張として用いられることがあります。
ただし、この用語法は絶対ではありません。方法論によってはカテゴリーが最終成果になり、カテゴリーとテーマをほぼ同じ意味で使う場合もあります。名称ではなく、「この段階で何をまとめ、どの程度解釈したか」を定義してください。
分析では、まずデータ全体を読み、発言の前後、誰がどの場面で語ったか、観察状況をつかみます。そのうえで意味のまとまりを取り出し、コードを付けます。似たコードだけでなく、異なるコード、反対の事例、同じ人の中の揺れも比べます。頻繁に出た語だけが重要とは限りません。研究目的に深く関係する少数の経験や、既存の説明を揺さぶる例外も分析対象です。
コードをまとめるときは、「何について同じか」「何が違うか」「どの条件で変わるか」を分析メモに残します。このメモが、カテゴリー名と矢印の根拠になります。ソフトウェアはデータの保存・検索・整理を助けますが、意味を決め、関係を解釈するのは研究者です。
問いから結果図へは、データと図を往復しながら進む
この章の要点図は分析の最後に一度だけ描くものではありません。仮図を描いて元データへ戻る反復によって、概念の重なりや根拠のない線が見つかります。次の7段階は、複数の質的分析に応用できる一例です。採用する方法論の手順がある場合は、そちらを優先します。
- 研究の問いと分析単位を一文で書く。誰の、どの場面の、何の経験・行為・意味を説明するのかを限定する。
- 音声、逐語録、観察記録、研究者メモを読み、全体像と文脈をつかむ。気になる箇所だけを切り出さない。
- 意味のまとまりへコードを付ける。コード名、元データの位置、参加者、場面を対応させる。
- 事例内と事例間で比較し、コードをカテゴリーへまとめる。合わないデータは消さず、例外欄へ置く。
- 「前後」「条件」「相互作用」「促進・阻害」「包含」などの関係候補を分析メモとマトリクスで検討する。
- 複数の仮図を描く。概念名、線、矢印、囲み、配置が何を意味するか凡例を付ける。
- 図の各要素を元データへ戻って点検し、説明できない要素を削除・修正する。本文、表、図の用語をそろえる。
図を先にきれいに仕上げると、後からデータを図へ合わせやすくなります。初期案は手書きでも構いません。重要なのは、図の各要素に「どのデータと比較から導いたか」を結び付けることです。
矢印を引く前に、関係の種類と根拠を言葉にする
この章の要点矢印は「なんとなく関連する」を表す記号ではありません。矢印の意味を一文で説明できないなら、その線はまだ分析途中です。
「Aの後にBが語られた」は時間的順序です。「AのときBが起こりやすい」は条件付きのパターンです。「Aを受けてBを行った」は参加者が語る行為のつながりです。これらはすべて「AがBを原因として生じさせた」という因果関係とは異なります。面接で参加者が因果として説明していても、それはまず参加者の認識として扱い、研究者が客観的因果を証明したとはしません。
双方向の矢印は相互作用、実線の囲みは一つの上位概念、点線は仮説的な関係など、記号のルールを凡例で示します。ただし、点線なら根拠がなくてよいわけではありません。検討中の関係は結果として断定せず、必要なら考察の仮説へ移します。
関係の根拠は、同じ参加者の連続した語り、複数事例での共通パターン、観察記録との符合、反対事例を含む比較などから検討します。単に二つのコードが多く出た、同じページにあったというだけでは、関係を十分に説明できません。
時間的順序
- 確認する問い
- Aの前後に何が起きたと語られたか
- 避けたい読み替え
- 順番だけで因果とする
条件・文脈
- 確認する問い
- どの状況で関係が現れ、現れないか
- 避けたい読み替え
- すべての場面へ一般化する
行為・対応
- 確認する問い
- 何を受け、誰が何をしたか
- 避けたい読み替え
- 意図と実際の効果を同一視する
促進・阻害
- 確認する問い
- 参加者は何が進め、何が妨げたと捉えたか
- 避けたい読み替え
- 効果量が示されたとみなす
相互作用
- 確認する問い
- AとBはどう影響し合うと解釈したか
- 避けたい読み替え
- 向きや時間を曖昧にする
包含・階層
- 確認する問い
- 下位概念は上位概念のどの側面か
- 避けたい読み替え
- 単なる同義語を階層化する
| 図で示す関係 | 確認する問い | 避けたい読み替え |
|---|---|---|
| 時間的順序 | Aの前後に何が起きたと語られたか | 順番だけで因果とする |
| 条件・文脈 | どの状況で関係が現れ、現れないか | すべての場面へ一般化する |
| 行為・対応 | 何を受け、誰が何をしたか | 意図と実際の効果を同一視する |
| 促進・阻害 | 参加者は何が進め、何が妨げたと捉えたか | 効果量が示されたとみなす |
| 相互作用 | AとBはどう影響し合うと解釈したか | 向きや時間を曖昧にする |
| 包含・階層 | 下位概念は上位概念のどの側面か | 単なる同義語を階層化する |
架空例で、語りから「報告へ進む過程」の仮図を作る
この章の要点以下は作り方を示すための架空の学習例です。実在する患者、看護師、施設のデータではなく、医学的な報告基準を示すものでもありません。
研究の問いを「病棟へ配属された看護師は、患者の変化に気づいてから先輩看護師へ報告するまでを、どのように経験しているか」とします。架空の語りには、「いつもと違うと感じたが、自分の判断だけで電話してよいか迷った」「近くの先輩に確認すると、報告する根拠を言葉にできた」「伝える順番をメモすると電話できた」が含まれていたとします。
ここから、「普段との差への気づき」「判断への迷い」「同僚との確認」「報告根拠の言語化」「伝達内容の整理」「報告行動」というコードを付けます。比較すると、「変化を捉える」「報告の妥当性を確かめる」「伝える準備をする」「報告へ進む」というカテゴリー候補ができます。
仮図は、「変化を捉える」から「報告の妥当性を確かめる」へ進み、「同僚との確認」がその過程を支え、「伝える準備をする」と組み合わさって「報告へ進む」へ至る、と表せます。ただし、この図を採用する前に、同僚へ確認せず報告した例、準備しても報告できなかった例、報告後に再び迷った例を探します。
反対事例が見つかれば、一直線の段階図ではなく、行き戻りのある循環図が適切かもしれません。あるいは「先輩との関係」「業務の切迫」「患者の変化の明確さ」が条件として必要かもしれません。このように、例外が図を育てるのであって、図に合わないデータを除くのではありません。
この架空例から臨床の報告手順や患者対応を決めることはできません。実際の臨床では、患者の状態、緊急性、施設の連絡体制、看護師の権限と役割に従います。研究結果図は、まず経験の理解や教育上の仮説を示すものです。
いつもと違うと感じた
- コード
- 普段との差への気づき
- カテゴリー候補
- 変化を捉える
- 関係を検討するメモ
- 「いつも」は何との比較か
自分の判断だけでよいか迷った
- コード
- 判断への迷い
- カテゴリー候補
- 報告の妥当性を確かめる
- 関係を検討するメモ
- 何が迷いを強めるか
先輩に確認すると根拠を言葉にできた
- コード
- 同僚との確認/根拠の言語化
- カテゴリー候補
- 妥当性を確かめる
- 関係を検討するメモ
- 確認が常に必要か、反対例はあるか
伝える順番をメモすると電話できた
- コード
- 伝達内容の整理/報告行動
- カテゴリー候補
- 伝える準備/報告へ進む
- 関係を検討するメモ
- 準備と行動の時間的・意味的関係は何か
| 架空のデータ断片 | コード | カテゴリー候補 | 関係を検討するメモ |
|---|---|---|---|
| いつもと違うと感じた | 普段との差への気づき | 変化を捉える | 「いつも」は何との比較か |
| 自分の判断だけでよいか迷った | 判断への迷い | 報告の妥当性を確かめる | 何が迷いを強めるか |
| 先輩に確認すると根拠を言葉にできた | 同僚との確認/根拠の言語化 | 妥当性を確かめる | 確認が常に必要か、反対例はあるか |
| 伝える順番をメモすると電話できた | 伝達内容の整理/報告行動 | 伝える準備/報告へ進む | 準備と行動の時間的・意味的関係は何か |
図の確かさは、元データへの追跡と別解の検討で高める
この章の要点質的な結果図の質は、線の美しさではなく、分析の透明性と解釈の一貫性で判断します。第三者が「なぜこの概念名なのか」「なぜこの矢印なのか」を、元データと分析記録へたどれるようにします。
まず、参加者ID、データの位置、意味単位、コード、カテゴリー、関係メモ、反対事例を対応させた分析表を残します。次に、研究の問い、対象、収集法、分析法、図の主張がそろっているかを確認します。図では中心過程を主張しているのに、収集した質問が感想だけを尋ねていたなら、データと結論がずれています。
研究者の臨床経験や立場は、気づきを深める一方、見たいものだけを見る可能性も生みます。研究者が対象者とどのような関係にあり、何を当然と考えていたか、分析中に解釈がどう変わったかを再帰的メモに残します。
複数研究者の検討、参加者への確認、異なるデータ源の照合は役立つ場合がありますが、すべての研究に機械的に必須ではありません。複数人の一致率だけで解釈の質が決まるわけではなく、参加者確認も唯一の正解を認定する手続ではありません。採用した方法論と研究目的に照らし、なぜその方法を使ったか、意見の違いをどう扱ったかを説明します。
COREQは面接・フォーカスグループ研究について、研究チームと再帰性、研究デザイン、分析と報告を含む32項目を示します。SRQRは質的研究全般の報告を対象とする21項目です。これらは研究を自動的に「良質」にする採点表ではなく、読者が過程を評価できるよう報告漏れを点検する道具です。
引用と図からの再特定を防ぎ、研究計画と同意の範囲を守る
この章の要点質的データは、氏名を消しても、職種、病棟、まれな出来事、語り方の組み合わせから個人や施設が推測されることがあります。図の簡潔さだけで匿名性が保証されるわけではありません。
人を対象とする生命科学・医学系研究に関する倫理指針は、適用対象となる研究について、研究対象者の福利を科学的・社会的成果より優先し、科学的合理性、倫理審査、十分な説明と自由意思による同意、個人情報の適切な管理、研究の質と透明性などを基本方針に掲げています。面接で心的外傷に触れる質問は、内容によって精神的負担になり得ます。
ただし、すべての看護研究へ同じ手続が一律に当てはまるとは限りません。研究目的、扱う情報、所属機関、教育活動か研究かなどにより適用判断が変わるため、研究開始前に研究責任者、倫理審査委員会、所属機関の規程を確認します。倫理審査が必要かどうかを研究者だけで便宜的に決めないことが重要です。
結果図を作るときも、直接引用を図へ詰め込まず、引用の必要性と再特定リスクを検討します。録音、逐語録、対応表、分析ファイル、共同作業環境、生成AIを含む外部サービスの利用は、研究計画、同意内容、機関の情報管理規程、契約上のデータ取扱いに従います。承認されていない環境へ、識別可能な逐語録を入力してはいけません。自動生成されたコードや図案は分析結果そのものではなく、研究者が元データと方法論に照らして検証する必要があります。
結果図には、作り方・凡例・データの裏付け・限界を添える
この章の要点図だけを見せても、読者は分析の妥当性を評価できません。図に至った経路を方法と結果で説明します。
方法には、研究デザイン、対象と選定理由、場と期間、データ収集法、研究者と参加者の関係、録音・逐語化の方法、分析単位、コードから概念や関係を作った手順、理論の使用時期、複数研究者や参加者確認を行った場合の方法を記載します。使用ソフト名だけで分析法を代用しません。
結果では、各概念を短く定義し、代表的なデータを示し、概念間の関係を文章で説明します。図には、図題、中心現象、対象となる文脈、矢印・線・囲みの凡例を付けます。例外や対立する語りが重要なら、本文または図中で位置づけます。概念数が多すぎる場合は、中心図と詳細表を分け、図の可読性とデータの厚みを両立させます。
考察では、先行研究や既存理論との一致だけでなく、新しく見えた点、説明できない点、別の解釈、研究者の立場による影響、対象と場の限界を述べます。面接・フォーカスグループならCOREQ、質的研究全般ならSRQRを、投稿先の規定と併せて早い段階から参照すると、報告漏れを見つけやすくなります。
結果図は臨床判断の命令ではなく、現象を考えるための手がかり
この章の要点一つの質的研究から得た概念モデルは、対象となった人、場、時期、研究者との相互作用の中で作られた解釈です。普遍的な因果法則や、そのまま適用できる看護手順ではありません。
看護での価値は、数値だけでは捉えにくい経験、判断の揺れ、関係性、文脈、変化の過程を見える形にできることです。教育では、どの段階で学習者が迷うかを話し合う地図になります。実践では、自部署にも似た現象があるかを振り返る視点になります。次の研究では、モデルの概念を洗練し、別の対象や場で確かめたり、測定可能な仮説へ発展させたりできます。
一方で、対象が異なる場へ移すときは、患者特性、看護提供体制、文化、役割分担、研究時期を比較します。「図が分かりやすいから正しい」「多くの参加者が語ったから全員に当てはまる」とは判断しません。臨床への応用では、質的研究の結果だけでなく、安全性、他の研究、専門職の判断、患者の価値観、施設の体制を合わせて検討します。
概念枠組みで起こりやすい6つの誤解をほどく
この章の要点第一の誤解は、「似たコードをまとめれば図が完成する」です。分類だけでは、概念がどのように関係するかを説明できません。比較と解釈が必要です。
第二は、「矢印は因果関係を示す」です。時間、条件、相互作用、参加者の認識など、実際に分析した関係へ言い換えます。
第三は、「頻度が高いテーマほど重要」です。質的研究では、頻度だけで重要性を決めません。問いとの関係、意味の深さ、文脈、例外を見ます。
第四は、「既存理論を使うと帰納的研究ではない」です。理論の使い方には、事前のレンズ、感受概念、分析後の解釈など複数の位置があります。使った段階と影響を明示し、枠外のデータへ開かれているかを点検します。
第五は、「研究者を消すほど客観的になる」です。質的研究では研究者がデータ生成と解釈に関わります。その影響を隠すのでなく、立場と判断の変化を示す再帰性が透明性につながります。
第六は、「ソフトや生成AIが図を作れば分析できる」です。道具は整理と案出しを助けても、文脈を踏まえて意味を解釈し、例外を比較し、倫理的責任を負う主体にはなりません。研究者が判断過程を記録し、すべての主張をデータへ戻して確認します。
完成前は「一つの線につき一つの説明」で点検する
この章の要点最後に、図の要素を一つずつ読み上げます。概念名はデータに合うか、別の概念と重複しないか、線の意味を一文で説明できるか、関係が成り立たない条件を示したかを確認します。一つの線につき一つの根拠説明を用意するのが目安です。
次に、図から元データへ、元データから図へ往復します。代表例だけでなく反対事例を確認し、対象・場・時期を図題や本文で限定します。事前の理論、分析枠組み、結果モデルを区別し、用語を方法・結果・図で統一します。
最後に、図を初見の人へ見せ、「最初にどこを読み、矢印をどう解釈したか」を尋ねます。意図と異なる読み方が生じたら、配置、凡例、概念名を修正します。見やすさの確認は分析の妥当性を代替しませんが、分析した内容を誤解なく届けるために欠かせません。
質的研究のイメージ化で大切なのは、複雑な経験を単純に見せることではなく、複雑さを保ちながら関係を理解できる形へ整えることです。問い、データ、比較、解釈、図、限界が一本につながっていれば、概念枠組みは看護現象を考えるための確かな地図になります。
学習メモ・復習の予定気づきを自分の言葉で残す+
わかったこと、まだ曖昧なこと、次に調べたいことを残せます。
学びを、もう一度
復習日になると、ホームと復習リストで確認できます。
次に見返す日を決める
この記事の編集方針
主要な定義・数値・推奨は、公開時点で確認できるガイドライン、公的資料、学会資料、査読論文を優先して確認しています。未確認の編集メモは公開せず、根拠の範囲や限界を区別して、読者が原資料を確認できるよう参考資料を掲載します。
詳しい編集方針を見る →参考にした資料
- 看護研究公益社団法人日本看護科学学会看護研究の定義、研究の枠組み、量的・質的研究と質的研究の主な方法を確認。対応:見出し1、3原資料を開く
- Theory in qualitative research: a qualitative study of research experts’ viewsBMC Medical Research Methodology・2026出版社掲載本文のBackground、Theoretical framework、Positioning theory、Problematising theoryを確認。質的研究における理論・概念枠組みの位置、反復性、明示性、既存理論が解釈を制約し得る点。対応:見出し2、3、8、11、12原資料を開く
- Qualitative Data Analysis for Health Services Research: Developing Taxonomy, Themes, and TheoryHealth Services Research・2007PMC掲載本文のTypes of qualitative analysis、Coding qualitative data、Generating results等の該当部を確認。反復的分析、概念・関係コード、比較、分類・テーマ・理論の生成。対応:見出し3~8、11、12原資料を開く
残り4件の参考資料を見る原資料・発行元・発行年を確認できます+
- Using the framework method for the analysis of qualitative data in multi-disciplinary health researchBMC Medical Research Methodology・2013出版社掲載本文のGlossary、Procedure for analysis、Discussionを確認。Framework Methodの反復的手順、コード・カテゴリー・マトリクス・分析メモ、ソフトの役割と限界。対応:見出し3~8、12原資料を開く
- Standards for Reporting Qualitative Research: A Synthesis of RecommendationsAcademic Medicine・2014全文PDFのTable 1、Results、Conclusionを確認。質的研究全般の透明な報告を目的とするSRQR 21項目、方法選択の根拠と限界。対応:見出し8、10、11、13